【HH01】戦士たちの咆哮

担当K次郎
出発2019/10/07
種類グランド 冒険(討伐)
結果大成功
MVPアリアドネ・ウィステリア(da0387)
MVSイッヌ・アステール(da0440)

オープニング

◆決着、そして‥‥
 ブラック・ラグビー(ブラビー)の決着、それは次の戦いのプロローグでもあった。
『俺たちのボスからの伝言で来た』
 ダークホブゴブリンのボスであるランキア、その配下の四天王の一人が使者として現れたのだ。
『今度は戦士として戦い合おう』
 オーガ語で、確かにそう告げる四天王。

登場キャラ

リプレイ

◆開幕!
 冬の寒さも近づきつつある渇いた大地に降るのは戦いの汗と勝利の涙か‥‥それとも血の雨か。
 ついに決戦の刻を迎えたハウンドギルドとダークホブゴブリン・ダークゴブリンからなるダーク軍団。勝利の栄光はどちらに輝くのか。そして、ディスミゼルの行方は‥‥。

 ドーン、ドーン、と始まりを告げるかのようなドラムの音が鳴り響く。
 ドミニク・レノーが叩き出す音は徐々に大きくなり、ハウンドたちのボルテージを少しずつ高めていく。
「いいね、ドミニクお兄さん。それ最高!」
「ああ、楽器だけでも心の内にある想いを解き放ち、皆の魂を揺さぶるものなんだ」
 ショウ・ジョーカーのサムズアップにドミニクは何か意味ありげな笑みを浮かべながらそう応えた。
 そして、沸き立つ。ハウンド側だけでなくダーク側もだ。それはそのドラムに込められた想いから、だろうか。
「はい、ドミニクさんのオープニングドラムでした。お次の演目は‥‥」
 と木札を掲げて皆の前でしゃべるのはアリー・アリンガムである。そこに書かれているのはどうやら次にどんなウォークライ(WC)を行うか、ということであった。
 そう、既にハウンド側ではWCに備えた準備が行われていたのである。
 それは何日も前、ランキアからの挑戦が届いたしばし後のことだ‥‥。

◆備えよ、ハウンド
 ランキアからの挑戦を受け、ギルドはハウンドたちに作戦への参加を要請。そこでWCについての事前会議が行われたのである。
「そんなにガッツリとは言わないけど、ちょっと軽く打合せ出来ないかな? 音合わせとか」
 何気ないアレッタ・レヴナントの提案に、何人かが乗ってくる。事前にセッションしておけば当日だって合わせるのが楽になる。
「わかりました、では、演目もプログラムを作ってやりましょう。あ、もちろん、司会は私が勤めますので」
「いや、そこまでは‥‥」
「バラバラ過ぎて不協和音となってもいけませんからね」
「あー、うん、でも、有った方がいいか」
 前のめりに手を挙げてくるアリーにアレッタも押されるが、確かに必要な気がしてきた。
「確かに、そうでさぁ。演奏もバラバラ、歌もバラバラ、踊りもバラバラとくりゃあ、どうにもなりませんぜ」
 肩を竦めるソル・ラティアス
「そうだね、誰かに出番なんかも管理してもらえればやり易いかも」
「ふうむ、私は司会ですのであとはそういった裏方さんが‥‥」
 考え込むアレッタとアリー。
「なら、いっそルナでも使って探しやしょうか?」
 などとソルから危険な意見が出てくる。いや、本気では無いだろうがそう思える雰囲気もあるわけで。
「いやいやいや、それならば私がタイムスケジュールの管理をいたしましょう」
 そこで手を挙げたのはジョシュア・マクラーレンだ。前に出て色々やるより、後ろで全体を動かす方が自分の性に合っているのだ。
「では、まずは皆さん、何を行いたいか意見を出し合って、同じ方向性ならば一緒に練習を行う形でいきましょう」
 ジョシュアがそう告げれば、皆、あれこれと意見が飛び出し、その中で上手く演目の調整が行わるのであった。
「よーし、そうと決まれば早速練習だぜ」
「ははははははははは! 俺のポーズに磨きをかける時!」
 会議が終わり、早足で場を後にするグラナート・ミストファイアツヅル・アステール
 なんか心配もあるが‥‥なんとかなる、かなぁ。

◆応酬!
 そして戦場ではWC合戦ともいうべき戦いが始まる。
 ドミニクのドラムを受けて先に咆哮を上げたのはダーク側だ。
『オオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
『セイセイセイセイセイセイ!!』
『ォォォォォォォォォ!!! ゴーハッピー! ゴーハッピー! ゴーハッピー! ランキアァァァァァァ!!』
 邪鬼らしからぬ一糸乱れぬ動きと叫び。やはりブラックラグビー、そうあのブラビーで見せた連携能力はフロックでは無かったのだ。
「よーし、ブラビー同様、盛り上がってきたぜ。で、あいつらなんて言ってるんだ?」
「ふむ‥‥そうですね、普通に気合を入れるための叫び、といったところですね。もう少し中身のある内容かと思っていたのですが」
 グラナートの問いにメイベル・ミストールは首を振りながら応える。とはいえ、オーガ語で何か呪術的な言葉を発する可能性もあるのでしっかりと聞いておかねばなるまい。
『×××が〇〇〇で、ピーをピーごぶ!』
「今のは?」
 なんかしゃべっているようだったが。
「いややわぁ、わらわの口からはよういわれへんわぁ‥‥」
 同じくオーガ語を訳そうかと聞き取りをしていたエリアル・ウィンフィールドは眉を顰めている。何やら品の無い悪口が並んでいたようだ。
 言葉の意味はよくわからないが、とにかく凄い勢いだ。
 ならば、対抗して、なのかよくわからないがアプルーマプルーが進み出る。
「歌うぞー」
 
  ランキュア、キュアキュア、イカレた野郎
  部下も全員イカレてるゥ~♪
  なんたってキミら最凶 でも俺たちゃ最強、更に上を行く
  だよね、まーくん 見せてやれ二度目の勝利♪

 なんかいきり立つダーク側。言葉は通じずとも、何か言われているのはわかったのだろうか?
「なんだかよくわからないけど、リリィたちもまけてられないんだから! がんばれ♪ がんばれっ♪」
 そうだ、リリィの言う通りハウンドも負けちゃいられない。
「ア゛ア゛ァ、ゴォォォォォルァァァッ!!!」
「うひゃーっ!」
 突如味方からの雄叫びにびびるリリィ。
 振り向けばソレイユ・フォリーの小柄な体から出ているとは思えぬ激しい叫びが飛び出していた。
 そう、ハウンド側雄叫び部隊の出番である。
「届ケェ、魂ノ叫ビィ! グゥオオオォォォォォォンン!!!」
「すごーい! おおきなこえだわ!」
 叫びながら血も吐き出すのではないか、そんな迫力を見せる。これがソレイユの、戦士の叫びだ。
「が、がんばらないと」
 拳を握るリーリエ・アルベール。とにかく叫べ、精一杯。
「うおおおおおおおおお!!!」
 それに呼応に次々と雄叫びが上がる。
 すると、ダーク側も負けじと更に盛り上がりを見せるではないか。
 血が‥‥滾る。
「愉しい戦争が出来そうじゃねぇか、なァおい!」
 これは愉しい。ヴィゾン・ザガートの血が、戦いを求める血が、徐々に沸き立つのがわかる。
 彼は盾を構えると、それを反対の手にした槍で叩き出した。傭兵時代もやってきたことだ。武具は、楽器にもなる。戦場で魂を昂らせるためには当然のことだ。
「だらっしゃー! 声のデカさなら負けねぇ! 解き放て魂の炎! バーニングソウル!!」
 そして、溜めに溜めたグラナートバーニングソウルは火を噴いた。大音声が響きハウンド側を盛り上げる。そして、何かの合図のように足踏みを始めるグラナート。
「合図ですね」
 それに気付いたジョシュアがスッと手を挙げて場を動かす。
「よーし、ここだね」
「りょーかい☆」
 ドミニクとカモミール・セリーザの手がリズミカルに動けば、それは足踏みと同じリズムでドラムビートを刻む。
 ズン、ズン、ズン。
 それに合わせて足踏みを始めるハウンドたち。
「さあ、盛り上げてこうぜ!」
 WCは‥‥まだ始まったばかり。

