オープニング
◆その遺跡には──
魔の森に眠るその遺跡と思われる建造物は、もはや誰かの手が入ったとみられていた。
堅固な石造りだが、単純に扉が大きく開き、何者かが出入りした痕跡が残っているためだ。
中に入ると何者かが火を使った痕跡がある。だが、ここ半年のものではない。
住人は魔の森の生存競争で勝利者にはなれなかった‥‥魔の森の調査に訪れたハウンドたちはそう結論づける。
「しかし、へんないきものおるかもしれんで?」
言いながらシフールのガーベラが物見遊山で遺跡の中を飛び回り‥‥外部に繋がる窓と生物の痕跡を見つけた、有体に言えばフンであった。
「みんな、なにかおりそうやでー!」
迂闊なガーベラの声に『それら』が反応する。
「キーッ!」
ガーベラが声の方を見ると、巨大な骸骨が見えた。
正確にはそう見える模様だ。
そして、羽ばたく。全長は一メートルを越す巨大なコウモリ──数匹に見えたが、今飛んでいるのは十や二十ではない──が乱舞する。
「な! なんや、これはまものやで!」
ガーベラが仲間と合流すべく、遺跡の中を飛ぶ! しかし、コウモリの群れも追いかけてくる。
見知らぬ遺跡で、見知らぬ怪物に襲われ、ガーベラはドキドキするほど大ピンチであった。
ガーベラは仲間と合流できるだろうか?
だから、ハウンドの戦いが──始まる。
選択肢
マスターより
成瀬です。今回は大コウモリとの戦いです。数はいるらしいので、的には不足しません。
そろそろ、夜ですので色々とトラブルが発生するかもしれません。
なお、このシナリオに参加する方は、自らのトラウマを書いておくと色々といいかもしれませんね、うん。
では、みなさんが遠い夜明けを迎えられますように。
登場キャラ
◆光を与えて──
魔の森の遺跡の中、闇に包まれたその建物を懸命にライトの魔法で照らす女傑ひとり。
それは、色は白いが腹は黒い、ライトエルフの
カモミール・セリーザだ。
「うしろですわ~」
「あんがとさん」
そういうのは、シフールの
ガーベラ、カモミールの後ろに回り込む。
「別に闇の住人とかでは‥‥なさげな」
カモミールが二十数体いるだろうダークラージバットの群れを見て絶望に駆られる。
その絶望を切り開こうとした、防人たちの歌を唄おうではないか?
銀の光条が時折煌めく、それは儚き抵抗。
しかし、不幸なことに相手は銀の武器でなくても傷つく。
ハウンドは備えがあったが、相性が悪かった。
そのため、ダークラージバットのもたらす幻覚性の毒──それがハウンドたちを侵食していく。
浸食により紡がれるのは、みっつの夢‥‥いや悪夢。
◆こんな夢を見た、
アザリー・アリアンロッド
九歳のころだった。アザリーが力強い両親の庇護を失ったのは。
これは彼女がアリアンロッドの姓を得る前の物語。
ともあれ、彼女を包んでいた温かさは失われ、オーディア島ではない、何処かの地をさまよう。
「ととさま、かかさま、どこにいるの?」
彷徨う少女の上に、無慈悲に雨が降り募る。
それがアザリーのむき出しの手足から容赦なく、熱を奪っていく。
夜の中、光が見えた。
それは温もりを伴っており、アザリーにとっては、まぶしくすら──救いにも思えた。
(そちらに行ってはダメよ──やめて!)
幼いアザリーを客観的に見てる彼女がそれから目を背けさせようとする──無駄な努力に終わる。
そこにあったのは焚火だ。
「おやおや──」
自分を見下ろすオトナ、自分の優しかった父母とまるで異種族にすら思える存在だ。
「暖まるなら──」
何を言っているか分からない。だが、いけないことを言われているのだけは理解できた、したくなかった。
きびすを返して闇の中に走り出そうとするアザリー。
だが、容赦なく肩を掴まれ引き倒される。
「寒いんだろ──」
あたためてやる、だろうか耳が拒否する。
布が斬り裂かれ、純白の肌があらわにされ、ごわつく指で弄られる。
無造作な男たちは、彼女が怯えるのに嗜虐心を刺激され、より幼く敏感な部分へと、手が伸ばすのだった。
しかし、客観的に見ている彼女は知っている。この後でこの悪漢たちは生焼けにされることを。
愛しい人と出会い、新たな姓を得る事。
それだけを信じるしかない、救いは未来にしかないのだから‥‥。
◆こんな夢を見た、
セイ・ローガン
それはセイにとってハウンドになる前の事。
屈辱的かつ恐怖に満ちた体験。
そして、まだオーディア島に、ダークドワーフが闊歩していた時代だ。
「ほう、髭があるぜこの女」
山賊に捕らえられ、仲間ともども転がされている。
そばには焚火が赤々と燃えていた。
山賊たちがセイを見て、論評を始めた。
「そりゃドワーフだからな、いや‥‥男かもしれないな」
セイはへらず口を叩く。
「こんな美人を捕まえて、男か女かも分かんないのかい? 大した目利きじゃないか、あんたら女にもてないだろう?」
笑う山賊。
「美人だあ? 髭が生えている女なんていないぜ」
「おいおい、オレたちで女にしてやろうぜ」
「髭の生えた女なんて‥‥いや、剃れば──見れる顔になるかもな?」
そだが弾けた。
「やめろ、後悔するぞ‥‥あたしは屈しない」
セイが怒気とともに威圧する。
情け容赦のない平手打ちが浴びせられた。
「それ以上はするな、あんたらののど笛噛み切ってやろうじゃないか」
上半身と下半身を押さえつけられ、顔面に鈍く輝く、鋼の刃が近づく。
セイはその刃をにらみ続けていた。それだけが出来ることであるかのように──。
乱暴に刃が振るわれ、彼女の顔の下半分が露になった。
彼女の顔にそられた『女の命』が振り巻かれる。
「‥‥」
セイは目を見開いたまま失神していた。
次に瞬きした時、彼女の顔に生える髭。
──‥‥山賊もいた。
そして、悪夢は繰り返される。
◆こんな夢を見た、
ビア・ダール
(これはいけませんね)
ビアが自身の仲間とともに歩いていた。
いつ頃かは思い出したくない。
だが、言える事はひとつ。
(私はこの続きを見たくない、見てはいけないので!)
