ウラートで奇妙な冒険

担当成瀬丈二
出発2020/03/06
種類ショート 冒険(討伐)
結果成功
MVPパルティ・フォルトゥナ(da1820)
準MVPエクス・カイザー(da1679)
アザリー・アリアンロッド(da0594)

オープニング

◆千の顔を──
 港町のウラート、そこにハウンドたちは訪れていた。
 ちょっとした海鮮物を味わおうという趣向だ。
 趣向通り、海産物を味わった、シフールのガーベラは、奥まったところにいる──多分、女性と思える影に目をやった。
 流行っている娼館『黒水晶亭』の前にいる彼女──フードをすっぽりかぶり、手のみを出したローブ姿の影だ──小さな卓の前に座り、目前の水晶球に手をかざしている。
 占い師だろうか?

登場キャラ

リプレイ

◆必殺の0.1秒
「カウンタースペル」
 淡々としてる様にすら思える、パルティ・フォルトゥナの魔法が成就した。
 この間、実に0.1秒。
 シルバーは成就しようとしていた、ルミナパワーを打ち消され、魔力を無駄に消耗する。
 素手戦闘では、ルミナパワーの有無は大きな要素となるのだ。
(店ごと吹っ飛ばしたい気分ではあるケドね!)
 魔法の杖──ストームドラゴンの角から削りだされた──を振るうのは、アルマリア・アリアンロッドだ。
 逃げ出そうとする海賊リーダー、ホエールの背中に向けて精神を集中する。
(ごめんなさい、アザリー──私が付与できる魔力はないの、自分だけなのよ)
 アルマリアのレジストアース、ファイアワールドの魔法による地への抵抗、火への抵抗は自身にしか付与できない。
 愛しい、アザリー・アリアンロッドを守ってやることは出来ないのだ。
(ガーベラのツキに賭けるわ。外さないでね)
 カスミブレードを抜刀して、アザリーが肉迫する。
 占い師の占いはここまで当たっていた。
 極め技に持ち込みたいところだが、ぶちまけられたテーブルの上のもので、床の足場は良くない。お互いにマウントを取られかねない不確定さだ。
「よし! 先手必勝、勝負だ」
 相手が素手で戦うのなら、同等の立場で戦うのがハウンドの、そして勇者の矜持──。
 エクス・カイザーはそう考えて、シルバー目がけて、一気に突き進む。
「お前が白銀の脚ならば、私は黄金の手!」
「面白い! ケイコつけてやる、若造が!」
「吼えるなロートル」
 両手のナックルにものを言わせんとする、エクスに対し、上段蹴りから、膝の柔軟性を活かした見事な体捌きで対応するシルバー。
「なるほど、戦技魔法に頼らずとも──戦技を使いこなすのだな」
 そこにアザリーが突っ込む!
「悪党に手を貸すなんて、戦士としての誇りを忘れてしまったようね」
「誇りでメシが食えるか! ハンターは獲物を狩ってナンボだ」
 カスミブレードを見切った瞬間──焦るアザリー。
 思ったより手練れかもしれない。先ほどのエクスの会話ではないが、伊達に年はとっていないということだ。
「がんばるんやで、アザリーはん」
 応援するのは、ガーベラだ、まあ友情はプライスレス。
「刹那の見切り──甘い! 受けよ風車」
 エクスが一瞬、そして一点の好機を逃さず、投げ技に入る。
 手ごたえはあった──しかし、投げられたシルバーは、投げられるだけではなく、放られた先の壁を蹴る、三角跳びに似た形で乱戦から抜けた。
「さて──何をして遊ぶのかな?」
 シルバーは不敵な笑みを浮かべた。
「ちょっとーオヤジィー食べ物を粗末にするなって叩き込まれてこなかったの? えっ僕? 有事の時は仕方ないよね!」
 水筒の水を使ってローレライを成就した、リザ・アレクサンデル
 心に棚を持つ若者である。
 その手にあるのは水の剣、ブレードofローレライだ。
「やれやれ、地力が無いとこういう時に困りますね──そういえば以前、テーブルをひっくり返したのはリザでしたね‥‥?」
 ホエールの方に向かうのは、ベドウィール・ブランウェンだ。
 べドウィールは、アルマリアの意図を汲む。
 彼女に魔法を撃ちこませる。そして、自分の攻撃で魔力を削り取り、気絶させる腹。
 本来は速攻で仕留めるつもりだったが、今はミタマギリの魔法を成就に専念。魔力を刈り取れば、気絶は免れない便利な魔法だ。
 次の瞬間、アルマリアの魔法の杖から、雷が迸る。ホエールを捕捉し、周囲の石壁で力が消滅するところまで計算通り。
「やったの!」
 アルマリアが(精神的に)手ごたえを感じたが、苦痛に身もだえしつつ、ホエールは走ろうとする。

