【HH03】森の竜狩り

担当北野旅人
出発2020/05/05
種類ショート 冒険(討伐)
結果成功
MVPリザ・アレクサンデル(da0911)
準MVPフェルス・ディアマント(da0629)
ソレイユ・ソルディアス(da0740)

オープニング

◆貴族サマの依頼ってやつは
 ギルドにとり、各地方の有力貴族からの依頼は、むげにできない。
 まず、報酬がいい。ハウンド活動にはカネがかかるのだ、金はいくらあってもいい。
 それに、権力者とコネを作っておけば、今後の活動がしやすい。
 とはいえ‥‥その依頼は、首をかしげたくなるようなものや、ムチャぶりに近いものも珍しくない。そんなわけでギルドでは「まぁた、おウーディアの貴族サマが無茶苦茶な依頼を‥‥」なんて陰口を叩く者も。


登場キャラ

リプレイ

◆昂ぶるハウンド
 キャリアリーの森、その深部。もともと陽の射さぬそこは、夜を迎えた今、本来であれば、漆黒の世界のはずだ。
 だがハウンドらには、たき火の心強い灯りが照らされていた。
 テントや寝袋も準備がなされ(が、多くは地面に寝ることになる)、保存食のほか、狩りに長けたハウンドらによるウサギや猪の肉が、こんがりとあぶられ、葉っぱの上に置かれていた。
「すでに森の中央付近だ。夜中に襲撃を受けないといいが」
 そう言うディオン・ガヴラスの手にある羊皮紙には、すでにかなりの地図が書き込まれていた。
「交代で眠ったほうがいいですね」
 シェール・エクレールはそう言いながらも、自分で仕留めたウサギをモリモリ食べていた。
「明日には遂に竜狩りか!」
 ハヤト・アステールが、肉のなくなった骨をたき火に投げると、
「ドラゴンとのバトル‥‥わくわくが止まらないな!」
 ベル・キシニアは太い枝をバキッとへし折り、それも火にくべた。
「茶褐色の鱗‥‥地ルミナの色ですね。フィールドドラゴンがタイニーですから、その上位でしょうか」
 ベドウィール・ブランウェンは、わずかな伝聞を頼りに、敵の予想を立てる。
「タイニーでも結構な強敵なのに、スモールかあ」
 リザ・アレクサンデルは両手を頭の後ろで組んで、ごろりと倒木によりかかった。
「大物獲りね。胸が高鳴るわ‥‥」
 アザリー・アリアンロッドの歪んだ口元、その浮かぶ影を、揺れる炎が挑発的に揺らす。
「でっかいドラゴンを倒してでっかい勲(いさお)しをあげたいところッスね」
 フェルス・ディアマントが大ハンマーを掲げて言うと、
「ドラゴンと戦うのは初めてだけど、放っておいて人里に出てこられたら大惨事だ。放っておく訳にはいかないな」
 ソレイユ・ソルディアスもそう答えてから、「あ」と口元を押さえ、ディートリンデマレマロを見た。
「すまん、お前らは違うからな?」
「わかっとるよ‥‥でも、不始末をしでかしたのが同胞なのも確かじゃ」
 ディートリンデはそう言うと、マレマロの肩を叩き。
「できれば、ウチらの手で決着をつけたいモンじゃねえ」
「そうだな‥‥頑張ろう!」
「おいおいあんまり気張り過ぎてつっぱしんなよ?」
 ハヤトもマレマロの尻尾をモシモシ揉む。と、マレマロは「くすぐった!」と尻尾をブンブン。
 で、それを見たアザリー、ふふっとほほ笑むと。
「主人の狩場を整えるのは猟犬の役目‥‥高い報酬が付くなら、喜んで尻尾を振るわよ」
 そう言って、マレマロの尻尾をデコピンした。
「それにしても、気になるのは、やはり石化じゃな」
 エイル・グラシアは、さきに兵舎での顛末を思い浮かべていた――あらかじめ『石にされた者』のもとへ赴き、観察し、話を聞いていたのである。
「魔法か、もしくは何らかの毒か‥‥当然、医者にもわからぬ症状。わかっているのは、竜に顔を向けられ、吠えられた結果、徐々に石化したようだ、という目撃談だけか」
「バシリスクやコカトリスは即座に石化だったと思うけど、じりじり石化だと魔法かな?」
 リザは推測を口にする。
「もしそうなら他の地パドマの魔法‥‥クリスタルアーマーとかも使いそうだよね。竜ノ鱗ももちろんあるだろうし」
「むむむ、厄介そうじゃのう」
 エイルは頭をかかえ、うーんうーんと首をかしげる。
「戦いは苦労しそうね‥‥勇気を分けてもらえるかしら? 小さな竜君たち」
 アザリーが両手を広げ、マレマロとディートリンデを抱き寄せた――それは、実際には、勇気を与える行為だったかもしれない。

