【HH04】前も後ろもマミー

担当北野旅人
出発2020/08/28
種類コミック 冒険(討伐)
結果成功
MVPソレイユ・ソルディアス(da0740)
準MVPゴンスケ・アステール(da0465)
エイル・グラシア(da1892)

オープニング

◆マミマミマミー
 ブリーゲピラミッド。突如出現した危険な遺跡。サンドラ王朝やハウンドらは今、命懸けの探索行を繰り返していた。
 今回、ハウンドらが突き進むのは、ピラミッドの中腹に新たに見つかった、長い長い横穴だ。その入口にはガーゴイルが待ち受け、道の途中でマミー(ミイラ男)が何体か襲ってきたが、それ以外はいたって脅威の感じられないルートであった――ついさっきまでは。
 道幅は広く天井も高く、トラップも迷路もない。ハウンドらの警戒も徐々に緩み始める――『それ』が始まったのは、まさにそんな時であった。
 まっすぐに伸びる回廊の奥から、気配が漂ってきた。もし強烈な灯りで前方を照らせば、それが、全身を包帯で包んだ動く死体、マミーであることがわかったはずだ。それが数体、じりじりと前進しているのだ。このまま行けば戦闘は不可避――
 だが、ふいに誰かが、後方の異変に気付く。後ろからも同じような気配――間違いない。今来ていた道から、別のマミーの一群がこちらへ向かってきている。いったい、いつの間に、どこから出現したのか?

登場キャラ

リプレイ


◆絶体絶命、あるいは
 うねり。うねりが今、ピラミッドの回廊を満たしていた。
 ハウンドらは当然、魔法のランタンやマジカルトーチを始めとした、探索に十分な光源を持ち込んでいた。その灯りが心強くうねるとき、闇もまたうねりながらその身を縮こませる。
 だが、その闇の先から、奥から、別のうねりが届く。地響きではないが、たしかな空気の圧として伝わってくる。
 そして、声も――亡者の、生気なきうねり声。その怨嗟の波動を前に、蝋燭の灯りなど、申し訳なさげにふらふらとうねるばかりだ。
 そんな状況下において、もっとも視界を確保していたのは、ソレイユ・ソルディアスであった。魔法ルミナリィにより視界が確保され、彼は完全に闇の奥まで見通せていた。つまりは、迫りくるマミーの群れを。
「前も後ろも‥‥いや、どっちを向いてもマミーだな、こりゃ!」
「なにそれ、俺のファンが集まっちゃったの?」
 ショウ・ジョーカーは不敵に言った。その声に、恐怖のうねりは感じられない。
「遺跡に守護者は付き物だが‥‥これはまた、随分と豪勢だな」
 ジャアファル・ジルフェはそう言うと、地面に大き目の白い袋を置いて、それにトラップライトを成就した――たちまち袋は強い光を発し、これまでの光源をすっぽり飲み込み、さらに奥まで見通せるようにしてくれた。なお、この魔法の光には、魔物を惹きつけたり惹きつけなかったり、といった効果を仕込めるのだが、今は別にマミーをおびき寄せたくはないので、そういう効果は排除している。もっとも、歓迎しようがしまいが、彼らはやってくるとは思うが。
 そういうわけでハウンドは、より鮮明に、大勢のマミーを見ることができた。
「うむ、絶体絶命じゃな。まぁ、いつものことの様な気もするがの」
 エイル・グラシアはニンマリと言う。
「大丈夫だ! 俺達は8人! 敵はたくさん! 負ける理由はどこにもないぜ!」
 ソレイユがドヤ顔で言うと、マリカ・ピエリーニは、「何を言っているのやら」という目で覗き込んできた。ソレイユはハッとすると。
「いや俺が言いたかったのは『コンビネーションで数の差を埋めよう』って事をだな!」
「コンビネーションってことなら、援護は任せておきなァ!」
 ゴンスケ・アステールは弓を構えると、じりじりと後退した――といっても、四方を囲まれているため、後方というよりは、十字路の中央というのが正しいだろう。
 逆に、その4つの道へと足を向けたのは、アレックス・パーリィセシリオ・レヴナント、ソレイユ、エイルである。それぞれが道の1つで、最前衛として、壁として、マミーを食い止めるのだ。

