【SE02】ダメ騎士を脅かせ

担当ゆうきつかさ
出発2019/10/24
種類ショート 日常
結果成功
MVPドミニク・レノー(da1716)
準MVPソル・ラティアス(da0018)
シェラフィナ・ミルワード(da1687)

オープニング

◆ハウンドギルドにて
「こんな事を頼める相手が、他に思い付かなかったもので‥‥」
 依頼をしてきたのは、ローレックの城で働く騎士の妻だった。
 見るからに申し訳なさそうな表情を浮かべ、ションボリとした様子で、騎士の妻が依頼の内容を説明した。
 彼女の旦那は、『飲む打つ買う』で浪費するダメ亭主。
 愛想はいいが、金はない。

登場キャラ

リプレイ

◆ダメ騎士更生計画ッ!
(‥‥あれが噂の騎士さんか。騎士さんには何とか立ち直ってもらわないとな。奥さんのためにも、この街のためにも‥‥)
 ソレイユ・ソルディアスは足の速さを活かし、物陰に隠れながら、騎士の後を追っていた。
 騎士は日が暮れる前から、街中をフラついており、まったくヤル気が感じられなかった。
 一応、表向きは巡回‥‥という事になっているようだが、面倒臭そうにアクビをしながら歩いているだけなので、本当に仕事をしているのか怪しいところであった。
 そんな中、物陰から現れたのは、預言者風の恰好をしたシェラフィナ・ミルワードであった。
 シェラフィナはローブで体を覆い、口元も布で隠し、普段より化粧を濃くして目元を強調する事で、神秘的な雰囲気を漂わせた。
「ムムッ、怪しいヤツめ!」
 そのため、騎士も警戒心をあらわにしており、素早く剣を抜くと、その切っ先をシェラフィナに向けた。
 だが、その剣はまったく手入れがされておらず、騎士本人の性格を表すようにして、鈍い光を放っていた。
「あなた‥‥死相が出ていますわよ。いますぐ行いを悔い改めねば、霊に呪い殺されてしまいますわ」
 それに気づいたシェラフィナが、臆する事なく騎士に対して警告した。
「そ、そんなの、ハッタリだ!」
 その言葉に驚いた騎士が、脂汗を掻きながら、必要以上に強がった。
 本音を言えば、怖くて怖くて仕方がないのだが、ここで弱気な態度を見せれば、相手の思うツボ。
 そう考えてしまったのか、騎士が激しく目を泳がせながら、震える手で剣を向けていた。
「まぁ‥‥そう思ってしまうのも、仕方がありませんわね。見ず知らずの相手に、こんな事を言われて、信じる方が希少ですから‥‥。それに、ハッタリか、どうかは、いずれ分かる事ですわ。‥‥ですが、今まで以上に浪費したり、家庭を顧みず遊ぶような事があれば、近いうちに必ず不幸が降りかかる事でしょう」
 それでも、シェラフィナは真剣な表情を浮かべ、騎士の不安を煽っていった。
「ば、馬鹿馬鹿しい! 俺は家族と仕事を愛している! 今度、俺の前に現れたら、容赦をしないからなっ!」
 騎士が自らの動揺を誤魔化すようにして、震える手で剣をしまい、シェラフィナに背を向けた。
「まぁ‥‥信じるか信じないかは、あなた次第ですわ」
 そんな背中を見送るようにして、シェラフィナが薄い笑顔で突き放し、騎士の不安を掻き立てた。
 そのせいで、騎士はイライラとしたまま、酒場に続く裏路地に入っていった。

◆裏路地にて
「‥‥たくっ! 今日はツイてねぇ!」
 酒場に向かう途中、騎士が苛立った様子で愚痴をこぼした。
 シェラフィナに不吉な事を言われて、不安な気持ちでいっぱいになっているのか、フラフラと歩きながら辺りのモノに当っていた。
「‥‥」
 そんな中、物陰から様子を窺っていたのは、アレッタ・レヴナントであった。
 アレッタはじぃっと騎士を見つめていたが、目が合ったのと同時に視線を逸らした。
「なんだ、お前は! 怪しいヤツめ!」
 それに気づいた騎士が、半ば八つ当たり気味に、アレッタの胸倉を掴んだ。
「あんた、何に手を出したんだい? 今の生活を改めないと、どうなってもおかしくない物がついてるけど‥‥」
 アレッタが見てはいけないモノを見てしまったと言わんばかりに、騎士の顔をマジマジと見た。
「お前に言われる筋合いはない!」
 その言葉に苛立ちを覚えた騎士が、逆ギレした様子で酒場に向かうのだった。

