オープニング
◆在りがちな話
よくある話だ。
親を殺された少年が、良き師に巡り合い、強き心を持つ。
長じて、親を殺した相手を討つ。そして、自分が次の師となる。
言い換えよう、物語の中ではよくある話だ。
そして、──殺された親が野盗だというのは、このウラートならありえない話ではない。
◆ジェームズ
ハウンドたちが、ウラートの街中を歩いている。
時は黄昏時。皆、自分の寝所への帰宅を急ぐ頃合いだ。
そこにかかる声。
「あんたたち、ハウンドなんだろう? オレに戦い方を教えてくれよ」
そう言って、ハウンドの服の裾(あるいはシッポかもしれない)を引っ張ったのは、十歳になるやならずやの子供だ。
「オレのオヤジもオフクロも食い殺されたんだ。だから、敵を討ちたいんだ。なあ、戦い方を教えてくれよ」
食い殺された、とは物騒な話だ、と空中を浮いてるシフールのガーベラは訝しんだ。
「あんた、だれや? うちはガーベラや。自分の名前くらいなのらんかい!」
その言葉に手短に『ジミー』と子供は答える。
そこに簡素な服を着た、教会付きらしい女性が走ってくる。
「ジェームズ、孤児院を抜け出しちゃダメでしょ」
「決めた、オレこの人たちの弟子になって、カタキを取るんだ」
もうひとりの教会付きらしい女性が走ってきて、ジェームズの身柄を確保する。
「ご迷惑かもしれませんが、食事でもしながら、この子に関する話をさせてください。そうしたら、なぜ反対するかの理由が分ると思います」
いく人かは、金になりそうにない話だと断った。ガーベラを含むいく人かは食事ついでに話し合うことにした。
「失礼します。私、ネーザと申します」
◆ネーザ
店に入ると、ネーザは一番安いメニューを人数分頼み、話を切り出す。
「ジェームズの話はウソではありません。ただ、あの子にとっては当たり前なので、言っていないという話があるのです」
当たり前すぎること、それはジェームズの一家は野盗だ。そして、殺した相手が賞金稼ぎという事。
「その私は良く知らないのですが、邪鬼をしもべにした賞金稼ぎで、倒した山賊の死体を‥‥邪鬼に食わせたのだそうです」
悪名高き野盗ならば、見せしめとしてイヌに刻んで食わせる、という死体の扱いもあるそうだ。
ネーザの話だと悪逆非道という訳ではなかったが、ジェームズの両親の扱いは、そういうことらしい。
その片目の魔物使いが使役する邪鬼は、強力で人肉を好んで食うという。
次の瞬間悲鳴があがった。多分、女性だ。
◆片目の魔物使い
馬車が転倒している。そして、そこに邪鬼が!
馬車が転倒した際、積んでいた檻が壊れ、出てきたオーグラが暴れはじめた。体高は2メートル半。
褐色の肌に2本の角が雄々しい。
ジェームズと彼を連れて行こうとした女性が気絶していた。放置すれば命に関わる。
「ばか野郎が、オーグラに準備無く血の匂いをかがせやがって! あれじゃあ止められねえ」
無責任な発言だが、片目の魔物使いは、刃物が突き立てられ失血死寸前の顔の青さだ。
ともあれ、状況は分かったような気がする。
馬車に乗っていた魔物使いに対し、ジェームズがやらかしたのだ。
ウラートの黄昏時の街中に血の匂いを含んだ風が吹いた。
オーグラを止めねば、人々に害をなすだろう。
あるいは片目の魔物使いを復調させるか。
止められそうなのは、キミたちだけだろう。
──ハウンドの戦いが始まる。
選択肢
a.満を持して | b.即座に行動 |
c.周囲を確認 | z.その他・未選択 |
マスターより
暮れなずむウラートの不可思議な光景ですね。
片目の魔物使いにしても、オーグラを失うのは、やむを得ないと思っているでしょう。
ただ、ジミー君がしたことが、正しいかは別ですので。
選択肢の満を持しては、魔法の準備などに時間を割いての活躍です。ただ、周囲の被害は広がるかもしれません。
即座に行動は、準備をせず即座に行動を起こします。危険かもしれませんが、やりかた次第では、機先を制せます。
周囲を確認は、自分よりも、周囲の混乱状況などの確認です。その上で行動しますので、成瀬のアドリブが強くなるかもしれません。
では、皆さんの参加を楽しみにしています。
登場キャラ
◆戦う準備は出来てるさ!
