オープニング
◆レンの漁村
グレコニア南部、レンの海に面した漁村にハウンドたちは来た。
その漁村の村長は非常に大雑把な人物だ。
「別に布教に反対はせんが、うまい酒をくれればわしも便宜を図ってやる」
などと、のたまっていた。
そこで、ハウンドギルド支給の酒等を持ってやってきたハウンド。
案の定、村長は上機嫌で受け取り、宴の席が催された。
村民たちは浴びるように酒を飲み、ハウンドたちもそれにならうものが多めだ。
そこで、村長曰く。
「実はな、この二週間ほどで、村の若い衆が三人も死んだんじゃ」
いきなり物騒な話。
「皆、傷だらけで朝方に浜に打ち上げられておった、ひどい傷を負ってな」
多分、死んだというより、殺された‥‥という方が合っていそうだ。
「夜のうちに誰かに殺されて海に捨てられたのかのじゃないかと話しとるんじゃが」
宴には似合わない話だが、酔った勢いだろう。
「犯人がわからん。こんな状況で布教だの祝福だのいってものう」
いきなり話の前提を、ひっくり返すような事を言い出す村長。
◆血の匂いは海岸より
ともあれ、できれば解決したいが、死体はすでに埋葬されており、有力な目撃情報もないということだ。
そこへ大変な美人と美男子が村長に酒を注ぐ。
美人と美男子は、かなり『濃い』顔立ちをしており、一目見たら忘れられないインパクトがある。
また、種族はヒューマンに見えた。
「ありがとう。ああ、あの兄はスチュアート、妹はジェファーと言って、隣村から手伝いにくるんじゃよ」
言って酒を飲み干す村長。続けて酒を注ぐジェファー。
「しばらく泊まっていって、網の手入れとか魚の加工とかな。若いもんが浮かれていかんよ」
そう言う村長も鼻の下を伸ばしている。
その晩、なんだか様子のおかしい、ハウンドギルドの事務員のジェームズがいた。
「今日の夜は、ちょっと楽しみだな」
妙に落ち着きのない様子だ。
◆惨劇始まる
ヒューマンの女性の中には、スチュアートに声をかけられた者もいるという。
そして夜、皆が寝たと見るや、こっそり抜け出す様子が、あやしい!
追うハウンドたち。その先でジェファーが待っていた‥‥海辺をデート‥‥するとジェームズはジェファーにより海に突き飛ばされた。
盛大な水しぶきが上がる!
灯りで海面を照らし、よく見ると水中では兄のスチュアートがジェームズをがっちりホールドしていた。
ほぼ同時に、ジェファーが飛び込んだ! ジェームズの悲鳴があがる。
ジェファーの下半身は魚のそれに変わっていた。
鱗は何か特徴的な模様、まるで一枚一枚が髑髏(どくろ)の様だ。
そう、彼らのことを、ハウンドギルドではダークメロウと呼ぶ!
──伝道のため、ハウンドの戦いが‥‥始まる!
選択肢
マスターより
成瀬です、長い年末年始の休暇でした。
今回の相手はダークメロウ。ダークサイドですね。
なので、解呪して罪を償わせる。
あるいは、倒してこれ以上の罪の根を断つ。
‥‥その判断はみなさんに任されます。
では、皆さんが良き年始を過ごせますように。
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登場キャラ
◆01
月光と星明りが一同を照らしていた。
ジェームズを後ろから羽交い絞めにしたスチュアートとジェファーの兄妹の本性、ダークメロウを見た、
ハヤト・アステールは戦技魔法オフシフトを成就するや否や、
「ダークメロウ‥‥だと‥‥!? 俺好みの美人ちゃんだと思ったのによ!? ──オラァ!三枚におろされたくなかったら大人しくしやがれ!!」
言いながら踏み込もうとするが、如何にも足場は悪い。
(ち、向こうのペースで戦えば‥‥拙いってコトか。だが、向こうは逃げればそれで終わり、分の悪いバクチだな‥‥しかし、このハヤト、受けた勝負は大体逃げないからな!)
