オープニング
◆ありがちな暑さ
オーディア島は冬だ。
しかし、ムーンポータルで移動した先のサンドラは灼熱だった。
「うわーあついでー」
温度差でガーベラはノックアウト寸前。シフールはタフボーイ&ガールという訳にはいかない‥‥かもしれない。
そもそも、陽の大神殿の資材を採る場所に新しい地を見つけ、そこで資材調達に奴隷を十人送り込んだが、四人が帰ってこないという。
半数弱が脱走したか、事故にあったか──ということだろう。
現場担当のアハメスさんは、それなりに慈悲深いので、事故で帰れないと考え、上に陳情、事件から一週間経て、ハウンドギルドから要員を派遣してもらったのだ。
奴隷たちが向かった先は半分砂、半分荒野の地帯だ。
そこで珍しい石が取れる。
◆背筋の寒さ
気温が激しく熱い時間を避け、黄昏時にハウンドたちは出向く。いた。
ガーベラが空中から偵察すると、ところどころに不自然な地面があったと報告する。
まるでそこだけ、素材が違うかのように、土や砂が密集しているのだ。
箒などの手段で空中から調べると、十か所以上、不自然な地面がある。
それらは地下に通じるらしい穴を中心に同心円状に配置されていた。
四か所で、奴隷のものと思しき道具が近場にあり、中央の穴めがけて引きずられた痕跡があった。
小さな足跡がいくつかある、四本足から十本脚だろう。
仔細は不明だが、おそらく哺乳類ではない。
さらに痕跡を確認するほど近寄るか? 急がねば極寒の夜が来る。
◆黄昏の誓い
アハメスさんが思ったのは、まるで中央の穴にいる何かに捧げられたようだ、ということだった。
「お願いです、ハウンドのみなさん。一週間も経っているので、奴隷たちのコトは楽観視してません。しかし、悲劇を繰り返さないために、夜明けに穴を調査していただけないでしょうか」
「まかせてくれや!」
ガーベラがクシャミとともに決意を示す。
ハウンドの戦いが始まる。
選択肢
a.まず空中で調査 | b.まず地上を調査 |
c.有事に待機する | z.その他・未選択 |
マスターより
成瀬です、今回はサンドラが舞台です。まあ、ここまで読んでいただければわかりますよね。
なお、採れる石と事件は関係がないです。奴隷が来た理由だけですので、それは考慮外で大丈夫です。
今回の果たすべき条件は奴隷が行方不明になる原因の究明と解決です。
究明だけでも問題ありません。
しかし、海外から呼んだハウンドですので、後者もしてくれるとアハメスさんは思っています。
では、良きに計らってください。
登場キャラ
◆東から登った日輪が──
「足元に注意しつつ慎重に‥‥」
基本的原則を打ち出すのは、
ベドウィール・ブランウェンだ。
「上からの偵察を踏まえ、慎重に調査しましょう──不自然な地形は罠の可能性もあります」
そこで特殊論に入る。
「魔法はデスではないかという、意見もあります。私はミタマギリをリザと自分に1回ずつで打ち止めですね」
デスだとすれば、魔力を温存すれば、無力化できる可能性が大きい。後は普段の生活態度とか。
「解毒薬は‥‥毒の種類によっては自力で飲めない場合もありますが、まあ、何とかなるでしょう。
ガーベラさんも非常用におひとつ、いかがですか?」
ガーベラ曰く。
「もらうたで‥‥いやいや、借りるで」
「はいはい、トイチですよ、カラス銭やヒサンの方がいいですか」
にこやかなべドウィール。
「とりあえず、そらから、やをブチこんでみればわかるわよね!」
と、
リリィが宣言。
「ざっとみたけど、じょうほうどおりほかとちがうトコロがあるわね。いっぱつブチこんでみればわかるかしら? なんかヤなよかんがするわね。このままなにもしないでまんなかのアナにいったら、マズイきがするわ」
「アナのなかにいくのなら、リリィは
ノワールについていくわよ! いろんはみとめないわ!」
如何にも異論を言いそうだったのは、
ソレイユ・フォリーだった。
しかし、口にしては──。
「様々な、魔法を、使えば、遠距離、からの、かんさつは、可能、です」
と、言い置いて、自身の意見を述べる。
「することは、敵の観察、殲滅による、状況の、改善。行方不明者、の、安否確認、及び、情報確保の、後、帰還。空と、地上、両面からの、情報を、統合して、状況を、把握、する事が、先決です。蜘蛛は、揚げると、美味と、聞きました、が、これは、煮ても焼いても、食べられそうに、ありません、ね」
(頑張って、誉めて、貰います。だから蜘蛛、死んで下さい、私の為に、くすくす)
「中心の穴にいるのが親玉だよね多分。魔力は余裕もっとくと安心かも‥‥?」
リザは一般論を述べる。
「蟻‥‥それよりグランドスパイダーとマザーかな‥‥? 中央の穴に引きずり込んでるなら、そこにマザーがいそうだ、もしそうなら、できればマザーを引きずり出し、速攻仕留めたい所だよね。デスは魔法を使い過ぎない事でガード出来そうだけど、毒はね‥‥子の方は詳しく知らないけど、こっちも毒を持ってるかもしれないし、マザーの習性を知っている範疇では‥‥子を叩いたら親が出てくるのかな‥‥そっかあ‥‥全部相手にしなきゃダメ‥‥?」
原因の究明が第一であり、除去は第二だ。それを一同が確認すると、リザはうなずいて。
「ムリはだめだよ、絶対ね──やっぱり、慎重に行こうっと」
◆戦いの時は今、戦いの時が来た!
