オープニング
◆サンドラにて
「ひょっとして劣勢でござるか?」
「そのようやな」
キティドラゴンのテレモートとガーベラの分析通り、ハウンドは苦戦していた。
そもそもは、サンドラ地方の湖での事件が始まり。
湖は近くの集落にとっては大切な漁場である。
そこに河を伝って凶暴な魔物が住み着き、何人もの漁師を殺害したのだ。
おかげで漁どころの話ではない。かといって漁ができなければ集落に未来はない‥‥そこで集落の長がハウンドギルドに依頼。
ハウンドたちは魔物討伐に来たのだ。
◆闇の種子
とはいえ、肝心の魔物は、水流や藻のある危険な水域に引き込み、地の利、水の弁を最大限に活用する。
それだけではなく、岸辺で油断しているところを水の剣──ブレードofローレライとも見える──で中距離から斬りつけてきたりと、なんともいやらしい立ち回りを見せるのだ。
決定打を決め切れず、ハウンドは一日を消耗したまま終える。
戦いを明日に持ち越すと決めたハウンドたちは、水場から離れた安全な場所でキャンプを張り、魔法による治療などで体力の消耗を押さえ、魔力の消耗は熟睡することでゼロの状態に持ち込んだ。
その上で、今日はどうするか‥‥という頭をひねるとき、なんと上空に来訪者があった。
◆空の来訪者
東の空から太陽を背に背負うように、巨大な白頭鷲、いや鱗をつけた鳥のような存在が飛来。
湖上空で旋回を始めた──ドラゴンの一種だろうか──ハウンドたちは警戒を強める。
「むう、きっかいやな? てきやないとええけど」
とは、ガーベラの弁である。
ガーベラの願いが通じたのか、そのドラゴンは、魔物のいそうな所に向けて、陽光を集束して浴びせかけたり、強烈なはばたきで風を起こして脅かし、徐々に狭い入り江に追い込んでいった。
魔物と戦うというより、むしろハウンドのために戦いのおぜん立てをしてくれたようにさえ見えた。
過程はどうあれ、ともかく、水深が浅く逃げ辛い場所に魔物はいる。
◆ハウンドの主義
「チャンスは最大限に活かすでござる!」
集落から借りたボートに投げ槍を構えたテレモートは乗り込んだ。
「せやな、ちゃんすのめがみはまえがみしかないのや!」
ガーベラは彼の背中の上に座り込んだ。
他のハウンドたちも奇禍を機会に変えるべく行動を始めた。
──ハウンドの戦いが始まる。
選択肢
マスターより
成瀬です。ドラゴンっぽい何かですね──うん。
敵か味方かカウボーイか‥‥謎の存在です。
魔物に関しては‥‥ただの縄張り意識か、知性ゆえか‥‥。
知りたければサンドラへどうぞ、お願いハウンドの皆、戦って!
という事で鉄火場ひとつ準備しております。
※RealTimeEvent【HoundHistory03】ようこそ竜戦士 連動シナリオ
本シナリオは、世界の歴史を動かす可能性を秘めた企画「リアルタイムイベント」に連動した特別シナリオです。
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登場キャラ
◆湖へ行こうぜ!──承前
「泳ぐ方は水のヴォルセルク魔法使うなら、レイクオルカかダークレイクオルカかなあ‥‥」
水の剣‥‥ブレードofローレライを手にした、
リザ・アレクサンデルは的確な分析をする。
湖の浅いところに追い込まれた影には、額に第三の目が見えた。
「あれは──ダークレイクオルカ?」
ダークすなわち、ダークサイドという事だ。一同に緊張が走る。
「ダークレイクオルカなら、推測通り水のヴォルセルク魔法を使うでしょう‥‥いえ、リザの方が、高度に魔法を使えることは間違いないですが」
冷静な、
ベドウィール・ブランウェンの言葉を首肯するリザ。
「ライフセービングで回復するかもしれないから油断禁物だよ」
リザの言葉に相槌を打つべドウィール。
「面倒ですね」
リザも気を取り直す。
「空にいる鷲みたいなのってイーグルドラゴンかな? 確か、DGSにあったよね、陽のスモールドラゴンだっけ?」