つい思いがあらぶってしまうビア。
待っているのは破滅。
ただひとり──ビア自身をのぞいた、仲間たちが破滅に向かって歩いて行った時のことだ。
「ほう、これはアマテラスを使えるようになれば、使い道もありますな」
無知だった自分が何も知らず、地のカムイ魔法『パンドラ』によって、何者かを封印したクリスタルを手にして微笑んでいる。
この愚かだった自分をこの手で殺したい。
そう願うことすらあった。
家族同然、いや家族以上の仲間たちが微笑んでくれるなら、それ以上は望まない。
うかつにもクリスタルを落とし、何者かが出てきた。
忘却オーラのせいか、己のココロがフタをしているのか、何も思い出せない──純粋な悪意としか判然としない何者。
自らが銀の短剣を振るい逃走する。誰の遺髪も回収できなかった。
(だが、私は仲間のことを詫びたいのではない。『あなたは悪くない』と言って欲しかっただけなのです)
ビアが自分自身を弁護するように、呟く──いや、これは弁護ですらない、自身への弾劾。
一番堪える事は、自分が何故生き残ったのか、生き残ってしまったのかが分からないこと。
生き残ってしまった。それゆえ、ビアは慟哭する。
(語り手たる吟遊詩人がハッピーエンドを望んで何が悪いのです。大団円? ご都合主義? 結構。女神が救ってくれるなら、私は何度でも過去の自分を破壊します)
慟哭は終わらない。そして、悪夢は繰り返される。
◆急ぎ歩きの迷い子
「無事だったですか~」
カモミールがプリズマティックで作り出した聖域に一同を引き込み、時間稼ぎをした。
幻覚の毒にやられた者ははたから見ると、いきなり泣き出したり、怒ったりしたように見える。
数匹入ったはずのダークラージバットは『消滅』した。どうやら、魔法で作った分身が本体が存在しないので、消えたらしい。
アザリーの持っていた回復薬で何とか体力を取り戻したが、本当にただの時間稼ぎだった。
「みっともないところを見せたわね、反撃しましょう」
アザリーが宣言する。
「ハッピーエンドへ進撃ですな」
ビアの言葉は続いた。
「むしろ転進しましょう──分身を見破る術はないのですから」
「賛成。しんがりは任せな」
セイの言葉に一同はうなずく。
「では、行進曲(マーチ)ですよ~」
カモミールが音頭を取り、ハウンドは進撃する。そう『魔の森』から勝利へと。
「ぜんそくぜんしんや!」
ガーベラよ、それは多分、行進曲(マーチ)ではない‥‥四人は心の中でそうツッコんだ。
あまり短くはなく、困難な道のりだったが、ハウンドは進む。
ローレックの街へ! 場末の酒場へ!!
そして、ハウンドたちはKillerQueenで酒を飲みながら、今回の事件に関する愚痴をこぼすのだろう。
あまりヒロイックではないストーリーを。
それはあなただけのストーリーではないかもしれない。
たまにはそんな時もある。
エッダにその物語は綴られるのだ。
だから──ハウンドの物語は‥‥づづく!
6
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参加者
| | a.胸が疼いてしまいそうね……。
| | アザリー・アリアンロッド(da0594) ♀ 29歳 人間 ヴォルセルク 月 | | |
| | c.は~い、照明は引き受けるわよ~
| | カモミール・セリーザ(da0676) ♀ 31歳 ライトエルフ パドマ 陽 | | |
| | a.こりゃ弓矢で撃ち落としていくしかないかね
| | セイ・ローガン(da1834) ♀ 41歳 ドワーフ ヴォルセルク 火 | | |
| | b.これはいけませんね…群れが諦めるまで撃ち続けて逃げるしか無いですかな?
| | ビア・ダール(da1972) ♂ 53歳 ドワーフ カムイ 陽 | | |
| うわーなんちゅーかずや、みんなうってうってうちまくらんか! | | |
ひゃーこうもりや!
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魔の森の遺跡でハウンドたちは見たくなかった過去と対峙する!? 悪夢の一晩が待つ──。
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