 結局その夜、襲撃はなかった。
 翌朝、キャンプを撤収し、警戒しながら探索を進めることにした一行。最初に気づいたのは、『ボガートの嘘つき鼻』で五感を高めていたフェルスだった。
「奥のほうから、でかいのが来るッス‥‥たぶん、奴ッス」

◆ドラゴン、会敵
 ほどなくして、全てのハウンドが、『それ』の接近を体感した。姿は見えなくとも、かすかな振動や、森のざわめきでそれと分かる。
 そして、明確に届いたのは、「ガウッ!」という、苦しげな、だがとても大きな叫び声であった。
「かかったか‥‥」
 ディオンはすでに、そこにライトニングトラップを張っていた。だが、気絶した様子はなく――さらに、質量が迫ってくる気配がした。
「効かない‥‥のか?」
「いや、対策したんじゃないかな」
 リザは目を細めて言った――レジストウィンドを用いたのだとしたら、もう感電はしないはずだ。ディオンはうなずき、トラップを終了させる。
 ディートリンデは、ガオオオオウ、と声を張り上げた。ドラゴン語だ。だが、返答はない。
「呼びかけには応じんか‥‥無視か、あるいは言葉のわからぬ種なのかのう」
 ハウンドらはすでに、必要な魔法を成就し、戦闘準備を終えている。やがて木々の爆ぜる音と共に、竜の首が森の狭間からぬうっと浮かび上がってきた。
「さぁ、相手してもらおうか!」
 真っ先にベルが駆け出した。振り上げたグリーヴァブレードを、まっすぐ顔に振り下ろす! しかし。
「硬い‥‥やはりクリスタルアーマーか」
 聞いていた通りの、魔法の水晶の鎧。切れ味抜群の刀さえ徹らぬ頑強さ。
 しかも。
「せええいっ!」
「ここかぁ!」
「せいやぁ!」
 ソレイユはペルセウスの兜で姿を消し、すでに背後にいた。そのミスリル製のレイピアは尾に突き立てられたが、皮膚を貫かなかった。
 ハヤトは潜んでいた樹上から飛び降りざま、竜牙製の巨大矢でその角を突いてみたが、弱点という感触もなく、わずかな傷しかつけられなかった。
 ディートリンデは空を飛び、真上からヴァルキュリエランサーを投げつけたが、これも傷をつけることなく戻ってくるのだった。
「完璧な奇襲なのに、効果なしじゃと!?」
 エイルは愕然とする。そしてドラゴンも黙ってはおらず、その牙でベルを噛み砕かんとし、その尾でソレイユを吹き飛ばさんとした。
 が、ベルは無傷。
「私にも鱗はあるのでな」
 竜鱗製の鎧。他にもリザとベドウィールも着けているものだが、それは非凡な防御性能を発揮する。
 ソレイユのほうは吹き飛ばされたが、すぐに立ち上がる。
「こっちは大丈夫だ‥‥たいした傷じゃない!」
「よかった‥‥では、畳みかけるッスよ!」
 フェルスがハンマーを振り上げた。皆も、剣を、槍を、弓を構え、一斉に攻撃を注ぎ続けた。
 それは――予想以上に長い戦いとなった。

