オープニング
◆サンドラの風、熱い風
ガーベラがエリソンという、魔物使いの上位に位置する男を追ってきたのは、依頼あっての事だった。
何でも地元のハンターギルドでは、捕まえようにも難しい、さじを投げるような相手らしい(もっとも、サンドラでギルドと一口にいっても、様々なものがある)。
その力の由縁は、二匹のフィールドドラゴン‥‥らしい、サンドラのギルドの言を信じれば、だが。
これだけでも相当面倒だ。と、ガーベラは考える。
加えた要素として、エリソンは現地の山賊を味方にしているのだ。十人弱と微々たる数だが、エリソンを直撃できないのは、正直面倒だ。
だが、ハンターギルドの苦戦を見て、依頼主の領主がエリソンおよびドラゴンの生け捕りに拘らなくなった。
要は、死体を持って帰ればよい――本来ならば自分に従えたかったのかもしれないが。ともかくこの変更で、ハウンドたちには少し楽になっただろう。
◆ハウンドのライフはもうゼロよ!
では如何にして、山賊を討伐するか、だが──状況は、少し変わった。
地元ハンターギルドが、ある程度山賊を打ち倒し、エリソンを守る山賊はもはや一桁前半とのこと。残る者は岩場が入り組んだ山岳地帯に逃げ込んだそうだ。
よし、早くエリソンをどうにかしよう。そして、勝利の美酒をハンターギルドに奢ってやるのもいいかもしれない。
「さて、どないしよ」
ガーベラは腕を組む。
ドラゴンという敵、しかも二匹。噂ではエリソンは、必ず自分の護衛に一体は、ドラゴンを身辺に置くらしい。
山賊の生き残りも面倒だろう。岩場の上から奇襲などをするかもしれない。
だが、ハウンドの勇気を信じよう──ハウンドのターン始まる!
選択肢
マスターより
ドラゴン、それは浪漫。
まあ、イロイロありますが、ドラゴンを生け捕りに出来ても、皆さんの所持品にはなりません(笑)。一応、領主様が回収します。
生け捕りにすれば、大成功くらいに思ってください。
では、皆さんの参加をお待ちしています。
登場キャラ
◆1
疲弊した山賊など、人数で倍はおり、個々の実力で圧倒するハウンドの敵ではなかった。
まさに鎧袖一触。山賊はあっという間に蹴散らされ、捕縛された。
無論、ハウンドらの本当の仕事はここから。皆は山のさらなる高みを睨むのだった。
待っているのは魔物使いマスターと、その配下たるフィールドドラゴンだ。
「運が良かったですね。ちょっと遅かったら、魔法で一掃してましたよ‥‥さて、みなさん」
オチを自分でつけた、
アンカ・ダエジフ。
「これから攻撃魔法を撃ちますので、アンカちゃんの前にいない方がいいです」
彼女がこれから撃つのは、ヴィンドスヴァル。対フィールドドラゴン戦の決戦的な魔法だ。
「場所が入り組んだ岩場なら、逆にドラゴンを狭い所に誘い込めば‥‥?」
その精神のもとに、
エクス・カイザーは魔法の箒で上空から偵察、フィールドドラゴンの位置を把握、誘導して、現在一体を分断した。
強大な敵、二匹に正面からぶつかることはない。
とはいえ、最後に勝負を決するのは、知恵と勇気だ。
「任せたぞ、皆!」
「よし、任された──いいな、イカヅチ」
そう言う
ハヤト・アステール。
彼は、自分の相棒のフィールドドラゴン──見ようによっては山吹色に見えるかもしれない──の鼻面をなでる。
◆2
「ドラゴン‥‥まさか戦うことになるとはね──しかも、敵味方両方にいる‥‥相当堅いでしょうが、要は倒せるまで攻撃すればよいことよ」
グリーヴァファングを握りしめる、
マリカ・ピエリーニだった。
倒すまで攻撃する──言葉にすれば簡単だが、相手の攻撃をしのぎ切るだけの守備力が必要だ。
彼女はすでにルミナパワーとストライクを成就している。攻撃力はあるのだが‥‥。
ディレクトガガで、
エリアル・ウィンフィールドはすでにガーゴイルを具現化している。
岩塩で出来たような、少女の彫像。その眠りをもたらす拳がどう、戦局を変えるだろうか?
「仕留めても構わんと言うのは、正直助かるが、出来れば殺生は控えたいのである」
ノワール・トゥーナインは遠くを見る目で呟く。
「しかし、仲間の命を天秤にかけたなら、迷う事なく敵の命を奪おう」
とはいえ、彼の戦闘脳はためらわず宣言させる。
同時に全長二メートルを超すグリーヴァオオダチでは、懐に飛び込めば一方的に不利になるとも判断した。
「本気で行く! 後は御主の生命力次第。死んでも恨むでないぞ?」
「竜の鱗は、二回に一回くらい攻撃が弾かれる‥‥ならば、ダブルアタックすれば多分有効!!」
ダブルアタックの戦技魔法を成就した、
エア・カイザーも勇む。
「ダブルアタックの二刀流なら一回は通る筈!!」
無力化できる道具は備えた。後は幸運のみ!
