オープニング
◆むしゃむしゃ、デリシャス!
まだ若く、しかし熱意ある伝道師のルイスさんの護衛、それがギルドから受けた指示だった。
「どこにいくんや?」
シフールのガーベラがギルドで確認する。
すると、その若き伝道師は、森の中にある、アルピニオの集落へ向かうのだという。
「この地域は戦争が多く、その集落も敗残兵との戦いに巻き込まれ、疲弊していると聞きます。私がしたい事は、村人たちにいくばくかでも、食料と布を届け、悩みを聞いてやれたら──少しでも心を満たしてあげられれば、幸いです」
ルイスさんは胸元のCROSSを握りしめ断言した。
そして、ムーンポータルで移動し、集落を目指す。
集落は森の中なので、しかたないが、長い林道があり、危険だ。
「では、隊列の中央付近にいさせてください、先頭で剣を交えたり、後尾にいて不意打ちされたら、迷惑でしょうから」
ルイスさんは謙虚な人柄らしい。
「せやな。そうしたほうがええわ、しっかしうるさいカエルや」
この寒い季節に、普通のカエルがこんなに活発に動くとも思えない。だが、そのことに気づいていないのは、ガーベラとルイスさんだけらしい。
カエルたちの声が大きくなるにつれて、緊張が高まり、中には魔法を成就するハウンドもいた。
「けろー!」
前の方で何か、大きなそして柔らかいものが、打ち付ける音がする。
案の定、巨大なカエルたちだ。泥の中からコンニチワした。そのだらしなく開いた口からは三つの舌がのぞいた。
「気をつけてください‥‥とても強烈な、邪悪な憎しみを感じます」
ルイスさんは、女神に祈りながら下がろうとする――が、ある事を言い出した。
「しかし‥‥これは、Xmasのごちそうになるような気がします‥‥そのような気がするのです」
「ほんまか?」
わかりません、とルイスさん。
肉は大事‥‥かもしれない。それにカエルの肉は鶏っぽい味がする、そんな事を思い出すハウンドもいた。
その時、長いものがルイスさんを襲う。
ガーベラが止めようとして動く! ルイスさんに絡みつこうとする三本の舌が、ガーベラに絡みつき、口元に引きずり寄せた。さすが、ダークジャイアントトードだ!
「ああ、何という!」
嘆くルイスさんをよそに、カエルたち、いやダークジャイアントトードからガーベラを確保し、肉を得るべくハウンドが動く。
泥のなかで何かが動く、それに気づくものはまだ‥‥いない。
──ハウンドの戦いが始まる。
選択肢
a.救出優先 | b.肉を確保 |
c.全周警戒 | z.その他・未選択 |
マスターより
成瀬です。アルピニオに来て、カエル退治です。しかも、ダークサイドです。
ガーベラを救いましょう。その上で肉を確保できれば、ベリーナイス!
え、それだけかって? まあ──そうなりますね、多分、カエル肉パーティーのシーンはエピローグで触れられるかな?
確約できないのは、ガーベラを救えることが確定していないからです。
ハッピーエンドを勝ち取る権利はみなさんにあります。
では、多くの方々の参加をお待ちしています。
※RealTimeEvent【HoundHistory02】祝え拡げよXmas 連動シナリオ
本シナリオは、世界の歴史を動かす可能性を秘めた企画「リアルタイムイベント」に連動した特別シナリオです。
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登場キャラ
◆『3』待て!
ダークジャイアントトード(以下DGトード)に、
ガーベラが飲み込まれた!
