祝☆おつかい!

担当成瀬丈二
出発2020/02/18
種類ショート 日常
結果成功
MVPラライヤ・ナンシー(da1003)

オープニング

◆SheWasKillerQueen
 KillerQueenの昼下がり──。
「いや、それギルドでやる必要ないから」
 パイロ・シルヴァン金羊騎士団団長の依頼を、某ハウンドはさらりと躱した。
「たのむ! これっきりだから」
「いや、子供のお使いだろうが!」

登場キャラ

リプレイ

◆00
(楽しく飲んでたら朝になってたよね! ウィールに怒られそうだけど、早々に寝落ちてるよね‥‥きっと)
 と、朝帰りを正当化しようとする、リザ・アレクサンデルだった。
 彼が昨晩、どこで何をしていたかは──語るまい。
(朝一番で帰って寝床に潜り込めばいつ帰ってきたかわかんないよね‥‥! んん?)
 リザは小柄な影が両手でバスケットを抱えて、てくてくと歩くのを発見。
(こんな朝早くからこんな小さな子が何してるんだろ? あれ、確か去年どこかで見たような)
 多分、外見からすると五歳から六歳、おそらく女の子だろう。

◆01
 一方、てくてくと歩く影──アリシア・シルヴァンの朝は早い。
 頭の中があくびしているような雰囲気だ。
「あれ?」
 たまたま振り返ると、自分を見ていたリザと視線が合う。
「おはよう──あ、思い出した」
 彼女は、金羊騎士団団長、パイロ・シルヴァンの娘だ。
 確か、リザが会ったときは、ゴーストに憑依されていた。
 その後で、シフールになりたいと言い出したとか、父親の悩みを作っている。
(でも、なんで? 薬草摘みとかに行く格好じゃなさそうだし)
「どうしたのかな? 不審者じゃないよ、ハウンドだよ」
「ハウンド、アリシアを助けてくれた勇者さま!」
 目をキラキラさせる、アリシア。
「あのねアリシア、タマゴ買いに行くの‥‥青空市場で一番おっきなタマゴ買うの」
「一番、おっきなタマゴ‥‥ドラゴンのタマゴかな?」
 多分、ドラゴンはタマゴを産むだろう。
 深く考えると、リザも断言はできない。
 しかし、おそらくドラゴンのタマゴは青空市場では売ってない。
 そのはずだ。
(大丈夫かな?)
 リザの父性本能が軽くうずいた。
「分かりました、不肖な勇者ですが、エスコートさせて頂けますか?」
「わーい!」

◆02
「ばびゅーん!」
 効果音を口にして飛んでいるのは、シフールの、チャウだ。
「あれ~なにしてんのかな~?」
 チャウの問いかけ。言いながらアリシアのもとに降りてくる。
「わーいシフールだ!」
 手を振るオーバーアクションのアリシア。
「あれ、チャウ?」
「わーい、リザ?」
 思いがけない遭遇にお互い、確認する。
「ねーねー、どうしたの? ショコラ食べる? 甘くて美味しいよ~?」
 たすき掛けにしたバッグからショコラを取り出すチャウ。
 アリシアはショコラを一口かじる。
「わーい。さすが勇者さまだーあまーい、口の中がとろけそうなの」
 ショコラは発見されて間もない。人生最初のショコラでアリシアは幸せそうだった。
「友達から貰ったショコラだったけど、喜んでくれてうれしいの‥‥ふむふむ──ふーん、お使いの途中なんだ? 凄いね~」
 腕を組んでうなずくチャウ。
「私もお使いする事あるけど、直ぐに忘れちゃうんだ~」
 言いながらけらけら笑う。
「あのね、アリシア一番大きなショコラ買いに行くの」
「あれ、アリシアちゃんは一番大きなタマゴ買いに行くんじゃ‥‥」
 リザがツッコミに回らざるを得ないほど、アリシアはフリーダムであった。
「一番大きなショコラ‥‥食べたいよね」
 チャウも釣られる。

◆03
「‥‥リザ」
 目じりを押さえるのは、ベドウィール・ブランウェンだった。
(アリシアさんが、目的のタマゴを、金銭と引き換えに手に入れ、持ち帰る‥‥)
 分析を開始する、べドウィール。
(これだけなら五歳ならそこまで難しくはないでしょう)
 少しバスケットの扱いが乱暴な気がするが、そこはそれ。
(とはいえ、出入りの激しい大都市の、固定店舗ではない市場、出発地点は高級住宅街)
 そこでいったん思考を整理。
(となると、ある程度整った格好のはず)
 条件を確認するべドウィール。
(手には空っぽのバスケット‥‥買い物へ向かうなら、お金を持っている──と、いうところが危険要素でしょうか)
 自分の胸中を解体していく、べドウィール。自分を過大評価している訳ではないが、おそらく間違ってはいないはずだ。
「まあ、実際には警らもあるでしょうし──余程の事が無ければ大丈夫でしょうが、パイロ団長、心配はわかります」
(隠れて見守り、避けられなさそうな危険はこっそり排除するつもりでしたが、一番の危険がリザな気がしますね)
 昨夜リザが帰宅していないのですが、どこで遊んでいるかと思えば‥‥いえ心配はあまりしていないはずでしたが。
「どうしましょう、なにかやらかす前に排除した方がいいんでしょうか‥‥?」

