パートナーのために

担当成瀬丈二
出発2020/07/26
種類ショート 冒険(討伐)
結果成功
MVPジャアファル・ジルフェ(da1631)
準MVPリザ・アレクサンデル(da0911)
ベドウィール・ブランウェン(da1124)

オープニング

◆風は魔の森に
 七月も終わりを迎えるオーディア島。
 その魔の森に『狼の泉』という遺跡がある。
 石畳の真ん中に清水を湛えた泉があるだけの簡素なものだ。
 詳細らしいことは分からず、強いて言えばフロストウルフは好むのかも『しれない』レベルの推測が
されている。

登場キャラ

リプレイ

◆FirstBlood!
 ──巨大なミミズごとき恐れるに足らん。
 不退転の覚悟を以て、トサ・カイザーは魔剣ダーインスレイヴを抜き放つ。
 二メートルはありそうな巨剣である。
「我が魔剣の真の力、今こそ見せてやろうではないか!」
 トサは、魔剣が生き血をすすれば、その荒ぶる力を御せる──その確信とともに、上腕部に刃を滑らせる。
「むふぅ!」
(生き血を吸わせぬ限り所有者の邪魔をするの呪われた魔剣だが、この世にあるのならば使いこなすしてやるのが魔剣への供養というもの、相手がミミズなら血ではなく、嫌な体液が流れている気もする)
 ここは自身の腕に軽く傷をつけて刃に血を吸わせてやると、トサは眉をひそめる。
(結構いたいのであるが、そこはガマンの卍固め!)
 メタな言い方をすれば、ファンブル率は平常になったが、その代わり傷を負ったことで、成功率は八割だ。
「しゃあないな」
 言って、ガーベラがポーチから容器を出して、トサの傷口に回復薬を注ぐ。
「ふふふ、元気余って可愛さ百倍である! いくぞ『アール』! 私は誰の挑戦でもうけーる!」
 愛竜であるフィールドドラゴンの『アール』にまたがるトサ。
 そのころ、レティシアは己の相棒にムチにルミナパワーと、ミタマギリを付与させていた。
 これは、リザ・アレクサンデルの打ち出したドクトリンに従ってのことである。
「飲込や腐敗毒の返り血があるから、近接戦闘しにくい相手だね──僕はローレライで距離とりつつ戦うけど‥‥ウィールも無理はしないで、ローレライとウィールの武器にルミナパワー付与するよ。紫ミミズの弱点の帯のようになっているところは返り血無いみたいだから、まずミタマギリつきローレライで気絶させて、弱点部分に集中攻撃すればいいんじゃないかな? 一度魔力を削り切れば、ミタマギリがある限りは再度気絶させるのも楽なはず」

◆Ambush!
 その提案に、ベドウィール・ブランウェンは大きな花丸と、更なる補足をする。
「クーホペアさんやレティシアさんもその案で良さそうですね? さすがにクーホペアさんがどんな魔法を使ったまでは分かりませんが」
 言い置くと、言葉をべドウィールはつなげる。
「──準備の時間と相手の動きがどう影響するかで最初の被害が変わりそうですね‥‥それと、姿を現した一体だけとは限りません、足元の振動が気になります。もう一体くらい足元に隠れているかもしれません」
(あれが二匹か)
 という胸中はどうあれ、『分かった』とだけ答える、ジャアファル・ジルフェ
 彼の培った知識でも、ダークラージウォームは二匹いない訳ではない、という事を裏づける。
(‥‥迷ったが、泉が気になるしな。狼の泉からは引き離したいな)
 灰を思わせるガーゴイルを具象化し、幾つかの魔法を付与する。トラップライトの魔法だ。誘引する対象は、ダークラージウォーム。
(かなり頭が悪いから、効きそうだ)
「ゆけ!」
 ダークラージウォームはトサの手近に引き寄せる。
「そこらへんに──!?」
 二匹の鳴き声が唱和した。
 ジャアファルのグリーヴァドッグと、レティシアのクーホペアだ。
 瞬間に足元が大きく揺れ、ジャアファルの足元が揺れ、ダークラージウォームが姿を現す。二匹いると読んでいなければ、不意打ちを受けていたかもしれない。
 慌てずにサンダーマンモスの牙を逆手で引き抜く、ジャアファル。
「BOWWOWWOW!」
 クーホペアは警戒したが、それ以上にリアクションまでは出来ない、飲み込まれてしまうが、懸命に牙を立てる。
 そこに水の流れが押し寄せる、リザのブレードofローレライだ。
「落ちろミミズ! あ──?」
 内側からのクーホペアの攻撃がダークラージウォームの魔力を削りきったである。なので気絶した。
 意識を失い倒れ込む、ダークラージウォーム。