次の瞬間ハウンドは動き出す。
(まったく困ったものだな、こんな生物まで世界には存在するのか。ガーベラも大変だな)
相方の背を叩き、合図するのは
ソーニャ・シュヴァルツだった。
──口にしては、『行け』の一言だった。
彼女が戦いに向かわせたのは、コカトリスだ。首にはごつく見えるとげ付きの首輪をしている。
伝道師のルイスさんはソーニャの背中側に回り込む。足手まといにならないための判断だろう。
「行ってくれよ──ガーベラは困ったねぇ‥‥言う事聞いてくれるといいんだけど」
ヴェスパー・ベントも自分の相方のくちばしを見ながらつぶやく。
俗説では金のくちばしのコカトリスなら一匹、銀のくちばしのコカトリスなら五匹で、素晴らしい贈り物がある‥‥訳はない。
どちらにしても、普通のくちばしの、コカトリスたちは、臆せず沼の中に進軍。
一方で、沼の上に立つのは、
リザ・アレクサンデルだ。
ウォーターランニングの魔法を成就しており、沼の上でも沈まない。
「ダークでもそうじゃなくても美味しいらしいけど‥‥まずガーベラ助けなきゃ! 多分このレイピアならカエルごと串刺しはないと思うから‥‥」
リザのレイピアに魔力を付与したのは、
ベドウィール・ブランウェンだった。
今、彼は自身のグリーヴァライモンに二回目のミタマギリを付与している最中だ。
(まずガーベラさんを飲み込んだ個体への対応を優先。気絶なり倒すなり出来れば救出できるでしょうか)
べドウィールは冷静だ。
(体力精神、両面から、とまあ、概ね定石通りですが‥‥足場があまり宜しく無さそうなのと、やはり──周囲が気になりますね)
そして、
リコ・ポートマンは戦いが終われば、調理することになる、DGトードの魂を、死ぬ前に救いたい、その一心でリムーブカースを成就できる位置取りに余念がない。
「シフールの、ガーベラの救出に、我が身命を賭そう!」
沼まで臆さず進む、
ノワール・トゥーナインだった。
感情が熱を持つなら、全て溶かし無惨に飛び散っただろう。
「ほう? 我が輩の前でシフールを害するとは。どうやら命は要らぬとみえる──ならば自分がその命、貰ってやろう!」
手にしたグリーヴァオオダチにはルミナパワーの魔法を付与している。
「
リリィよ、すまぬが辺りの警戒を頼むのである! 異変があれば教えてくれ!」
「アブナイものみつけたら、すぐノワールにおしえるわね! だからノワールはたすけることにしゅうちゅうして! ノワールならきっとたすけてくれるわ。ノワールはシフールにやさしいし、つよいもの!」
(じっとしてたらガーベラみたいにつかまっちゃいそうね。すこしうごきなからけいかいしてみるわ! うごくものがいたら、おちついてこうどうをみるわ。あせってもいいことなんてないしね)
さすがリリィはガーベラと同じ轍を踏まない。
「ふ、ふふふ、怒りが振り切れると逆に冷静になると言うのは本当の事のようであるな。ガーベラ、今しばらくの辛抱である! そなたらの捕らえたシフールを離すのである、その無駄に長い舌を斬り取られん内にな! シフール達が無事なら我が傷などどうと言う事はない!」
次の瞬間だ。
CRUSH!
ガーベラをくわえた、DGトードに天から降るごとくパンチが撃ち込まれる。
ああ、あれは! ドワーフの
リコ・マウリオラだ!
◆腕先ひとつでダウンか?
「ぼっかんぱ~~~んちぃ! ほえ~!? ガーベラちゃんがたいへんですぅ~!」
ガーベラは思いっきり吐き出された。
「うわぁ、なんやいまのは!」
そして、リコとガーベラは沼の中で沈みかかっている。
リコはへそのあたりまで、ガーベラは首元まで泥水にのみ込まれた。
「あれれぇ? なんですかぁ!? ‥‥もしかしてぇ、リコ、ピンチですかぁ?」
「せやな」
リコの言葉にうなずくガーベラ。
「あ! ガーベラちゃん、無事で良かったですぅ~♪」
と、頭をなでなですりすり。
一方、ノワールの怒りの一撃が、大きく振りかぶられ、一匹のDGトードを斬って捨てる。
「その悪事容赦し難いのだ!」
そんな感じで、暴れているところに、リザがドワーフのリコとガーベラを救う。
「はい、お嬢さんがた、お手をどうぞ」
手をさしのべながら、泥だらけの姫君たちにウィンクするリザ。
「おーじさまっぽいなぁ」
ガーベラは言うと手を取る。
「ありがと~」
言う前にリコはリザの手を取る。
ドブンと音がした。ヴェスパーとソーニャのコカトリスたちが、ノワールが切り捨てたDGトードを石化したのだ。
そして、沼の中に沈んでしまう。
「石は食べられないけど、カエルの解体得意な人いる? 僕だと傷つけちゃいそうなんだけど‥‥ヴェスパーさん得意そうじゃない?」
「うん、狩人暮らし長いから自信あるよ」
とはヴェスパーの言葉だ。
「オリーブオイルのフライドがお勧めらしいですね。煮込みやスープの具でもいけそうですね」
うじゅる。べドウィールの言葉に、ガーベラが口の中でよだれを感じる。
「いずれにせよ内臓は綺麗に取り除き、加熱は確実に‥‥」
べドウィールが安心してつぶやく。
カーシーの方のリコが、リムーブカースのため、水辺に近づくと、上から声がする。
「あぶない、まだいるの!」
リリィの警告だ!