「急ぎ、ましょう。私は、周りの、警戒を、します。これでも、私、目は、良いん、ですよ? 魔法込み、ですけど」
ルミナリィの魔法を成就した、
ソレイユ・フォリー。
今の彼女に死角はない。
「今回、私は、皆さんの、補助を、行います。殺さない、方が、良いん、ですよね?私が、やると、多分、ヤっちゃうから、ククク‥‥こほん、失礼」
ノワールは、それを聞いて。
「殺せないのと、殺さないのとでは、まったく意味合いが違うのである」
ソレイユはシッポから力がなくなる。
「‥‥ウン‥‥じゃあ、殺したり、しない。ゼッタイ、しない。デモ、奇襲するナラ、来ればイイわヨ? アタシがミツケテアゲル♪
冷ややかにして狂気を感じさせるソレイユの言葉に、降伏した山賊たちは震えあがった。
◆3
「──ヴィンドスヴァル」
アンカの魔法の杖の先端から吹雪が迸る。
冷気の中、咆哮をあげるフィールドドラゴン。まさに畏怖すべき存在!
お互いの先手は、魂まで凍りつくようだ。
「コレガ、恐怖?」
「勇者は屈せぬ」
「──!」
ソレイユとエクス、それにアンカが咆哮により、動きから生彩を欠いてしまう。
しかし、その大きすぎる代償と引き換えに、フィールドドラゴンはヴィンドスヴァルを弾けなかった。
とはいえ、フィールドドラゴンは凍てついていない。
「一撃、二撃、双撃必殺!」
エアがカゲヌイブレードを左右から変幻自在な動きで繰り出す。
初撃をかわすドラゴン。
そして、次手はウロコではじく。
「破ッ!」
ルミナパワーの魔法を付与した、グリーヴァオオダチでノワールは斬りかかる。
動きに無駄なく追従し、鱗を破りさる。
赤い血が流れた。
次の瞬間、ドラゴンは倒れた。
エリアルが使役するガーゴイルのソルティドールが乱撃のスキを抜いて攻撃をしかけたのだ。その触れたものは眠りの園へと引きずり込まれる。
体力が落ちれば、気力も萎える、その理論によりフィールドドラゴンは抵抗力を落としたのだ。
◆4
「後ろから、来るヨ!」
ソレイユのルミナリィによる視界は、岩場を迂回してきた魔物使いマスターと彼がまたがる、もう一匹のフィールドドラゴンの姿を捕える。
空中から向かうエクス、マリカ。そして、ドラゴンの上空を飛びながら、前進するハヤト。
「以外だったな、後ろから回り込むとは──」
ハヤトがサンダーマンモスの牙と、竜の牙から削りだされた、ドラゴンアローを構える。
ダブルアタックとオフシフトは付与済みだ。
「‥‥」
無言で魔物使いマスターは鞭を振り回す。
「ヴィンドスヴァル──ハイハイ、アンカちゃんの出番です」
アンカも遠距離から支援。
フィールドドラゴンは鱗ではじき無傷。とはいえ、魔物使いマスターは直撃。逆に背中にはしがみついた。
「悪を止めるまで、殴るのを止めません!」
マリカがグリーヴァファングで、フィールドドラゴンを殴りつける。
「グオオー!」
フィールドドラゴンの無粋な苦悶が聞こえる!
「生死、問わず、だから」
魔物使いマスターに下から、真銀製のスピアを突き上げるソレイユ。
男の悲鳴が聞こえた。そのまま、転がり落ちていく。
「喰らうか! 赤い稲妻を!」
ハヤトの戦場仕込みの一撃を受ける、フィールドドラゴン。
両方ともに、鱗の防御を突き破る。
それでも、ドラゴンは必死の反撃を繰り出す。
しかし、それを受け止めるハヤトのイカヅチ。
超重量戦。ドラゴン同士の肉弾戦だ。竜の鱗で互いの攻撃を弾き合う中、割って入った強者もいる。
マリカとエクスだ。
ふたりともに火のヴォルセルク。
切り札は肉弾戦からのエクスプロージョン。
鱗の防御力の前にどこまで食い下がれるか、まさに大バクチだ。
エクスは箒から飛び降り、フィールドドラゴンの首もとに降り立つ。
「当たれ!」
勢いよく突き出された拳。
鱗の前に阻まれるルミナパワーを以てしても阻まれる。
──!
次の瞬間、ドラゴンが苦悶の悲鳴をあげた。
エクスプロージョンを流し込んだ。
首元とは言わないが、肩口が弾けていく。
「行ける!」
返り血を浴びたエクスが勝利を確信する。突っ込むマリカ──ドラゴン同士の戦いという均衡を崩したのだ。
ならば徹底的に打つべし!