──灰が舞った。
それは、
ベドウィール・ブランウェンが放ったもの。
オーグラの弱点である。また、オーグラの魔法を封じ、再生能力を発揮できなくする。
十分な知識をオーグラに関して、持っているべドウィールだから、考えついたことだ。
「GoOOOh?」
自分の力が失われたことにオーグラも違和感を感じたらしい。
一方──。
「ケガした人はいませんか? 今、助けに入ります」
灰色の戦闘馬に乗った、
ノルーカ・ソルカが慈悲に満ちたまなざしで、周囲を見る。
今すぐ動けないほどのけが人はいないが、パニックにおちいった、精神的なショックの方が大きいようだ。
「ハウンドです。みなさん、ご安心ください」
言ってネーザと、ジェームズを順繰りに癒そうと試みる。
さすがのノルーカでも『片目』の魔物使いは、癒し切れそうにない。
ふたりが動く間にも虎視眈々と、牙を研ぐ一同。
「あんな怪物を放しやがって──オフシフト」
両手に得物を持ち、
ハヤト・アステールが戦技魔法オフシフトを成就。自身に付与する。
(クスリ──準備した方がいいかな?)
魔法が成就し、
リザ・アレクサンデルの手の中にブレードofローレライが収まる。
ローレライの魔法で、4リットルを越す水を制御して作ったものだ。
「守りはお任せを──ガード」
エウロ・シェーアが戦技魔法ガードを成就、やはり自身に付与する。
(魔物使いとは興味深い話ですね。どんな魔物を従えているのか詳しく聞かせて貰いましょう‥‥)
「ガーゴイル起動。ディレクトガガ」
メイベル・ミストールが装飾品を放ると、ヒトの上半身ほどはありそうな、炎の塊が膨れ上がった。
攻撃魔法ではなく、火属性のガーゴイル『ウィロー』だ。このガーゴイル魔法以外の攻撃手段だと事実上無力。
そのため、短絡的なオーグラなら引きつけるのには適しているのだ。
さすが、これは叡智の火! メイベル、ナイスな判断である。
そして、シフールのガーベラは思った。
(ひょっとして、みんなこうげきを、じぶんにしゅうちゅうさせようとしとるん?)
いや、リザは違う予定だ。
◆必殺の6秒間
「皆さん、オーグラの弱点は股間です。戦闘不能にさせるなら、そこを中心に攻めてください」
仲間の準備が整ったのを確認したべドウィール、懸命に叫ぶ。
ミタマギリの付与を考えていたが、一同が攻めるなら、一気に攻め込むと考える。
手にするグリーヴァライモンの一撃は、股間を下から攻め立てた。
苦悶の声をオーグラは放った。
最初に再生能力を封じたため、檻から投げ出された時の傷も治っていないらしい。
「そこをフルパワーで殴ったら、大抵気絶しない?」
リザが後ろから、ブレードofローレライの攻撃で攻める。水流がオーグラを斬りさく‥‥かに見えたが、大きく体勢を崩しながらかわされる。
「ならば一撃!」
エウロが重い一撃を浴びせる。
股間狙い──ここを制すれば、足は使えない。それを高い効率で行えるのだ。
どん! 彼女にとって、会心の一撃がヒュージクレイモアの斬撃が浴びせられ、一気に出血と苦悶をオーグラに与える。
「こっちに来やがれ! デカイしか取り柄がない奴が!」
ハヤトがアクロバティックな動きでオーグラの視界に入る。
「ヤローのまたぐらに興味はねーが、弱点だからな、やってやるぜ!」
グリーヴァタチで突きを浴びせる。
鋭い一撃は体勢を崩したオーグラにはかわせなかった。
リザの一撃は無駄ではなかったのだ。
「ところで、わたしの出番がないような気がするのですが、気のせいでしょうか?」
銀のダーツを構えたまま、メイベルは漏らす。
暴力は愚か者の最後の避難所という言葉もある。
彼女が実力行使しなかったのは、それなりに意味のあることだろう。
「まあ、縛りますけど‥‥」
片目の魔物使いを縛ろうとするが、別にこの人は罪を犯した訳ではない、という事に気づく。
むしろジェームズに襲われて、周囲に被害をまき散らすはめになったのだ一面では、彼も被害者だ。
「さて、どうしたものでしょうか? 代官所が認めたのなら‥‥裁くいわれも何もないですけど」
「いや、俺は罪を犯した」
片目の魔物使いが薄目を開けて、口にする。
「戦いで興奮したオーグラを制御しきれずに、戦場の死体を食わせてしまった。見せしめということで、代官所からはお咎めがなかったが‥‥」
「なるほど」
と、メイベル。
「あの子や、見ていた連中には胸糞悪かった、なんてもんじゃないだろうな、俺だってお断りだ。だ‥‥」
では、どんどん縛っちゃいます、とメイベルはロープで彼を戒める。痛みで呻くが、抵抗はしない。
「じゃあ、これでも飲んで」
リザが片目に、青い回復薬を飲ませる。喉が鳴り、飲み下すと落ち着いたようだ。
「しかし、どうしたもんか、これ?」
ハヤトが暴れるジェームズを羽交い絞めにしていた。復讐の念が込み上げたようだ。