◆04
 一方、ラライヤ・ナンシーの朝は早い。
(初めてのお使い──とっても大切なイベントだと思います♪)
 尊いものを見る視線。
(子供の成長を感じるのはうれしいことですし、お嬢様にとっても自分はなんでもできるって思いたいでしょう☆)
 そして拳を強く握り。
(‥‥これはぜひギルドで愛で‥‥‥‥支援しましょう!)
 言ってラライヤは、自分の行動を振り返る。青空市場に先回りしたラライヤ。
 彼女は、タマゴを扱っている方や、他の商店をめぐる。
 そこで、これくらいの背の女の子が、タマゴを買いに訪れるので気づいたら、見守ってほしい。
 と、前置きし。
 迷っている様なら行き先を聞いたり、助言をしてほしい、そう、お願いして回っただけで手イッパイであった。
 多分、半分回れたかどうか怪しい。
 ともあれ、ラライヤは自分が侍女姿なので、他のハウンドの皆様よりは、目立たないのではと思っていた──。
「あら、お嬢様? 青空市場まで? 奇遇ですね」
 ラライヤは、同じ方向に向かう振りをして、世間話をする。
 その一方で、リザとチャウには目配せして『言うなよ、言うなよ』と圧をかけた。
「おや、リザ‥‥朝帰りとはいい身分ですね?」
 べドウィールも顔を出す。
「あれ、ウィールも朝帰り?」
 リザがそれに応えた。
「今、出かけたところです」

◆05
「あらら、タマゴですか、いくつ買ってくるんですか?」
 ラライヤがさり気なく話を誘導する。
「やっつ。一番大きいの」
 アリシアが両手を広げる。
「あれ、ジョーコーも買うの」
 ジョーコーとは多分、ショコラだろう。
 話を聞いていたべドウィールはそう感じた。
 ともあれ、アリシアの口の周りが汚れているのに気づくと、ラライヤはハンカチを取り出し、軽くそれをぬぐう。
「市場が近いからはぐれないように、手を握ってよろしいですか?」
 ラライヤの問いかけ。
「うん!」
 アリシアは元気よくうなずいた。
「リザも手を握りましょうか、はぐれないように」
「ウィール‥‥グーで殴るよ」
 べドウィールとリザのやり取りに便乗して、チャウがリザの頭の上に乗る。
「わーい」
「少し重いね」
 リザの感想に、動じないチャウだった。
 そして、一歩青空市場に踏み込んだアリシア。
 一番手近なタマゴを売っている店で、タマゴを八個買う。
 多分、安い店や、いいタマゴを売っている店を探すという発想がないのだ。
 バスケットの中のタマゴを何度も数えて、ご満悦。
「じゃあ、帰るね」
 言って元気よく歩き出す。
 バスケットを大きく上下させながら。
 おっと!
 タマゴがみっつこぼれ落ちた。
 ラライヤはエビぞりになりながら、右手でふたつ、左手でひとつを受け止める。
「お嬢さまお気をつけください。」
 べドウィールは思った。これからが本番だと。
 チャウがタマゴを回収する。
「気をつけよー、オー!」
 拳を握りしめ、天高くつき上げる。
 そして、しばらく歩き、パイロの館に帰り着く。
「ありがとう、また買い物いこーね!」
 家令ではなく、パイロが玄関を開け、顔を出す。
 ハウンドたちに気づくと片手で拝むようなジェスチャーをした。
「さて、朝帰りとしゃれこみますか」
 べドウィールの言葉に一同は、朝飯がまだだと気づくのだった。
 ──しかし、ハウンドの朝は‥‥つづく!



 7

参加者

c.んん?こんな朝っぱらからなにごと?
リザ・アレクサンデル(da0911)
♂ 23歳 人間 ヴォルセルク 水
b.お嬢様は全部自力でやりきったと感じたいのですね♪(ほほえま~☆)
ラライヤ・ナンシー(da1003)
♀ 22歳 人間 カムイ 風
b.こっそりと見守りましょう。…おや、あれは…?
ベドウィール・ブランウェン(da1124)
♂ 27歳 人間 ヴォルセルク 月
c.あれ~、何してんのかな~?
チャウ(da1836)
♀ ?歳 シフール カムイ 月
 頼む。娘を──あの子は妻の忘れ形見なんだ!
パイロ・シルヴァン(dz0039)
♂ 39歳 人間 無


はじめてのおつかい

なんとなく、パパがアリシアのおつかいをじゃまする気がするの。たまごをかうくらいなんてことないわよね?