オープニング
◆魔の森近くにて──
ハウンドとて人間である‥‥いや、コモン扱いされているものであるというべきか? ──ともあれ、雨に降られれば嫌な気分にもなる。
そう──魔の森近くで調査の帰りに、土砂降りにあったのだ。
頭のテッペンからつま先まで濡れネズミとなり、気分が悪い。
その時ガーベラは指さした、小さな灯を!
「あそこにだれかおるかもしれへんで!」
古びた城‥‥というより『遺跡』があった。
また、ガーベラによりろくでもない目に出会うのかもしれない。
しかし、昔から言うではないか『天下を取りたければシフールと笑え』と。
「たのもー!」
先住者に自身の存在をアピールすべく、ハウンドたちは声を張る。
一番大きいのはガーベラの声。態度はでかいが、体は小さい。
「のっくしてもしもーしや!」
と、ガーベラが玄関を叩くと、あっけなく内側に倒れた。
そこには半透明の人影がいた? あるいはあった?
「お客さま、いらっしゃいませ、もうすぐ主人が帰ってまいります」
その人影は多分、家令か何かだったのかもしれない。
ハウンドが動けないでいると、数秒おきにその言葉を繰り返す。
「な、なんやて!?」
ガーベラがようやく驚いた‥‥らしい。
奥を調べると、一応人数分の部屋はありそうだ。だが、一晩過ごすべき、だろうか。
一般的には、ゴーストは隣人扱いされる。家令がゴーストだとすれば、良き隣人であろう。
──ハウンドの一晩が‥‥始まる。
選択肢
a.調べる家令 | b.調べる廃屋 |
c.逃げ出すここから | z.その他・未選択 |
マスターより
嫌な梅雨が続きます、成瀬です。
今回は一晩、雨が続きます、とだけ言っておきましょう。
どんな喜‥‥もとい悲劇が皆さんを待っているのでしょうか?
それを決めるのはズバリみなさんの行動です。
ふるっての参加お待ちしています。
登場キャラ
◆∞=彼は変わらない
「おわかれやで、かれーはん」
朝日が差してきた。
シフールの
ガーベラは、昨晩の雨──その湿り気を含んだ空気を感じながら、飛び立つのだった。
「いってらっしゃいませ」
家令のゴーストはその後ろ姿を見送る。
さて──終章はここまでにして、昨晩の顛末を見てみよう。
◆〇=礼儀正しき来訪者たち
「ではお言葉に甘えて、一夜の宿をお借りします』
そう言って頭を下げたのは、
ナイン・ルーラだ。
死ねば己もゴーストになるかもしれない。それだけの未練を彼女は生に持っている。愛しき、
コニー・バインと添い遂げるという一念だろうか?
「うーん、家令さんと話が出来るなら、会話してみましょうか」
(うなってばかりですが、不気味な雰囲気とはいえ、ナインさんの前で情けない姿は見せられません。まあ、ゴーストを恐れる理由も無いですし)
口に出しては──。
「一晩の宿をお借りします──あれ?」
と、ナインと同じことを言っていた。
ナインは苦笑し、家令に質問をする。
「つかぬことを聞きますが、この城のご主人はなんという方ですか?」
(家令のゴーストが対話を出来れば、この遺跡の歴史を知る事も出来るでしょうし、我々が礼を失する無礼を働かない限りは、家令のゴーストも寛大な態度を取ってくれると期待します)
家令のゴーストは奥にある二階に通じる階段、その踊り場の壁にある何かを指さす。
「はて、額しか見えませんね」
「たぶん‥‥紋章か何かがあったのかもしれません」
コニーの言葉に合点がいくナイン。
◆一=夢見る侍女でいられない
「フルーツタルトとリンゴ酒を用意しております♪ お口に合う──え!?」
侍女なハウンド、
ラライヤ・ナンシーは、扉の応急処置を試みようとしたところ、
チャウとガーベラの視線──そう、彼女は甘味を持ち込んでいたのだ──のプレッシャーに耐えきれず、布巾で床の一部を拭うと、簡単な宴を開こうとした。
チャウが食べていた。ガーベラが呑んでいた。
「おいしいのだ、もっと‥‥もっと」
とチャウ。
「うまいで、ラライヤはん、もうひとつや!」
プラス、ガーベラ。
「まあ、火が使えたら、何か作ります」
ラライヤは、この暴虐に心がかえって踊る。
「その前に掃除します。あと、扉は‥‥」
彼女は扉の修理に必要な技術を持ち合わせていない。人間は大抵万能ではないのだ。
「お掃除は‥‥きっとこの辺に‥‥あ」
人間は百年やそこらでは思考様式はそうそう変わるわけではない。
しかし、保存状態のあまり良くない掃除用具は、骨董品とさえ言えないレベルの時間の変化を受けていた。
──人、これをゴミという。
「ああ、ここを掃除しようなんて‥‥腕が鳴ります。プロジェクトCROSSです」
ラライヤが歓喜していると、シフールたちは飛び去って行った。
◆二=背中越しにセンチメンタル
その少し後に、ナインは振り向く。
「あれ? チャウたちはどこに──いやな予感がします」
神託より確実にナインのココロに嫌な予感が走る。
わーいと遠ざかる声がする。コドモコドモした声はシフールだ。
「見て来ますか?」
コニーが悩めるナインに声をかけた。
「いえ、それもありますが、雨でぬれた服などは乾かさないと」
「風邪をひきますか」
