オープニング
◆帰らずの森にて
ガーベラ曰く、オーディア島は寒い‥‥まあ、冬だから。
「しかし、ぶっそうななまえやな」
帰らずの森、うかつに踏み込めば帰ってこれない秘境だ。
その周辺部に踏み込もうとするハウンドたち。
晴天の正午の光が差す、森の中で悲鳴があがる。そして格闘音──血の匂い。
比較的遠そうだ。
イチイチ自然の営み──肉食動物のそれに関与していては調査は進まない。
そうまじめに考えるハウンドもいた。しかし、ガーベラのようにやじうま根性むき出しのものもいる。
ちょっと、見に行ったガーベラが上げた声は‥‥。
「かっけーわ! らいおんやで!!」
ガーベラが目にしたもの、河のほとりに佇む、宝玉を削りだしたような白きライオン。シカの首にかぶりつき、地面に打ち倒している。
流れた血が毛並みの白さとコントラストを織りなしている。光の加減か尾っぽが数本に見えた。
その脇に褐色の肌の少年がいた。赤い毛皮を頭からかぶっている。ただ、鞭を帯に挟んでいる。
首から何か笛のようなものをぶら下げている。
「シシバの戦うところ見た。俺は強い奴と戦いたい。お前らに勝負を申し込む、これマイルール!」
少年は自らをローベと名乗った。
「ちなみにかったらどうなるんや?」
「強い者の言う事をひとつ聞く」
ほう、それは──話を聞きつけたハウンドたちが集まる。腕試しをして、勝てばローベから周囲の情報を聞き出せるかもしれない。
調査がはかどる。ローベは森に住んでいる訳ではないかもしれない。しかし、それはそれでひとつの情報だ。
だから戦いはやめられない。
──ハウンドの戦いが始まる。
選択肢
a.心で勝負 | b.技で勝負 |
c.体で勝負 | z.その他・未選択 |
マスターより
成瀬です、今回は強さを比べてみましょう。
選択肢の、心技体で勝負ですが、お題に沿った勝負をします。具体的なものを思いつかなければ、成瀬が考えます。
ただ、勝負は三十分で終わるものにしてください。
また、命を故意に奪うことも互いにお控えください。
心で勝負の場合は、知恵や精神力を試します。
技の場合は器用さや運動神経などを試します。
体の場合は力比べや格闘などで勝負します。
言う事をひとつ聞く、ですが勝った場合に備えて一言あるといいでしょう。なお、ローベ君はまじめですので「はい、聞いた」というオチはないです。
帰らずの森の中に関して、実際にどれだけ知っているかは、不明です。
ただ、場合によっては獅子が自分の代理といいます。
複数対複数の事もあります。
では、皆さんがいい勝負を出来ますように。
登場キャラ
◆心の試練──くっ、殺せ!
「‥‥帰らずの森の謎を解くため、森林の覇者たるダークエルフのアンカちゃんは心の勝負を受けて立つのですよ」
と、
アンカ・ダエジフが誰にともなく説明している。
実にありがたい配慮だ。
猛獣使いマスターのローベも、言葉の続きをじっと待つ。
「で、勝負ですが‥‥さてどないしましょ?」
アンカ以外の、二本足で立つものは全員ずっこけた。
「すみません。勝負が思いつかないので、知恵の勝負は私の負けです」
「勝負はこれから‥‥俺考える」
ローベは精神的にも物理的にも立ち直りながら、次のアンカの言葉を待つ。
「え? そちらで勝負方法を提案してくれますか? では受けて立ちますので、お題を出してください」
胸を張るアンカ。
「じゃあ、どれだけ四本足の哺乳類の名を言えるか‥‥はどうだ」
「ふうむ。意外とズッコイですね──でも、そういうの嫌いじゃないです」
アンカは腕を組み、
ハヤト・アステールに目を向けた。
「俺が勘定するのか? じゃあ、かぶったら負けな」
「ネコ、イヌ、ネズミ、リス、イノシシ、クマ、ウマ‥‥」
動物そのものには並みの知識しかないが、確かな基礎教養と、狩りというか、釣りを通じて得た知識でアンカが食い下がる。
「──ウサギ、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、オオカミ、キツネ‥‥」