◆盛り上がれ!
「さてさて、お次は。怒涛のパフォーマンス劇場、カモンです♪」
 雄叫びの余韻も冷めぬ中、アリーの司会により次に演目にGO。
「それじゃあ、盛り上げよっか」
 アレッタの今の得物はブッキーナ。
 軽快な音を刻む。
 ~♪ ~♪
 そこに流れを加えるようなソルのリュート。
「ごきげんなおとだわ!」
「わー、かっこいいー!」
「素敵ですわねっ!」
 なんだかご機嫌な雰囲気にリリィ、ジンジャーレネットらシフール勢にはとても好評。雄叫びはちょっとびっくりだけど、こんななんだか楽しいのは大好きなのだ。
「私もハープで応援しますわねっ!」
 とレネットがハープを奏でれば。
「おいらも負けないよー!」
 ジンジャーのオカリナも続く。
「すごい、すごい! リリィはがっきはできないけれど、おうえんするわ!」
 そうだ、やれることをやろう。
 そんな中、ファウストが縦横無尽に飛び回る。シフール的にはしゃいでいる‥‥のかと思いきや?
「えっ?」
「煙?」
 何か、煙幕のようなものがかかり。そして‥‥。
 来る。何かが。このご機嫌なリズムに乗って。
 見ていた者たちは息を飲む‥‥。
 そして。
「やあああほぉぉぉぉぉ」
 アレはなんだ? 毛玉か? もふもふか?
 いや、エルネスト・アステールだぁ!
「ひゃっほーい!」
 煙の中からエルネストがころりと登場。
 動く毛玉。いや、なんかお尻をふりふり、お耳ぴこぴこ。踊りの腕前は‥‥まぁ、この際置いておくが、みんなを応援しようという気持ちは伝わってくる。
 くるくるっと回り。おしりふりふりふりふり~。
 すちゃ! と止まり、極めポーズは弓を構えて‥‥。
「それっ!」
 びょいぃぃぃん―――。
 弓の弦を弾いてかき鳴らし‥‥なんとも気の抜けた音が。
「‥‥」
 一瞬ずっこけそうになる一同。だが、その辺はご愛敬。
「えーっ、こうしたら魔を祓えるって‥‥えっと‥‥誰かが言ってたと思う!」
 とのことらしい。

 続いて登場は‥‥あー。
「ははははははは! まだまだだな、弟よ!」
 ヤツだ。ツヅルだ。そして、彼といえば‥‥謎のポーズ!
 なんか両腕を獣が襲い掛かるかのように構え吠える。
「はははははは! 見るがいいハウンド仲間よ。そしてダークどもよ! この俺の! 格好良いポーズを!」
 やってる本人、大真面目。
「あれ、こんなポーズだっけ? こんな感じの音でいいかなぁ」
 なんか、打合せの時のポーズと違う。アレッタは合わせる音に戸惑うが。
「じゃあ、俺、カスタネットで合いの手入れるよ」
 ツヅルの微妙な動きに合わせてカチカチと叩くショウ。演奏班も困惑である。
「テンションが上がるだろうそうだろうははははは!!」
 上がる。圧倒的に上がるぞ‥‥ツヅルのテンションが。
 と、ダーク側でも動きが。
『はっ!』
 一人のダークゴブリンが、前に出てきてすびしっ、と片手を突き上げ天を指し、なんかフィーバー的なポーズを決めるではないか。
「なっ!」
 驚くツヅル。
「くっ、か‥格好いいじゃないかっ」
 なんだ、何か負けた気がするぞ。ゴブリンに。衝撃を受けるツヅル。このままではハウンド側全体が盛り下がってしまうのでは!?
「えーと、次の演目いきましょうね~♪」
 素早く次へ移行するアリーの司会力で事なきを得る。

 ずらりと剣を構えた戦士たちが並ぶ。
 グリーヴァタチとパリーイングダガーを持つ手を胸の前でクロスさせ、精神統一を図るかのようなヴァルター・アインハルトがバッと両腕を開き、荘厳な感じになったリズムの中で舞いだす。
 すると、そこへロザリー・アルベールのグリーヴァオニキリが繰り出される。仲間割れか? いや、それはゆっくりと、そして優美に。
 ヴァルターがダガーでロザリーのオニキリを受け流し、その流れのまま二人は位置を入れ替える。お互い、視線を残し、次の交錯に備える。
 始まったのは剣舞だ。踊りは得意じゃないが、それでも武器は使える。ならば剣舞の真似事ぐらいはやってみせる心意気。
「え、あ、うぇ?」
 そこで変な声を上げるアリアドネ・ウィステリアは戸惑う。
 確か、武器を持って味方を鼓舞するようにするって話だったはずなのでは‥‥。
(け、剣舞なんて聞いてねーです)
 ハッキリ言ってしまえば、コミュニケーション不足による打合せミスである。だが、うっかりそこにいてしまったのなら、何かやるしかない。
「こうなりゃ、自棄です。うおおおおお死にやがれですよおおおお!!」
 ブンブンと杖を振り回すのだった。

 続いて響くは、ちょっと情熱的なメロディー。
 音が‥‥動く。
 いや、比喩ではない。実際にリズムの発生源が動いているのだから。
「~♪」
 カモミールは革紐で肩に吊るしたドラムを叩きながら大きく足を振り上げ激しい踊りを披露。周囲も手拍子とともにそれを応援する。
 上着を脱ぎ大事なところだけ隠されて露出した白い肌に伝わる玉のような汗が光る。と、その時。
「あっ、いっけな~い☆」
 勢いよく手を挙げてからドラムを叩いた勢いで、何かが飛び出した。
 ポロリ―――。
「!!」
「おお~っ!」
 周囲の視線が‥‥。
「あれ?」
 カモミールに集まらない。NA・ZE・DA!?
「ああっ‥」
「姉様‥」
 注目は一緒に踊っていたアルマリア・アリアンロッドアザリー・アリアンロッドの姉妹の方へ。
「皆が見ているわよ」
「ええ‥‥昂るわ」
 こちらも薄着になって二人で身体を絡ませる情熱的な踊り。カモミールの健康的な踊りも姿もいいが、こちらはなんというか‥‥艶めかしい。主に男性の視線を集めてしまうのは仕方なかった。
「も~☆ しょうがないなぁ」
 こうなったらこっちを盛り上げよう、と二人の動きを更に上げて行こうとカモミールのドラムロールが激しくなり。
 そして、二人の唇が重なれば‥‥。
 ドドドン―――。
 ここでストップ、と叩き止め。
「あら」
 ちょっと残念そうな姉妹だが、きっとハウンドたちも昂った筈。主に別の方向で昂ってしまったかもしれないが、それはまぁ、あれだ。しゃーない。 

 そして、WCの締めは。
「ではラスト、皆さんお願いしますね」
 アリーがそう促せば。
「さあ、お歌でしょーぶですのっ!」
 レネットが皆の頭上から更に一段高く飛びえいえいおー、と拳を突き上げる。
 それに呼応してハウンドたちも一斉に拳を突き上げた。
「それじゃ」
 アレッタが得物をハープに持ち替える。歌うのだ、みんなで。

  進め進めハウンド  荒野の先へ駆け抜けろ
  敵を屠り前へ進め  邪神の加護を打ち払え

 グラナートとソレイユの大声が競うように放たれた‥‥かと思えば。
「バラバラのハウンドの力もとんでもねぇですが、まとめりゃ一点突破の馬鹿力でさぁ」
「いいよー、大気鳴ってるよ」
 ショウのカスタネットとソルのリュートがテンポを整え歌声に流れを作る。

  刈り取る物はその命か  その身に宿る呪いか

「みんな、がんばれー!!」
「フレー! フレー! ハウンドギルド!」
 リリィやジンジャーらシフールたちが歌う仲間の上を飛び回り声を掛けていく。

  行け行けハウンド  邪神の加護を打ち破れ

「凄い凄い。ダークゴブリン、ホブゴブリン、そしてハウンド! お互いのウォークライが火花を散らす! 気合いと気合い! 闘志と闘志! 勝つのはどっちだ!」
 シルヴァーナは語り部だ。勇者たちの戦いの記憶を残さねばならない、そう思う。何故だかわからないけど、そう思う。だから、この光景をしっかりと目に焼き付ける。
(凄い熱量だ‥‥これが彼らにも届くといいのだけれど‥‥俺は甘ちゃんかな)
 ドラムを叩きながらドミニクはダークな連中にも届けたい、と願う。たとえこれから彼らと決戦するのだとしても。
 そう、決戦が待っている。

