オープニング
◆時は現代、ところは日本
四月だ。
日本中の寒気は、暖気に席を譲る。そして、微妙に人々も薄手の服に切り替わるころ。
そんな昼休み、苦学生は松竹梅銀行に生活費を下ろしに行っていた。
近くのコンビニだと、手数料を取られる‥‥その代償を払うより、歩いて頭もリフレッシュする、一石二鳥だ。
ともあれ、ATMの残高画面を見るとため息をつきたくなる。
「もちっと手心とか加えてくれんか‥‥」
そんな苦学生が備え付けの封筒に現金を入れると、銅鑼声が響いた。
「動くな! 手持ちの金目のものを全部、この袋に入れろ!」
次の瞬間、耳を震わせるのは銃声。
いくつもの穴が天井に空き、蛍光灯を吹き飛ばす。
猟銃を持ち、目出し帽をかぶった五人組の銀行強盗だ。
一種気恥しくなる位のステロっぷりを見せてくれる。
響き渡る非常ベル。銀行のカウンターで、非常通知ボタンを押したのだろう。
銀行強盗は開き直った。
「よし、お前ら全員人質だ」
周囲の人間は『行き当たりばったり』というフレーズが脳裏に浮かぶ。
適当な人質の懐からスマートフォンを出し、警察に現金十億円と、逃走用のワゴン車と、空港にジェット機を要求する。
「時間稼ぎをしようと思うな? 三十分過ぎるごとにひとり見せしめに射殺する」
「はあ、お楽しみだな? お前らこそその銀行を五体満足で出られると思うな? 三十分過ぎるごとに狙撃手が、お前らの手足を一本吹き飛ばす。お前らが泣き叫んで人質を解放するのが早いか、お前らが隙を見せて突入班が制圧するのが先か試してみようぜ」
強盗に駆け引きと無視し、挑発のセリフを言い放つのは、近くの警察の森俳炉だ。
さあ、ショータイム──日本の午後が始まる。
選択肢
a.お客様 | b.銀行員 |
c.公務員 | z.その他・未選択 |
マスターより
成瀬です、普通の午後です。
皆さんは客、銀行員、公務員のいずれかの立場(選択肢)で登場をお願いします。
パラレルですが、日本にいる人の範疇で、名前や服装、年齢などの設定を申告くだされば、対応します。
剣と魔法の世界ではないため、戦技や魔法、装備は通常のものは使用不可です。
通常じゃない装備‥‥あるではないですか──パラレル専用装備が?
多大な悪ノリ上等です。まあ、みんなで幸せになりましょ?
では、午後をゆるりとお過ごしください。
※嘘の日20パラレルシナリオ
これは別世界(パラレルワールド)でのお話です。
竜犬世界への影響・関係はなく、負傷も起きません(但し、なぜかTP・CP・カードの増減等は起こります)。
登場キャラ
◆さあ、お前の罪を数えろ!
「ジョーカー? 私よ‥‥そう、適当な荒事師を一グロスほど‥‥だめ? じゃあ百人くらい送ってね──出来るだけ早く、そう待ってるから」
強盗たちの目を逃れて、
茉莉花は自身のコネクションに頼み、多少は前科がある連中を送ってもらう算段をつけた。
(この騒ぎもっと面白くしてあげるわ)
その一方で──。
(ここで全員をポケミンボールにゲットすれば、十億の金は私の物に‥‥)
──色黒の苦学生、
藤枝アンカは、そんな物騒なことを考えていた。
「ここで有り金を奪われると、アパートを追われて、テント暮らしで魚を釣っての自給自足生活が‥‥て、砂布巾か」
釣り師の彼女にとって、環境汚染で魚が絶滅したのは、アンカの生死にダイレクトに関係する事項だ。
それはともあれ、砂布巾って何だろうか?