一方、ローベは動物に関わるものとして、それなりに豊富な知識を持っており、安定した地力で方面から斬りこんでいった。
「じゃあ、ちょうどキリがイイから五種類ずつ名前を言って、思いつかない方が負けだな」
ハヤトが言うことで、ルールは明確化し、勝敗の線引きがくっきりとなった。
(く、アンカちゃんはサカナだったらもっと食い下がれたのに)
手に汗を握る、
エア・カイザーだった。
エアの想いは通じず、戦いはローベの勝ちとなった。
「負けは負けなのです。アンカちゃんは言う事聞くのですよ──くっ、殺せ」
「殺さない、メシ作る。シカ肉獲ったばかり、うまいメシを食いたい」
◆技の試練──走る走るオレたち
「じゃあ、俺の番な」
ハヤトがずずいと前に出る。
「勝ったら何でも言う事を聞いてくれるってんならやったろーじゃねーか!」
たぎる闘気を隠さずに宣言。
「身軽さ勝負かスピード勝負か‥‥どっちでも構わねぇぜ♪」
「じゃあ、かけっこ。どっちが速く走れるか」
ローベの言葉だ。基礎的な運動能力が試されそうである。
目標は二百メートル先の岩。
「男に二言はねえ、受けて立つ! 魔法を使うからな、先に言うぞ」
「俺はシシバに走ってもらうから」
ハヤトの言葉に、ローベは自分の相棒である四本尻尾のギアッチャーレオ、シシバの背中を叩く。
「なーに、いいハンデだ」
歯を剥きだして笑うハヤト。
「じゃあ、うちがあいずしたる──よーいどんや」
手を振り下ろす、
ガーベラ。
「うおおおお!」
ハヤト走る! 基礎的な運動の技術を磨いている。
しかし、何の鍛錬もしない獣はなぜ強いか? 生まれつき強いからだ。
「負けたぜ‥‥完敗だ」
ハヤトは大地に大の字になって横たわる。
「負けを認める? なら、食事が終わったら洗い物する‥‥」
ローベの言葉だ。
◆技の試練──飛んで飛んで‥‥
「出番だよー」
エアがバク転しながら宣言。
「では軽業勝負で☆」
言いながらシシバと目を合わせる。
(──白い獅子‥‥名のある幻獣なのかな? 凄く高貴な雰囲気を漂わせてるなぁ)
とと、勝負かぁ‥‥力自慢はエクス従兄さんがいるし、僕は義賊らしく技勝負!
「じゃあ、あの木のてっぺんに道具を使わず早く上った方が勝ち! ガーベラ、合図よろしく」
エアは言って十メートルほどの木を指定する。
「よろしくされたで!」
ガーベラもうなずく、ローベも勝負に同意してうなずく。
そして、ガーベラが合図すると、エアは枝から枝へ、鳥のごとく駆けあがっていった。
ローベは自分で上がる。思ったより早く、エアが軽業の鍛錬をしていなければ、負けていたかもしれない。
「つまり、アイアム、ナンバーワン!」
梢まで昇りつめ、勝利宣言するエア。
「さあ、負けたからには最新情報を公開してもらうよ! それが敗北の味さ」
「分かった──」
まあ、ローベから聞け情報は、ローレック城の図書館で調べれば分かる程度のものだ。
「それ知ってるよ‥‥」
「言われても困る。森の深いところに行ったら帰ってこれないから、大したこと知らない」
「まあ、浅いところでもそういうギアッチャーレオだっけ? が住んでいることを忘れないようにしようと、っと」
忘却オーラがあるから、それも不確かだが。
◆力の試練──ハウンド、体力はいいぞ
そして、
マリカ・ピエリーニと、
エクス・カイザーの番。
「戦いを求めるのは戦士のサガ──ならばそれに全力で答えるのも戦士の勤めというもの! ならば美しく戦いましょう!」
「白き獅子か、まさに我らの百獣王だ」
胸にその紋章を抱けたら、どんな恐れも抱かないだろう‥‥エクスはそう考えた。
「で、勝負内容だけど単純な力比べだと美しくないわよね‥‥ならば選択肢はひとつ! 模擬戦ね」
エクスもうなずく。
「二体二で勝負しよう。ローベが納得を行くなら断る理由はない──美しいかどうか‥‥は、さておき」
エクスも闘志がみなぎる。
「但し、どんな魔法を使うかは先に明かしておく──最新情報を公開しよう!」
