牛と人が俺の名さ

担当成瀬丈二
出発2019/11/18
種類ショート 冒険(討伐)
結果成功
MVPソーン・イワオ(da1804)
準MVPディオン・ガヴラス(da0724)
フェルス・ディアマント(da0629)

オープニング

◆数日前
「た‥‥頼む、見逃してくれ──」
 そういって、とある妖獣はダーナたちに助命を懇願する。
「取引か? 何を出せる」
 ダーナのリーダーは問うた。
「すげー宝物さ‥‥金貨が100枚、いや1000枚あるんだ! 全部やるから助けてくれよ」

登場キャラ

リプレイ

◆地と
「我が全身全霊破れたり!」
 言って散るのは、ソーン・イワオだった。
 振り下ろされた戦鎚の無慈悲な一撃は、ソーンの頭蓋を微塵に──砕いていなかった。
 何という不思議か、ダークゴブリンの解呪に赴いた証の琥珀の指輪の特殊能力は、その一撃を辛うじて、防いでいた。
 ソーン、敵の目前で鎧を外そうとしたりしなければ、よかったものを。
「ワオ、いいマッスルっす──負けないっス」
 フェルス・ディアマントの視線の先にいたのは敵? ──いや、ダークミノタウロスだ。
 少なくとも、ベドウィール・ブランウェンの知識が及ぶ範疇では、牛頭で全裸を好むのは──このダークサイド以外には存在しない。
(春になるとこういうのが増えるそうですが、そうでなければ気合の入ったヘンタイさんです)
 きっと冬場はどこかで冬眠するのだろう──だが、それは今後の研究を待たねばならない。
 しかし、それを好機と斬りこんでいくのは、ノワール・トゥーナインと、ソレイユ・フォリーのコンビだ。
「わたしは敵の動きを止めます。動きを止めたら、後はタコ殴りです」
 ソレイユは平板な口調で語る。
「死ななければ、後でどうとでもなります。だから本気で行きます」
「ソレイユ、死に急ぐな。本気を出せば勝つというのは、普段全力でなくても勝てるものの言葉である」
 ノワールが制する。むしろ、彼の方が隙を作るため、前に出るのだが、ソレイユをコントロールしなければならない。
「私達と同ジ身体なら急所も同じカナ? じゃ、イタイ所も同じだよネ? 私を気にしてると、上から痛いのが来るよ? 上を気にすれば──」
 ソレイユが下から攻める、ノワールは上から攻める。つまり、挟み撃ちにする形だ。
 しかし、ノワールはまず、ルミナパワーを成就している。動きを止めるのは必然的にひとりだ。
「分かるよね? 足首、膝、股関節、狙いところが一杯‥‥」
 相手を嘲弄しているつもりだったが、ソレイユには大きな誤算があった。相手はコモン語を解しない。
 なので、うるさいチビを蹴り飛ばすだけだった。
 みぞおちに蹄を蹴りこまれ、胃壁が裂ける──ソレイユの口から出されたものは鮮血。
(耐えろ、耐えるのであるノワール。自分自身が選んだことである。ソレイユの作った時間を無駄にするな)
 とはいうものの、体格の差が30センチ近くあり、自身が上背で優っているとはいいがたい。
 ノワールの判断では、フィジカルのハンデを埋める、魔法は必要不可欠。
「ああ、ひどいことをするね、女の子にあんなことをするなんて、まさに外道だよ!」
 魔法を成就し、作り上げた水の剣──ブレードofローレライを構える、リザ・アレクサンデルだ。
 彼の剣はべドウィールにより、ミタマギリの魔法の力が付与される。
「はいはい、白馬の王子さまはお願いします。もっとも、白馬の方があなたを蹴り飛ばすかもしれませんよ?」
「あっそ」

◆天と
「ふっふーん、リリィはノワールのアイボウよ? リリィがいちばんノワールのやくにたつわよ!」
 空中からの言葉が響く。
「でもノワールのためにみんなのやくにたってあげるわ!」
 シフールのリリィが空中から見てると、もうひとりの影が──視線が合った。
「ひぃ! にらまないでよおっ! うけてみなさい!あたるとイタいわよーっ!」
 やはり、全裸の牛頭だった。筋肉はみなぎっている。
「みんな、うしろからもういっぴき、イクわよー!」
「なるほど、空中からの視界も馬鹿にできませんか」
 弓を構えた、ディオン・ガヴラスが魔法の成就に入る。
「いいたいことあるんやろな?」
 シフールのガーベラがディオンから視線を逸らす。もっとも、ディオンは魔法の成就で手いっぱいだが。
「ノワールのまほうのじゅんびをじゃまさせないわよ、リリィのゆみはいたいわよ」
 戦技魔法オーバーロードと、それを活かしたタメの時間をつくれない、リリィはそう判断した。
「ガーベラ、ゆみもっているなら、くうちゅうにきなさいよ!」
「わあっとる!」
 リリィの言葉に、ガーベラは空中に舞い上がる。
「──間に合った‥‥」
 第2のダークミノタウロスが来る前に、ディオンが魔法を成就。
 ライトニングトラップだ。
 踏み込んだ、ダークミノタウロスは感電し、十分に動けない。