ちなみに顔が丸いのは骨格です。
「こんな時のために──託されたポケミンボール! 探偵 THE 雷鼠!! 君に決めた!」
「ビカー!」
怪しげな球体から、怪しい探偵雷鼠が現れる。
「薙ぎ払うのです──もっとも邪悪な一族の末裔よ‥‥三京ボルトだ!」
強盗たちが算を乱すと、探偵雷鼠はイナズマを茉莉花に放つ。
「ヒョーォォォ!」
怪しげな呼気とともに、イナズマを手刀で斬り裂く、茉莉花──さすが南斗方拳に敵なし。
「もっとも、強いのを私と見抜いたか、面白いわ──まずは私に殺される資格在りよッ!」
唐突に始まった超常バトル。
それに強盗たちは死んだ目で見ることしかできなかった。
「すげえ──レベルが違いすぎる。あれはウワサに聞く、南斗酔狂拳だろうか」
──ドローンで内部を伺っていた
俳炉。
彼は切り札の特命刑事(一部では特殊刑事扱いされている、)
エクスを振り返る。
「人質は必ず解放します! 生死を問わず!!」
「力強い言葉だ。いいか、多大の犠牲はやむを得ない。いいか!」
「任されました! 行くぞマギー!」
鍛冶屋の鎚のごとき、得物を携えて、エクスは乱入しようとする。
そこに多数のローター音。
十基ほどの黒いヘリが銀行上空に位置し、百を超える前科者を送り込もうとしていた。
「ヒャッハー!」
ラペリングしてくる端から、エクスはハンマーで薙ぎ払う。
ハンマーの向かうところ、皮膚が裂け、肉がつぶされ、骨が砕け、魂が絶叫した。
「半分は俺に任せろ」
俳炉刑事が竜殺弓を構えて宣言する。
差し渡し三メートルはある巨大な弓だ。槍のような矢をつがえる。
もし、ドラゴンが本当にいるなら、射殺せるだろう。
「いいや、早い者勝ちでしょう、ここは」
エクスの言葉に俳炉は不敵な笑みを浮かべる。
「Let’sパーリー! 負けた方が今日の飲み会を奢れよ」
いつの間にか飲み会という事になっていた。
警察とは‥‥公務員とはゴゴゴ。
ともあれ、殺戮の宴が始まった。
◆本当に裏切ったんですかー!
「ジョーカー? あなたの送り込んだ連中片端からやられているわ。ええ、それは無残にね」
血の臭いが終末を告げていた。
「──『しつこい』‥‥今回の派遣は謝礼にしないわ」
魔力が尽きた雷鼠をスライスした茉莉花。
彼女は強盗たちの上にあぐらをかき、スマホで再び、コネの先に連絡を入れる。
「さあ、ここから逃げるには、ボランティアで動く有能な私が必要ね。でも、最近のボランティアも手弁当という訳じゃないのは、常識よ?」
強盗たちがいいリアクションをすると思っていたが、眠っている。
「あらいい度胸?」
その頃、夢の中で強盗たちは──。
「タリホー! さすがに十億円を持って逃走するのは、骨が折れますので、当行で──」
と、
行員が、強盗五人が二億円ずつ口座を開設して、そこに振り込めばいいのでは? と促されていた。
とはいうものの、強盗たちからの返答は捗々しくなかった。
「マンガ喫茶住まいで住所ないっす」
「今日は強盗のつもりで認め印を──」
「生活保護受けているので口座は‥‥」
「お札のフロに入ってみたくて」
最後のひとりはこう述べた。
「もうここでお世話になっています」
──夢も希望もありゃしない。
「ここは夢の中ですから、もっと自由な発想でいいのですよ、イマジネーション!」
烈車に乗って、どこかに行きそうな行員の発言だった。
そして、行員‥‥いや『怪盗エア』は気づいた。
「は、夢の中で振り込ませても──実際の口座は作れない」
今更なことだが、仕方がない。
「タリホータリホーラリルレロン!」
そう言って、彼女は力ある像(ヴィジョン)を解除する。
「第一次十億円確保作戦は失敗。今から帰れ、朝が来た、夢はもう醒めたのか」
エアは絶望した。
ともあれ、状況はまた変わる。
◆最高の魔王