 ハウンドが総がかりで攻撃し、ドラゴンが手当たり次第に反撃する。遅々とした、一進一退の攻防。
 いや、少しでも進んでいるのだろうか? ハウンドらの間に、そんな空気が流れ始める。
「矢は十分にありますが、なかなか傷がつきませんね‥‥」
 シェールはひたすら弓を放ち続けた。だがその手応えは――ほとんどない。
「チッ、決定打が見つかんねぇ!」
 ハヤトは目つぶしを仕掛けたり、グレイプニルでの拘束を試みたが、いずれも効いた様子はなかった。
「攻撃は大したことないけど‥‥体力は維持しなくてはね」
 アザリーは回復ポーションで傷を癒す。まだ石化攻撃を受けていないが、受けるまでは、抵抗力は残しておきたかった。
「さあ、打って来いッス!」
 フェルスはあえて正面に立ち、竜の囮となるべく挑発を続けていた。
 アースアーマーに、優れたガード技術。フェルスのタフネスは、ドラゴンの攻撃をほぼ確実に防ぎ切っている――フェルスには、その竜の苛立ちが感じられるような気さえした。
 そして、事態が動く。
「ギャウッ?」
 突如、竜が口を開け、ぐったりと身を沈めたのだ。
「やったかの!?」
 エイルが拳を握る。が、それはベドウィールが否定した。
「おそらくこのカゲヌイブレードの毒が回っただけです」
 ちょうど鱗の隙間にねじこめた、渾身の手応え――ドラゴンだって毒で麻痺するんだ、という希望が、皆の間に芽生える。
「やるじゃんウィール‥‥でも、まぐれ?」
 リザの問いに、ベドウィールはこっくりうなずく。
「この毒は一時的なものです。これまでの手応えから考えて、今のように毒を注ぎ込むのはそう簡単ではありませ‥‥っと、もうですか」
 早くも竜は、その身を起こした。ハウンドは態勢を整える暇さえ与えてもらえず――しかも竜は、その口を突然ガバァと大きく開けて、猛烈なブレスを吐き出した!
「来た‥‥!」
 フェルスは盾でそれを防ぐ――いや、防げない!?
「これは‥‥ガスなの!?」
 アザリーはそれを吸い込み、体を麻痺させ、膝をつく。さいわいハウンドは散らばって戦っていたため、巻き込まれたのは数名だが、その多くが膝をつくはめとなった。
「まずい!」
 ソレイユは慌てて忍び玉で煙幕を張る。視界を奪われた竜は大きく首を振りながら黒煙を脱し、その間にハウンドらも麻痺を脱し立ち上がれたが――それは、ドラゴンを本気にさせる結果となってしまった。
「グアオオオオオオッ!」
 その真の魔力が、ハウンドらに注がれ始める!

◆暴れ竜とハウンド
 最初にその異変を、身をもって体感したのは、フェルスだった。
「うっ? 今、まさか‥‥」
 ドラゴンにクワァと口を向けられた際、身体を固められるかのような感覚に襲われた――石化の魔法か。
 が、フェルスには石化に耐えるための指輪があった。その効果は一度だけ、だが。
「くっ‥‥手当たり次第ですか」
 同じ指輪を持つシェールも、それを浴び、そしてもちろん、耐えた。
 だがこの結果は、ハウンドに有利に働いたのかもしれない。
 ストーンの魔法が効かぬと見たドラゴンは、その怒りを空のディートリンデに向けた。ギャオゥ、と叫び、その口から重力波がほとばしる! ガイアを浴びたディートリンデは、くらくらと落下したが、すんでのところで翼を広げ墜落を免れた。
「急に本気を出してきたのかの‥‥?」
「ちょ、やばいやばい!」
 マレマロは右往左往――が、リザは逆だった。
「これはひょっとして‥‥ウィール?」
「はいここにいますよ、はいミタマギリ」
 すべてお見通しの相棒は、即座にリザのローレライに、精神奪取の魔力を付与した。
「いけるかしら‥‥でも、やるしかないわね」
 アザリーも同じ魔法をミスリルの槍に付与し、2人は、攻撃を始める。
 そして――結果はすぐに出た。
「アグゥ‥‥」
 ドラゴンは目をギョロリとさせ、バッタリと倒れ込んだのだ――精神力を削られたことによる気絶である。
「待ってました!」
 ソレイユは、無防備なドラゴンの首の付け根を、遠慮なくレイピアで突きまくる。
 ハヤトも矢でざくざくと、フェルスもインパルスハンマーでがつがつと、ディオンもグリーヴァヒゴユミを接射で、シェールもオデュッセウスボウを連射で、ベルはミスティルティンで、エイルはレーヴァティンで――
 その容赦なき乱撃さえも、ドラゴンの皮膚はそう簡単に受け付けはしなかったものの、しかし、それは動かぬ巨体にすぎない、じわじわと傷を広げていき――ついに、首が切断されるに到るのだった。