◆5
「失礼して!」
グリーヴァファングを突き立てる。こちらの攻撃は弾かれない。幸運の女神は微笑んでいる。
しかし、突き立ったのはシッポの付け根だ。
だが、魔力を叩き込んだ。
同じくエクスプロージョン。
結界越しであろうと、痛打を与えうる攻撃だ。
アンカが何か言っている。鱗を取って欲しいようだ。
ダークエルフであるアンカはジュソと呼ばれる魔法を使える、傷だけでなく、魔法的にも攻撃し、抵抗力を弱めるのだ。
「ほほほ、期待には応えねば」
エリアルが意図を察する。
彼女のソルティドールは、攻撃した相手を眠りの園に送り込む。
それでも、必ず効力があるとは限らない。抵抗を打ち破る確率を高めるのだ。
乱戦の中、マリカが鱗を拾い、アンカに届ける。
その鱗がジュソの媒体だ。
「──ジュソ」
フィールドドラゴンは動きが鈍る。それに乗じて、イカヅチが攻め立てた。
「これできまりどす」
返り血を浴びながら、エリアルのソルティドールが勝負を決した。
「お眠どすえ、とっとと縛っておくれやす」
エリアルはロープも準備。予定していたカーゴは、馬車に対し大きすぎたため牽引を諦め、ここにはない。しかし、馬車があるだけでも大きな力となる。
荷台にドラゴンの首を載せれば、あとは、多数の人力で運べなくもない。
ドラゴンを戒めるのは、団結‥‥そう、美しい言葉だ。
「イカヅチ良くやったな」
血まみれのイカヅチの鼻面を撫でるハヤトだった。
◆6
フィールドドラゴンは大人しく、分けられて、連れられて行く。
両者ともジュソにより、行動を縛られ抵抗が十全の力でできない。
生け捕りにしてほしいと言い出した、とうの領主が、このフィールドドラゴンたちと、瀕死の魔物使いマスター・エリソンをどう扱うかは分からない。
「へんなことにつかわんとええな」
ガーベラは怪訝な顔をする。
「エリソンはドラゴンを従える。領主は、エリソンを従える‥‥力を正しく使う器である、と信じるしかありまへんな」
エリアルはそう言う。近場に相棒がいるハヤトとしては、イカヅチのように幸せになって欲しいと祈るのみ。
「まあ、なるようになる──か?」
その一方──。
「本当に二匹捕まえた──」
マリカはその光景を背後から見送る。
「捕まえたのですよ、我々が」
エアもその実感を改めて感じる。
「不必要な殺傷はしない。これは勇者としては大事な考えか」
そういうエクス。自分たちが強いから殺さずに済んだ。
「精力善用ですかね。いやぁ、間違っていませんね」
アンカは腕を組んで、幾度もうなずく。
「ソレイユも助かったのである。これからも相棒でいてくれ」
最高の『戦友』ソレイユに笑みを向けるノワール。
「‥‥ノワールの、背中は、いつだって、守るよ」
「うむ」
この後、ハウンドたちはオーディア島に帰還する。
いつもの様に、さりげない勇者たち。
だから‥‥ハウンドの戦いは──つづく!
8
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参加者
| | a.フィールドドラゴンは回避が高い上に竜鱗持ちだから厄介だぜ!
| | ハヤト・アステール(da0375) ♂ 23歳 カーシー(中型) ヴォルセルク 風 | | |
| | a.ドラゴンね。…相手に不足はないわ!
| | マリカ・ピエリーニ(da1228) ♀ 29歳 人間 ヴォルセルク 火 | | |
| | a.よろしくお願いします。
| | エリアル・ウィンフィールド(da1357) ♀ 49歳 ダークエルフ マイスター 水 | | |
| | c.場所が入り組んだ岩場なら、逆にドラゴンを狭所に誘い込めば…?
| | エクス・カイザー(da1679) ♂ 30歳 人間 ヴォルセルク 火 | | |
| | b.初手でヴィンドスヴァルを放ちますので、前衛の方は注意してください
| | アンカ・ダエジフ(da1743) ♀ 26歳 ダークエルフ パドマ 水 | | |
| | a.本気で行く、死んでも恨むなよ?
| | ノワール・トゥーナイン(da1749) ♂ 29歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 風 | | |
| | c.奇襲は、見逃し、ません
| | ソレイユ・フォリー(da1795) ♀ 22歳 カーシー(小型) ヴォルセルク 陽 | | |
| | a.半分の確率で無力化されるなら、ダブルアタックなら多分有効!!
| | エア・カイザー(da1849) ♀ 28歳 人間 ヴォルセルク 風 | | |
頭がみっつ、尻尾二本
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え? 「ひ」とかはかないんか? かいしょうがないどらごんやなぁ(ハウンドギルドG嬢談)
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