「水中活動は水着の効果頼みですが、出来そうな事はやってみますね」
「じゃあ、後の事考えとくかな? ギルドに解呪の手配頼みたいとこだけど、アニマル扱いなのが不安要素だよね」
軽く肩をすくめたい心境の、
ベドウィール・ブランウェンは、ミタマギリを幼馴染である、
リザ・アレクサンデルの手にした水の剣──ブレードofローレライに付与する、
「可能なら気絶で捕縛してギルドに解呪手配お願いしたいけど。解呪して‥‥その後は?」
ダークメロウは、確かにコモン語を発して意思疎通可能な種だ。しかし、ギルドなどの分類ではアニマル扱いらしいのが不安要素だ。
「‥‥その後は、リザがローレライを使う方が行動精度的に確実かなと」
あえてべドウィールは、リザの危惧を流す。多分どうしようもないことだ。
「解呪‥‥は俺じゃできないけど、捕まえて何とかできないかなあ」
不安げな、
ショウ・ジョーカーの胸中が漏れる。
(アニマルでもエルフィンでもヒューマンでも殺人犯は殺人犯、俺だって向けられる敵意には相応の暴力で返す。でも動機が霊修なら同情しちゃうよ)
「単にコモンを恨んでるだけかもしれないけど。知るためにも捕まえたい」
ショウは言いながら弓を構える。波打ち際のランタンが倒れないことを願いながらも。
「僕も同じだねぇ。それにしても、弓で狙えるかなぁ‥‥難しいかなぁ」
言いながら、ミドルボウを構える、
パライソ・レヴナントだ。
「後ろから弓で狙えるかなぁ‥‥海から顔を出しているタイミングを狙ってみるよ」
「うん」
うなずくショウ。パライソは呼吸を合わせる。
(ジェームズ君が助けられたら、診察しておかないとなぁ。今の手持ちの道具だと、応急手当くらいにはなるけど、一事が万事、大切だしねぇ。ダークメロウは解呪が難しそうなら倒してしまうのも手なんだけど‥‥どうなるかなぁ)
パライソにとっては、メロウに対しては、不老不死の薬等には特に興味もわかない上、コモン語が理解できて話の通じる相手を狩るつもりはない──のだが、ダークサイドならばどう考えるべきか、それはパライソ自身にとっても不分明だ。
◆02
「今だ!」
割って入る、
ヴェスパー・ベントの声。パライソとショウ『だけ』に向けられたものではない、沖の方にいる相棒──イルカに向けて発したものだ。イルカだけなら心が伝わるので、声に出す必要はないが、パライソとショウにも合図をする関係上、声に出したのだ。
上からジェームスを押さえつけているジェファーにパライソとショウの矢が刺さる。
「当たれ!」
同時にリザの水の剣がヴェールのような軌跡を描きながら、スチュアートを襲う。
水中でも問題なくブレードofローレライの斬撃が切りつけ、血がしぶく。
そのころ、べドウィールはマッチョ海神の幻影をまとい、水中に突撃していった。
ミタマギリを付与するよりも、ジェームスの身柄の方が心配になったのである。
冬の海の中、水着の特殊能力で進むべドウィール。
──一方!
「ダークメロウなど、ダークエルフの釣り師の敵ではないのですよ」
色黒なエルフもとい──ダークエルフの、
アンカ・ダエジフが自身にウォーターワールドの魔法を付与する。
「ダークメロウ、若者を誑かして海に引きずり込み、犠牲者のタマ‥‥おっといけない、これ以上はハウンドの掟、勇者たれに反しますので、とても言えませんね、非常に残念です──つまりはお尻をアッー!!と狙うダークサイドですから。あ、言っちゃいました」
波に身を委ね、アンカは深みへと進んでいこうとする。その頭に的中する人型のカゲ! 半魚人を思わせるそのガーゴイル『フィッシュヘッド』は、
エリアル・ウィンフィールドのものだ。
エリアルは空中で、ディレクトガガを成就させ、フィッシュヘッドを具現化し、投下したのだが、狙いがずれてしまう。
もう一メートル高くから落としていたなら、アンカの頭が熟したトマトになっているところだった。
「すまんどす」
「この貸しはいずれ精神的に」
エリアルの謝罪を受け入れジェームスの回収に向かうアンカ。フィッシュヘッドも目的は同じなので並走──せず、フィッシュヘッドが先行する。というより、アンカは大釣果を目指し間合いをつめる。まず、射程内に敵を収めることが大事だ。
勢いをつけたフィッシュヘッド、そのままスチュアートに体当たり、同時にべドウィールがジェームスの身柄を確保する。
「殺ス」
スチュアートは残忍な笑みを浮かべる。
◆03
「させませんよ」
離脱し、岸の方に進むべドウィール。そのフォローに入るハヤト。後方のフォローにはヴェスバーが入る。
「まかせろ! 来いバトろうぜ!?」
