【PS】かわいそうな強盗

担当成瀬丈二
出発2020/04/09
種類ショート 冒険(他)
結果成功
MVPエクス・カイザー(da1679)
準MVPアンカ・ダエジフ(da1743)
マリカ・ピエリーニ(da1228)

オープニング

◆時は現代、ところは日本
 四月だ。
 日本中の寒気は、暖気に席を譲る。そして、微妙に人々も薄手の服に切り替わるころ。
 そんな昼休み、苦学生は松竹梅銀行に生活費を下ろしに行っていた。
 近くのコンビニだと、手数料を取られる‥‥その代償を払うより、歩いて頭もリフレッシュする、一石二鳥だ。
 ともあれ、ATMの残高画面を見るとため息をつきたくなる。

登場キャラ

リプレイ

◆さあ、お前の罪を数えろ!
「ジョーカー? 私よ‥‥そう、適当な荒事師を一グロスほど‥‥だめ? じゃあ百人くらい送ってね──出来るだけ早く、そう待ってるから」
 強盗たちの目を逃れて、茉莉花は自身のコネクションに頼み、多少は前科がある連中を送ってもらう算段をつけた。
(この騒ぎもっと面白くしてあげるわ)
 その一方で──。
(ここで全員をポケミンボールにゲットすれば、十億の金は私の物に‥‥)
 ──色黒の苦学生、藤枝アンカは、そんな物騒なことを考えていた。
「ここで有り金を奪われると、アパートを追われて、テント暮らしで魚を釣っての自給自足生活が‥‥て、砂布巾か」
 釣り師の彼女にとって、環境汚染で魚が絶滅したのは、アンカの生死にダイレクトに関係する事項だ。
 それはともあれ、砂布巾って何だろうか?
 ちなみに顔が丸いのは骨格です。
「こんな時のために──託されたポケミンボール! 探偵 THE 雷鼠!! 君に決めた!」
「ビカー!」
 怪しげな球体から、怪しい探偵雷鼠が現れる。
「薙ぎ払うのです──もっとも邪悪な一族の末裔よ‥‥三京ボルトだ!」
 強盗たちが算を乱すと、探偵雷鼠はイナズマを茉莉花に放つ。
「ヒョーォォォ!」
 怪しげな呼気とともに、イナズマを手刀で斬り裂く、茉莉花──さすが南斗方拳に敵なし。
「もっとも、強いのを私と見抜いたか、面白いわ──まずは私に殺される資格在りよッ!」
 唐突に始まった超常バトル。
 それに強盗たちは死んだ目で見ることしかできなかった。

「すげえ──レベルが違いすぎる。あれはウワサに聞く、南斗酔狂拳だろうか」
 ──ドローンで内部を伺っていた俳炉
 彼は切り札の特命刑事(一部では特殊刑事扱いされている、)エクスを振り返る。
「人質は必ず解放します! 生死を問わず!!」
「力強い言葉だ。いいか、多大の犠牲はやむを得ない。いいか!」
「任されました! 行くぞマギー!」
 鍛冶屋の鎚のごとき、得物を携えて、エクスは乱入しようとする。
 そこに多数のローター音。
 十基ほどの黒いヘリが銀行上空に位置し、百を超える前科者を送り込もうとしていた。
「ヒャッハー!」
 ラペリングしてくる端から、エクスはハンマーで薙ぎ払う。
 ハンマーの向かうところ、皮膚が裂け、肉がつぶされ、骨が砕け、魂が絶叫した。
「半分は俺に任せろ」
 俳炉刑事が竜殺弓を構えて宣言する。
 差し渡し三メートルはある巨大な弓だ。槍のような矢をつがえる。
 もし、ドラゴンが本当にいるなら、射殺せるだろう。
「いいや、早い者勝ちでしょう、ここは」
 エクスの言葉に俳炉は不敵な笑みを浮かべる。
「Let’sパーリー! 負けた方が今日の飲み会を奢れよ」
 いつの間にか飲み会という事になっていた。
 警察とは‥‥公務員とはゴゴゴ。
 ともあれ、殺戮の宴が始まった。

◆本当に裏切ったんですかー!
「ジョーカー? あなたの送り込んだ連中片端からやられているわ。ええ、それは無残にね」
 血の臭いが終末を告げていた。
「──『しつこい』‥‥今回の派遣は謝礼にしないわ」
 魔力が尽きた雷鼠をスライスした茉莉花。
 彼女は強盗たちの上にあぐらをかき、スマホで再び、コネの先に連絡を入れる。
「さあ、ここから逃げるには、ボランティアで動く有能な私が必要ね。でも、最近のボランティアも手弁当という訳じゃないのは、常識よ?」
 強盗たちがいいリアクションをすると思っていたが、眠っている。
「あらいい度胸?」