しかし、そこに投げ込まれる十億円の入ったジュラルミンケース。
「さあ、強盗ども、踊れ踊れ──地獄を俺に見せろ」
俳炉が放り込んだ身代金である。
なお、刑事ふたりの勝負はエクスの勝ち。
矢の数に限度がある俳炉では、体力の続く限り、無限に殴れるエクスには勝てないのだ。
あと若さ、とか。
ともあれ、エクスと俳炉の策はこのジュラルミンケースをもって出たところを強襲するというものだ。
茉莉花、アンカ、エアはそんな策など気づかない。
しかし、ひとり三億円というのは美味しい。
無言のままに連合が結成された。
茉莉花は微笑んだ。
「さあ、盾になって、一億円余ったから、報酬としてあげるから」
三億円かける三。十億円なのであまり一億円。
強盗たちは何か思うところがあったので、十億円を吹っ掛けたのだが、一割の一億円でもいい、命あっての物種というやつだ。
しかし、女性陣の取り分は三億円の札だけで三十キロ相当。
両手に持ち、背中に背負う。
加えてジェラルミンケースという重量を持って立ち上がろうととしたが、致命的に基礎体力が足りない。
腰が痛かった。
そして最後の悲劇が舞い降りた。
「ははは、お嬢さんたちそれは『証拠物件』として中身だけいただこう──さあ、安心してくれたまえ」
松竹梅銀行のカベをぶち破って現れたエクスが、しっくいの白と返り血の赤に染まったハンマーを引っ提げて、壮絶な笑みを浮かべたのだ。
「こ、ここは次のパラレルシナリオにつづく!」
エアの悲痛な叫びだけが響く。
「いーやつづかない」
虹が砕けた! 銀河が哭いた!
大団円!
しかし、時間を止めて逃げ出した、エアの身柄は確保できなかった。さすが、THE世界だ。
アンカは、ポケミンボールで、早めに皆の体力をそげば、ボールにアタッシュケースごと確保できたのではないか、と気づいたのは遅きに失した。
茉莉花は手刀で手錠を斬り裂き逃走した。
◆後日談
とはいえ、事件解決においてエクスが、俳炉とともに『若干』の犠牲者を出してしまったことに関しては、記者会見で語った言葉がマスコミに避難ごうごうだった。
「記憶にございません」
一説には精神鑑定をしようという論議もされたという。
なお、おとりの十億円がどうなったかは、つまびらかにされていない。
一説ではエクスが確保した九億円はすべて捜査用のニセ札であり、それとは別に俳炉が要請した十億円があったという。
一週間後、エクスと俳炉の相打ちとなった死体が、付近の池で発見された。
後に令和の三億円事件と呼ばれたかどうかは‥‥さだかではなかったようだ。
6
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参加者
| | a.…ねえ、私の腕いくらで買う?(強盗犯に向けて
| | マリカ・ピエリーニ(da1228) ♀ 29歳 人間 ヴォルセルク 火 | | |
| | c.人質は必ず解放します! 生死を問わず!!(俺がハマーだ感)
| | エクス・カイザー(da1679) ♂ 30歳 人間 ヴォルセルク 火 | | |
| | a.ここで全員をポケミンボールにゲットすれば、10億の金は私の物に…
| | アンカ・ダエジフ(da1743) ♀ 26歳 ダークエルフ パドマ 水 | | |
| | b.10億を持ち逃げは重いので、当銀行で5人分の口座を作りませんか?
| | エア・カイザー(da1849) ♀ 28歳 人間 ヴォルセルク 風 | | |
松竹梅銀行に強盗が!
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現金十億だと!? もはや特攻しかあるまい!
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