オープニング
◆数日前
「た‥‥頼む、見逃してくれ──」
そういって、とある妖獣はダーナたちに助命を懇願する。
「取引か? 何を出せる」
ダーナのリーダーは問うた。
「すげー宝物さ‥‥金貨が100枚、いや1000枚あるんだ! 全部やるから助けてくれよ」
本当に数えたか、怪しいものだ。
それから話し合う。宝の場所を聞き出したところで、ダーナたちはその妖獣にトドメをさす。
「みな、消耗しているからな、宝探しなんて行けるか‥‥だから、この情報はハウンドギルドに売り飛ばす」
そして、それなりの値段となった。
たいして間を置かずハウンドたちが何人かで共同出資し、その情報を購入した。
◆すごく‥‥全裸です
「ここがそのいせきやな」
シフールのガーベラがローレックの街から1日行ったところにある、半ば洞窟と一体化している遺跡を見ていった。
そして、脳内で訂正した。ふつうの遺跡には、大型の戦鎚を持った全裸のオトコはいない。
しかも、頭が牛だという。
つつしみはなく、腰を布でおおうなどもしていない。
シュミか?
「あれがもんばんやな‥‥あいことばいえば、ええんやな」
ガーベラは一同に確認。
もちろん、ハウンドたちはシフールだけに暗号を覚えさせるほど、間抜けではない。
ひとりのハウンドが進み出て、その牛頭に叫んだ。
「秘密の暗号、ノック3回!」
「──!」
おもむろに牛頭は鼻を鳴らす。
リアクションを読めず、ハウンドは沈黙。
次の瞬間、牛頭の全身の筋肉が盛り上がった!
魔物法か?
ともあれ、戦鎚を振りかざし突撃してきた。
ガセネタか、牛頭が合言葉を忘れたのかはわからない。
しかし、言える事はひとつ‥‥向こうは殺す気満々だ。
──ハウンドの戦いが、始まる。
選択肢
マスターより
成瀬です、お久しぶりです。今回は牛頭野郎と戦っていただきます。
え? それだけかって──有体に言うとそうなりますので。
一応、遺跡の中を調べて宝漁りとかもできますが、話の主題はバトルです。
──みなさんの参加をお待ちしています。
登場キャラ
◆地と
「我が全身全霊破れたり!」
言って散るのは、
ソーン・イワオだった。
振り下ろされた戦鎚の無慈悲な一撃は、ソーンの頭蓋を微塵に──砕いていなかった。
何という不思議か、ダークゴブリンの解呪に赴いた証の琥珀の指輪の特殊能力は、その一撃を辛うじて、防いでいた。
ソーン、敵の目前で鎧を外そうとしたりしなければ、よかったものを。
「ワオ、いいマッスルっす──負けないっス」
フェルス・ディアマントの視線の先にいたのは敵? ──いや、ダークミノタウロスだ。
少なくとも、
ベドウィール・ブランウェンの知識が及ぶ範疇では、牛頭で全裸を好むのは──このダークサイド以外には存在しない。
(春になるとこういうのが増えるそうですが、そうでなければ気合の入ったヘンタイさんです)
きっと冬場はどこかで冬眠するのだろう──だが、それは今後の研究を待たねばならない。
しかし、それを好機と斬りこんでいくのは、
ノワール・トゥーナインと、
ソレイユ・フォリーのコンビだ。
「わたしは敵の動きを止めます。動きを止めたら、後はタコ殴りです」
ソレイユは平板な口調で語る。
「死ななければ、後でどうとでもなります。だから本気で行きます」
「ソレイユ、死に急ぐな。本気を出せば勝つというのは、普段全力でなくても勝てるものの言葉である」