◆Trumple
「‥‥もう一匹を処理しましょう。トサさんにも魔法使っておけばよかった」
 べドウィールは現状を処理するために、口を動かす。
 不幸なことに今回はカムイはいない。偶然だがそういう巡り合わせだ。
「ははは! 私が斬りとっている最中だ。『アール』! 少し落ち着かんか!」
 トサ、まさしく大暴れ‥‥というか、『アール』が前のめり過ぎなのだ。もはや暴走状態。乗り手とはいいコンビかも‥‥いえないか、やっぱり。
「リザ、あっちも気絶させろ。俺はクーホペアを救い出す‥‥ガーベラ、回復薬は?」
 ジャアファルは妖精の謎袋に手を突っ込むと、何やら丸薬が出てきた。
 この謎袋は現状を解決するアイテムを出してくれるらしい。
 原色のコーティングがされ、ポップさすら感じてしまう。
 しかし、かすかなニオイからべドウィールは感覚をマヒさせる薬物ではないかと看破する。
 料理に応用でもするのか、彼は植物学にも詳しいのだ。

 数分後‥‥ダークラージウォームは処理された。

◆LastPetner
 ジャアファルが死体の頭部を大きく斬り裂いて(そこにクーホペアはとどまっていたのだ)、取り出されたクーホペアは後ろ脚を大きく損なっていた。
 もう、走れず、戦えもしないだろう。
 ガーベラが回復薬を与えたが根治にはならない。激痛で体力も削がれており、息も絶え絶えであった。
「ジャアファルさんの薬を」
 べドウィールは、ジャアファルがなぜそんなものを持っていたのか、後で問いただそうと思うが、若者に丸薬の使用を促し、従ってもらった。
 数秒後、クーホペアは落ち着く。
 遠吠えが聞こえ、そちらに一同は視線を向ける。
『狼の泉』の脇にいるのは雪のように白い狼だ‥‥いや、その五本の尾は、まさにフロストウルフだと、ほとんどの者が確信できた。
 落ち着いた足取りで、クーホペアのもとに近寄った。
 傷跡を舐めながら、意識を集中する。足は欠けたままだが、傷跡は塞がる。
 欠損した肉体まではキュアティブでは戻らない。少なくともそれをフロストウルフは望んでいないのだ。
「‥‥無作法なことを言いますと、単にキュアティブみたいな力を使ったのでしょうね──今の我らにカムイが‥‥あ、いましたか」
 べドウィールの言葉に『せやな』とガーベラ。彼女はカムイとしての才能は微妙だ。
 フロストウルフは臣従を誓う騎士のように、レティシアの膝に頭をすりつける。
「辛い別れは二度で十分、三度目は‥‥ない」
 レティシアのパートナーは去年の夏に猛暑に倒れたウルフたち。そして目前で再起不能となったクーホペア──続く三度の巡り合わせはフロストウルフであった。
 その決意の言葉だ。

「命をとりとめたかな?」
 リザはそう答えた。
「今度は一生パートナーになるのかな? まるで結婚式だね」
「さてレティシアさんはおヨメさんになれますでしょうか」
 微笑んでべドウィール。
「というか、そもそもあいつ、オスかメスか?」
 ジャアファルが疑問を述べる。
「どちらでもいいのだ! レティシア、安心するのである。ひとりでは無理でも多少はこのメンツが手助けする」
 言い切るトサ。
「じゃあ早速──依頼料安くして」
 レティシアは淡々と答え、クーホペアも軽く吠えた。フロストウルフは無言、無口なタチらしい。
『狼の泉』を後にし、魔の森を出て、ローレックの街へと帰る。

 ──こうして、クーホペアは引退し、新たにフロストウルフがレティシアのパートナーとなった。
 フロストウルフ──名前は、まだ‥‥ない。
 ──しかし、ハウンドの日々は‥‥つづく!



 8

参加者

c.弱点の帯状部は返り血無いみたいだから、気絶させて、そこ集中攻撃しようか
リザ・アレクサンデル(da0911)
♂ 23歳 人間 ヴォルセルク 水
c.ふむ…近接にリスクの高い相手のようですね…?ミタマギリは効きそうです。
ベドウィール・ブランウェン(da1124)
♂ 27歳 人間 ヴォルセルク 月
c.…迷ったが、泉が気になるしな。狼の泉からは引き離したいな。
ジャアファル・ジルフェ(da1631)
♂ 19歳 人間 マイスター 陽
b.ふ、私は如何なる怪物の襲撃にも屈しない!!
トサ・カイザー(da1982)
♂ 26歳 人間 ヴォルセルク 陽
 bやで。一応、かんそくよーいんや。
ガーベラ(dz0030)
♀ ?歳 シフール カムイ 月


魔の森で巨大紫蚯蚓と──

出会ってしまった‥‥コモンのエゴだが、狩ってやる!