武器の重みを活かす、スマッシュ。熱い気の弾を打ち出す、ルミナショット。素手に魔力を宿らせるルミナパワー。いかなる防御を貫くエクスプロージョン。
それがエクス・カイザーの持ち札。
「じゃあ、私も恥じないように」
マリカはそう言って、手札をオープン。スマッシュ、ルミナパワー、エクスプロージョンはエクスとおなじ。でも、戦技魔法で防御を固めるガード、素手の戦闘術、ストライクがある。
「分かった。俺は魔法は使えない。でも、シシバは魔法を使う。あと、姿消せる」
ローベが明かした手の内。それはシシバは水属性のヴォルセルクの魔法をすべて使えるのではないか? ということだった。
模擬戦ならいざ知らず、実戦なら格段の能力を持つということだ。
模擬戦は傷を負ったらその時点で負けというルールになった、武器防具は問題なし。
疾風のように早く動くシシバ。それをマリカは十分な防具で受け止める。準備しておいたガードは伊達ではなかった。
マリカは近距離から、裏拳を浴びせる。
しかし、その先には虚空のみ。素晴らしい瞬発力でシシバは攻撃をかわしていた。
逆にそこに挑むエクス。ルミナパワーの力を加えて、真銀のナックルが唸る。
かわし切れないシシバだが、攻撃は浅い。血を流すには至らない。
そこに割って入るローベのムチ。年にしてはやる方だが、ハウンドの修練からすれば止まっているに等しい。
風を切るような攻撃を余裕を持って見切り、逆に先端をつかみ取る。
とっさに手を放すローベ。
そこにマリカが飛び込む。疾風の如く速く、炎のように熱い一撃を喰らわせた。ローベリタイア。
一方で、シシバに迫るエクス。腰の回転を加えた、一撃をシシバに浴びせる。
一発、二発と続けざま。かわし切れないシシバ。
入神の一撃だった。エクスの側に今日は女神がついていたのだろう。そうとさえ思える。
「はうんどのかちや!」
ガーベラが宣言。
肩で息をするエクスとマリカ。
「勝ったけど‥‥質問を考えてなかった」
マリカは笑みを浮かべる。
「じゃあ、その分もいいか?」
エクスの問いにマリカは同意する。
「質問は‥‥我らと友達になれないか? だな」
エクスの問いにローベは笑みを浮かべた。
「なれる。今から友達だ」
まじめにうなずくローベ。
「よし!」
握手するエクスとローベ。
こうしてひとつの、いやふたつの友誼が結ばれた。帰らずの森の核心にこそ迫れないが、それなりに素晴らしいものだ。
だから──ハウンドの探索は‥‥つづく!
8
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参加者
| | b.白獅子か…かっけぇじゃねーか♪
| | ハヤト・アステール(da0375) ♂ 23歳 カーシー(中型) ヴォルセルク 風 | | |
| | c.私は誰の挑戦も受ける! 美しく戦いましょう!
| | マリカ・ピエリーニ(da1228) ♀ 29歳 人間 ヴォルセルク 火 | | |
| | c.勇者を志す者として、受けて立たねばなるまい
| | エクス・カイザー(da1679) ♂ 30歳 人間 ヴォルセルク 火 | | |
| | a.ダーク、ライトを問わず森の中ではエルフが法律なのです。
| | アンカ・ダエジフ(da1743) ♀ 26歳 ダークエルフ パドマ 水 | | |
| | b.では、軽業勝負で☆ 腕自慢は任せた☆
| | エア・カイザー(da1849) ♀ 28歳 人間 ヴォルセルク 風 | | |
| ええな、あたまにのってみたいなあ、あのしろいらいおん | | |
白い獅子
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なんて美しい──大理石を削りだした獅子と、黒曜石で出来た少年の様じゃないかい(帰らずの森にて、某ハウンド)
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