◆酒場にて
「もうすぐ、此処に騎士が来るぞ!」
 一方、ソレイユは先回りをするため、パルクールで建物の屋根伝いに移動し、騎士よりも早く酒場にやってきた。
 酒場には、既にソル・ラティアスが待機しており、ソレイユの合図で席に座った。
 その事を確認した後、ソレイユが次の準備をするため、酒場の裏口から出ていった。
 それと入れ替わるようにして、不機嫌な様子で、騎士が酒場に入ってきた。
「おやおや、随分とご機嫌斜めのようですねぇ。まぁ、誰しも、どうしようもない時はありやす。聞けば貴族や騎士の仕事ってのも贅沢に見合う程度にゃ大変だそうで? 今日も何かあったんじゃないですか? だったら一緒に飲みやしょう。一杯オゴりやすで」
 ソルが愛想笑いを浮かべながら、騎士の代わりに酒を注文した。
「おっ! 悪いな」
 騎士が酒場のマスターから酒を受け取り、ソルと向かい合うようにして椅子に座った。
「せっかくですから、景気づけに俺とカード勝負で賭けでもしませんか? ただし、金を賭けるのではなく、魂を賭けて‥‥」
 ソルが含みのある笑みを浮かべ、騎士の顔色を窺った。
「おいおい、冗談にしてはタチが悪いな」
 その言葉に難色を示したのか、騎士が席を立とうとした。
「万が一、俺が負けた場合は、今晩オゴりやすんで」
 そんな空気を察したソルが、騎士の機嫌を取った。
「まあ、そう言う事なら話は別だ。それに、お前が死神でもない限り、魂を奪える訳もないしな」
 途端に騎士が冷静になり、ソルの顔を見返した。
 ‥‥相手は人間。
 例え、負けたとしても、魂を奪える訳がない。
 そんな結論に至ったのか、先程と比べて、騎士は自信満々になっていた。
 しかし、勝負は散々。
 まるでカードに細工でもされているかのように、負けて、負けて、負けまくった。
 だが、騎士には、その原因が分からない。
 ソルの話術が上手いせいか、酒場に流れている音楽のせいか。
 いくら考えても納得のいく答えが出ていない感じであった。
「ば、馬鹿なっ!」
 騎士が激しく目を泳がせ、勢いよくテーブルを叩きつけた。
「まあ、勝負は時の運と言う言葉もありますし、必ず魂をいただきに行きやすよ」
 そう言ってソルがポケットの中に、カードをしまい込んだ。
「馬鹿馬鹿しい! 俺は帰るぞ! 俺の魂‥‥取れるものなら、取ってみろ!」
 その途端、騎士が逆ギレした様子で、酒場から出ていった。

