オープニング
◆闇の来訪者
人々が探索開始したブリーゲピラミッドでいくつか見つかった入口のひとつ。
そこから侵入した、ガーベラを含むハウンドたちは回廊を進む。
具体的にいつから、とは明言できないが、あるタイミングから急に、ハウンドらは心身に不調を感じ始める。
「こ、これは? おうけののろいちゃうんか」
ガーベラでさえ、弱音を吐く。ハウンドでさえ、肉体も精神もかなり参っているのだ。
そうでなければ、回廊の中を先に進んでいた、足跡──二足歩行の蹄の痕跡に気づいていたはずだ。
たどり着いた広間には先客がいた、そう蹄の主だ。
全裸の巨漢、頭は牛のそれが姿を現す。そう全裸の牛頭巨漢といえば、霊修が奇特な、この魔物だ。
彼──ダークミノタウロスと対峙したことのあるものは、理由こそ不明だが、意気軒高。鼻息も荒く、ハウンドに気づかせなかったほど動きは俊敏らしい。動きも力強くなかなかの教敵だ。
一部のハウンドは推測する、自分たちをむしばむ、この呪いめいた力──呪いではないかもしれない、魔法作用かもしれない──は、魔物あるいはダークサイドには、活力向上に働くのだろうか‥‥?
いや、そもそも、悠久の時を砂に埋もれていたはずのこのピラミッドに、ダークサイドとはいえ、まがりなりにもコモンが待ち受けているのだ‥‥?
謎だけはある。しかし、ともかく、目の前の脅威を排除せねばならない。
自分たちは十全ではない。
そう──これが逆境だ!
自分を鼓舞しようとしたハウンドたちは、二匹目が回廊の奥から姿を現したときは、立ち上がる力を失ってしまいそうになる。
ハウンドの黄昏が始まる、勝利の鐘──いまだ響かず。
※ミノさんはそして、全判定に+20パーセント。そして、被る最終ダメージが半減します。
※ハウンドの皆さんは、心身の重さを感じる不調具合から、全判定に-20パーセント。すべての魔法(戦技魔法含む)には成就判定が必要となります。無論、この判定も-20パーセントです。なので、魔法をあらかじめ準備したのはアルケミー以外認めません。
選択肢
マスターより
誰だこんなシナリオ書いたのは! まあ自分ですが(笑)。
もろだしの相手にノックアウトされて、死にたくなければ、逃げ出せ!
もろだしの股間を破壊し、逆襲するつもりなら、覚悟を決めろ!
自分の処刑執行書にサインしたか、新たな英雄譚を自ら書いたかは皆さん次第。
覚悟できた方、参加をお待ちしています。
※RealTimeEvent【HoundHistory04】掘り出せ呪いの書 連動シナリオ
本シナリオは、世界の歴史を動かす可能性を秘めた企画「リアルタイムイベント」に連動した特別シナリオです。
参加することで【HH04】を冠したグランドシナリオに参加する権利を得ることができます。
登場キャラ
◆乙女と絶望と
(襲い来る全裸の牛頭巨漢に立ち向かう美女ハウンド軍団‥‥何か別の物語になりそうだね)
そう考えるのは、
シルヴァーナだ。
彼女は内心の焦りと興奮に身をゆだねそうになる。
しかし、シルヴァーナは美女ハウンド軍団の英雄譚を語り継ぐべく、目の前にいる敵と戦う仲間のため、祈りを捧げる。
「へ、へ、へ、変態だぁ~!!」
ダークミノタウロスという名の変態が二匹。
顔を赤くするのは、
アステ・カイザーだった。彼女はこの敵の強化、ハウンドの弱体化を呪いと考えた。
まあ、彼女はリムーブカースの魔法を覚えていない。きっと今後は必須魔法のリストに上がる。少なくとも心には決めている。
「女神よわが信仰を守りたまえ‥‥」
祈りながらオーバーロードの魔法の成就に入る。成功しそうでしない。魔力が魔力が足りないのよ‥‥。
これもナゾの力の影響に違いない。
そして、リムーブカースの祈りをしめくくるシルヴァーナは、女神に祈りが通じた!
今のエースである、
カモミール・セリーザを対象として魔法を成就!