こちらはリザにも、推測できる知識がない。
それはべドウィールも同じ。
「ローレライは命中率あまり良くないけど避け難いんだよね。射程があるから後ろにも飛ばせるしさ。飛び道具持ってる人はもっと距離とると狙われ難いかも?」
ローレライの達人であるリザの戦術指南だ。
「とにかく今はこのチャンスをつかみましょう‥‥回復はお任せください」
頭飾りを身に着けた以外は水着姿の、
ラライヤ・ナンシーが真摯な目を一同に向ける。
「イーグルドラゴンが、なぜ私たちに味方をしてくれたのでしょう?」
それは謎だが、ラライヤの瞳にあるのは勝利への固い決意。
水場で侍女服は不利と知り、彼女のレーゾンデートルであるそれを脱ぎ、水着を着るほどだ。
「‥‥ですが、今はこのチャンスをつかみましょう! 水深が浅く逃げづらい場所‥‥とはいえ相手有利な環境であるのは変わりません、皆さま十分に注意して下さいませ」
「後衛に攻撃が飛ばないよう、死なない程度に注意を引きつつ戦いたい所ですが‥‥近接はちょっと厳しそうですね」
言ってボートに乗り込むべドウィール。
ボートを押すラライヤは、侍女道の先達にして、ボートに乗り込み前衛として戦う、
エウロ・シェーアに礼をする。
「見ての通り、相手のテリトリーに入って交戦しますのでフォローを頼みます」
エウロが手にする得物は海王槍、銘はポセイドン。
「エウロ様よろしくお願いします」
とラライヤ。
「ラライヤ、わたくしもあなたも侍女かもしれませんが、去年よりハウンドを始めた同輩です。先輩も後輩もありません」
ガードとルミナパワーを付与したエウロはまっすぐにダークレイクオルカを見据える。
「みな、我らは先鋒にして、最終防衛線ですので──ここより後に行かせはしませんわ」
ボートは戦場へ
「漁場を荒らす外道が居るなら討って獲物を守るのも猟師の使命だな」
リザの提案に従い、距離を取りショートボウを構える、
ウル・ギーフ。彼の言葉に、
シェール・エクレールが問う。
「ウルさんって、狩人ですよね?」
「地上の獲物のみ狩っていても、捕りつくすだけ。必要なら水場の獲物も狩る」
ウルはシェールの言葉に応えた。
(イロイロ考えているのですね)
◆湖は血に染まり──次章
水上にウォーターランニングの魔法で立つ、リザがダークレイクオルカと互いにブレードofローレライから放たれる水を撃ち合う。
この勝負、リザが優勢に見えるが、ダークレイクオルカも距離を詰めてきた。
べドウィールは相手が水中にいるが、当たれば魔力を削れると踏み、ダーツにミタマギリの魔法を付与する。
「相手の魔力が知っている通りなら──気絶するはず」
彼の知識から、今朝使った魔法を逆算する。相手も魔法を使えば、魔力は消耗する──カードの勝負のような、山札が削れていく勝負だ。
ダーツを投てき、しかし水中にあるため、まともにヒットしない。
しかし、ウルとシェールの後方からの射撃が浴びせられる。
特にシェールのオデュッセウスボウの一撃は鋭く、黒っぽい血の華を湖に咲かせた。
「ならば、お散りを」
エウロがままよと、水中に海王槍を突き込む。ルミナパワーを付与したそれは深く突き刺さった。
その槍を強引に抜き取るエウロ、ダークレイクオルカの肉が更にえぐれる。
しかし、リザのわき腹をブレードofローレライが斬り裂く。かなり深い、ダークレイクオルカの執念の一撃だろう。
「あ‥‥あれ? こういうのはウィールの役目なのに‥‥」
ルミナパワーも付与されていたそれは、苦痛を伴って一気にリザの体力を削る。
「お許しを‥‥」
ラライヤがキュアティブの魔法のため、リザの方に泳ぐ。
その時、空中で咆哮が響いた。上空のイーグルドラゴンが何か叫ぶと、日光が収束し一撃となって、ダークレイクオルカを射た。
大けがとは行かないまでも、相手の動きをけん制するには十分。
「当たれ!」
ウルがマルチシュートで立て続けに矢を放つ。
水の抵抗に打ち勝ち、一撃が第三の目に突き立った。
(WOOOHH──!)