◆娼館にて
「みんな準備は出来てるか? そろそろ騎士が来るぞ」
 その間にソレイユが娼館に先回りすると、コネを使って娼婦達に協力を得た。
 娼婦達の準備は既に整っており、いつでもOKと言わんばかりに、ヤル気満々であった。
 そうしているうちに娼館の扉が開き、イラついた様子で騎士が入ってきた。
 それに気づいたソレイユが物陰に隠れ、なるべく目立たないようにした。
 幸い、騎士は娼婦にしか興味がなく、下半身が本体ではないかと錯覚してしまうほど欲望に忠実だった。
 そして、騎士は娼婦達に案内されるまま、ドミニク・レノーが待つ部屋に入っていった。
「あら、いらっしゃい。随分と機嫌が悪いようだけど、何かあったの‥‥?」
 ドミニクが女性らしい恰好で、エルフの耳を隠し、騎士を部屋の中に迎え入れた。
「それが‥‥聞いてくれ!」
 騎士がイライラした様子で扉の傍に剣を置き、今日の出来事をドミニクに説明し始めた。
 それは実際の出来事とは異なっており、騎士によって都合よく変えられていた。
 おそらく、ドミニクが何の事情も知らないため、話を盛ってもバレないと思っているのだろう。
「不吉な占い師と博徒? 先日、同じ話を聞いたけど‥‥。大した事じゃないから、気にしないで」
 ドミニクがハッとした表情を浮かべ、気まずい様子で口を噤んだ。
「‥‥何かあったのか?」
 途端に騎士の表情が険しくなり、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「‥‥話していた方は亡くなったと聞いてるわ」
 ドミニクが少しだけ答えを躊躇った後、悲しげな表情を浮かべた。
「じょ、冗談だろ!」
 騎士が動揺した様子で、ドミニクをギョッと見返した。
「脅かしてごめんなさいね、お詫びに少しオマケするわ」
 ドミニクが含みのある笑みを浮かべ、動揺する騎士をベッドに招き入れた。
 それに導かれるようにして、騎士がドミニクの唇を奪おうとした。
「‥‥!」
 次の瞬間、騎士がドミニクの背後を見たまま、怯えた様子で表情を凍り付かせた。
 そこに立っていたのは、騎士の父親の顔に似せてゾンビメイクを施したリディオ・アリエクトであった。
 危うく娼婦役になるところであった事もあり、自分に相応しいのはゾンビ役と言わんばかりの勢いで、思いっきり顔色の悪いメイクを施していた。
 その甲斐あって、雰囲気もバッチリ。
 おどろおどろしい雰囲気が漂っているため、それを目の当たりにした騎士自身も、背筋をゾッとさせているようだ。
「うわあ!?」
 しかも、騎士がドミニクに視線を移した途端、腰を抜かす勢いでビックリ!
「私の顔に何かついているの?」
 そこに追い打ちを掛けるようにして、ドミニクが化け物の仮面を被ったまま、騎士に身体を擦り寄せた。
「く、来るなッ!」
 その事に恐怖を覚えた騎士が、ガチガチと歯を鳴らして、剣を抜こうとした。
 だが、手元に剣はない。
「栄光ある貴族の血を引きながらそのザマは何事だ。貴様は家の恥じゃ、地獄の使者とともにこちらへ来るがいい。さあ」
 すぐさま、リディオが血を垂らしながら、騎士に手を差し伸べた。
「金が無限にあるわけなんざないだろうに‥‥馬鹿じゃあないかい? 奥方泣かしてんじゃあないよ、この甲斐性無しが!」
 アレッタが骸骨の被り物をして、騎士の背後に立った。
「‥‥あら? よく見れば、私の愛しい方に、よく似ているわね。でも、変ね。あの方は私が殺したはずなのに‥‥」
 ドミニクも騎士の恐怖を煽るようにして、さらに顔を近づけた。
「ひ、ひい、勘弁してくれ!」
 そのため、騎士が間の抜けた声を上げ、ベッドから転がり落ちた。
「まだ奥さんを悲しませるなら‥‥次はないわ」
 その隙をつくようにして、ドミニクが後ろから騎士に抱き着き、恨めしそうに耳元で囁いた。
「た、た、助けてくれ!」
 そのため、騎士はあちこちに身体をぶつけながら、逃げるようにして娼館を後にした。
 この事がキッカケになったのか、騎士は飲み屋にも行かず、真面目に働くようになった。
 ただし、異常なほど臆病になってしまったらしく、夜は手を繋いでおかないと眠れなくなってしまったようである。



 9

参加者

a.ふは、そいつは違いねぇや。ま、そんじゃ賭け役いきやすんでよしなに。
ソル・ラティアス(da0018)
♂ 28歳 人間 パドマ 月
a.ドミニクが娼婦役やってくれるなら俺はゾンビ役かな。
リディオ・アリエクト(da0310)
♂ 26歳 人間 カムイ 風
b.そうさね、役は埋まっちまってるしこっちで脅かしにかかろうか。
アレッタ・レヴナント(da0637)
♀ 25歳 人間 パドマ 月
c.んじゃ俺の方は物陰から騎士を誘導したりする感じで。
ソレイユ・ソルディアス(da0740)
♂ 21歳 人間 ヴォルセルク 陽
a.私は預言者役を希望ですわね。ふふふ、慣れていますので。
シェラフィナ・ミルワード(da1687)
♀ 24歳 ライトエルフ カムイ 水
a.健気な妻を泣かせるなんて、男の風上にもおけないからね。厳しくやるよ?
ドミニク・レノー(da1716)
♀ 25歳 ライトエルフ パドマ 水


皆さんの手で

『飲む打つ買う』で浪費する最低最悪のダメ亭主を改心させてください。