オープニング
◆マミマミマミー
ブリーゲピラミッド。突如出現した危険な遺跡。サンドラ王朝やハウンドらは今、命懸けの探索行を繰り返していた。
今回、ハウンドらが突き進むのは、ピラミッドの中腹に新たに見つかった、長い長い横穴だ。その入口にはガーゴイルが待ち受け、道の途中でマミー(ミイラ男)が何体か襲ってきたが、それ以外はいたって脅威の感じられないルートであった――ついさっきまでは。
道幅は広く天井も高く、トラップも迷路もない。ハウンドらの警戒も徐々に緩み始める――『それ』が始まったのは、まさにそんな時であった。
まっすぐに伸びる回廊の奥から、気配が漂ってきた。もし強烈な灯りで前方を照らせば、それが、全身を包帯で包んだ動く死体、マミーであることがわかったはずだ。それが数体、じりじりと前進しているのだ。このまま行けば戦闘は不可避――
だが、ふいに誰かが、後方の異変に気付く。後ろからも同じような気配――間違いない。今来ていた道から、別のマミーの一群がこちらへ向かってきている。いったい、いつの間に、どこから出現したのか?
前からマミー、後ろからマミー‥‥挟み討ちの罠なのか、と誰もが思った、その直後。
回廊の左右の壁が、比較的静かに、ガラガラと崩れた。
崩れた先には、空間、新たな回廊が出現した。つまり、ハウンドは突如、十字路のど真ん中に立っていることとなったのだ。
そして、皆のイヤ~な予想通り‥‥左右の新回廊からも、それぞれ、マミーが迫ってくるのがわかった。
前後左右から迫るマミー。
ウー‥‥アー‥‥不気味なうなり声は、彼らが生前、コモンであったとは思えない。
彼らはなんと言おうとしているのだろうか。あるいは、「君たちもマミーになって一緒にお墓を守ろうよ」だったりするのかもしれない。
選択肢
a.侵攻を食い止める | b.とにかく殲滅 |
c.後方支援 | z.その他・未選択 |
マスターより
北野旅人です。ようこそ、ドラゴハウンド初のコミックリプレイへ!
本シナリオに参加するには、参加キャラがSTARSにて作成された透過全身図をもっている必要があります。
本コミックリプレイは、ショートシナリオのリプレイに加え、STARSクリエーターにしてオープニングコミック担当の、cra部氏によるコミックが作成されます。
プレイングには、キャラに行わせたい行動内容と共に、外さないで欲しい外見特徴やこだわりを記入してください。
服装・装備は、出発時に装備しているカードや、メイン全身図に設定されているイラストを元に制作します。
さて、マミー無双のシナリオです。
マミーは【魔ノ体】を有しており、魔法の威力や、【銀】【魔的】を伴った攻撃でないとダメージを与えられないでしょう。ご注意ください。
それを除けば、ひどく厄介な性質はないですが‥‥そこそこタフで数も多いため、決して油断はできません。
壁役として時間を稼いだり、ひたすら殲滅したり、後方支援で魅せたり。あなたなりの戦闘スタイルを、ぜひコミックで表現させてください。
それでは、皆さまのご参加をお待ちしております。
登場キャラ
◆絶体絶命、あるいは
うねり。うねりが今、ピラミッドの回廊を満たしていた。
ハウンドらは当然、魔法のランタンやマジカルトーチを始めとした、探索に十分な光源を持ち込んでいた。その灯りが心強くうねるとき、闇もまたうねりながらその身を縮こませる。
だが、その闇の先から、奥から、別のうねりが届く。地響きではないが、たしかな空気の圧として伝わってくる。
そして、声も――亡者の、生気なきうねり声。その怨嗟の波動を前に、蝋燭の灯りなど、申し訳なさげにふらふらとうねるばかりだ。
そんな状況下において、もっとも視界を確保していたのは、
ソレイユ・ソルディアスであった。魔法ルミナリィにより視界が確保され、彼は完全に闇の奥まで見通せていた。つまりは、迫りくるマミーの群れを。
「前も後ろも‥‥いや、どっちを向いてもマミーだな、こりゃ!」
「なにそれ、俺のファンが集まっちゃったの?」
ショウ・ジョーカーは不敵に言った。その声に、恐怖のうねりは感じられない。