 戦いが、今、始まる。

◆左翼、会敵ス
「左翼、斬り込ませてもらうのである!」
 右翼の様子をチラ見しつつノワール・トゥーナインが突撃する。
「おぬし、出過ぎだぞ」
 前進はすべきだが、右翼とのタイミングも重要なのだ全体の動きも気になるところ。その横をずんずん出ていきそうなベル・キシニアの姿を認め呼び止める。
「ああ、あのWCを終えてから我慢が利かなくてな」
「それはわからんでもない」
 ベルの場合は、WCがあろうがなかろうがどんどん戦いに向かいそうな気もするが、それはそれ。戦いに臨んで気分が高まっているのは圧倒的事実。
「まずはぶつかって、そこから四天王でも潰しにいくさ」
「数で劣る分、頭を潰す、か悪くないであるな」
 そんな言葉を交わしながらも二人の視線は前方の敵に向いている。接敵前に敵の矢が飛来する。
「っ!」
 何本か叩き落とすが、数が多い、何本も体に突き刺さる。
「大した傷ではないな」
 とベルは言う。強がりではない、鎧などの効果もあるが、恐らくは‥‥WCの効果がその身を守っているのではないだろうか。
「なるほど、ならば一気に‥‥っ!?」
 いざ、一番槍、と仕掛けようとしたノワールの横をバチバチッと稲妻が迸る。
「まずは挨拶代わりですよー」
 後ろからやや間延びした声が届く。
 ふわりと地面から浮いたサレナ・フランセットが杖をダーク側に突きつけ睨みを利かせていた。あんまり怖くないけど。
 ゼウスを放ったのは彼女だった。
「全然倒れませんねー」
 何匹かは感電させられるか、と思ったが、敵は倒れない。可能性があるとすれば、ダーク側のWCもしっかりと効果を発揮しているということか?
「援護はしますー、行ってくださいー」
 だが、怯まない。ハウンド側にだって後方からの援護射撃はあるのだ。
「オオオォォォォォォンン!!!」
 ならば信じて突っ込むのみ。ソレイユもWCの時の勢いそのままに獣のような雄叫びを上げて敵陣へまっしぐら。
 そこへ横合いからゴブリンが一撃。
『げげっ!』
 が、そのゴブリンの肩に矢が突き刺さり攻撃の軌道を逸らす。
「さっきはガンガン盛り上げたけど、こっちはこっちで、いつも通り援護するよ、堅実に」
 WC時のノリはそのままだが、そのハートは冷静に。ショウはカスタネットではなく弓を構える。
 そこから放たれる矢は味方を救うだろう。
 そしてその横でも弓を構え。
「そーれ」
 びょいぃぃぃぃん―――。
 エルネストが弓を鳴らした。
 うん、鳴らしただけだ。きっとその音は魔を祓うだろう。
「ははははははは! 弟よ、矢筒はここだぞ」
「あーっ、いっけなーい」
 とツヅルから矢筒を受け取るエルネスト。
 ん、なんか、心配になってきたぞ。

「遅いである!」
 だが、前衛はダーク側相手に奮戦中だ。接敵してしまえば矢も怖くはない。ノワールはゴブリンの腕に短刀を突き立てる。
『ぎっ!』
 ビリッときたゴブリンが感電して倒れる。効かないわけではなさそうだ。
「正々堂々やられば一番良いが‥そうも言ってられんな。卑怯だとは言ってくれるなよ!」
 勝たねばならぬ戦いがある。
「さて、右翼や中央はーどんな感じになってるのでしょうかー?」
 ぶつかり合いは始まった雰囲気だが、他の戦場の様子も気になるものだ。サレナはフライの効果で慎重に高度を上げた。矢が怖いので盾は敵側に構えたままで。
「あらー」
 そこに見える光景は、如何に?

◆右翼、衝突ス
 右翼は緊張感を持って敵陣とにらみ合う。
「あそこが崩せればあの後ろの部隊に‥‥」
「考えすぎだよリリィ。こうなったら臨機応変にやるしかない、ってね」
「うーんでも」
 どう動くべきか頭を悩ませるリーリエをロザリーが宥める。騎士として戦術眼も磨かなければいけないが、その辺もまだまだ発展途上といったところか。
 だが、動くべき時は動かねばならない。緊迫した状況を破ったのはハウンド側だった。
「おいら、びゅーんて向こうまで飛んで、敵の動きを知らせるよー」
 と、ジンジャーが陣を飛び出したのだ。
「危ないよ!」
「だいじょうぶ。おいら運がいいから、なんとかなるよ!」
 そう言い残し飛び立つジンジャー。
 いくらシフールは幸運に守られることが多いとはいえ危険すぎる。
 案の定、いきなりゴブリンに襲われかける。
「ん~☆ あんまり荒事は得意じゃないけど~。―――ソル☆」
 援護せねば、とカモミールのソルが放たれ、ゴブリンを攻撃。怯んだ隙に更にジンジャーは敵陣奥へ。
「おっと、呼びやしたかい?」
 そう応えたのはソルだ。
「え~」
「おっと、冗談でさぁ。けど、この状況は放っておけねぇ、ってのが筋ってもんでしょう?」
 そう、放っては置けない。
「そうだな。正直、囲まれるのは得策では無いのだが‥‥引き付ける」
 それを受けて飛び出したのはヴァルターった。
「なるほど、WCの効果かはわからんが、これならいけるか」
 敵陣から放たれた矢は、彼に大きな傷を負わせるには至らず。
「さあ、掛かってくるがいい」
 言葉は通じぬだろうと、ヴァルターはクイクイと手招きして挑発して見せる。
『やれごぶ!』
『殺せごぶ!』
 殺到するゴブリンども。
 しかし絶え間なく振るわれる棍棒は空を切り、さらにパリーイングダガーに受け流される。まだ体力に余裕があるうちは、そう簡単に倒されないだろう。
「ロズ、今のうちに」
「うん!」
 戦場に砂塵が舞う。
 二頭の戦闘馬の蹄が大地を蹴り、敵陣へ一気に斬り込んでいく。手綱を取るのは二人の少女騎士。
(こっち、たくさん敵があつまったよー)
 囲まれピンチのジンジャー。が、ちゃーんとテレパシーで状況を伝えてくる。斥候としての役目は忘れない。
 そこへ疾風のように二頭が突っ込んでくる。平原での戦いで機動力は大きな武器だ。
『うげげっ!』
『なんだごぶ?』
 闖入してきたシフールに気を取られていた敵陣は猛スピードで穿たれたくさびのような突撃に対応が遅れた。
「いったん下がりましょう」
「うん、わかったー」
 素直に従うジンジャー。
「僕に掴まって」
 とロザリーが伸ばした腕にジンジャーが掴まると、素早く馬首を巡らせる。二人ともなかなかの手綱捌きだ。
 そして、一旦離脱。
「下がったか。では、こちらも」
 状況を冷静に確認するとヴァルターはバックステップ。一気に距離を取り敵から離れていく。
『ザコめごぶ!』
『逃げるか弱虫ごぶ!』
 何やら罵詈雑言が飛んでいるが、言葉がわからないので気にしない。
 しかし、一匹、追いついたゴブリンがヴァルターの死角から棍棒を振り下ろす。
「ちぃっ!」
 捌き切れない。
「えーい、ですのっ!」
『うぎゃっ』
 だが、ゴブリンは突然顔をしかめてうずくまる。
「助かった」
「えっへんですのっ!」
 レネットのマジカルショックが決まったのである。
 最初の激突でそれなりに損害を与えはしたが、右翼は一度態勢を立て直す必要がありそうだ。
 さて、この後どう動くべきか。
「ふむ、なるほど、だいたい配置は見えてきましたね」
 右翼の後方では、チェス盤を前にしてジョシュアが呟く。そこにはどうやら敵の配置に似せた駒が置かれているようだ。
「戦はチェスと同じ‥‥先を読み、焦った方が負けです」
 彼はどさくさに紛れてガーゴイルを斥候に出していたのである。
 さてさて、戦況はチェスのように動くのか、それとも‥‥。