しかしシルヴァーナの力量不足か、そもそもこの興奮が呪いではない? そのどちらからしく状況は変わらないのである。
「がーん」
落ち込みたくなるシルヴァーナ。
一方その頃──。
「お友だちはゼッタイ護るんだからーって、ええ~っ!!」
疲れつつも、
ユナ・プリセツカヤは、盾を持つ腕とは逆の腕に、ルミナシールドを展開。
「カッコよくなんてなくても、お友だちは守るよー!」
左右両方の手に構えているシールド。その頑健さを頼りに、彼女はダークミノタウロスを一秒でも押しとどめ、あわよくば押し返そうと試みる。
パワー戦だ! とはいえ、元々が取り回しの悪いシールドで絶不調の彼女が、絶好調のダークミノタウロスで力で押し切ることは、法外なまでの幸運が無ければ無理!
「カモミールさんお願い!」
ユナは勝てない。しかし、負けていない。
◆絶望と希望と
彼女らにはひとつの希望があった。それは、カモミールのプリズマティック。
無論、地形や、その地にある何か由来の魔法は、ほとんどの場合プリズマティックで聖域に引きずり込んでも、効果は変わらない。
しかし『ほとんど』ということは、一か八どころではない。万にひとつ──億にひとつ‥‥いや、那由他の彼方でも賭けるに値するものだった。
「──プリズマティック」
カモミールが詠唱を締めくくった。聖域に引きずり込まれる一同。
そして──ダークミノタウロスは元気、ハウンドは体が重い。
「ごめーん、理論は理論だったわよ、間違ったよ?」
ユナは膝が笑うのを感じた。
「時間を稼ぐわぁ、何とかするわ」
言って、
エリアル・ウィンフィールドは、ひんやりとした球体を投げる。
それがあらかじめ準備していた彼女のアルケミー。今のところ十分で作れる品としては最強の物品といえよう。
冷気をはらみ、穴をうがち、ツタで戒める。そして若干の幸運をもたらす‥‥だが、アルケミーは同一人物が、同じ素材を使っても、コントロールできるとは限らないのだ。
ユナの前にその球体が落ちた時──イロイロ起きた。
球体から、氷でできたムチが飛び出す。イカズチをまとうそれは、はいずるようにダークミノタウロスを追尾する。
そのムチがダークミノタウロスのほうにムチをふるい、外れるごとに遺跡の床にすり鉢状の穴を作り出した。
「失敗やわ。こんな制御できへんモン、実戦では震えんわ」
エリアルが思わず顔を手で覆う。
「MOOHHH──!」
アルケミーのツタがダークミノタウロスの片方を捕まえ、ようやくアルケミー災害(あえてそう呼ぼう)は止まった。
「とどめだべ!」
言いながら、果敢に突っ込む、
エルシー・カル。彼女は重装甲と魔法の槍ミストルティンに命を預け、全力で突っ込む。
初陣でこの落ち着きっぷりは、未来の大器を予感させた。
「つぎいこーか!」
シフールの
ガーベラもエルシーの肩に乗る。
「でも終わっているべ?」
エルシーの冷静なツッコミに肩から落ちそうになるガーベラ。
◆希望と悪夢と
「食べられないものは死ねばいいです」
最近ミミズがトラウマになったのか、
シェール・エクレール。
無事なダークミノタウロスに『牛の頭をしている癖に食べられないとは何事ですか』とクレームを言いたい気持ちで一杯だった。
彼女が場数を踏んでいれば、魔力が高くないと魔法を成就するか怪しい状況とは、魔法を使えば使うほど、魔法が成就できなくなるという状況があったかもしれない。
だが、現状の悪夢としか言えない状況に気づくには遅すぎた。
無論、早めに考えていれば、使うべき魔法の優先順位を落ち着いて考えられただろう。
魔法を成就しながら移動し続けることはできないのだ。
「ここは一発必中オーバーロードなのです」
一回の失敗の後に、頭が覚めるシェール。深呼吸ののちに、魔法を成就する。
「みっともないものをぶら下げるな!」
そう言って、
ユミル・エクレールはシェールと同じワナにはまっていた。当たり前に魔法が使える彼女は、魔法が使いづらい状況に陥ったのだ。
そして二重の錯誤、彼女が得意とする戦技魔法で攻撃すると、攻撃の精度がガタ落ちになる。無論、大技を使うほど、その傾向は大きい。
「だが笑って吹き飛ばすユミルねーさん。なーにいいハンデさ!」
あえて自分でいうところがユミル節か?