◆それぞれの道での戦い
 北の道にアレックスが立ち、東の道にセシリオが立った。弟と兄と。背中を合わせて、とはいかないが、いつでも援護にいける距離を、2人は意識していた。
「わふぅ‥‥気合を入れないとダメですね。兄ちゃん、頑張ろうね!」
 アレックスはアースアーマーを成就させ防御を固め、ルミナパワーをミスリルランスに付与して迎撃態勢を整えた。
「出すぎず、下がりすぎず、ですよ。程よく頑張りましょうか」
 セシリオはミスリル製のショートソード&パリーイングダガーを構え、戦技マルチパーリングで備える。回避中心にさばき、傷が広がればライフセービングで持ちこたえる作戦だ。
 セシリオはオベロンのフェイスガードをしっかりと装着し、その表情は窺い知れない――それでも兄と弟は目配せをし、うなずき合い、お互いの信頼を確認し、そして一歩ずつ前へ出た。

 南の道にエイル、西の道にソレイユが立った。
「狭い通路に多数の敵がひしめくこの状況‥‥しかし、我がゼウスにはおあつらえ向きじゃ!」
 エイルの杖先から、上級のゼウスが、つまりは強烈な稲妻がほとばしった。
「グオオォォ‥‥」
 3体か、4体か。マミーがまとめてのけぞり、そのまま膝をつく者もいた。威力だけではない、感電による行動不能もあるのだろう。
「こっちは、これを喰らいな!」
 ソレイユは狩猟用ネットを投げ、先頭のマミーをがんじ絡めにした。それで全体の進軍が鈍ったところに、なんと自分から駆け込んでいくと。
「そらそらこっちだ!」
 壁を蹴り、あるいはマミーさえ蹴り、挑発的に敵を惹きつける。が、軽業の技術、マルチパーリングの回避力により、反撃をほとんど寄せ付けない。そしてミスリルレイピアで、ぐさりと一突き、からのバク転回避。
「ははっ、これなら何百人来てもへっちゃらだぜ!」

 前衛がマミーと激しくぶつかり出す頃には、残る者も迎撃や援護の態勢を整えていた。
「油断大敵。まさかこんなにも大量のマミーが出るとは‥‥面白いじゃない。みんな粉砕してあげる!」
 マリカはすでに、ガード、ストライク、ルミナパワーを成就していた。殲滅すべきは――
「セシリオ、手伝うわよ」
 その脇に立つと、ルミナ色に輝く異国の鉄の爪で、薙ぎ、突き、裂き、えぐった。高い魔力と優れた戦技が、マミーの包帯をズタボロに撒き散らす。
「これはどうも」
 セシリオは攻撃の主体を彼女に任せることで、進軍阻止に集中することが可能となった。
「マリカ君がそっちなら、僕はと‥‥」
 ゴンスケはミドルボウを構えると、銀の矢をつがえ、そして――ビュン。それは跳びはねたソレイユの足の下を通り、マミーの左眼を貫いた。
「グ、アァ‥‥」
「悪いな、マミーになるわけにゃいかねェのさ!」
 ゴンスケがニンマリすると、ソレイユは背を向けたまま親指を立てて見せた。
 そしてジャアファルはアレックスの援護だ。手にあるアテンディスクなるものは、縁が鋭利なミスリルの円盤。ピラミッドから発見されたという古代の武器である。
 それにジャアファルが魔力を込めれば、それは淡く輝き――
「行け」
 投ぜられたディスクは、マミーを切り裂くや否や、素早くジャアファルの手元へと舞い戻った。
「わふっ、凄いですね」
 アレックスは援護に感謝する。
「だが、魔力に限りがある。あまりアテにはしないでくれ」
「大丈夫ですよ、私は‥‥鉄壁です!」
 たしかにアレックスは堅かった。だが、鋼鉄並というほどでもなかった。
 傷が、疲労が、じわじわと広がるなか、戦いは後半戦へと続いていく。