◆永遠の三秒
「当たれ!」
 リザがブレードofローレライを振ると、水流が伸び、シルバーを襲撃。
 しかし、彼の耳飾りを打ち砕くにとどまった。これでも精霊の加護があるのだろう。
 一方パルティはシルバーが魔法を準備する様子がないのを確認する。
 どうやら、シルバーはカウンタースペル勝負を挑む様子はないらしい。
 もっとも、これが団体戦ならカウンタースペルを誘うことを考えて、敢えて魔法を行うかもしれない。
 しかし、自分ひとりだとそうはいかないようだ。
 なので、パルティはシノビクロスの準備に入った。
 次にべドウィールがホエールに向かい、ミタマギリの魔法を付与したグリーヴァライモンを投てきする。
 死角からの一撃はホエールは回避しきれない。魔力は削れなかったようだ。
 ホエールの魔力が大きいのではなく、単純に悪運だろう。
 これも精霊の加護と言えば加護かもしれない。
 一方、シルバーの方は、距離を詰めたアザリー、そしてエクスと競り合っている。
 アザリーの剣撃を恐れぬ豪胆さと、エクスの『必殺風車』をいなす体捌きで少しずつ、距離を詰めていく。
「セメるオトコは嫌いじゃないわ。でもね、賊はおぞましくってよ?」
 アザリーが一気に飛び込む! 敢えての誘いとエクスは見抜く。
(俺も勇者だ。ヒロインの気概には応えよう!)
 決意のエクス。それを信じた、アザリーが優雅ともいえるほどの足さばきでシルバーの足技、必殺の間合いに侵入する。
 アザリーの側頭部を刈り取る蹴りが放たれる。その一撃を受けることも計算の内!
 軸足に手を伸ばし、絡めとり動きを封じる。
 カウンター勝負は相打ち──ならば勝利を決するのは?
(自信をもってやり切ること、それがアザリーの犠牲を無駄にしないことだ)
 エクスは手を伸ばす。
「獲った‥‥風車改──真空風車」
 シルバーの動きを封じたところに、エクスの投げ技が決まった!
 天井に向かい放り投げる。
「──チェックメイト」
 シルバーはそのまま落ちてきた。今度は精霊の加護はなかったようである。

◆終わりなき平和
「だいじょうぶ? あざりーはん」
 ガーベラがバッグから回復薬を取り出し、アザリーに飲ませようとする。
「──‥‥」
 アザリーが何かガーベラに告げた。
 その間に、ブレードofローレライが弧を描いて、ホエールにヒット。ダメージの蓄積でホエールは気絶した。
「お仕事完了ね──アザリー大丈夫なの?」
 アルマリアはガーベラから回復薬を受け取ると、彼女ははアザリーに口移しで回復薬を飲ませる。
 さすがに騒ぎになり、遅めではあるが、ウラートの衛兵もやってくる。
 ハウンドの証明である木札を示し、一同はホエールの身柄と引き換えに、そこそこの臨時収入を得た。
 手近な料理屋に入る。
「どうやら、シフールのツキは金運じゃなくて健康運だったようね?」
 アルマリアが銀髪を包帯でおおっているアザリーをからかう。
「お姉さまに占ってもらえばよかったわ」
「しかし、アザリー、キミが亡くならなくて良かった」
 エクスが心配そうに語る。
「大丈夫、大丈夫。みんな生きてるんだし」
 リザがそう言って屈託のない笑みを浮かべる。
「ええ、結果論ですよ」
 べドウィールがリザに注意を促す。
 パルティが思ったのは──。
(ルミナパワーとか使われていたら、アザリー死んでたじゃねぇか)
 結果として勝利したからいいのだ。
 パルティは戦うのが嫌いとまではいかないが、勝利する事の方が大事である。
 そこにリザの注文で、コップが渡された。
 女給曰く。
「あちらのお客様から」
 見るとリザもコップをかかげている、パルティもコップをかかげた。
 そんなこんななウラートの日々は終わりを告げる。
 ──しかし、ハウンドの戦いは‥‥つづく!



 7

参加者

a.ガーベラのツキに賭けるわ。外さないでね。
アザリー・アリアンロッド(da0594)
♀ 29歳 人間 ヴォルセルク 月
b.逃しはしないわ
アルマリア・アリアンロッド(da0672)
♀ 35歳 人間 パドマ 火
a.役割的にはこっちかな?ローレライ成就できそうなら後衛になるかも
リザ・アレクサンデル(da0911)
♂ 23歳 人間 ヴォルセルク 水
c.ひとまずは逃げられないよう、ホエールをマークしてみましょうか。
ベドウィール・ブランウェン(da1124)
♂ 27歳 人間 ヴォルセルク 月
a.よし、先手必勝だ!!(脳筋ともいう)
エクス・カイザー(da1679)
♂ 30歳 人間 ヴォルセルク 火
c.魔法?唱えられたらいいけどねぇ。(ニヤリ)
パルティ・フォルトゥナ(da1820)
♀ 42歳 人間 パドマ 水
 ああ、おまんまのたねがー!?
ガーベラ(dz0030)
♀ ?歳 シフール カムイ 月


酔いどれイルカ亭で乱戦が!?

もう、迷惑です。昼間のかき入れ時ですのに、よそでやってください。え!? 海賊と無頼漢の商談ですって──よそでやれー!(店の主人談)