「遺跡に守護者は付き物だが‥‥これはまた、随分と豪勢だな」
ジャアファル・ジルフェはそう言うと、地面に大き目の白い袋を置いて、それにトラップライトを成就した――たちまち袋は強い光を発し、これまでの光源をすっぽり飲み込み、さらに奥まで見通せるようにしてくれた。なお、この魔法の光には、魔物を惹きつけたり惹きつけなかったり、といった効果を仕込めるのだが、今は別にマミーをおびき寄せたくはないので、そういう効果は排除している。もっとも、歓迎しようがしまいが、彼らはやってくるとは思うが。
そういうわけでハウンドは、より鮮明に、大勢のマミーを見ることができた。
「うむ、絶体絶命じゃな。まぁ、いつものことの様な気もするがの」
エイル・グラシアはニンマリと言う。
「大丈夫だ! 俺達は8人! 敵はたくさん! 負ける理由はどこにもないぜ!」
ソレイユがドヤ顔で言うと、
マリカ・ピエリーニは、「何を言っているのやら」という目で覗き込んできた。ソレイユはハッとすると。
「いや俺が言いたかったのは『コンビネーションで数の差を埋めよう』って事をだな!」
「コンビネーションってことなら、援護は任せておきなァ!」
ゴンスケ・アステールは弓を構えると、じりじりと後退した――といっても、四方を囲まれているため、後方というよりは、十字路の中央というのが正しいだろう。
逆に、その4つの道へと足を向けたのは、
アレックス・パーリィ、
セシリオ・レヴナント、ソレイユ、エイルである。それぞれが道の1つで、最前衛として、壁として、マミーを食い止めるのだ。
◆それぞれの道での戦い
北の道にアレックスが立ち、東の道にセシリオが立った。弟と兄と。背中を合わせて、とはいかないが、いつでも援護にいける距離を、2人は意識していた。
「わふぅ‥‥気合を入れないとダメですね。兄ちゃん、頑張ろうね!」
アレックスはアースアーマーを成就させ防御を固め、ルミナパワーをミスリルランスに付与して迎撃態勢を整えた。
「出すぎず、下がりすぎず、ですよ。程よく頑張りましょうか」
セシリオはミスリル製のショートソード&パリーイングダガーを構え、戦技マルチパーリングで備える。回避中心にさばき、傷が広がればライフセービングで持ちこたえる作戦だ。
セシリオはオベロンのフェイスガードをしっかりと装着し、その表情は窺い知れない――それでも兄と弟は目配せをし、うなずき合い、お互いの信頼を確認し、そして一歩ずつ前へ出た。
南の道にエイル、西の道にソレイユが立った。
「狭い通路に多数の敵がひしめくこの状況‥‥しかし、我がゼウスにはおあつらえ向きじゃ!」
エイルの杖先から、上級のゼウスが、つまりは強烈な稲妻がほとばしった。
「グオオォォ‥‥」
3体か、4体か。マミーがまとめてのけぞり、そのまま膝をつく者もいた。威力だけではない、感電による行動不能もあるのだろう。
「こっちは、これを喰らいな!」
ソレイユは狩猟用ネットを投げ、先頭のマミーをがんじ絡めにした。それで全体の進軍が鈍ったところに、なんと自分から駆け込んでいくと。
「そらそらこっちだ!」
壁を蹴り、あるいはマミーさえ蹴り、挑発的に敵を惹きつける。が、軽業の技術、マルチパーリングの回避力により、反撃をほとんど寄せ付けない。そしてミスリルレイピアで、ぐさりと一突き、からのバク転回避。
「ははっ、これなら何百人来てもへっちゃらだぜ!」
前衛がマミーと激しくぶつかり出す頃には、残る者も迎撃や援護の態勢を整えていた。
「油断大敵。まさかこんなにも大量のマミーが出るとは‥‥面白いじゃない。みんな粉砕してあげる!」
マリカはすでに、ガード、ストライク、ルミナパワーを成就していた。殲滅すべきは――
「セシリオ、手伝うわよ」
その脇に立つと、ルミナ色に輝く異国の鉄の爪で、薙ぎ、突き、裂き、えぐった。高い魔力と優れた戦技が、マミーの包帯をズタボロに撒き散らす。
「これはどうも」
セシリオは攻撃の主体を彼女に任せることで、進軍阻止に集中することが可能となった。
「マリカ君がそっちなら、僕はと‥‥」
ゴンスケはミドルボウを構えると、銀の矢をつがえ、そして――ビュン。それは跳びはねたソレイユの足の下を通り、マミーの左眼を貫いた。