ノワールが制する。むしろ、彼の方が隙を作るため、前に出るのだが、ソレイユをコントロールしなければならない。
「私達と同ジ身体なら急所も同じカナ? じゃ、イタイ所も同じだよネ? 私を気にしてると、上から痛いのが来るよ? 上を気にすれば──」
ソレイユが下から攻める、ノワールは上から攻める。つまり、挟み撃ちにする形だ。
しかし、ノワールはまず、ルミナパワーを成就している。動きを止めるのは必然的にひとりだ。
「分かるよね? 足首、膝、股関節、狙いところが一杯‥‥」
相手を嘲弄しているつもりだったが、ソレイユには大きな誤算があった。相手はコモン語を解しない。
なので、うるさいチビを蹴り飛ばすだけだった。
みぞおちに蹄を蹴りこまれ、胃壁が裂ける──ソレイユの口から出されたものは鮮血。
(耐えろ、耐えるのであるノワール。自分自身が選んだことである。ソレイユの作った時間を無駄にするな)
とはいうものの、体格の差が30センチ近くあり、自身が上背で優っているとはいいがたい。
ノワールの判断では、フィジカルのハンデを埋める、魔法は必要不可欠。
「ああ、ひどいことをするね、女の子にあんなことをするなんて、まさに外道だよ!」
魔法を成就し、作り上げた水の剣──ブレードofローレライを構える、
リザ・アレクサンデルだ。
彼の剣はべドウィールにより、ミタマギリの魔法の力が付与される。
「はいはい、白馬の王子さまはお願いします。もっとも、白馬の方があなたを蹴り飛ばすかもしれませんよ?」
「あっそ」
◆天と
「ふっふーん、リリィはノワールのアイボウよ? リリィがいちばんノワールのやくにたつわよ!」
空中からの言葉が響く。
「でもノワールのためにみんなのやくにたってあげるわ!」
シフールの
リリィが空中から見てると、もうひとりの影が──視線が合った。
「ひぃ! にらまないでよおっ! うけてみなさい!あたるとイタいわよーっ!」
やはり、全裸の牛頭だった。筋肉はみなぎっている。
「みんな、うしろからもういっぴき、イクわよー!」
「なるほど、空中からの視界も馬鹿にできませんか」
弓を構えた、
ディオン・ガヴラスが魔法の成就に入る。
「いいたいことあるんやろな?」
シフールの
ガーベラがディオンから視線を逸らす。もっとも、ディオンは魔法の成就で手いっぱいだが。
「ノワールのまほうのじゅんびをじゃまさせないわよ、リリィのゆみはいたいわよ」
戦技魔法オーバーロードと、それを活かしたタメの時間をつくれない、リリィはそう判断した。
「ガーベラ、ゆみもっているなら、くうちゅうにきなさいよ!」
「わあっとる!」
リリィの言葉に、ガーベラは空中に舞い上がる。
「──間に合った‥‥」
第2のダークミノタウロスが来る前に、ディオンが魔法を成就。
ライトニングトラップだ。
踏み込んだ、ダークミノタウロスは感電し、十分に動けない。
◆人と
ソレイユが喀血しながら、立ち上がろうとする、そこに天高く振り下ろされた戦鎚が振り下ろされ──ようとした。
金属同士の撃ち合う大音声。
「オンナのコを殴るのはマッスルじゃないっス」
フェルスが飛び出した。
ダークミノタウロスは叫ぶ。
ソレイユが己の血潮を目つぶし代わりに飛ばしたのだ。十全とは言えないが、隙は作れる。
「は!」
ノワールは踏み込み、必殺の斬撃を浴びせる──その直前! ブレードofローレライがダークミノタウロスを捉えた。
その体格に比して与えた傷は小さい。しかし、魔力を奪うのには十分!