◆中央激動ス
 両翼が動き、中央もまた今にもぶつかり合う寸前だ。
「へぇ、たかがゴブリンだと思っていたが、動きが速いな」
 素早く部隊を展開させるダーク側に対してレナード・スフィアは感嘆の声を上げる。
「でも、そのランキア自慢の部隊をぶち壊して、得意の競技でも、この戦闘でも負けて、惨めをさらしてやればいいんだろ? それがディスミゼルに繋がるわけだ」
 ああ、早くぶち壊したい。
「逸るな、レナ」
 その背後から首に腕を回し、ヴィゾンが耳元で忠告する。
「そんなこといいながら自分だって昂っているんだろ?」
 背中越しで感じる気配でわかる。
「ああ、だがこっちはこの戦が終わってからのお楽しみだ。来やがるぞ!」
 まずは心の昂りを。闘争心を鎮めるために接近する敵を叩く。
 両陣営の士気は非常に昂っているのだ。いろんな意味で。
 その中でも、最も昂り過ぎてしまったのが‥‥。
「ああっ、熱いベーゼ‥‥受け取りなさい!―――ファイアボム!!」
 激突直前にアルマリアが放ったファイアボムが敵先鋭を撃つ。
「イってしまいそうなくらいね」
「ダメよ姉様。私たちが彼らをイかせるの」
 ファイアボムを受けてなお突っ込んでくる敵にアザリーが刃を突き立てた。
「姉様に触れていいのは、私だけよ」
 妹が守り、姉が魔法を放つコンビネーション。
「徹底的にヤってあげる。徹底的にね」
 次はどこへぶち込もうか。アルマリアの背筋が湧き上がる甘美なものに震えた。

「一気に行くぜ!」
 響いたのはハヤト・アステールの声だろうか。
 いや、彼だけでなく多くの者がWCの勢いそのままにアリアンロッド姉妹が崩したところから突っ込む。狙うはランキアの首だ。
「ランキュアーめ~、今度こそ決着をつけてやるのだ~」
「ダメですよアプルーさん、あんまり前に出過ぎては」
 目を離せばどこまでも突っ込んで行ってしまいそうなアプルーを諫めるチロ・チロリン
「ほら、危ないです!」
 アプルーをうざったく感じたゴブリンの棍棒をアームガードで食い止めると、そのままグリーヴァソウリュウでぶった切る。
「こういうときこそ慎重に進みましょう」
「だが、ご機嫌になったハウンドたちは痛快なぐらいガンガン進んでしまったのだ~」
「え、ええ~っ」
 自分よりも高い位置の目線で前方を見れるアプルーの言葉にハッとなるチロ。
 確かに味方の前線はかなり前に進んでいっているではないか。
 その最前線を進んでいるのはエウロ・シェーアであった。
 襲い掛かる敵の攻撃が彼女の鋼鉄の皮膚、いや鎧とWCのもたらす守りの力によって阻まれる。
「邪魔だぁ、どけえぇぇ!!」
 群がる敵にクレイモアが暴風のように振るわれる。確実に、前へ、前へ。
 それに続き進撃するハウンドたち。
 だが‥‥。
「妙だな」
 何かが引っ掛かる。
 ソーニャ・シュヴァルツは一度立ち止まり、周囲を見回した。
「敵の動きがおかしい。おおい、キミたち、一旦こっちへ下がるんだ!」
「ん、おおっ?」
 なんだ、と反応するハヤト。
 その時、雄叫びが聞こえ、矢の雨が降る。
 そこに広く陣を敷いていたダーク側がその陣を狭めてきたのだ。
「拙いな、分断されるぞ」
 ダーク側にランキアを求め突っ込んだハウンドたちは、敵陣に深く取り込まれる形となる。
「これは後退だな」
「うぉ」
 いきなり現れたアイン・クロービスに驚くハヤト。ソーニャの忠告に反応しホルスで一気に後退したのだ。
「だけど、前に取り込まれた連中はどうすんだ?」
「仲間の危機は救わなきゃならんが、態勢を立て直そう。一旦下がってくれよ。ここは、俺が」
 まずは、ここを切り抜けなければ。自分たちも敵陣に取り込まれてしまう。
「我が名はアイン・クロービス。我が剣は二刀。右で斬られるか左で突かれるか、選ぶがいい!」
 と名乗りを上げるアイン。
 言葉が通じる相手ではない。だが、その騎士然とした佇まいに「かかってこい」と言っているであろうことは邪鬼どもにも想像できるだろう。
 目論見通り多くの敵がアイン目掛けて仕掛けてくる。
「ぬん!」
 無数の攻撃を避け、受け流す。
 十分に引き付けたなら。自身もジリジリと下がる。
 どうにか仲間は態勢を立て直せるだろうか?

 一方、敵陣に取り込まれた面々は更に多くの攻撃に晒されていた。
「くっ!」
 ずんずんと進撃していき囲まれてしまったエウロ。フェイスガードから咆哮が放たれるが、事態を打開するには至らない。
 取るに足らない攻撃も、積み重ねられればその疲労は相当なものとなる。
 腕が痺れてくる。鎧の上からたたかれて打撲にでもなっているだろうか。
 何より、腰に下げた回復薬に手を伸ばしたいが、そんな余裕を与えてもらえない。このままでは敵の波に飲まれてい行ってしまう。
「!」
 だが、蓄積したダメージは優しい何かが身体を包み、癒されていく。
「間に合いましたわね」
 後方から声がする。
 仲間か、とエウロはクレイモアをぶん回し、敵を掻き分けそちらへ合流を図った。
「助かりましたわ」
「いいえ、どういたしまして。勿論、タダではありませんわ」
 落ち着いた口調を取り戻し礼を述べるエウロに返ってきたのはシェラフィナ・ミルワードの本気とも冗談ともつかない言葉だ。
「!」
 面食らうエウロ。
「後方にいて回復を行う予定でしたけれど、あのままだと傷を癒す者もおらず敵に取り込まれてしまっていましたわね」
 シェラフィナの状況判断がエウロを救ったのだ。
 だが次の瞬間、シェラフィナの方に向けてクレイモアを振るうではない。
「きゃっ!」
 と、巨剣はシェラフィナではなく、その横に迫っていた敵を叩き伏せる。
「これで、チャラですわね」
「仕方ありませんわ」
 だが、まだ、危機を脱出したわけではない。今は敵陣の真っ只中なのだから。
 ドーン。
「今度は一体!?」
 何か爆発が近くで起きる。
「無事かしら?」
 アルマリアだ。どうやら彼女のファイアボムか。
「固まって耐えるしかないわ」
 アリアンロッド姉妹も合流し、どうにかこの場を凌がねばならない。助けが来るかもわからない状況で、だ。