「グ、アァ‥‥」
「悪いな、マミーになるわけにゃいかねェのさ!」
ゴンスケがニンマリすると、ソレイユは背を向けたまま親指を立てて見せた。
そしてジャアファルはアレックスの援護だ。手にあるアテンディスクなるものは、縁が鋭利なミスリルの円盤。ピラミッドから発見されたという古代の武器である。
それにジャアファルが魔力を込めれば、それは淡く輝き――
「行け」
投ぜられたディスクは、マミーを切り裂くや否や、素早くジャアファルの手元へと舞い戻った。
「わふっ、凄いですね」
アレックスは援護に感謝する。
「だが、魔力に限りがある。あまりアテにはしないでくれ」
「大丈夫ですよ、私は‥‥鉄壁です!」
たしかにアレックスは堅かった。だが、鋼鉄並というほどでもなかった。
傷が、疲労が、じわじわと広がるなか、戦いは後半戦へと続いていく。
◆護り護られ
にいちゃんは僕が護ります――そう決意していたアレックスであったが、今は兄は、マリカが助けてくれているようであった。
「ならば‥‥ここは死守します!」
槍を横にし、両手でグイと突き出して、マミー3体をまとめて押しやる。その鋭い爪がアレックスを穿つが、多少の傷などものともしない。
それに――
「わふっ‥‥ありがとうございます」
背後から、ショウのキュアティブの回復援護が届く。これでまたしばらく、堂々と戦える。
「俺だってサボってるわけじゃないからね。それに‥‥さあ援軍だ!」
ショウは、これまで控えさせていたベビィサラマンダーを送り出した。その、燃えるような赤いトカゲは、口から炎(ルミナショット)を放ち、アレックスを援護する。
「ヒュー、やるじゃん! じゃ、俺は‥‥ちょっと借りるよ!」
ショウは、ちょうどゴンスケの矢筒が目の前に来てたので、それを失敬し、放った。
「お、おいおい、貴重な矢を取るなよな」
「ふふ、ちょうどいい場所にいたのが悪いさ。ウソウソ、あとで返すから」
そのゴンスケは、ブツブツ言いながらも癒しのメイスでセシリオを回復させ、「ちょっと頑張ってろ!」とソレイユに叫び、自身はセシリオの援護射撃へ。
「的確な援護、助かります」
セシリオは静かに、だが激しく動いていた――剣で右のマミーの手を飛ばし、ダガーで左のマミーの顎を砕き。しかし、その『武器』を奪ってもなお、物量で押してくる不死者は圧倒的である。
「こっちの回復もお願いね! 私はがむしゃらに潰していくから!」
マリカの爪が激しく乱れ飛び、その足元にはマミーの残骸が積み上がっていく。
一方ソレイユは、卓越の回避力で、上に横にの大乱舞でマミーを惹きつけ続けたが――いよいよ押し切られそうであった。
「よし、そろそろか――ホルス!」
そこで、一挙に後衛に転移。そして。
「エイル、こいつらも頼んだぜ!」
「ようし、ここで我が引導を渡してくれるのじゃ──ゼウス!!」
エイルは、ギッシリ詰まったマミーの群れに、次々と雷撃を浴びせてやった。これで西と南の道はほぼ殲滅が完了し、残る2つに集中すればよくなった。
といっても、少しばかり残党もいるので。
「ブロンテ、後ろは俺達で片をつけるぞ‥‥ブロンテ?」
ジャアファルは、ミスリルの牙を装着した柴犬ブロンテと共闘するつもりだったが――ブロンテはこの激闘を目の当たりにし、すくんで動けなくなっていた。
だが、ジャアファルはその背を、そっと撫でると。
「自信を持て。お前ならできるだろう‥‥やり切れ!」
ワウッ、と柴犬が駆けた。ジャアファルのアテンディスクがそれを追った。これで後方の勝敗は、決したも同然だった。
ということは、前方もだ。
「さあ、ショータイムよ!」
マリカのエクスプロージョンがいい音を鳴らした。それが、最終殲滅のラッパとなり、今度はマミーが、圧倒的戦力に押し潰される番となるのだった。
◆三つの道の先に
戦いが終わるや否や、エイルはどっかと地面に座り込んだ。
「あー疲れた‥‥もうなーんにも出んぞ! 虫も潰せぬ!」
「だが、まだ先がありそうだ。調べないことにはな」
ジャアファルは3つの道――本来の奥と、左右に出現した脇道――を見やる。ゴンスケは脇道にあごをしゃくり。