「慎重に行くのどすえ? なら空中からの偵察は任せておくれやす。にしても、グランドスパイダーだったら、親御さんはどのあたりで出て来はるやろなぁ」
今回は、
エリアル・ウィンフィールドが空中からの偵察を行う。彼女は蜘蛛の糸が届かない上空から、炎のガーゴイルを投下しての、強行偵察だ。いっそ、リリィと組み合わせて、集中する方がいいのでは、という事になった。
「なるほど、大物が相手みたいだね‥‥魔力は出来るだけ温存だね。わかったよ」
と、納得するのは、
セイ・ローガンだった。
「これでも盗賊の端くれなんで、地上からの調査を引き受けるよ──足跡から節足動物が犯人らしいけど、暑い日中は出てこないとすると夜行性か‥‥いや気温が極寒になる中間の時刻に出てくるのか‥‥」
と、見解を述べる。
斧は背負って、火をつけたトーチを持っていく。糸を吐かれても焼き切れるだろう。
子蜘蛛でも数十センチはあるという、威嚇するまえに打ち倒す。
「仲間の推理じゃ厄介な魔法を使ってくるらしいけど、盾の特殊能力で防げるかね」
「無理です。皆さん、危険と判断したら逃げましょう。わたしはスタコラ逃げます」
述べるのは、
アンカ・ダエジフだった。
「その盾の力、魔法の対象にならない、というのは範囲魔法にはムリです。図書館にも書いてあります。範囲魔法には効かない、と」
セイの顔色が赤くなったり、青くなったり。ヴィンドスヴァル、デス──どちらにも効力を持たないのだ。
「足跡からクモカマならぬ蜘蛛が湧いたのは確定的に明らかですが、これは厄介です」
自分は遠方から攻撃するので、客観的あるいは、ひと事のように述べる。
「相手のデス対策に魔力温存は良さげですが、アンカちゃんは範囲魔法のヴィンドスヴァルでザコ蜘蛛を凍結させた方が有効っぽいので、みなを巻き込まないように使用宣言をしてから、詠唱に入りますので──覚悟するのです」
それを聞いたノワールは大きくうなずく。
「行動は慎重かつ迅速に、であるな。ふむ、これは嵐の前の静けさ‥‥と言うやつであるか?何が起こるかわからん。行動は慎重かつ迅速」
言ってノワールの日常脳は、戦闘脳に指揮権を明け渡す。
「ここから先は奴等の領域。覚悟はよいか? 五感を研ぎ澄ませ、安全が保証されていない以上警戒するに越したことはない」
◆蓋をつついて蜘蛛を出す
リリィが空中でオーバロードの『溜め』に入る。
目標は手近な蓋のような土砂の塊だ。そこにエリアルのガーゴイルも突入する。
「てー!」
勢いよく放たれた、リリィの矢が蓋を消し飛ばす。同時に何かが飛び出した。そう、それはグランドスパイダーだ。
エリアルのガーゴイル目がけて糸を吐きかける、それと同時にセイが飛び出し、距離を詰める。片手に斧、片手に火の点いた松明だ。
「ば、ばけものよ」
リリィが思ったより醜い怪物にピンチに陥ると、逆光を背に、ノワールが走り出す。
セイが斧を振り下ろした。
「セイ、気をつけるのである、別の蓋が開いたのである」
ノワールの言葉に、まかせて、とリザ。
水の剣、ブレードofローレライから刃が弧を描いて伸びていく。その刃はミタマギリの魔法が付与されている。
一撃を受けると、グランドスパイダーは動きを止める。魔力を削られ、失神したのだ。
「みなはん、あと十個以上あるどすえ、こんなん繰り返していたら、ラチがあかへんわ」
エリアルの言う蓋の数に一同はげんなりする。
「飛び道具もっとるんは、片っ端から蓋に打ち込んで、あぶりだすのや、後はアンカはんに任せるのや」
エリアルの打開案はアンカのヴィンドスヴァルを前提としたものだ。
パドマの範囲攻撃はこういう時にはありがたい。
「おやおや、いきなりの指名ですか? まあ、ひと肌もふた肌も脱ぎますけどね」
とアンカ談。
「マザーはどうします? まあ、仕方ないですか」
べドウィールが銀のダーツを構える、このダーツは放っても手元に戻ってくる特殊能力を持つ、優れものだ。
少々手荒ですが、と言い置いて、蓋の周囲に近づき、片端からダーツを放つ。
十匹を超えるグランドスパイダー。
アンカが杖を構えた。
白魔が吹き荒れる。
◆今度は戦争だ
「も、もう打ち止めなのです」
アンカがヴィンドスヴァルを成就し、魔力は底をついた。
「あとは任せて、後ろで待て」
セイが消えた松明を投げ捨て、盾を構える。
「では、遠慮なく」
アンカは後ろに下がる。
「出てきたのであるな、首魁」
ノワールが述べたとおり、ひときわ大きなマザーグランドスパイダーが、中央の穴から姿を現した。