 しかし、ピンチの中にもチャンスあり。
 エウロらが結果的に敵を引き付けていた間に届いていた。そう、ランキアの下に刃が。
「ソコにいたかよ、ランなンたら!」
 大将首をみつけ、子供のような笑顔をみせるヴィゾン。
「首を寄越せよ、なぁ、首寄越せ!」
 その傍らにはレナードが控えている。
「あなたとの命のやり取りは胸が躍りそうだ」
 心、踊る。ヤりたい。殺りたい。
『卑しい、なんて卑しい眼だ』
 ランキアは二人を見てそう評した。勿論、二人にはなんといっているかわからない。
「なんだろう、きっと褒められているんだろうね。僕たち」
「ああ、戦場で相手を殺すことにためらいの無い奴は間違いなくああいう調子で、汚い言葉で相手を褒めるんだ。俺たち同様になぁ」
 何かが通じるのだ。
『!』
 次の瞬間、周囲を煙が渦巻く。ハウンド側が煙幕を張ったのだ。
 戸惑うダーク側。
 そして、レナードは静かにランキアがいたであろう場所に近づき。
「そこだろ、ランキァァァッ!」
 ルミナエクスプロージョンを込めた一撃が、敵を捉える。
『ぷぎゃぁ!』
 上がる悲鳴。
「おい、レナ、そいつは違ぇ!」
 だが、ヴィゾンが何かに気付き声を上げる。
「っう!」
 ドカドカ、っと何かが叩かれる音がする。
「心配するな、お前は攻めろ」
 煙の中でハッキリは見えないがヴィゾンが身体で割り込んで攻撃を受け止めたらしい。
 心配するな、とは強がりでもない、魔法の装甲と戦技の防御技術によってヴィゾンはそう簡単に沈まないだろう。
(どこだ、ランキア‥‥殺気は)
 レナードはランキアを探すが、周囲は邪鬼どもの殺気が渦巻いている。特定できない。
「拙いな‥‥」
 仕留められなかった。身を寄せる二人。このまま煙が晴れたら敵の一斉攻撃も考えられる。自慢の防御力もいつまで持つものではない‥‥。
 そして、煙幕が切れる‥‥っ!
『うわぁ、なんだこいつごぶ!?』
『攻撃が効かな‥‥スヤァ』
「?」
 何かが起きている?
 晴れた煙の先、何かが動き回っているではないか。
「ガーゴイルか?」
 それは誰かが送り込んだガーゴイルだろうか。殴られても効いていない感じがあるようで何か頑丈な素材なのだろう。そして‥‥触れた敵が眠らされていた。
「ドールちゃん、ようがんばりはりましたなぁ」
 などと後で持ち主であるエリアルが褒めてくれそうな活躍だ。
「ランキアがいない?」
 周囲を見回すレナード。だが、ランキアの姿は消えていた。
「退避! 退避ー!」
 声が響く。と同時に‥‥大勢の敵が跳ね飛ばされる。
 それは特大の重力波。上級クラスのガイアの効果だ。
「さっさと戻りやがれー、ですよ」
 ダーク側の陣の外から『それ』を放ったアリアドネ。ぶっきらぼうな言い方をしつつも仲間を案じる。
「仕方ねぇ、下がるぞレナ」
 ターゲットをロストした以上、長居は無用だ。
 退路は出来た。吹っ飛んだ敵の間から脱出してくるハウンドたち。
 ここで仕切り直して、再度攻勢に転じることは出来るのか!?

◆幕間?
 中央の更に後方ではエルマー・メスロンが仲間たちとともに控えていた。
「さて、我が輩がどんな未来を予知するか‥‥いや、何が起きても貴公らの協力で必ずや打破できるであろう」
 傍らのドーベルマンを撫でながらエルマーは集った三名のハウンドに告げる。
「へへっ、射撃狙撃ならおいらにおまかせだしぃ」
 ヴェスパー・ベントがオーバーロードボウを掲げ、いつでも任せろ、といった風情で胸を反らす。
 その眼は遠くの敵もしっかりと捉え、きっとターゲットを射貫くだろう。
「伝令ならわしの出番じゃな。ピンチの者がいたら、加護を与えてやるとしよう」
 シフールのヴォルトはいつでも現場へ飛んでいく準備万端。
 彼が祈れば、失敗してしまう未来も、成功に変えることが出来るかもしれない。
「拙者も相棒もどこへでも駆け付ける所存」
 ヘラ鹿を駆るベンディッカ・ブラステリーは黒き馬上槍を頭上でブンブンと回してみせた。
 彼が突撃すれば、敵は浮足立つに違いない。
 そんなエルマーと愉快な仲間‥‥ではなく、頼もしい戦士たちが待つのはエルマーの見る可能性のある予知夢。危機があればそれに対応するのだ。

 そして‥‥。
「そろそろ何か見えぬでござるか?」
「‥‥」
「おいら待ちくたびれてきたんだよねぇ」
「‥‥」
 特に、異常なし。
「まぁ、危機が無いならそれに越したことはないじゃろう」
 そうヴォルトが宥めるが。
「‥‥」
「‥‥」
 更に時間は過ぎ。
「‥‥‥‥!」
 時は来た、か?
「これはいかん」
 何か見えたのか、エルマーは危機感を露わにする。
「ん、出番?」
「して、何が!?」
 遂に出番か、とヴェスパーとベンディッカがいきり立つ。
「拙い‥‥このままでは」
「このままでは?」
「我が輩たちは出番を逸するであろう未来が見えた!」
「!?」
「出陣である!」
 遂に、エルマーと愉快な仲間たち、出陣。

◆左翼、激闘ス
 左翼は激戦の真っ只中にあった。
「あっちいけー!」
 迫りくる敵の間を避けながらリリィは負傷者に近づくと、すぐさまキュアティブを唱える。
「ちいさくても、ひりきでも、できることはあるのよーっ!」
 ゴブリンどもも飛び回るシフールにまでは手が回らないようだ。舐められて見過ごされているのか、いや、持って生まれた幸運のためなのかもしれない。
 だからこうやって自由に駆け回り仲間を応援する。
「あっ」
 次の要治療者を探して前方を見たその時。リリィの視界に映ったのは‥‥。

 乱戦の中、敵の中枢に飛び込もうとする影はベルのモノだ。そして、それは皆の目に入る。何故ならスカイランニングで空中から強襲しようというのだから。
「そこか」
 獲物を狙う猛禽類のような視線。
 だが、その彼女を狙う者もあり。
『馬鹿が、格好の的だ!』
 四天王の一人が弓部隊に指令を下す。狙うはもちろん、空に浮かぶその美獣。
「だめーっ!」
 それを見たリリィは祈るが、果たして届くか。
 一斉に放たれた矢は遮蔽物も無く、容易に回避も出来ぬ状況でベルに突き刺さる。
「っ! 胸が無ければ即死だったが」
 だが、リリィの加護やWCの効果もあってかそう易々とは沈まない。危うく心臓に届きかけた矢も辛うじてその肉体が押し留めた。
『次だ!』
 しかし、敵も攻撃の手を緩めず。第二射を番える。
 このままでは目的を達する前にベルはハチの巣だ。
『弓隊、足元に気をつけろ!』
 だが、そこで新たな指示が飛ぶ。一斉に足元を見る敵。
『な、なんだ?』
 いや、四天王は指示を出していない。では、誰が?
「見つけたぞ!」
 そして、その隙をベルは見逃さない。
 そのまま四天王目掛けて落下していく。
「はぁぁぁっ!」
『がぁぁっ!』
 重力とルミナパワー、そしてWC効果が乗り、何よりも死力を尽くしたグリーヴァオニキリの一撃は四天王の脳天を粉砕してみせる。
 だが、その一撃の落下の衝撃でベルも意識を手放した。
「すぐに助けに」
 そう声を掛けるメイベル。そこの声色は先ほどの謎の指示と似ている。どうやら彼女が偽の指示を出したようだ。
「おっけー、ベルお姉さんのところは俺が行く」
 キュアティブが使えるショウが走る。
 だが、ベルは一気に中へ行ったため、その間には敵の群れ。
「はいー、道を開けてくださいねー。―――ゼウス」
 無駄撃ちは出来ない。ここがゼウスの使いどころ、とサレナが稲妻を放てば、それは敵陣を穿つ。
『ががっ』
 戦いでの負傷からか、今度は耐えきれず何匹ものゴブリンが感電し、倒れた。
 絶え間なく攻め続けるハウンドの力と、四天王の一角が崩れたことでダーク側の動きにほころびが出てきている。
 WCでの謎の敗北感からとっくに立ち直ったツヅルはゴブリンを叩き伏せると、懲りずに決めポーズ。
 ズビシッ、とブイを作った指を突き出せば‥‥そこには敵の顔が。
『うがぁー、目がぁごぶ、目がぁごぶぅ!』
「え、あれ? は、はははははは! 計算通りぃ!!」
 多分違う。
 だが、そんな攻撃(?)が決まってしまうということは‥‥。
「よーし、これぞ好機到来のアタックチャンス。一気に攻めるのだ!」
「あらー、随分と流れがありますねー。でしたら出し惜しみなしでいきますよー」
 三度サレナのゼウスが敵陣を引き裂いた時、左翼の一斉攻撃が始まる。
「余力は、残しま、せん! デリャアアアアアアアアアアアアッ!」
 やはり先頭に立ち駆けるソレイユ。
 普段は感情を表に出さない彼女が、この戦い、最初から最後まで吠え続けている。それはやはりWCからの流れが作り出した力に違いないのだ。
『うげぇ!』
 浮足立つダーク側。
『怯むな、戦え!』
 残った四天王の声が飛ぶ‥‥が。
『ぬう!』
 顔面に何か土のようなものが飛来し、一瞬視界を奪われた。
「すまないが、仕留めさせてもらうのである!」
 土を投げつけたのはノワールだ。
 そして、既に短刀を手に肉薄している。
『ぐぉぉ!』
 感電はさせられぬが、それでもダメージは与えている。
「一気に攻めるのである!」
「応!!」
 ハウンドの怒涛の攻撃に、崩れるダーク側の戦線。
「ではー、伝令に飛びますねー」
 まだフライの余力は残っている。サレナは中央、そして右翼へと飛ぶ。左翼がほぼ勝利を収めつつあることを伝えるために。