◆ドラゴン晩餐
 ハウンドらはすっかり疲弊していた――しかし、まだ森を出るわけにもいかなかった。
 なるべく多くの肉を持ち帰るべし。そんな依頼だったわけで、残る半日は、肉の解体とキャンプ設営に費やさねばならなかったからだ。
「とりあえず、鱗の奥の肉は、切り裂きやすかったッスね」
 フェルスはひたいの汗を拭う――限られた道具で、交代で作業を進めていたのだ。
「持ち帰るのは、柔らかそうな、旨そうな部分だけでいいよな」
 ソレイユは葉っぱで肉塊を包んでみた。運搬はできそうだ。
「でも、美味しいかどうか、味見してみませんと!」
 シェールはすでに、いくつかの部位を串に刺し、たき火で焙っていた――森には、実にかぐわしい匂いがたちこめていた。
「毒とかないでしょうか。毒の息を吐いてましたけど‥‥」
 ベドウィールの懸念も、シェールは「じゃあなおさら毒見が必要」と、あちこちかじって見せて。
「お‥‥美味しいです! 猪に似てますけど、もっと味わいが‥‥あ、毒もなさそうですよ」
「お、俺も毒見してやんぜ!」
 ハヤトはガツガツとむさぼり始め、すぐに「うんめー!」と雄叫びをあげる。
「同胞よ、ウチの血肉となるがよい」
 ディートリンデもあむあむと。マレマロもワイルドに、肉を咥えてみょーんと延ばす。
「なるほど‥‥キティドラゴン的にはドラゴンも食用あむむ」
 ベドウィールの口には、リザが肉をねじこんであげたようだ(ふーふー済なので火傷なし)。
「これ、少し持って帰って、干し肉にして、ギルドで一杯やりたいのう」
 エイルがそうつぶやくと、アザリーも「いいわね」と、エア盃を傾けてみせた。
「この味‥‥一生忘れないだろうな」
 ベルは骨付き肉を高々と掲げた。ディオンもにやりとして、同じポーズをすると。
「俺にとってもそうかもしれないな‥‥なにせこの肉は、未知の、脅威のドラゴンに、みんなで苦労して挑み、そして打ち倒した、その勝利の味がするからな」



 12

参加者

z.遂に竜退治か!気合い入るな!俺は色々試して弱点探ししてみんぜ!!
ハヤト・アステール(da0375)
♂ 23歳 カーシー(中型) ヴォルセルク 風
a.大物獲りね。胸が高鳴るわ……。
アザリー・アリアンロッド(da0594)
♀ 29歳 人間 ヴォルセルク 月
a.ブレス警戒で最初は盾持って近づけたらハンマーで殴ってみるッス
フェルス・ディアマント(da0629)
♂ 22歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 地
b.土地勘を活かして森の捜索をやってみる。戦闘では後方から弓で攻撃しよう。
ディオン・ガヴラス(da0724)
♂ 25歳 ダークエルフ マイスター 風
a.刀で斬るか槍で突くか……どっちが有効なんだろうな。
ソレイユ・ソルディアス(da0740)
♂ 21歳 人間 ヴォルセルク 陽
b.避けられるかもね?視線や息だとダメかもだけど。
リザ・アレクサンデル(da0911)
♂ 23歳 人間 ヴォルセルク 水
c.魔法も効き難そうで、なんともやり難そうな相手ですね…?
ベドウィール・ブランウェン(da1124)
♂ 27歳 人間 ヴォルセルク 月
a.ドラゴンとのバトル……。わくわくが止まらないな!
ベル・キシニア(da1364)
♀ 28歳 人間 ヴォルセルク 風
z.石化というのが解せぬのう。魔法か、あるいは遅効毒か。ちと診てみるかのう
エイル・グラシア(da1892)
♀ 34歳 人間 パドマ 風
b.狩り、隠密、捜査を生かして偵察を手伝いますね。
シェール・エクレール(da1900)
♀ 19歳 人間 カムイ 風
b.同胞の不始末はウチらの手で決着を着けたいモンじゃねえ。
ディートリンデ(da1934)
♀ ?歳 キティドラゴン ヴォルセルク 水
 あっちはドラゴン1体だけ、こっちはドラゴンに加え仲間もたっぷりだ!
マレマロ(dz0040)
♂ ?歳 キティドラゴン ヴォルセルク 水


森のドラゴンハンティング

ウーディアの貴族所有の森に、危険なドラゴンが棲み付いた。兵士では太刀打ちできないその魔物を、ハウンドならば狩ることができるのだろうか‥‥