多分、コニーとナインは体の鍛え方が違うので、一朝一夕に風邪はひかない。
裏を返せば、シフール陣とラライヤは怪しいのだ。
「お客さま、いらっしゃいませ、もうすぐ主人が帰ってまいります」
家令はコニーとナインをひとつの部屋に案内しようとする。
(め、め、夫婦? そ、そう見えるだべ‥‥)
唐突な展開に、コニーの脳内は大パニックになる。
「あ、ああ? ‥‥ああ──あ」
それはナインも同じ。家令に向かって、パニックにおちいった彼女は、赤面して身振り手振りを交えて辞退しようとした。
「ごゆっくり」
ふたりの後ろで扉らしきものが閉じられた。
そして濡れる。雨がたたきつける様にふっている。
屋根がなかったのだ。
◆三=ボケだけでツッコミは──
「あ、かれーさんがきたねん」
ガーベラがチャウの後ろから、やってくる影に気づく。
「むう、家令さんは? 食えたっけ?」
そして、チャウは三回羽ばたくとその情報を忘れた。その間にガーベラは前に行く。
「あれ~ガーベラちゃんは前にいるのに、後ろから誰かの気配を感じるなー? えい!」
振り向くと誰もいない。
「あれー? じゃあ、えい!」
やっぱり誰もいない。
「──ん? えい!」
それでも、誰もいない。
「あれ~おかしいなー‥‥えい!?」
と、チャウは、フェイントをかけて振り向くと、つられて、後ろのゴーストも一緒に振り向いている。
「うん、やっぱり誰もいないぁ~」
「なにやっとんねん!」
ガーベラの切れのいいツッコミが、チャウのレバーに入る。
えぐりこむように打つべし! 女神教の明日のための教えだ(ウソ)。
「で、出ちゃうよ!」
抗議するチャウ。『痛い』ではなく『出る』なのが彼女の由縁だ。
「かれーさんこまっとるやんけ!」
その言葉に深々とうなずく家令。
「お客さま、いらっしゃいませ、もうすぐ主人が帰ってまいります」
「同じじゃないかな~」
チャウの抗議に腕を組むガーベラ。
「せやな」
口に出してはそれだけだった。
◆四=ヒミツ下さい
「では、いただきます」
食堂らしき場所でコニーの持ち込んだ保存食を前に祈りをささげるハウンド一同。
「この館‥‥の主にも感謝を」
唱和する。
少々遅れた夕餉だが、一同は食欲が進む。
「皆様方、すみません‥‥イチから寝具を作る腕前はありません、このラライヤ──修行不足です」
ラライヤが、心底申し訳なさそうな声を出す。
「ハラへった!」
自分の分を軽く食いだめしたチャウが、ナインから少し分けてもらう。
「施しも神職の役目」
‥‥という事らしい。
「しかし、きちんと手入れしていれば、さぞかし立派な屋敷でしたが」
コニーが往時──ひょっとしたらオーディア島が、女神に定められた聖域として禁足地になる前かもしれない、それは不分明だ──に思いを馳せる。
「まあ、ふるいわな。いまはおっきーぼろやや」
ガーベラが完全に身もフタものない事を言う。
とはいえ、各部屋は屋根が崩落している。加えて、戦力の分断も怖い。
コニーは恐縮したものの、一同は玄関のあたりで、雑魚寝することにした。
◆五=終わらない夜はなく、始まらぬ朝もない
(農耕士の意地にかけて、この四人の女性は‥‥守り抜きます)
雨音だけを夜の友として、コニーは神経を張り詰める。
──!
コニーの感覚に何かが触れた。
‥‥家令だ。
「お客さま、いらっしゃいませ、もうすぐ主人が帰ってまいります」
「家令さん、あなたはどれだけの間、主人を待っているのですか?」
一瞬、哀切を交えてしまうコニー。
「でも、いつか帰ってくると、いいです」
コニーの視界の中で家令が笑ったような気がした。
本当に微かにではある。
コニーが緊張の中で時間が経つごとに、薄皮を剥がすがごとく、徐々に雨脚は収まっていく。
だから、明日はきっと晴れるだろう。
そんな確信を持ってしまうコニー。
そして、それは当たっていた。
──とはいえ、ゴーストの家令は生死を超えた忠誠で、主人を待つに違いない。
だから、ハウンドの挑戦は‥‥つづく!
6
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参加者
| | a.うーん、家令さんと話が出来るなら、会話して見ましょうか
| | コニー・バイン(da0737) ♂ 23歳 人間 マイスター 月 | | |
| | z.フルーツタルトとリンゴ酒を用意しております♪お口に合うでしょうか?
| | ラライヤ・ナンシー(da1003) ♀ 22歳 人間 カムイ 風 | | |
| | z.無礼な態度を取らねば、ゴーストも寛大でしょう…ところでチャウは何処に?
| | ナイン・ルーラ(da1856) ♀ 29歳 人間 ヴォルセルク 水 | | |
一晩いっしょに
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お客さま、いらっしゃいませ、もうすぐ主人が帰ってまいります。(魔の森近くの廃屋にて)
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