◆右翼、乱戦ス
 仕切り直した右翼は如何に動くのか。
「ガーゴイルで集めた情報によると‥‥ここですね」
 チェス盤を指し示すジョシュア。そこには敵の配置に見立てた駒が置かれている。
 そして黒の駒をひとつ動かすと、そこに白の駒をひとつ‥‥騎士の駒を近づけた。
「僕ら白キ翼は、騎兵の機動力をもって、敵弓部隊の射撃攻勢を抑えます」
「い、一気に駆け抜けて、ロズと一緒に側面から弓部隊に向かいます‥‥!」
 そう宣言し、ロザリーとリーリエは愛馬の手綱を握り直した。
 つまり、そういうことなのだ。
 風のように駆け出した二騎は大きく迂回し、敵軍の横っ面を狙う。
「じゃ、こっちはこっちで敵を引き付けますかい。ねぇ、旦那」
「仕方あるまい」
 ソルの言葉に、ヴァルターは静かに応えた。
 そう、騎兵が突っ込む前に、敵の前衛を引き付けなけれなならないわけで。
 どうやって引き付けるかは、ノープラン。
 ドーンドーン―――。
 そこで鳴りだすドラムの音。
「どーんどーん、ですのっ!」
「どーんどーん、だね!」
 突如ドラムと叩き出したカモミール。そして、レネットやジンジャーらシフールがそのリズムに合わせて飛び回る。
「ほう‥‥」
 口には出さないが、ヴァルターは何か身体の中から湧き出すような力を感じていた。
 戦闘中とはいえ、WCの更なる効果を引き出せる、ということか。
 ならば、やるしかあるまい。
「来やしたぜ」
 ドラムの音とシフールらの踊り(?)を挑発かと思ったのかゴブリンどもが突撃してくではないか。
「これ、私も出張らないとキツい流れですよね?」
 チェス道具を片づけジョシュアも覚悟を決める。
『っ!』
「ぬん!」
 先頭のゴブリンをヴァルターが斬り捨て、戦端が再び開かれたのだ。

 状況が、動いた。
「来たよ、チャンス到来」
 待ちわびたタイミングはなんとも不思議な感じで訪れた。
「行こう、リズ」
 ロザリーは後ろを振り返らずリーリエに声を掛け、そして返事も聞かずに愛馬に鞭を入れる。見なくてもわかるのだ、必ずそこにいて、そして、自分の後ろに付いてきてくれる、と。
「うん」
 そして、リーリエもその後を迷わず追う。
 騎馬など用いぬダーク側に対して騎兵での攻撃はどうにかして潰さねばならないものだ。側面から回り込んで来た二騎に対し弓を構える。
「遅い!」
「い、いっけー!」
「「オォォォォォォ!!!」」
 二人の雄叫び、いや、違う。
 咆哮を放ったのは二人のフェイスガードだ。エルフ王の怒りを象徴するというその叫びは、騎兵の機動力で有効距離まであっという間に接近し、弓を構える敵にも届く。
『ひぃっ!』
『わっ!!』
 畏れよ、その咆哮を。
 弓を放つ手が滑る。当然、矢は逸れ、まずロザリーが突撃をかます。
 グリーヴァオニキリが敵を吹っ飛ばし、道を切り開く。
『シねっ!』
 そこへ繰り出される重そうな一撃。こいつは‥‥四天王の一人っ! 手強いとみるや自分から出てきたのである。
「来ると思ってました!」
 だが、ロザリーの死角を補うのはリーリエの役目。既に矢を番えていたのだ。
『うぎゃっ!』
 至近距離からの矢が突き刺さり派手に地面を転がる。
「リリィ、一撃離脱!」
「うん!」
 が、その後の追撃はせず、その場から離脱する。
 それは次の攻撃への序章でしかない。
「はぁぁぁっ!」
 再び突撃を仕掛ける二騎。
 弓部隊を、そして四天王の対応を後手後手にさせその機能を失わせていくのだ。

 弓による援護は殆どなくなった。
 だが、引き付けた敵前衛との戦闘はかなり拮抗していたのである。
『ちょこまかと』
「ふっ‥」
 前衛側にいた四天王の攻撃をいなすヴァルター。
 だが、そう簡単に反撃に移させてはくれない。何より、敵の数が多い。何か、そう、何か拮抗を崩す手段があれば‥‥。
「!」
 その時、何かが接近してくる。
 敵の援軍か?
 否。
「我が輩たちが援護するのである!」
 右翼が拮抗していると見て駆け付けたエルマーたちだ。
 どうやら、彼らにもまだ出番が残っていたようである。これで、右翼は戦況が好転するだろう。
 そして、決着の時は‥‥近い。

◆中央咆哮ス
 立て直しを図るべく一度後退したハウンドたち。
 とはいえ、敵の最前線を押し留めるべく交戦している者たちもいる。
「しつこい男は、嫌われるわ」
 姉に近寄る敵は叩き潰すし、口説いてくる男を追い払うこともするかもしれない。
 アザリーが振るう刃が邪鬼どもを倒していく。それも糸が切れるように次々と。
 ミタマギリの効果で気を失ったのだ。何度も攻撃をするよりは少ない手数で仕留められるのは大きい。
「!」
 だが、囲まれてしまえばそうもいかない。敵の増援が向こうから来る!
「アザリーに触れていいのは、私だけ」
 先ほど妹が放った言葉をキッチリ返すアルマリアは、魔法が込められた特殊な杖の先から虎の子のゼウスを一発放つ。
「姉様、今のであちらはハートを射貫かれてこちらにメロメロで来るわよ」
「ええ、そういう殿方を悦ばせてあげるのもテクニックのひとつ‥‥さぁ、情熱的なダンスといきましょう」
 引き付ける、敵を、とにかく引き付ける。敵は、どんどん押し寄せてくる。
「ランキュアー、どこだ~!」
「アプルーさん、援護お願いします」
「とうぇーい!」
 アプルーの放った矢がプスプスと刺さったところへチロが切りつける。
 だが、いかんせん数が多いし、敵も中々倒れない。
「こうなったら、アレをやります」
「おお、ついに必殺のアレを出してしまうのか~。ランキュアーたちよ、恐れおののくがいい!」
「いや、アプルーさん、内容知りませんよね?」
 まぁ、そんなこといっても始まらない。
 チロが手にするは二刀が繋がったようなグリーヴァソウリュウ、そのジョイントを今、外した!
「グリーヴァソウリュウには、こういう使い方もあるんです!」
『な、なんだごぶぅ!』
 二刀に分かれたソウリュウ二連撃。ゴブリンは倒れ伏す。
「勝負はこれからです。死力を尽くしましょう‥‥女神のご加護を」
 彼女らの活躍で今のところ敵の攻勢はどうにか抑えられている。
 だが、反撃は、始まるのか!?

