本当にあったか? 怖い話

担当成瀬丈二
出発2020/08/01
種類ショート 冒険(他)
結果成功
MVPラライヤ・ナンシー(da1003)
準MVPナイン・ルーラ(da1856)
コニー・バイン(da0737)

オープニング

◆魔の森近くにて──
 ハウンドとて人間である‥‥いや、コモン扱いされているものであるというべきか? ──ともあれ、雨に降られれば嫌な気分にもなる。
 そう──魔の森近くで調査の帰りに、土砂降りにあったのだ。
 頭のテッペンからつま先まで濡れネズミとなり、気分が悪い。
 その時ガーベラは指さした、小さな灯を!
「あそこにだれかおるかもしれへんで!」

登場キャラ

リプレイ

◆∞=彼は変わらない
「おわかれやで、かれーはん」
 朝日が差してきた。
 シフールのガーベラは、昨晩の雨──その湿り気を含んだ空気を感じながら、飛び立つのだった。
「いってらっしゃいませ」
 家令のゴーストはその後ろ姿を見送る。
 さて──終章はここまでにして、昨晩の顛末を見てみよう。

◆〇=礼儀正しき来訪者たち
「ではお言葉に甘えて、一夜の宿をお借りします』
 そう言って頭を下げたのは、ナイン・ルーラだ。
 死ねば己もゴーストになるかもしれない。それだけの未練を彼女は生に持っている。愛しき、コニー・バインと添い遂げるという一念だろうか?
「うーん、家令さんと話が出来るなら、会話してみましょうか」
(うなってばかりですが、不気味な雰囲気とはいえ、ナインさんの前で情けない姿は見せられません。まあ、ゴーストを恐れる理由も無いですし)
 口に出しては──。
「一晩の宿をお借りします──あれ?」
 と、ナインと同じことを言っていた。
 ナインは苦笑し、家令に質問をする。
「つかぬことを聞きますが、この城のご主人はなんという方ですか?」
(家令のゴーストが対話を出来れば、この遺跡の歴史を知る事も出来るでしょうし、我々が礼を失する無礼を働かない限りは、家令のゴーストも寛大な態度を取ってくれると期待します)
 家令のゴーストは奥にある二階に通じる階段、その踊り場の壁にある何かを指さす。
「はて、額しか見えませんね」
「たぶん‥‥紋章か何かがあったのかもしれません」
 コニーの言葉に合点がいくナイン。

◆一=夢見る侍女でいられない
「フルーツタルトとリンゴ酒を用意しております♪ お口に合う──え!?」
 侍女なハウンド、ラライヤ・ナンシーは、扉の応急処置を試みようとしたところ、チャウとガーベラの視線──そう、彼女は甘味を持ち込んでいたのだ──のプレッシャーに耐えきれず、布巾で床の一部を拭うと、簡単な宴を開こうとした。
 チャウが食べていた。ガーベラが呑んでいた。
「おいしいのだ、もっと‥‥もっと」
 とチャウ。
「うまいで、ラライヤはん、もうひとつや!」
 プラス、ガーベラ。
「まあ、火が使えたら、何か作ります」
 ラライヤは、この暴虐に心がかえって踊る。
「その前に掃除します。あと、扉は‥‥」
 彼女は扉の修理に必要な技術を持ち合わせていない。人間は大抵万能ではないのだ。
「お掃除は‥‥きっとこの辺に‥‥あ」
 人間は百年やそこらでは思考様式はそうそう変わるわけではない。
 しかし、保存状態のあまり良くない掃除用具は、骨董品とさえ言えないレベルの時間の変化を受けていた。
 ──人、これをゴミという。
「ああ、ここを掃除しようなんて‥‥腕が鳴ります。プロジェクトCROSSです」
 ラライヤが歓喜していると、シフールたちは飛び去って行った。

◆二=背中越しにセンチメンタル
 その少し後に、ナインは振り向く。
「あれ? チャウたちはどこに──いやな予感がします」
 神託より確実にナインのココロに嫌な予感が走る。
 わーいと遠ざかる声がする。コドモコドモした声はシフールだ。
「見て来ますか?」
 コニーが悩めるナインに声をかけた。
「いえ、それもありますが、雨でぬれた服などは乾かさないと」
「風邪をひきますか」
 多分、コニーとナインは体の鍛え方が違うので、一朝一夕に風邪はひかない。
 裏を返せば、シフール陣とラライヤは怪しいのだ。
「お客さま、いらっしゃいませ、もうすぐ主人が帰ってまいります」
 家令はコニーとナインをひとつの部屋に案内しようとする。
(め、め、夫婦? そ、そう見えるだべ‥‥)
 唐突な展開に、コニーの脳内は大パニックになる。
「あ、ああ? ‥‥ああ──あ」
 それはナインも同じ。家令に向かって、パニックにおちいった彼女は、赤面して身振り手振りを交えて辞退しようとした。
「ごゆっくり」
 ふたりの後ろで扉らしきものが閉じられた。
 そして濡れる。雨がたたきつける様にふっている。
 屋根がなかったのだ。