「場所を変わっては?」
エウロが提案した。その剣は血でぬれている。
オーグラにトドメを刺したのだ。
◆恩讐は超えず──
場所を孤児院に移して。
「やめた方がいいかと」
ノルーカが反射的に動こうとしたジェームズを手で制する。
「あなたの将来に、殺人者という重荷をご両親が望むのか──だとしても『今』はやめたほうがいいです」
彼女の言葉に反射的に振り替えるジェームズ。
「でも、でも──」
言葉が出なくなって、同じ言葉を繰り返すだけの少年にハヤトが視線を向ける。
「俺たちから、戦う力を学びたがっていたな──だが‥‥ハウンドの力は守るための力。復讐の力ではないぞ」
ジェームズが下唇をかんだ。
「でも──復讐しなきゃ、ここから前に進めない」
震える拳を押さえるリザ。
「別に無理に前に進む必要はないと思うよ」
ジェームズはそのリザのその声に反感を感じたらしい。
「慣習法だったら、まあ野盗の方が明確に『悪い』よね。でも、あの片目さんがやったことで反感を持つのは当然だと思う──人ごとだけどね」
メイベルは片目と話しながら、振り向きもせず声をかける。
「まあ、この人も商売道具を失って、信用も落としました。あげくに傷まで負わされたのですから。ただし、周囲に迷惑をまき散らしたのは、キミのせいですよ?」
あくまで一般論で語るメイベル。
「多分、ジェームズさんは自分なりに考えて、その上での行動だったのでしょう。でも、慣習は理解すべき、慣習を理解したうえで武器にするという手もあったかもしれません。確かに、山賊とはいえ、コモン。その死体を辱めるのを制せなかったのはモンスタートレーナーの方に責めを負わせて当然に見えます。でも、ウラートの街で傷ついた人から、あなたが復讐のマトになる──それも考えるべきです。復讐と、その連鎖はコインの裏と表のように切り離せない側面を持っていますから」
べドウィールがいつになく饒舌に喋る。
「深入りはしません。あなた方ふたりの問題です」
エウロは問われない、故に沈黙する。
しかし、彼女は復讐は否定しない。ただ、今回のやり方は納得が行かない‥‥まあ、言うべきことは大体、他の皆が語っている。
孤児院の前では、オーグラの大暴れのせいで、店舗などに被害が出た人々が集っている。
彼らは口に出してこう言った。
「そのオーグラを飼っていた奴に、オーグラの遺体を食わせろ!」
駆けつけた代官所の兵士が制しようとする。しかし、人々の怒りは収まっていない。
ジェームズは自分のせいだと言わない。多分、かたき討ちの美談にするには、周りが迷惑だったからだろう。
「じゃあ、責任をとれるようになってから、考えてみてください」
ノルーカはそう言って、ネーザとジェームズの傷を点検する。
ただ、片目の過ちが己に返って、それが連鎖的に人の迷惑となったことは事実だった。
代官所が打ち出したのは、片目から財産没収。
対して、ジェームズは2年間の勤労奉仕という方向性だ。
ハウンドたちは風のうわさでそう聞いた。
──しかし、ハウンドの戦いは続く!
10
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参加者
| | c.負傷者の確保から始めますね、馬に乗せ血の匂いと共に現場から遠ざけます
| | ノルーカ・ソルカ(da0058) ♀ 25歳 ライトエルフ カムイ 陽 | | |
| | a.オフシフト成就したらすぐに駆けつけんぜ!!
| | ハヤト・アステール(da0375) ♂ 23歳 カーシー(中型) ヴォルセルク 風 | | |
| | a.まずローレライ成就するね。薬持ってた方がいいかな…!
| | リザ・アレクサンデル(da0911) ♂ 23歳 人間 ヴォルセルク 水 | | |
| | b.オーグラを鎮圧して魔物使いも捕捉しましょう。
| | メイベル・ミストール(da1050) ♀ 20歳 人間 マイスター 水 | | |
| | b.他の方の一手目を稼ぎましょう。灰…これ(豚の灰)で大丈夫でしょうか…?
| | ベドウィール・ブランウェン(da1124) ♂ 27歳 人間 ヴォルセルク 月 | | |
| | a.ガードだけ詠唱したらすぐに駆けつけます。
| | エウロ・シェーア(da1568) ♀ 38歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 火 | | |
ウラートのオーグラ
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ウラートの市街で、巨大な邪鬼が暴走。マジヤバイっす。
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