「あかんねぇ、ランキアはん、どこへいってしまったんやろ?」
 箒で偵察をしてきたエリアルが首を振る。
「まぁ、似たよな邪鬼がぎょーさんおるさかい。近づかんとようわからんわ」
 弓での攻撃を避けるため高度を上げて偵察せざるをえなかったのだ。
 自分を狙うハウンドたちを罠にハメたかと思ったら、今度は所在を隠しかく乱してくる。ランキア、侮れない。もっとも、その片鱗はブラビーの戦術的動きからも想像はできたのではあるが。
 何か、手はないものか‥‥。
「あら?」
 ふと何かに気付いたのはアリー。
「ランキュア キュアキュア♪ イカレた野郎♪」
 耳に入ってきたのはWCの時も聞いた歌。アプルーのアレだ。
「うーん、これは‥‥ああ」
 何か思いついたのかポンと手を叩くアリー。そして、視線をアレッタらに向けた。
「プログラム通り、次の演目へ移りましょうか☆」
 アリーはそう告げた。その口調はWCの司会の時の口調と何ら変わらない。
「え?」
 話を振られたアレッタは問い返す。
「ウォークライ、アンコールです」
「ああ、そういうことなら」
 いや、アレッタも予感していた。だって、その手は既に魔法の杖ではなく、ハープを掴んでいたのだから。
 ドン、ドン、ドンドンドンドン―――。
 ドラムの音も響く。ドミニクは同意の言葉を音で返したのだ。
「それじゃ、アンコール、いこうかねぇ!」
 ミュージック、スタート!!

  進め進めハウンド  荒野の先へ駆け抜けろ

 その頃、アリアドネは敵軍上空にいた。それも結構際どい高さを箒で飛んでいる。
「あたっ、あたたたた」
 当然のように矢が当たる。だが、どうにか持ちこたえているのだ。クリスタルアーマーが無ければ既に撃墜されていてもおかしくはない。
「あーもう、ランキアだかなんだか知らねーですが、どこに行きやがったんですか?」
 目的はランキアの捜索。
 そして‥‥。
「! 間違いねーです!」
 いた。ヤツだ。そう思った次の瞬間。
「っ!!」
 悪いことに矢が箒を持つ手に突き刺さる。
 バランスを崩すアリアドネ。このままでは地上へ落下、いや高度は低くしているのでどうにか動けるケガで済むかもしれないが、敵の真っ只中である。
 何より‥‥ここでやられた仲間にこの情報を伝えられない。
 ならば‥‥!
「―――」
 ついに落下する。だが、同時に彼女は何かを口に咥えた。それに弱々しく息を吐き‥‥地上へ。
(あっ)
 そして、地面との距離が近づく中で‥‥歌を、聞いた。

  敵を屠り前へ進め  邪神の加護を打ち払え

「お、今の、聞こえたかよ?」
 確かに聞こえた。ハヤトはそれが空耳でないことを周りに問い掛ける。
「ん、何がだ?」
 しかし、アインは首を振る。
「んー?」
 首を傾げるハヤト。
「心配するな、確かに聞こえている。私たちの耳にはな」
 だが、ソーニャは敵の攻撃を捌きながらそう伝えた。
 聞こえているのだ、アリアドネが最後に吹いたのは魔法の犬笛。故にカーシーの耳にはその音が届くのだ。そして、ランキアを発見したら笛吹く、そう言っていた彼女の姿がフラッシュバックする。
「なら、行くか」
「ここは切り開く。早く行け」
 そう言うが早いか、ソーニャが発動させたのは‥‥スサノオ―。
 一時的なものだが、その体には力が漲る。
「はぁぁぁぁぁぁっ!」
 グリーヴァナガマキで前方の敵を薙ぎ払うと、仲間に近づかせない、とばかりに敵を睨みつけた。
 武器のリーチと、その迫力に、ゴブリンどもは恐れを為したか近寄るのを躊躇する。
「どうせ長くは持たん、ランキアはすぐそこだ。さっさと決着をつけてこい」
「お、おう」
 ソーニャの迫力に、ハヤトはぶるっと震えると、仲間たちと一斉に駆け出した。
「行ってこい、命知らずの大馬鹿ども‥‥ん、キミは行かないのか?」
「へっ、ここを一人じゃキツいだろ?」
 残ったのはグラナート。彼もここまでにかなりのダメージを負っている。ゆえにここで最後の力を振り絞るのだ。
 そんな中‥‥歌が、聞こえる。

  刈り取る物はその命か  その身に宿る呪いか

 戦場が、動き出す。刻一刻と変化するその流れは敵味方区別せず飲み込んでいくのだろうか。
「見つけたぜ、ランキアっ!」
 決着をつけねば。ハヤトは覚悟を持ってランキアに相対す。
「やっとですね‥‥はぁー、これで‥‥打ち止めっ、です―――キュアティブ」
 魔法を成就させ、ハヤトの背中を送り出すように叩くイッヌ・アステール。こと此処に及んで、万全の状態になるようにこまめに回復を繰り返してきたのだ。
 そして、それはようやく形になった、ということか。
「サンキュー、イッヌ!」
 叩かれた背が熱い。
「ランキア! タイマンだゴラァ!!」
『‥‥』
 言葉は通じないか。ならば、とゼスチャーを交えるハヤト。
「俺」
 自分を指差し。
「お前」
 相手を指し。
「タイマン」
 バーンと両手の盾をぶつけ合う。
 すると、ランキアは何か部下に指示を飛ばす。距離を取る部下たち。
「通じた、のか?」
 わからない。
「え、なになに? 一騎打ち? これは奥さんを質に入れてでも特等席で見ないと」
 慌てて飛んできたのはシルヴァーナである。語り部として戦いのクライマックスを見届ける使命感があるのだ。
「今度は先を越されたか」
 最初の激突でランキアと交戦しかけたヴィゾンやレナードが残念そうに肩を竦めた。だが、一騎打ちとなれば邪魔をするのは野暮というものだ。
「わたくしも戦ってみたかったのですが」
 エウロもやはりランキアに挑みたかったのか大柄な体をしゅんと小さくする。
「そんなことを言っている場合ではありませんわ。あちらまで護衛お願いいたします」
 と手を引っ張るのはシェラフィナだ。
 確かあっちは‥‥。
「今、出来ることを」
 そうだ、アリアドネが落下したあたりだ。確かに危険な状態だろう。治療しなければならない。ならば、と意を決してエウロも動く。
 そんな中、にらみ合うハヤトとランキア。
 先に動いたのはランキアだった。突っ込んでくる。
「しゃ!」
 迎え撃つハヤトはシールドソードで一撃を受け止めるとその勢いを利用しバク転からのサマーソルトキック。
 ランキアの顎を掠める。
 次の瞬間だ。
「げっ!」
 何かの合図を受けたか、矢が飛んで来るではないか。
 そして一斉に襲い掛かってくるダーク側。
「そらっ」
 咄嗟に近くのゴブリンを盾にし矢を受け止め、アインが割りこんでくる。
「どっちにしろここまで辿り着いたんだ。ランキアを狙え!」
「わかってるって!」
 アインの檄に反応しハヤトも既に動いている。
「そうだよね、やっぱり総力戦じゃなきゃ。もっと僕を楽しませろ‥ランキア!」
 今度はレナードがランキアに肉薄。先ほどは当てられなかった一撃をぶち込む。
「ひゃー、これはこれで凄い凄い」
 降ってくる矢をひょいっと回避しながらシルヴァーナは戦いをつぶさに観察するのだ。
 その結末を迎えるまで。
 歌が‥‥聞こえてくる。

  行け行けハウンド  邪神の加護を打ち破れ

◆決着
 そして‥‥戦いには必ず決着が存在する。永遠に続く戦いなど無いのだ。
 それが、どんな形であれ。
「左翼、ほぼ制圧しています」
 先ずはサレナからもたらされた左翼の情報だ。
 そして、右翼もどうにか優勢に傾きかけている。
『これは、歌か‥‥』
 ランキアの耳にも戦場でハウンドたちが歌っているのが聞こえる。それが、どんどん大きくなっていく。伝播しているのだ、戦場に。
 つまり‥‥どんどんハウンド側が勢いづいているということ。追い込まれているのだ、自分たちは。大将である自分が健在でも、全体で負けていてはどうにもならない。
『誰か、話が出来るハウンドはいるか!』
『なんどす、ぶっきらぼうに』
 応じたのはエリアルだ。
 そして‥‥降伏宣言。
 これは相手の種を滅ぼすための戦いなどではない。どこかで妥協点を探さねばならない。それが、今なのだろう。
『完全に俺達の敗北だ。戦士よ、勝利の証に、俺の首を高々と掲げよ』
 ランキアの要求は己の首を獲り掲げること。
「しっかしなぁ」
 ブラビーの戦いも経てきた者たちにとってはある種の敬意のようなものも生まれている。簡単に首を刎ねろといわれてもどうするか、と迷いが生じるが‥‥。
「俺がやる」
 そう進み出たのはヴィゾンだ。
「どっちにしろ首を獲るつもりだったからなぁ」
 これも傭兵上がりの彼なりのけじめのつけ方だ。戦いは何かの形を以って終わらせねばならない。