◆残敵掃討
リザ、ベドウィール、ヴェスパーは、リリィから言われなければ、何もできず不意打ちを受けただろう。
「よろしい本懐である」
ノワールは開き直った。
一匹あたり三本の舌を伸ばすDGトード。合計九本の舌がフェイントをかけて波状攻撃をかます。
そんなノワールとはいえ、かわし切れるはずはない、と見えた。しかし、手傷らしい手傷を負っていない。
「ぬるいわ!」
攻撃が甘いのだ。加えてリリィの想いが彼を守っている。天下を取りたければ羽根妖精と笑えという格言は‥‥おそらくない。
「後ろががら空きですよ」
べドウィールはDGトードの死角を突きながら、律儀に警告を忘れない。もっとも、相手が弱いからだが。多分格上には警告などしない。
「‥‥あ、お肉叩くと柔らかくなってぇ、美味しくなるんでしたっけ? おっ肉♪ おっにくっ♪」
なお、肉を叩くのは肉の筋繊維を破壊すること。それにより、加熱すると肉汁が逃げる傾向にある(諸説あり)。
「ノワール助太刀する!」
グリーヴァナガマキを持ったソーニャが前に出る。リーチがあるので、沼に入らずに済みそうだ。
「感謝」
戦線を維持しつつ後退するノワール。そこにリコがメイスの力で傷を癒す。
最後の不細工な悲鳴が上がった。
DGトード四体撃破!
コカトリスのコンビに、二匹のDGトードが石化しており、残った二匹のDGトードの肉が食卓へ送られることになる。
ヴェスパーが中心となって、ベドウィールがフォローを入れて、解体していく。
内臓はさすがに重いので廃棄されたが、それでもまとまった量の肉が確保された。
アルピニオの集落は、こうして、ルイス伝道師が胃袋をつかみ、その熱意とその他の物資は喜ばれる、Xmasを快く受け入れたのだった。
◆勝利への帰還
「さびしいけどネ、そばにいるよ」
ヴェスパーはあえてコカトリスを集落に入れなかった。余計な興奮をさせないためだ。
それを見たソーニャもコカトリスを集落に入れるのをやめた。
「そういう考え方もある、か」
「うわーむかしいろいろあったわー」
ガーベラもコカトリスで昔を思い出したらしい。
「いしになるの? ちょっとコワいわ」
「小さい勇者様も怖いものがあるのであるな」
リリィを腕に座らせた、ノワールが笑みを浮かべる。
「意外と皆さん食べるよね? このあたりの名物かな」
リザの言葉に、べドウィールは──。
「森をふさがれていた、うらみもあるかもしれません。街道もついでに掃除したと思いましょう」
──と、まっとうな意見で返すのだった。
「何かあったらよんでください」
とカーシーのリコ。
「肉は柔らかい内に打て、だっけ?」
とドワーフのリコ。
そして、ハウンドたちはオーディア島に戻る。
しかし──ハウンドの年末は‥‥もうちょい続く!
8
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参加者
| | a.よろしくお願いします。
| | ソーニャ・シュヴァルツ(da0210) ♀ 24歳 カーシー(中型) ヴォルセルク 火 | | |
| | a.ダークでもそうじゃなくても美味しいらしいけど…まずガーベラ助けなきゃ!
| | リザ・アレクサンデル(da0911) ♂ 23歳 人間 ヴォルセルク 水 | | |
| | a.まずガーベラさんを飲み込んだ個体、その後は警戒優先になるかと。
| | ベドウィール・ブランウェン(da1124) ♂ 27歳 人間 ヴォルセルク 月 | | |
| | z.よろしくお願いします。
| | リコ・ポートマン(da1336) ♀ 23歳 カーシー(中型) カムイ 月 | | |
| | b.これは困ったねぇ、言う事聞いてくれるといいんだけど(相方の嘴を見つつ)
| | ヴェスパー・ベント(da1605) ♂ 36歳 カーシー(小型) カムイ 風 | | |
| | a.シフールの救出に我が身命を賭そう!
| | ノワール・トゥーナイン(da1749) ♂ 29歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 風 | | |
| | a.ほえ~!?ガーベラちゃんがたいへんですぅ~!
| | リコ・マウリオラ(da1831) ♀ 19歳 ドワーフ ヴォルセルク 火 | | |
| ムシャムシャ! デリシャス!!(代理:ダークジャイアントトードさん) | | |
かえるソングが聞こえてくる
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おとめの接吻がたっぷり必要になりそうな昼下がりINアルピニオ。なお、ここまで伝道に来たルイスさんをかばって、ガーベラが食われかかっています。いつ助けるの? 今でしょ!?
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