◆三=ボケだけでツッコミは──
「あ、かれーさんがきたねん」
 ガーベラがチャウの後ろから、やってくる影に気づく。
「むう、家令さんは? 食えたっけ?」
 そして、チャウは三回羽ばたくとその情報を忘れた。その間にガーベラは前に行く。
「あれ~ガーベラちゃんは前にいるのに、後ろから誰かの気配を感じるなー? えい!」
 振り向くと誰もいない。
「あれー? じゃあ、えい!」
 やっぱり誰もいない。
「──ん? えい!」
 それでも、誰もいない。
「あれ~おかしいなー‥‥えい!?」
 と、チャウは、フェイントをかけて振り向くと、つられて、後ろのゴーストも一緒に振り向いている。
「うん、やっぱり誰もいないぁ~」
「なにやっとんねん!」
 ガーベラの切れのいいツッコミが、チャウのレバーに入る。
 えぐりこむように打つべし! 女神教の明日のための教えだ(ウソ)。
「で、出ちゃうよ!」
 抗議するチャウ。『痛い』ではなく『出る』なのが彼女の由縁だ。
「かれーさんこまっとるやんけ!」
 その言葉に深々とうなずく家令。
「お客さま、いらっしゃいませ、もうすぐ主人が帰ってまいります」
「同じじゃないかな~」
 チャウの抗議に腕を組むガーベラ。
「せやな」
 口に出してはそれだけだった。

◆四=ヒミツ下さい
「では、いただきます」
 食堂らしき場所でコニーの持ち込んだ保存食を前に祈りをささげるハウンド一同。
「この館‥‥の主にも感謝を」
 唱和する。
 少々遅れた夕餉だが、一同は食欲が進む。
「皆様方、すみません‥‥イチから寝具を作る腕前はありません、このラライヤ──修行不足です」
 ラライヤが、心底申し訳なさそうな声を出す。
「ハラへった!」
 自分の分を軽く食いだめしたチャウが、ナインから少し分けてもらう。
「施しも神職の役目」
 ‥‥という事らしい。
「しかし、きちんと手入れしていれば、さぞかし立派な屋敷でしたが」
 コニーが往時──ひょっとしたらオーディア島が、女神に定められた聖域として禁足地になる前かもしれない、それは不分明だ──に思いを馳せる。
「まあ、ふるいわな。いまはおっきーぼろやや」
 ガーベラが完全に身もフタものない事を言う。
 とはいえ、各部屋は屋根が崩落している。加えて、戦力の分断も怖い。
 コニーは恐縮したものの、一同は玄関のあたりで、雑魚寝することにした。

◆五=終わらない夜はなく、始まらぬ朝もない
(農耕士の意地にかけて、この四人の女性は‥‥守り抜きます)
 雨音だけを夜の友として、コニーは神経を張り詰める。
 ──!
 コニーの感覚に何かが触れた。
 ‥‥家令だ。
「お客さま、いらっしゃいませ、もうすぐ主人が帰ってまいります」
「家令さん、あなたはどれだけの間、主人を待っているのですか?」
 一瞬、哀切を交えてしまうコニー。
「でも、いつか帰ってくると、いいです」
 コニーの視界の中で家令が笑ったような気がした。
 本当に微かにではある。

 コニーが緊張の中で時間が経つごとに、薄皮を剥がすがごとく、徐々に雨脚は収まっていく。
 だから、明日はきっと晴れるだろう。
 そんな確信を持ってしまうコニー。
 そして、それは当たっていた。
 ──とはいえ、ゴーストの家令は生死を超えた忠誠で、主人を待つに違いない。
 だから、ハウンドの挑戦は‥‥つづく!



 6

参加者

a.うーん、家令さんと話が出来るなら、会話して見ましょうか
コニー・バイン(da0737)
♂ 23歳 人間 マイスター 月
z.フルーツタルトとリンゴ酒を用意しております♪お口に合うでしょうか?
ラライヤ・ナンシー(da1003)
♀ 22歳 人間 カムイ 風
b.ご飯は無いの~?(ふらふらと探索)
チャウ(da1836)
♀ ?歳 シフール カムイ 月
z.無礼な態度を取らねば、ゴーストも寛大でしょう…ところでチャウは何処に?
ナイン・ルーラ(da1856)
♀ 29歳 人間 ヴォルセルク 水
 わーおばけや。
ガーベラ(dz0030)
♀ ?歳 シフール カムイ 月


一晩いっしょに

お客さま、いらっしゃいませ、もうすぐ主人が帰ってまいります。(魔の森近くの廃屋にて)