オープニング
◆キティドラゴンへの招待状もしくは挑戦状
ローレック城からギルドに、何やら長々とした『要請』が届いたそうだ。
キティドラゴンのテレモートはそんな話を聞く、ギルドの訓練場で軽く汗を流したのちの事だ。
「別にキティドラゴンのハウンドとしての資質を云々しない。しかし、貴族街のお偉方の中には、邪鬼の類ではないか? 街を荒らすのではないか、そう懸念を抱くものも多い」
「うーむ、偏見でござらんか?」
テレモートはそう言うが、聞いた相手は本題はこれからだと、彼の言葉を遮る。
「そして、それが貴族たちの本国に噂として広まる。あるいは、ローレックの街を去られたりすると、ギルドの大事なスポンサーを失うことになる」
(長いでござるな)
それでも、耳を傾けるテレモート。
「そして、それはギルドにとっては痛手になりうる。というわけでローレック城の広間で貴族を招いて舞踏会をするから、キティドラゴンが紳士や淑女としてふるまえるところを見せてくれ、ドレス代は出すから」
なお、テレモートの隣にはシフールのガーベラがいたが、途中で聞くのに疲れたのか眠ってしまったようだ。
テレモートはふむふむとうなずく。
この話を聞いた幾人かのキティドラゴンが集まり、古参からも幾人かフォロー役も名乗り出た。
数日間、舞踏大会に向けての特訓に励む。
ダンスとマナー、そして──紳士たれ淑女てれ。
この四つはキティドラゴンの血肉となる。
◆武闘会=舞踏会?
「うむうむ、城からの頼みならやるしかないでござろう。なにより、ギルドの一員として貴族にアピールできるなら、今後の依頼で顔を繋ぐことができよう。得でござるな」
問題は‥‥キティドラゴンに、紳士淑女役が、どこまで務まるんかな? ということだ‥‥!
そして、テレモートは聞いて驚いた。
「なんと? 武具の類でダンスはならぬと!」
ガーベラもどさくさに紛れて参加していた。
「きてぃどらごんだけでは、しんぱいやから、ふぉろーやくや」
ガーベラは堂々とズボン姿で入場しようとしていた。
「え、ずぼんはあかんのか!?」
淑女ならスカートだろう。
◆キティドラゴンへの招待状
しかし、広間に通されたキティドラゴンと、そのサポーターたちは部屋の内装に、試験としての意図を感じた。
特にキティドラゴンにとっては、今朝まで学んでいたダンスの実習など軽く吹き飛ぶようなものだった。
そう、皿の上にはカブトムシの幼虫が、地属性の者の食欲を刺激。
いけすには小魚が泳ぎ、水属性の者を期待させる。
大皿の上には嗅ぐだけで鼻が痛くなりそうな、香辛料と脂ぎった肉が火属性の者を誘惑する。
簡単な囲いの中には締めて、羽を毟られたニワトリが風属性の者の興味を惹く。
中央の大皿の上には牛の丸焼きがどうどうと飾られている。もう、陽属性の者の忍耐と闘争準備万端。
最後に入り口付近には甘さと酸味を期待させる果実の山々が月属性の者にとって甘美な試練を行った。
奥では申し訳のように、楽団が単調なメロディーを奏でる。
はたして、舞踏会はキティドラゴンという主役を舞台に上げられるだろうか?
フォローするガーベラはふらふらとさまよう。
──だから、ハウンドの戦いが始まる。
選択肢
a.欲望に負けた | b.欲望に勝った |
c.サポートします | z.その他・未選択 |
マスターより
成瀬です。とりあえず、カブトムシ以外はどれでも食べたいです。ソイソースがあれば(笑)。
さて、このシナリオの主眼は、キティドラゴンがいかに食欲というダークサイドの誘惑を振り切り、ダンスホールという戦場で自己の有用性を誇示できるかです。
なお、成瀬はユーモラスなシナリオを書きたいと思っています‥‥ホントダヨ?