そのまま、短剣を構えて勢いよくぶつかるスチュアート。水中の不利はフォローしきれず、ハヤトと言えど、スチュアートのチャージングはかわし切れない。
思わず、血反吐を吐くハヤト。胃の内壁が裂けたようだ。
(チクショウあの勢いでこんなの喰らったら‥‥)
まるで、ダークサイドの悪意そのものをぶつけられたようだ。ハヤトはそう思ってしまう。
そこに飛んでくるリザのブレードofローレライ二発目、べドウィールの付与したミタマギリの魔法により、魔力を削り倒され、スチュアートは濃い顔をのけぞらせて気絶する。
「こ‥‥来いバト──」
立ち泳ぎしながら岸に戻ろうとするハヤト。
パライソとショウが駆け寄ってくる。
「うーん、ヴィンドスヴァルでは皆を巻き込みますか‥‥。そもそも、水の中に届くんですかね‥‥?」
残念そうなアンカ。
ジェファーを三発目のブレードofローレライが追撃。魔力を削り、意識を失わせた。
こうしてジェームスは救われる。ハヤトも手厚い物質的、魔法的な看護により軽傷で済んだ。
◆04
しかし、いきなりダークサイドを解呪したいと言っても、異邦でそれだけの高位の魔法を使える者のなアテはなく(そういったアテこそが、ハウンドだ)、村人も今まで自分たちを襲ったダークサイドに関する処刑を要求した。
あくまで慣習の範疇で、村長が出した結果である。
ダークサイドを捕まえた立役者とはいえ、異邦人であるハウンドたちにそれを覆す権限はなかった。
「まあ、そういうことか」
メロウ食いを、理解できないと言っているパライソにも、ダークサイドとしてやったことならと、妥協せざるを得ない。ただし、受動的に、だ。
「やっぱり、動物なんだね──メロウって」
リザの言葉に、べドウィールは首を横に振る。
「──‥‥分かっていても納得出来ないこともあります」
「せやな、偶発的だったさかい、うちらが一貫した方針を出せへんかったさかい」
エリアルが目元を押さえる。
「この呪いくらい、自分でどうにかできる位、強ければ」
ショウは唇の端をかみしめた。
「‥‥強かったなぁ、あいつ」
ハヤトは遠い目をして呟く。
「‥‥残念」
ヴェスパーは無口。
アンカ曰く。
「逃がさなかった魚は大きいのです」
彼女が言いたいのはXmasのことだろう。
と言い置いたのち──。
「でも、小さい魚も釣りたいので、ちょっと釣りに行ってきますか‥‥」
やはりアンカだった。
このXmasが人々の心に救いをもたらせることを。そして、自分がもっと強くなれることを信じて。
だから、ハウンドの戦いは──つづく。
10
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参加者
| | a.やれるだけやってやんぜ!!
| | ハヤト・アステール(da0375) ♂ 23歳 カーシー(中型) ヴォルセルク 風 | | |
| | b.解呪……は俺じゃできないけど、捕まえて何とかできないかなあ。
| | ショウ・ジョーカー(da0595) ♂ 20歳 人間 カムイ 月 | | |
| | c.ギルドに解呪の手配頼みたいとこだけど、アニマル扱いなのが不安要素だよね
| | リザ・アレクサンデル(da0911) ♂ 23歳 人間 ヴォルセルク 水 | | |
| | a.水中活動は水着の効果頼みですが、出来そうな事はやってみますね。
| | ベドウィール・ブランウェン(da1124) ♂ 27歳 人間 ヴォルセルク 月 | | |
| | c.よろしくお願いします。
| | エリアル・ウィンフィールド(da1357) ♀ 49歳 ダークエルフ マイスター 水 | | |
| | b.よろしくお願いします。
| | ヴェスパー・ベント(da1605) ♂ 36歳 カーシー(小型) カムイ 風 | | |
| | b.ダークメロウなど、ダークエルフの釣り師の敵ではないのですよ
| | アンカ・ダエジフ(da1743) ♀ 26歳 ダークエルフ パドマ 水 | | |
| | b.僕はこっちだねぇ。弓で狙えるかなぁ…難しいかなぁ。
| | パライソ・レヴナント(da1777) ♂ 53歳 カーシー(小型) カムイ 火 | | |
レンの海に燃える憎悪
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ハウンドたちが酒と引き換えに伝道したグレコニアの漁村。そこでは二週間に三名の死者が出て? 裏でダークサイドが画策‥‥か?
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