◆護り護られ
 にいちゃんは僕が護ります――そう決意していたアレックスであったが、今は兄は、マリカが助けてくれているようであった。
「ならば‥‥ここは死守します!」
 槍を横にし、両手でグイと突き出して、マミー3体をまとめて押しやる。その鋭い爪がアレックスを穿つが、多少の傷などものともしない。
 それに――
「わふっ‥‥ありがとうございます」
 背後から、ショウのキュアティブの回復援護が届く。これでまたしばらく、堂々と戦える。
「俺だってサボってるわけじゃないからね。それに‥‥さあ援軍だ!」
 ショウは、これまで控えさせていたベビィサラマンダーを送り出した。その、燃えるような赤いトカゲは、口から炎(ルミナショット)を放ち、アレックスを援護する。
「ヒュー、やるじゃん! じゃ、俺は‥‥ちょっと借りるよ!」
 ショウは、ちょうどゴンスケの矢筒が目の前に来てたので、それを失敬し、放った。
「お、おいおい、貴重な矢を取るなよな」
「ふふ、ちょうどいい場所にいたのが悪いさ。ウソウソ、あとで返すから」
 そのゴンスケは、ブツブツ言いながらも癒しのメイスでセシリオを回復させ、「ちょっと頑張ってろ!」とソレイユに叫び、自身はセシリオの援護射撃へ。
「的確な援護、助かります」
 セシリオは静かに、だが激しく動いていた――剣で右のマミーの手を飛ばし、ダガーで左のマミーの顎を砕き。しかし、その『武器』を奪ってもなお、物量で押してくる不死者は圧倒的である。
「こっちの回復もお願いね! 私はがむしゃらに潰していくから!」
 マリカの爪が激しく乱れ飛び、その足元にはマミーの残骸が積み上がっていく。
 一方ソレイユは、卓越の回避力で、上に横にの大乱舞でマミーを惹きつけ続けたが――いよいよ押し切られそうであった。
「よし、そろそろか――ホルス!」
 そこで、一挙に後衛に転移。そして。
「エイル、こいつらも頼んだぜ!」
「ようし、ここで我が引導を渡してくれるのじゃ──ゼウス!!」
 エイルは、ギッシリ詰まったマミーの群れに、次々と雷撃を浴びせてやった。これで西と南の道はほぼ殲滅が完了し、残る2つに集中すればよくなった。
 といっても、少しばかり残党もいるので。
「ブロンテ、後ろは俺達で片をつけるぞ‥‥ブロンテ?」
 ジャアファルは、ミスリルの牙を装着した柴犬ブロンテと共闘するつもりだったが――ブロンテはこの激闘を目の当たりにし、すくんで動けなくなっていた。
 だが、ジャアファルはその背を、そっと撫でると。
「自信を持て。お前ならできるだろう‥‥やり切れ!」
 ワウッ、と柴犬が駆けた。ジャアファルのアテンディスクがそれを追った。これで後方の勝敗は、決したも同然だった。
 ということは、前方もだ。
「さあ、ショータイムよ!」
 マリカのエクスプロージョンがいい音を鳴らした。それが、最終殲滅のラッパとなり、今度はマミーが、圧倒的戦力に押し潰される番となるのだった。