なお、地獄の特訓で得たダンスなどのスキルはこのシナリオのみです。真の血肉にはなりませんでした。
では、皆さま奮ってのご参加をお待ちしています。
※RealTimeEvent【HoundHistory03】ようこそ竜戦士 連動シナリオ
本シナリオは、世界の歴史を動かす可能性を秘めた企画「リアルタイムイベント」に連動した特別シナリオです。
参加することで【HH03】を冠したグランドシナリオに参加する権利を得ることができます。
登場キャラ
◆敬語と紳士
招かれたひとり、
グランド曰く。
「まあ、俺たちも突然現れたんだから警戒するのは当然だな──じゃなきゃ生き残れない」
彼にしても、自分たちが今のところ『異物』であるという認識はあるのだ。
「とはいえ、俺たちはこのローレックの街にも、人々にも危害を加えるつもりはない。仲間たちのためにも、それを示すために頑張るしかねーか」
前向きな発言であるが、胸を張って宣言。
「偉い人間に挨拶するのなら敬語を使わないといけないんだろうが、そんなもの俺は知らん」
時おり、視線はカブトムシの幼虫に流れるが、一歩も動かない。まさしく不動。
新人ハウンドの、
レティチェラ・サルトリオはイブニングドレスに身を包んでいる。
彼女は、グランドの言葉を聞くと一応たしなめる。
「今日は紳士淑女らしくやらなあかんよ?」
「俺の流儀の紳士だ」
グランドとレティチェラの紳士観は違うようだ。
◆ハラキリと飛び蹴り
「敬語を使わず、宴の席で恥を晒すとは! 腹を切ってお詫びするでござる!」
「やめろ、莫迦!」
奇妙なウィッグをつけた、
ブシラは鼻を刺激する香辛料と獣脂の暴力に耐えていたが、グランドの無礼に耐えきれず、グリーヴァブレードを抜き、奇妙な座り方をすると、服の前を開けようとする。
「拙者ら新参者の為に宴を開いてくれた恩、踊りと作法を指導して頂いた恩に報いる為、ひたすらに耐え抜く所存でござったが、この無礼は腹を切って詫びねばならぬでござる)
「拙者、キティドラゴンのブシラに候。今後、ハウンドの一員として、世のため人のために尽くす次第でござったが、今宵を最後に露と消えるでござる」
「あほんだらー!」
そんなブシラのテンプルに、
ガーベラの飛び蹴りが決まった。
「しんではなみはさかんやろー!」
「分かった敬語を使ってやるよ──たまには」
グランドが呆れたのに、ブシラはハラキリを止める──ハラキリ、謎めいた言葉。
◆カブトムシと霊薬
次の幕を開けたのは、
ラファロだった。
「幼虫は、あたしたちキティドラゴンは食べますけれども、他のみなさまはたべないでしょう?」
え? と笑おうとした、貴族たちの思考は止まる。精々、ガマンする光景を見たかったんだろう。
「あたしたちのため、よういしてくださったのね!」
純粋に喜びと感謝に遠くから見ていた彼らの動きは止まった。
「でもいただくのは、ダンスの後ですわ──その時は辛いものも食べたいですわね」
優雅に一礼するとラファロは、心からの笑みを浮かべる。
「ごしょうたい、かんしゃですわ! おれいはだいじですのよ!」
「一度始めたからには最後までやり通す‥‥ならこいつが最適じゃ、ンガゴッグ」
と、あらかじめフレイヤの霊薬を呑み干していた、
アルティアーロは、コネを繋いだダンサーたちをエスコートしつつ──。
(ふむ、ここまで堂々とすれば‥‥素直さとは財産じゃな)
と、自身も野菜をマナーにのっとって食べながら、老成した感のあるアルティアーロも、ラファロから若さを分けてもらったような、感を受ける。
彼の視線は、
グドラに向けられていた。
グドラは今にも魚にかじりつきそうだ。
◆サカナとパッションフルーツ
グドラは挨拶をしようと、頭をフル回転。
(おいらもハウンドの一員として恥ずかしい姿を見せらないんで、一生懸命に特訓をしてきたぜ‥‥ちゃんと礼儀作法も出来るし、ダンスも踊れるけど‥‥生簀の魚も気にかかる‥‥さ、魚を食べる、と──はっ!)
「キティドラゴンのグドラです。よろしくお願いします」
それだけ言うのが精いっぱいだった。
視線が生け簀の魚に向いてしまう。視線の次は顔が、顔の次は上半身が──。
(う、小魚が気になるから、なおさらに気もそぞろに‥‥)
アルティアーロはグドラの肩に黙って手を置く。
「ラファロも言ったのじゃ、食べるならダンスの後、じゃと」
「そ──そ」
それは分かっている、とグドラは言おうとしたが、彼のハートは爆発寸前!