「罠のようで大当たりなんじゃねーの? お宝がたんまり見つかっとイイねェ」
「ハハッそんな都合よく、ってオイオイオイ」
ソレイユは思わず駆け出し、奥に無造作に転がる金細工品を持ち上げた。
「すっごいお宝! マミーが襲ってくれなかったら手に入ってなかったかもな!」
「すごい多いわね‥‥一度には運び出せないかしら」
マリカはそう言ったが、その横でジャアファルが、謎の白い大袋にヒョイヒョイと金細工を失敬していた。
「ずいぶん入るなあ‥‥くすねるなら俺にもちょうだいよ?」
ショウがそう言うと、ジャアファルは何も答えず、ただわずかに、口の端を持ち上げた。
そんなわけで、脇道それぞれの奥には、かなりの金が。
一方、奥で見つかったのは‥‥『動かない大量のミイラ』という、なんとも悲しいものと、そして。
「巨大な絵画‥‥と、ルーン文字かの」
エイルは、そこに描かれたものを見上げた。絵にも、大量のミイラが描かれている。そして、その頂点に立つのは、金で彩られた黒いマントのようなものを纏う、神とも死神ともつかぬ存在。
ゴンスケは、そのルーン文字を読んでみる。
「何やら難解だな、ずいぶんよ‥‥えーっと‥‥不死者の王‥‥たくさんの‥‥血を吸った‥‥みたいなことが書いてあるかな‥‥?」
ゴンスケがぶつぶつ言う横では、セシリオが、その絵をじいっと見上げていた。
「‥‥にいちゃん?」
アレックスに言われ、セシリオはやっと、首を振ると。
「禍々しい絵ですね‥‥今はひとまず、帰るとしましょうか」
その後の調査でも、その絵画についてはよくわからぬままであった。
しかし、多くの金を得たことにより、ハウンドギルドへの報酬は大きく上乗せされたという。
‥‥で、ジャアファルやその他のハウンドが、ちょこっとくすねたかどうかに関しては‥‥記録には、何も残っていない。
11
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参加者
| | c.援護は任せておきなァ!
| | ゴンスケ・アステール(da0465) ♂ 25歳 カーシー(小型) カムイ 水 | | |
| | a.みんなが戦いやすいようにいつものように壁になるよ(わふん)
| | アレックス・パーリィ(da0506) ♂ 28歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 地 | | |
| | a.ふむ…魔法はライフセービング中心にした方がよさそうですね。
| | セシリオ・レヴナント(da0545) ♂ 28歳 ダークエルフ ヴォルセルク 水 | | |
| | c.なにこれ、俺のファンが集まっちゃったの? 回復は任せて。前はよろしく。
| | ショウ・ジョーカー(da0595) ♂ 20歳 人間 カムイ 月 | | |
| | a.行儀悪い奴らだな。ちゃんと順番待ってろっての!
| | ソレイユ・ソルディアス(da0740) ♂ 21歳 人間 ヴォルセルク 陽 | | |
| | b.取りあえずあの亡者達をなぎ倒せば良いのよね。ふふ、腕が鳴るわ…!
| | マリカ・ピエリーニ(da1228) ♀ 29歳 人間 ヴォルセルク 火 | | |
| | c.(GGは無理そうだな…という顔で装備を確認する)
| | ジャアファル・ジルフェ(da1631) ♂ 19歳 人間 マイスター 陽 | | |
| | a.狭い通路に沢山の敵……我のゼウスにはおあつらえ向きじゃな!
| | エイル・グラシア(da1892) ♀ 34歳 人間 パドマ 風 | | |
亡者が生者を取り囲む
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彼らは進んで残虐王の下僕となったのか。あるいは無惨に命を奪われ、生ける死者として永劫の刻に縛られていたのか‥‥どちらにしてもハウンドは、彼らを真の眠りにつかせてやるしかないだろう。
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