ひざから崩れ落ちる、ミノタウロス。
そこへノワールはグリーヴァオオダチを振り下ろす。
その挙動に躊躇いはない。
その崩れ落ちる頭をソーンが飛び出し、抱えた。
「そうか、ダークサイドの呪縛に囚われておったか──そうでなければ、うぬの侠気が我輩の血も騒がしたであろうが」
ボロボロとソーンは涙を流す。
「もし、解呪がなれば、その時はひとつ、うぬと力比べをしようぞ。さあ、まずはその無粋な戦槌を捨てるがよい!」
ダークミノタウロスの手から、力なく戦鎚は零れ落ちた。意識が飛んだのだ。
「我輩も武具は使わぬ。お互い裸と裸の真剣勝負じゃあ!」
そこにディオンが首を出す。
「こっちの方に戦力いいかな?」
ノワールは黙って戦場を変える。
まあ、その間にべドウィールが不意打ちで魔力を削り、気絶させる。
ソーンは、月に向かう狼のように吼えた。
「邪神に歪められておらねば、きっと強敵(とも)と呼び合っただろうに‥‥」
全ての元凶は邪神がかけた呪詛であろう。それを改めて確認するハウンドたちだった。
◆KillerQueenにて
「それはそれとして、大赤字だったっス!」
場末の酒場KillerQueenで、フェルスがマグを傾ける。
ダークミノタウロスが守っていた、宝物──それは腐った植物だった。
──パラノイアックに正確さを期するならば、多分何かの薬草。管理がズサンなので、売買以前のものであった。
「うわぁ、だれやねん、このじょほうかおうっていうた、いいだしっぺは!」
何となく『ガ』で始まり、『ラ』で終わるシフールのような気がする。
「それにしても、ソレイユがクスリまで準備してたなんて‥‥すごい、用意周到であるな」
ノワールが準備を湛えるのは、クスリを準備していたソレイユだった。
「使わないにこしたことはない。自分自身で使うハメになるとは思ってなかった」
「それにしてもソーン殿。本当にいいのか? 解呪されてミノタウロスになっても、何らメリットはないのである」
ソーンの強い意向で、ダークミノタウロスたちはローレックの街まで連れていかれ、ハウンドギルドの管理下に置かれている。
余裕が出来たら、リムーブカースされるのだろうか?
「強敵同士わかることもあるのじゃ、言葉にする必要はない」
断言するソーン。
「すごいねウィール。僕たち強敵じゃなかったんだ?」
無邪気なリザの言葉に、ウィールはマグを置いた。
「一方的な強敵宣言ですか‥‥?」
「だって言葉にする必要はないって?」
少し酔い気味のリザである。
「‥‥」
そんな喧騒に背中を向けて、今回の赤字を如何に埋めるかを考えるディオン。
「‥‥たまになら、こういうのもいい──たまになら」
「ディオンどうしたの?」
沈黙したダークエルフにリリィは声をかける。
「少し酔ったかもしれません」
「ふうーん?」
場末の酒場で語られたひとつの冒険譚。
それが勇者たちのサガとなるか、道化のざれ歌となるか‥‥それを知るものは今のミドルヘイムにはいないだろう。
だから‥‥ハウンドの戦いは続く!
9
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参加者
| | a.こっちもハンマーと筋肉で対応するッス
| | フェルス・ディアマント(da0629) ♂ 22歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 地 | | |
| | b.後方から援護しよう。
| | ディオン・ガヴラス(da0724) ♂ 25歳 ダークエルフ マイスター 風 | | |
| | b.だ、ダーク牛マッチョ…?うわあ…ちょん切ろ?
| | リザ・アレクサンデル(da0911) ♂ 23歳 人間 ヴォルセルク 水 | | |
| | a.ああ、春先によく見かけるタイプの方ですね?
| | ベドウィール・ブランウェン(da1124) ♂ 27歳 人間 ヴォルセルク 月 | | |
| | b.ふふん!うえからヤをうたれるって、いがいとうっとうしいでしょ?
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| | a.自分は攻めよう、攻める隙を作る為に攻める。此れも戦術である!
| | ノワール・トゥーナイン(da1749) ♂ 29歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 風 | | |
| | a.動きを、止め、られたら、後は、タコ殴り、ですね
| | ソレイユ・フォリー(da1795) ♀ 22歳 カーシー(小型) ヴォルセルク 陽 | | |
| | a.ほう…漢じゃな。うぬの侠気に我が輩の血も騒ぎよるわ!
| | ソーン・イワオ(da1804) ♂ 39歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 地 | | |
XXXX──!
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ウヴォー!(突撃してくる雄叫び‥‥らしい)
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