「パートナーになってさしあげますわ」
ラファロが軽くグドラの尾を引っ張る。
失態の予感に、無言でブシラはグリーヴァブレードを抜刀しようとする。やはり、無言でレティチェラがその手を懸命に抑える。
貴族の視線が痛い。
見かねた、
ギベオンは自ら生け簀に手を突っ込み、つかんだ魚をグドラに渡す。
「これだって、キティドラゴンという種族で見るものではないですだよ。こういうのは個人を見るものっす、ニンゲンだってそうじゃないっす?」
一部の貴族はキティドラゴンを『武装したコドモ』と見ようとしたのではないか? と先入観があったのに気づく。
「できないヤツがいるからニンゲンはみんなできない、なんて言わない筈ですだよ。そういうわけでおらたちが誘惑に負けても、キティドラゴンみんなやり抜けないわけじゃないっす!」
グドラは魚をひと呑みする。そして、ギベオンは胸を張って手を伸ばす。
「はーたまらん香りっすねー。ダメっすよ勿体無いですだよ、こんな置き方じゃみずみずしさが飛んでしまうですだよ‥‥」
果実をかじるギベオン。しかし、作法自体にはのっとっている。これは誘惑に負けたのではない。レジストメンタルで精神面の影響などはない。
全てギベオンの自由意志だ。
「おっと、おらはギベオンっす。見ての通りのキティドラゴンッすよ」
「ごたごたいうな。踊ろう! その為に鍛えたんだから」
グランドが一歩進み出る。
「ところで、宴の後で、カブトムシの幼虫持って行っていいか? 小腹が──すいた」
アルティアーロは彼の首筋に手刀を叩き込みたくなった。
しかし、ここで暴力を振るえば、キティドラゴンは宴の場で暴力を振るうもの『も』いる、と見られるだろう。
「冷静に、冷静にじゃ」
◆恋唄と大団円
「今流れているのは、舞踏会に相応しい曲ではないのじゃ。流行には疎いが『オックス湖の恋唄』に変えてもらえぬか?」
アルティアーロのリクエストを受けた楽団からは、ゆるやかに流れるようなメロディーが流れ始めた。
ダンサーの手を取り、アルティアーロは舞踏会場の真ん中に文字通り躍り出る。
「レティチェラ殿、一曲どうでござるかな?」
テレモートがレティチェラに手を差し伸べる。
「喜んで」
「しっぽがじゃまそうですわ」
「うん‥‥苦手なんだ」
ラファロをリードしようとするグドラだったが、いささかシッポを持て余し気味。
「ほかのみなさまも、しっぽがじゃなまなのかしら」
言ったラファロはクスリと笑い、グドラは赤面した。
「次はおらっす!」
と、ギベオン。
グランドは無言で待つ。
「うむ、一曲いかがでござるかな」
ガーベラに声をかけたのは、ブシラだった。
「身の丈は合わぬでござるが、おとめを壁の花にしては、末代までの恥」
「よ、よう──わからんけどおどるで。あしをふんだらごめんやで。ところであたまのうえにのせているのはなにや?」
ブシラの頭上にあるグリーヴァウィッグ。それを指さしながらガーベラは問いかける。
「グリーヴァスピリッツでござる」
グリーヴァ‥‥謎めいた言葉。
舞踏会は成功で終わった。
その結果を受けてか、後にハウンドギルドでは、寄せられていたキティドラゴンへの不安がほとんど無くなったという。
──だから、キティドラゴンたちの奇妙な日常は‥‥つづく!
9
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参加者
| | a.やってやるやってやるやってやるぜ~ どんなに厳しいお預けも~♪
| | グドラ(da1923) ♂ ?歳 キティドラゴン ヴォルセルク 水 | | |
| | z.はーたまらんっすね…(結果不明)
| | ギベオン(da1938) ♂ ?歳 キティドラゴン パドマ 月 | | |
| | b.一度始めたからには最後までやり通す……ならこいつが最適じゃ(ゴクゴク)
| | アルティアーロ(da1939) ♀ ?歳 キティドラゴン パドマ 陽 | | |
| | b.ごしょうたい、かんしゃですわ! おれいはだいじですのよ!
| | ラファロ(da1940) ♀ ?歳 キティドラゴン ヴォルセルク 火 | | |
| | b.ここで失態を晒すは末代までの恥! 潔く腹を切ってお詫びをー!!
| | ブシラ(da1951) ♂ ?歳 キティドラゴン ヴォルセルク 火 | | |
| | c.舞踏会やて言うから、いろんな刺繍が見れると思たんやけどなぁ…
| | レティチェラ・サルトリオ(da1954) ♀ 19歳 ライトエルフ マイスター 陽 | | |
| | b.…食用に負けそうだが…我慢するしかねーか(ため息)
| | グランド(da1960) ♂ ?歳 キティドラゴン ヴォルセルク 地 | | |
舞えキティ
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キティドラゴンの紳士淑女としての適性に疑問? そんな奴らにはキミたちの紳士淑女ぶりを見せてやれ! 勝負の舞台は王城だ!
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