 その頃、夢の中で強盗たちは──。
「タリホー! さすがに十億円を持って逃走するのは、骨が折れますので、当行で──」
 と、行員が、強盗五人が二億円ずつ口座を開設して、そこに振り込めばいいのでは? と促されていた。
 とはいうものの、強盗たちからの返答は捗々しくなかった。
「マンガ喫茶住まいで住所ないっす」
「今日は強盗のつもりで認め印を──」
「生活保護受けているので口座は‥‥」
「お札のフロに入ってみたくて」
 最後のひとりはこう述べた。
「もうここでお世話になっています」
 ──夢も希望もありゃしない。
「ここは夢の中ですから、もっと自由な発想でいいのですよ、イマジネーション!」
 烈車に乗って、どこかに行きそうな行員の発言だった。
 そして、行員‥‥いや『怪盗エア』は気づいた。
「は、夢の中で振り込ませても──実際の口座は作れない」
 今更なことだが、仕方がない。
「タリホータリホーラリルレロン!」
 そう言って、彼女は力ある像(ヴィジョン)を解除する。
「第一次十億円確保作戦は失敗。今から帰れ、朝が来た、夢はもう醒めたのか」
 エアは絶望した。
 ともあれ、状況はまた変わる。

◆最高の魔王
 しかし、そこに投げ込まれる十億円の入ったジュラルミンケース。
「さあ、強盗ども、踊れ踊れ──地獄を俺に見せろ」
 俳炉が放り込んだ身代金である。
 なお、刑事ふたりの勝負はエクスの勝ち。
 矢の数に限度がある俳炉では、体力の続く限り、無限に殴れるエクスには勝てないのだ。
 あと若さ、とか。
 ともあれ、エクスと俳炉の策はこのジュラルミンケースをもって出たところを強襲するというものだ。
 茉莉花、アンカ、エアはそんな策など気づかない。
 しかし、ひとり三億円というのは美味しい。
 無言のままに連合が結成された。
 茉莉花は微笑んだ。
「さあ、盾になって、一億円余ったから、報酬としてあげるから」
 三億円かける三。十億円なのであまり一億円。
 強盗たちは何か思うところがあったので、十億円を吹っ掛けたのだが、一割の一億円でもいい、命あっての物種というやつだ。
 しかし、女性陣の取り分は三億円の札だけで三十キロ相当。
 両手に持ち、背中に背負う。
 加えてジェラルミンケースという重量を持って立ち上がろうととしたが、致命的に基礎体力が足りない。
 腰が痛かった。
 そして最後の悲劇が舞い降りた。
「ははは、お嬢さんたちそれは『証拠物件』として中身だけいただこう──さあ、安心してくれたまえ」
 松竹梅銀行のカベをぶち破って現れたエクスが、しっくいの白と返り血の赤に染まったハンマーを引っ提げて、壮絶な笑みを浮かべたのだ。
「こ、ここは次のパラレルシナリオにつづく!」
 エアの悲痛な叫びだけが響く。
「いーやつづかない」
 虹が砕けた! 銀河が哭いた!
 大団円!

 しかし、時間を止めて逃げ出した、エアの身柄は確保できなかった。さすが、THE世界だ。
 アンカは、ポケミンボールで、早めに皆の体力をそげば、ボールにアタッシュケースごと確保できたのではないか、と気づいたのは遅きに失した。
 茉莉花は手刀で手錠を斬り裂き逃走した。

◆後日談
 とはいえ、事件解決においてエクスが、俳炉とともに『若干』の犠牲者を出してしまったことに関しては、記者会見で語った言葉がマスコミに避難ごうごうだった。
「記憶にございません」
 一説には精神鑑定をしようという論議もされたという。
 なお、おとりの十億円がどうなったかは、つまびらかにされていない。
 一説ではエクスが確保した九億円はすべて捜査用のニセ札であり、それとは別に俳炉が要請した十億円があったという。
 一週間後、エクスと俳炉の相打ちとなった死体が、付近の池で発見された。
 後に令和の三億円事件と呼ばれたかどうかは‥‥さだかではなかったようだ。



 6

参加者

a.…ねえ、私の腕いくらで買う?(強盗犯に向けて
マリカ・ピエリーニ(da1228)
♀ 29歳 人間 ヴォルセルク 火
c.人質は必ず解放します! 生死を問わず!!(俺がハマーだ感)
エクス・カイザー(da1679)
♂ 30歳 人間 ヴォルセルク 火
a.ここで全員をポケミンボールにゲットすれば、10億の金は私の物に…
アンカ・ダエジフ(da1743)
♀ 26歳 ダークエルフ パドマ 水
b.10億を持ち逃げは重いので、当銀行で5人分の口座を作りませんか?
エア・カイザー(da1849)
♀ 28歳 人間 ヴォルセルク 風
 踊れ踊れ強盗ども、俺に地獄を見せてみろ
パイロ・シルヴァン(dz0039)
♂ 39歳 人間 無


松竹梅銀行に強盗が!

現金十億だと!? もはや特攻しかあるまい!