「ちなみにミタマギリは時間が切れました。後は突撃あるのみです」
べドウィールの報告。リザはもっと早くからミタマギリとローレライは切れている。
「大丈夫です、私がいるのです」
ソレイユがノワールと一緒に前に進む。
サイズを持ったソレイユと、グリーヴァオオダチを構えたノワール。
「では、先陣を切らせていただきますさかい」
エリアルがダーツを投げる。続けてリリィが満身の力を込めて弓を引く。番えしは水晶の矢。
ダーツは当たり相手を凍てつかせる、リリィの矢は胴体に的中。
ソレイユとノワール、そして、セイ、ベドウィール、リザの五人がヴォルセルクの意地とばかりに斬りこんでいく。
殺到する乱刃。
グランドマザースパイダーはデスを成就する前に命を落とした。
◆日輪の輝きを背に受けて
「けっきょく、だれもたすからなかったわね」
腐肉のついた、骨を見下ろすリリィはCROSSに手を置く。
「そういう事もあるのである、仇はとった‥‥どれだけの慰めになるかは解からぬが」
ノワールの言葉に、ソレイユは軽く首を振りながら‥‥。
「でも、弔う、ことは、できると、思う」
「せやな。でも、いっしゅうかんつうのは、ながすぎたで‥‥」
ガーベラが奥歯を噛みしめる。
「魔法や毒を使うのや、一般人は逃げることもできへんどす」
エリアルは自分の言葉の後に──。
「だから、ハウンドがいるのどす」
──と。
「今回の事は手が回らなかった。サンドラの人にも、自分たちのことが、もっと知れればいいのですが」
べドウィールが目をつむったまま呟く。それに対しリザが膝でわき腹を突っついた。
「でもねウィール、僕たちも万能じゃないよ。まあ、無能という訳でもないけど」
「ま、給金分の仕事はした、と思うのです」
アンカの言葉に、セイは肩をすくめる。
「言いたいことは分かる。それでも、もう少し何か出来たかもしれない、完璧主義じゃないが」
報告を聞いたアハメスさんはハウンドたちに礼を言う。
「お疲れ様でした。みなさんゆっくり休んでいってください──戦士の休息です」
ムーンポータルのある場所に旅立つまでの時間、ハウンドたちはしばしの休暇を過ごした。
そしてオーディア島に帰るのだ。灼熱の大地から、麗しの島へ。
──そして、ハウンドの戦いは‥‥続く!
7
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参加者
| | b.中心の穴にいるのが親玉だよね多分。MPには余裕もっとくと安心かも…?
| | リザ・アレクサンデル(da0911) ♂ 23歳 人間 ヴォルセルク 水 | | |
| | b.足元に注意しつつ慎重に…
| | ベドウィール・ブランウェン(da1124) ♂ 27歳 人間 ヴォルセルク 月 | | |
| | b.親御さんはどのあたりで出て来はるやろなぁ。
| | エリアル・ウィンフィールド(da1357) ♀ 49歳 ダークエルフ マイスター 水 | | |
| | c.皆さん、危険と判断したら逃げましょう。わたしはスタコラ逃げます
| | アンカ・ダエジフ(da1743) ♀ 26歳 ダークエルフ パドマ 水 | | |
| | a.とりあえず、やをブチこんでみればわかるわよね!
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| | b.行動は慎重かつ迅速に、であるな
| | ノワール・トゥーナイン(da1749) ♂ 29歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 風 | | |
| | b.偵察、観察、情報収集、それが、先決です
| | ソレイユ・フォリー(da1795) ♀ 22歳 カーシー(小型) ヴォルセルク 陽 | | |
| | b.なるほど、大物が相手みたいだね…MPは出来るだけ温存だね。わかったよ
| | セイ・ローガン(da1834) ♀ 41歳 ドワーフ ヴォルセルク 火 | | |
一週間前の光景
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石があったか、これでアハメスさんに褒められる‥‥何か踏んだ? うわー何だこの怪物は! う、体が動──か‥‥な、い(奴隷の断末魔)
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