 そして、首は刎ねられ、高々と掲げられた。
 すると、その生首が光を放つ!
「おおっ」
 世界に伝播する光。それはディスミゼルを為した証だ。ダークゴブリンとダークホブゴブリンの呪いは今、ここに解かれたのである。

◆戦いの果て
 激しい戦いが終わり、ここはローレック城。
「かくしてダークゴブリンとダークホブゴブリンは呪いを解かれ、普通の邪鬼になったわけだが。まぁ、邪鬼だし、今までの経緯もある。無罪放免というわけにはいかなかった」
 ジークフリート・マクールはそう呟く。
 彼らは片腕を切られローレックの街近辺から追放されたのである。この後、生き残れるかは彼ら次第だ。
「で、なんで俺が呼ばれたんだよ? マクールの旦那」
 何故かそこにはグラナート。
「王に報告するハウンドが必要だしな。それにお前、ランキアらの追悼にラグビー場を作れないか、と嘆願したいんだろ?」
「お、おう」
 取り入れられるかはローレック王次第だが、チャンスは与えられたのだ。

 ひとつの戦いが終わった。
 だが、この先多くの困難が待ち構えているだろう。
 なぜならこれを機に、ギルドへの依頼はますます多く、高度に、広範囲になるからだ。ディスミゼルを為した武勇伝は、オーディア島に留まらず、ウーディアへ、リムランドへ、アルピニオへ、そしてサンドラへさえも届くだろう。
 ミドルヘイムの権力者たちは知ったはずだ。オーディア島にハウンドがいることを。ローレック王がギルドを成功させたことを。彼らが、さらなるディスミゼルのために戦いうることを。
「ってことも見越して、ちゃんと準備してあんだよ」
 マクールはニンマリと言う。ムーンポータルのさらなる整備と、各地方からの依頼受注の体制作りは、整いつつあるのだ。

 進め進めハウンド、希望の未来へ、駆け抜けろ!



 25

参加者

c.声のデカさじゃ負けねぇぜ!
グラナート・ミストファイア(da0006)
♂ 29歳 人間 ヴォルセルク 火
b.演奏や歌なら本業でさぁ。お代はしっかりいただきやすぜ?
ソル・ラティアス(da0018)
♂ 28歳 人間 パドマ 月
e.届かせようじゃないか。
アイン・クロービス(da0025)
♂ 33歳 人間 ヴォルセルク 陽
b.私はお歌歌いますわねっ! 負けないですのっ!
レネット(da0035)
♀ ?歳 シフール パドマ 陽
f.右翼、斬り込む。
ヴァルター・アインハルト(da0100)
♂ 38歳 人間 ヴォルセルク 陽
e.よろしくお願いします。
ソーニャ・シュヴァルツ(da0210)
♀ 24歳 カーシー(中型) ヴォルセルク 火
e.狙うはランキア!ここで決着つけてやんぜ!!
ハヤト・アステール(da0375)
♂ 23歳 カーシー(中型) ヴォルセルク 風
サポート
a.やあああほぉぉぉぉぉ
エルネスト・アステール(da0381)
♂ 21歳 カーシー(大型) カムイ 火
サポート
e.基本はここにいるです。基本は、ですけども。
アリアドネ・ウィステリア(da0387)
♀ 22歳 ライトエルフ パドマ 地
d.はははははははははははははははは!
ツヅル・アステール(da0395)
♂ 23歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 陽
e.ランキュアーめ~、今度こそ決着をつけてやるのだ~
アプルーマプルー(da0409)
♀ ?歳 シフール パドマ 月
e.アプルーさんの付き添いです、頑張ります。
チロ・チロリン(da0572)
♂ 29歳 カーシー(小型) ヴォルセルク 地
b.歌は得意だよー! フレー、フレー、ハウンドギルドー!
ジンジャー(da0573)
♂ ?歳 シフール パドマ 陽
e.もう逃げ場はないわ。今度こそ、決着をつけてあげる。
アザリー・アリアンロッド(da0594)
♀ 29歳 人間 ヴォルセルク 月
b.さあ、思いっ切りいこうか。勝つのは俺たちだ、ってね!
ショウ・ジョーカー(da0595)
♂ 20歳 人間 カムイ 月
b.と、ブッキーナだと歌えないねぇ。いつも通りハープかね?
アレッタ・レヴナント(da0637)
♀ 25歳 人間 パドマ 月
e.徹底的にヤってあげる、徹底的にね。
アルマリア・アリアンロッド(da0672)
♀ 35歳 人間 パドマ 火
a.では、景気づけに踊りま~す☆ ポロリもあるかも?
カモミール・セリーザ(da0676)
♀ 31歳 ライトエルフ パドマ 陽
f.僕ら白キ翼は、騎兵の機動力をもって、右翼弓部隊の射撃攻勢を抑えます。
ロザリー・アルベール(da0704)
♀ 21歳 人間 ヴォルセルク 陽
f.い、一気に駆け抜けて、ロズと一緒に【右翼】弓部隊に向かいます…!
リーリエ・アルベール(da0816)
♀ 21歳 人間 カムイ 風
d.皆さんのWCが効率的に行えるようにしつつパフォーマンスで戦意高揚です♪
アリー・アリンガム(da1016)
♀ 29歳 人間 パドマ 月
z.Dホブゴブリン達のWCや言葉を翻訳してディスミゼルの手掛りを掴みます。
メイベル・ミストール(da1050)
♀ 20歳 人間 マイスター 水
e.みんなを弓で援護しつつその物語をしっかり目に焼き付けるよ!
シルヴァーナ(da1215)
♀ ?歳 シフール カムイ 月
e.さて、やろうか。
レナード・スフィア(da1217)
♀ 26歳 ダークエルフ ヴォルセルク 火
d.情報収集や後方支援で頑張りますよ。
ジョシュア・マクラーレン(da1234)
♂ 29歳 ライトエルフ マイスター 風
e.さァ始めようか、愉しい愉しい戦争をよぉ!
ヴィゾン・ザガート(da1240)
♂ 34歳 人間 ヴォルセルク 地
e.ドールちゃんで手当たり次第眠らせまくりますえ。
エリアル・ウィンフィールド(da1357)
♀ 49歳 ダークエルフ マイスター 水
g.弓部隊の四天王を狙う。楽しませてもらおうか
ベル・キシニア(da1364)
♀ 28歳 人間 ヴォルセルク 風
e.邪魔だぁ、どけえぇぇ!!
エウロ・シェーア(da1568)
♀ 38歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 火
z.悪い未来が見えたらそれを伝えて回避するよう動きましょう。
エルマー・メスロン(da1576)
♂ 51歳 ダークエルフ パドマ 陽
サポート
e.回復メインで立ち回りますわね
シェラフィナ・ミルワード(da1687)
♀ 24歳 ライトエルフ カムイ 水
d.歌だけじゃなく楽器だって魂を揺さぶるものなんだよ?ドラムがいいかなぁ。
ドミニク・レノー(da1716)
♀ 25歳 ライトエルフ パドマ 水
c.リリィはオウエンするひとをオウエンするわよー!
リリィ(da1748)
♀ ?歳 シフール カムイ 陽
g.クリーンに行きたい所であるが、そうも言っていられぬか。
ノワール・トゥーナイン(da1749)
♂ 29歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 風
g.あまり魔法の無駄撃ちも出来ませんねー、右翼や中央も気になりますねー
サレナ・フランセット(da1754)
♀ 21歳 ライトエルフ パドマ 風
c.叫べ!轟ケ!届ケ!魂ノ叫ビィィィ!
ソレイユ・フォリー(da1795)
♀ 22歳 カーシー(小型) ヴォルセルク 陽
 むん!(マクールは不思議な踊りをおどった‥‥)
ジークフリート・マクール(dz0002)
♂ 33歳 人間 ヴォルセルク 風


よし、お前たち

ダンスの特訓だ! え、何でかって? そりゃあ、お前‥‥