彼女は巧みにダガーをふるう、シュライクの掠め切る精緻な剣筋とブラインドアタックの組み合わせは、そうそう見切れはしない。多少相手が強化されていてもだ。
無論、相手も手傷を負っても殴り返す以上、ユミルもタダでは済まない。猛攻によって、ユミルの東方風の鎧はあちこち破壊されている。
いい攻撃を何度も受けたのだ。ユミルの目にも割られた額から血潮が流れ込む。
一瞬、注意がそがれた彼女に迫る、ダークミノタウロス。彼が攻撃に移った瞬間──風切り音。
ダークミノタウロスの肩にシェールのライジョウドウから放たれた矢が突き立った。
オーバーロードで放った矢‥‥無事では済まない。
「命の差し入れありがとうな」
ユミルの言葉に、笑ったシェールはサムズアップサイン。
そして、喉笛を掻き切る。
血がしぶいた。
その頃、エリアルはガーゴイルを動かしていた。このガーゴイルには通常武器は通じず、触れた相手を眠らせる可能性もある。
ひょっとしたら、殴りまくれば倒せたかもしれない。あくまで可能性ではあるが‥‥。
回廊を進むと両開きの扉があった。
「失礼するべ!」
乱暴にエルシーが扉をけ破る。
◆悪夢と乙女と
そこは黄金の間であった。朽ち果てそうな多数の宝箱から、無数の金細工が零れ落ちている。かなり精緻に作ったものらしい。
「うわーきんぴかや!」
ガーベラが目を光らせる。
だが、他のハウンドたちの視線は『壁画』に向けられる。
金細工で縁取られているが、まがまがしさを感じるものだ。
「これがブリーゲか?」
ユミルが強敵を思わせる存在に闘志をともされる。
「いやーこれはデュルガーと思うわよ? ──多分だけど」
カモミールの示唆にエリアルはうなずいた。
「強力なデュルガーかもしれへんどすえ」
「食えそうにないなぁ?」
シェールは直感で言った。
「死ぬまで殴れべ、みんな死ぬべ」
エルシーはお気楽に言う。
「やっぱりデュルガーという名の変態だった」
アステが残念そうに言う。
ユナはシンプルに言う。
「でも、みんなの力を合わせれば」
「さあ、本当の戦いはこれからだよ‥‥多分ね」
シルヴァーナが締めた。
なお、帰りも行きと同じで、イロイロ重かったことは言うまでもない。
だが、どうしてコモンのはずであるダークミノタウロスがこの奥部にいたのか、それはナゾであった。
今は語るべき時ではない。
それはシルヴァーナの陰スプレーション次第。
──ともあれ、ハウンドの戦いは‥‥つづく!
6
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参加者
| | b.へ、へ、へ、変態だぁ~!!
| | アステ・カイザー(da0211) ♀ 27歳 人間 カムイ 水 | | |
| | a.お友だちはゼッタイ護るんだからーーって、ええ~~っ!!
| | ユナ・プリセツカヤ(da0671) ♀ 20歳 人間 ヴォルセルク 陽 | | |
| | c.試しにプリズマティックで、私たちとミノタウロスを空間から隔離してみるわ
| | カモミール・セリーザ(da0676) ♀ 31歳 ライトエルフ パドマ 陽 | | |
| | c.変態VSハウンドだね。あ、リムーブカース覚えてきたから使ってみるね。
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| | c.落とし穴で分断を図るわぁ。うもういくとええけどねぇ。
| | エリアル・ウィンフィールド(da1357) ♀ 49歳 ダークエルフ マイスター 水 | | |
| | b.食べられないものは死ねばいいです。
| | シェール・エクレール(da1900) ♀ 19歳 人間 カムイ 風 | | |
| | a.チョン切ってやるさね
| | ユミル・エクレール(da1912) ♀ 24歳 人間 ヴォルセルク 陽 | | |
| | a.前に出るべ。
| | エルシー・カル(da2004) ♀ 21歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 地 | | |
これが逆境だ!
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ハウンドは疲れていた、魂も疲れ、肉体も疲れていた。そんなグリードピラミッドでの探索行‥‥出迎えたのは全裸であった。
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