無言で絶叫しながら、ダークレイクオルカが逃げようとする。
──もっとも、傷のおかげで十全に動けないのだが。
「倍返しだよ!」
そこにリザが気合だけで放った、ブレードofローレライによる一撃が、ダークレイクオルカのヒレを斬り裂く。
臓物をまき散らしながら、ダークレイクオルカは気絶した。
「逃がしません」
エウロの一撃が再び、ダークレイクオルカを突きさす。
湖の色がようやく赤味を帯びてきた。
ダークレイクオルカはようやく死亡する。
「や‥‥やった?」
リザが消えゆく意識の中で、そうつぶやいた。
「今、癒しますお待ちください」
ラライヤがリザにキュアティブを成就する。
「女神さま、どうか我が仲間の傷をお癒し下さい」
その願いが通じたのか、リザの傷は塞がった。
「リザ大丈夫ですか!」
「遅いよウィール!」
まあ、べドウィールとリザのじゃれ合いが始まった。
これが出来るなら、多分大丈夫だろう。
その頃にはドラゴンはもはやいなかった。東の空、もと居た方に飛び去って行ったのだ。
◆沈黙の食卓──終章
「手助け感謝する。我らの戦いぶりは眼に叶ったかな?」
ウルは見えなくなった影に向かいそう告げた。
「血肉はありがたくいただきます。無駄にはいたしません。」
とは、エウロの弁だ。
「調理道具が無いので、村まで戻りましょう」
そこから、ダークレイクオルカを引き上げ、解体などでハウンドも村人も一体となって勤しんだ。
村の女衆とエウロ、べドウィールがダークレイクオルカを調理する。
しかし、エウロと、ラライヤにべドウィールの腕前を以てしても──食えなくはない、というレベルが限度だった。
「十分冷えたはずですが」
ウルがそうつぶやく。狩った獲物は『血』もうま味になる。ただし、狩猟の経験則として、獲物を狩った後急ぎ冷やす必要がある。
その冷却には水場などが用いられるが、ウルの知識では、あの湖はその条件を十分に有している。
「それでもマズイのですから、もともと食用には適していないのでしょう」
べドウィールがそう締めた。
「まあ、ボリューム重視かな?」
とシェール。成長期男子か!
「でも、これだけムチャをしたのですから、全部いただきましょう」
この逆境に、ラライヤは顔を輝かせる。
解体した残りの肉は、村人が保存食にするということになった。
こうして任務を全うしたハウンドはオーディアへと帰還する。
だから、ハウンドの戦いは──つづく!
8
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参加者
| | b.泳ぐ方は水W魔法使うならレイクオルカかダークレイクオルカかなあ…
| | リザ・アレクサンデル(da0911) ♂ 23歳 人間 ヴォルセルク 水 | | |
| | c.とにかく今はこのチャンスをつかみましょう。…回復はお任せください。
| | ラライヤ・ナンシー(da1003) ♀ 22歳 人間 カムイ 風 | | |
| | z.漁場を荒らす外道が居るなら討って獲物を守るのも猟師の使命だな。
| | ウル・ギーフ(da1051) ♂ 27歳 ライトエルフ カムイ 火 | | |
| | a.回避力を高めて前へ…と思いましたが、ダーツになるかもしれません。
| | ベドウィール・ブランウェン(da1124) ♂ 27歳 人間 ヴォルセルク 月 | | |
| | a.相手のテリトリーに入って交戦しますのでフォローを頼みます。
| | エウロ・シェーア(da1568) ♀ 38歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 火 | | |
| | b.後衛にて狙い撃ちにします。
| | シェール・エクレール(da1900) ♀ 19歳 人間 カムイ 風 | | |
太陽の使者?
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陽の女神よ、ハウンドたちを助けたまえ──え、ドラゴンですか? マジ!(長老談)
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