◆人と
 ソレイユが喀血しながら、立ち上がろうとする、そこに天高く振り下ろされた戦鎚が振り下ろされ──ようとした。
 金属同士の撃ち合う大音声。
「オンナのコを殴るのはマッスルじゃないっス」
 フェルスが飛び出した。
 ダークミノタウロスは叫ぶ。
 ソレイユが己の血潮を目つぶし代わりに飛ばしたのだ。十全とは言えないが、隙は作れる。
「は!」
 ノワールは踏み込み、必殺の斬撃を浴びせる──その直前! ブレードofローレライがダークミノタウロスを捉えた。
 その体格に比して与えた傷は小さい。しかし、魔力を奪うのには十分!
 ひざから崩れ落ちる、ミノタウロス。
 そこへノワールはグリーヴァオオダチを振り下ろす。
 その挙動に躊躇いはない。
 その崩れ落ちる頭をソーンが飛び出し、抱えた。
「そうか、ダークサイドの呪縛に囚われておったか──そうでなければ、うぬの侠気が我輩の血も騒がしたであろうが」
 ボロボロとソーンは涙を流す。
「もし、解呪がなれば、その時はひとつ、うぬと力比べをしようぞ。さあ、まずはその無粋な戦槌を捨てるがよい!」
 ダークミノタウロスの手から、力なく戦鎚は零れ落ちた。意識が飛んだのだ。
「我輩も武具は使わぬ。お互い裸と裸の真剣勝負じゃあ!」
 そこにディオンが首を出す。
「こっちの方に戦力いいかな?」
 ノワールは黙って戦場を変える。
 まあ、その間にべドウィールが不意打ちで魔力を削り、気絶させる。
 ソーンは、月に向かう狼のように吼えた。
「邪神に歪められておらねば、きっと強敵(とも)と呼び合っただろうに‥‥」
 全ての元凶は邪神がかけた呪詛であろう。それを改めて確認するハウンドたちだった。

◆KillerQueenにて
「それはそれとして、大赤字だったっス!」
 場末の酒場KillerQueenで、フェルスがマグを傾ける。
 ダークミノタウロスが守っていた、宝物──それは腐った植物だった。
 ──パラノイアックに正確さを期するならば、多分何かの薬草。管理がズサンなので、売買以前のものであった。
「うわぁ、だれやねん、このじょほうかおうっていうた、いいだしっぺは!」
 何となく『ガ』で始まり、『ラ』で終わるシフールのような気がする。
「それにしても、ソレイユがクスリまで準備してたなんて‥‥すごい、用意周到であるな」
 ノワールが準備を湛えるのは、クスリを準備していたソレイユだった。
「使わないにこしたことはない。自分自身で使うハメになるとは思ってなかった」
「それにしてもソーン殿。本当にいいのか? 解呪されてミノタウロスになっても、何らメリットはないのである」
 ソーンの強い意向で、ダークミノタウロスたちはローレックの街まで連れていかれ、ハウンドギルドの管理下に置かれている。
 余裕が出来たら、リムーブカースされるのだろうか?
「強敵同士わかることもあるのじゃ、言葉にする必要はない」
 断言するソーン。
「すごいねウィール。僕たち強敵じゃなかったんだ?」
 無邪気なリザの言葉に、ウィールはマグを置いた。
「一方的な強敵宣言ですか‥‥?」
「だって言葉にする必要はないって?」
 少し酔い気味のリザである。
「‥‥」
 そんな喧騒に背中を向けて、今回の赤字を如何に埋めるかを考えるディオン。
「‥‥たまになら、こういうのもいい──たまになら」
「ディオンどうしたの?」
 沈黙したダークエルフにリリィは声をかける。
「少し酔ったかもしれません」
「ふうーん?」
 場末の酒場で語られたひとつの冒険譚。
 それが勇者たちのサガとなるか、道化のざれ歌となるか‥‥それを知るものは今のミドルヘイムにはいないだろう。
 だから‥‥ハウンドの戦いは続く!



 9

参加者

a.こっちもハンマーと筋肉で対応するッス
フェルス・ディアマント(da0629)
♂ 22歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 地
b.後方から援護しよう。
ディオン・ガヴラス(da0724)
♂ 25歳 ダークエルフ マイスター 風
b.だ、ダーク牛マッチョ…?うわあ…ちょん切ろ?
リザ・アレクサンデル(da0911)
♂ 23歳 人間 ヴォルセルク 水
a.ああ、春先によく見かけるタイプの方ですね?
ベドウィール・ブランウェン(da1124)
♂ 27歳 人間 ヴォルセルク 月
b.ふふん!うえからヤをうたれるって、いがいとうっとうしいでしょ?
リリィ(da1748)
♀ ?歳 シフール カムイ 陽
a.自分は攻めよう、攻める隙を作る為に攻める。此れも戦術である!
ノワール・トゥーナイン(da1749)
♂ 29歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 風
a.動きを、止め、られたら、後は、タコ殴り、ですね
ソレイユ・フォリー(da1795)
♀ 22歳 カーシー(小型) ヴォルセルク 陽
a.ほう…漢じゃな。うぬの侠気に我が輩の血も騒ぎよるわ!
ソーン・イワオ(da1804)
♂ 39歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 地
 うわーまっちょや
ガーベラ(dz0030)
♀ ?歳 シフール カムイ 月


XXXX──!

ウヴォー!(突撃してくる雄叫び‥‥らしい)