◆三つの道の先に
 戦いが終わるや否や、エイルはどっかと地面に座り込んだ。
「あー疲れた‥‥もうなーんにも出んぞ! 虫も潰せぬ!」
「だが、まだ先がありそうだ。調べないことにはな」
 ジャアファルは3つの道――本来の奥と、左右に出現した脇道――を見やる。ゴンスケは脇道にあごをしゃくり。
「罠のようで大当たりなんじゃねーの? お宝がたんまり見つかっとイイねェ」
「ハハッそんな都合よく、ってオイオイオイ」
 ソレイユは思わず駆け出し、奥に無造作に転がる金細工品を持ち上げた。
「すっごいお宝! マミーが襲ってくれなかったら手に入ってなかったかもな!」
「すごい多いわね‥‥一度には運び出せないかしら」
 マリカはそう言ったが、その横でジャアファルが、謎の白い大袋にヒョイヒョイと金細工を失敬していた。
「ずいぶん入るなあ‥‥くすねるなら俺にもちょうだいよ?」
 ショウがそう言うと、ジャアファルは何も答えず、ただわずかに、口の端を持ち上げた。

 そんなわけで、脇道それぞれの奥には、かなりの金が。
 一方、奥で見つかったのは‥‥『動かない大量のミイラ』という、なんとも悲しいものと、そして。
「巨大な絵画‥‥と、ルーン文字かの」
 エイルは、そこに描かれたものを見上げた。絵にも、大量のミイラが描かれている。そして、その頂点に立つのは、金で彩られた黒いマントのようなものを纏う、神とも死神ともつかぬ存在。
 ゴンスケは、そのルーン文字を読んでみる。
「何やら難解だな、ずいぶんよ‥‥えーっと‥‥不死者の王‥‥たくさんの‥‥血を吸った‥‥みたいなことが書いてあるかな‥‥?」
 ゴンスケがぶつぶつ言う横では、セシリオが、その絵をじいっと見上げていた。
「‥‥にいちゃん?」
 アレックスに言われ、セシリオはやっと、首を振ると。
「禍々しい絵ですね‥‥今はひとまず、帰るとしましょうか」

 その後の調査でも、その絵画についてはよくわからぬままであった。
 しかし、多くの金を得たことにより、ハウンドギルドへの報酬は大きく上乗せされたという。
 ‥‥で、ジャアファルやその他のハウンドが、ちょこっとくすねたかどうかに関しては‥‥記録には、何も残っていない。



 11

参加者

c.援護は任せておきなァ!
ゴンスケ・アステール(da0465)
♂ 25歳 カーシー(小型) カムイ 水
a.みんなが戦いやすいようにいつものように壁になるよ(わふん)
アレックス・パーリィ(da0506)
♂ 28歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 地
a.ふむ…魔法はライフセービング中心にした方がよさそうですね。
セシリオ・レヴナント(da0545)
♂ 28歳 ダークエルフ ヴォルセルク 水
c.なにこれ、俺のファンが集まっちゃったの? 回復は任せて。前はよろしく。
ショウ・ジョーカー(da0595)
♂ 20歳 人間 カムイ 月
a.行儀悪い奴らだな。ちゃんと順番待ってろっての!
ソレイユ・ソルディアス(da0740)
♂ 21歳 人間 ヴォルセルク 陽
b.取りあえずあの亡者達をなぎ倒せば良いのよね。ふふ、腕が鳴るわ…!
マリカ・ピエリーニ(da1228)
♀ 29歳 人間 ヴォルセルク 火
c.(GGは無理そうだな…という顔で装備を確認する)
ジャアファル・ジルフェ(da1631)
♂ 19歳 人間 マイスター 陽
a.狭い通路に沢山の敵……我のゼウスにはおあつらえ向きじゃな!
エイル・グラシア(da1892)
♀ 34歳 人間 パドマ 風


亡者が生者を取り囲む

彼らは進んで残虐王の下僕となったのか。あるいは無惨に命を奪われ、生ける死者として永劫の刻に縛られていたのか‥‥どちらにしてもハウンドは、彼らを真の眠りにつかせてやるしかないだろう。