オープニング
◆来訪者
「助けてくれ──ゴブリンだ‥‥と思う」
ハウンドギルドに早馬の急便が着いたのは、昼下がりだった。
丁度ギルドに顔を出していた、シフールのガーベラが、その場に出くわす。
そして数名のハウンドが、多分忘却オーラのせいで、証言が曖昧なのだろうと、見当をつける。
「まあ、おちついてんか? はなしは‥‥そんなばあいやないか」
集まってきた、ハウンドたちは、早馬を駆った若者を力づけるよう、声をかけた。
いつでも、準備しておくから、と激励する。
「開拓中の村ですが、出てきたのは邪鬼、と思うのが20匹くらい‥‥」
ハウンドが駐留しているならいざ知らず、防備が整っていない小さな村では、シャレにならない数だ。
「こちらを殺すことしか、考えてないような‥‥あと、ごぶごぶとか聞こえたような、そうでもないような気もします‥‥」
たぶんゴブリンのダークサイドだ。数が多いということは、統率する個体もいるのだろう――ガーベラはそう察した。
ガーベラが察したのだ、当然、他のハウンドも察する。
まもなく、ハウンドギルドに開拓村の救援の緊急依頼が張り出された。
そして、あっという間に、その依頼の要員は集まり、ハウンドたちは出立した。
早馬の男は、ギルドで身柄を預かり、ハウンドたちを急行させる。
開拓村自体は位置も判明しており、皆も先を急いだ。
──しかし、その道中、ダークゴブリン2匹と遭遇。討伐した。
◆見敵必殺!
「あれ、がんぐろしか、おらへんの?」
シロウトなら、村人が怯えて過大に申告したのだろう、と考えるかもしれない。
ガーベラ以外のハウンドは危機感を感じる。
村が見えてきた。そのさなか、鼻が利く者が言った。
血のニオイがする、と。
慌てて立ち止まると、確かに鉄臭いニオイだ──この、風向きからすると、開拓村の方からだ。
「!」
ハウンドたちは事態を一瞬の内に把握する。
最悪の予想通りだった。
ハウンドたちが到着するより速く、ダークゴブリンたちは、すでに村を襲撃していたのだ。
ああ、何と悲しい光景だろうか‥‥。
夫婦連れらしい一団が顔の黒い、ゴブリンめいたものに、囲まれている。
倒れ伏しながら赤子を一生懸命守ろうとしていた、若い母親。彼女は絶命していた。
◆これが現実
それに気づかず、ダークゴブリンたちを阻もうとする父親らしき姿。
彼は流血が目に入り、手斧を振り回すのが精一杯。
ハウンドたちが怒りに燃え、殺到する──道中の2匹同様、ダークゴブリン3匹は速やかに討伐された。
「あ‥‥りがとう、ございます‥‥娘と、妻は大──丈夫で、す‥‥か?」
父親の声は途切れがち、命脈も尽きようとしている。
ガーベラは涙を流しながら、ウソをついた。
「ああ、だいじょうぶや、うちらがまほうでなおしちゃ──」
その途中で、父親は満足そうな表情を浮かべ‥‥逝った──。
埋葬より先にハウンドたちにやるべきことがある。
それは為すべきことを為すこと。
相手は8匹の全身刺青のダークホブゴブリン、顔の黒い8匹のダークゴブリン。
──ハウンドの復讐が始まる。
選択肢
a.Dホブゴブ殲滅 | b.Dゴブリン殲滅 |
c.生存者救出 | z.その他・未選択 |
マスターより
成瀬です、今回はビターシナリオの予定です。
真に憎むべきは種族単位で呪ったとされる、邪神でしょう。ダークサイドはその被害者に過ぎないかもしれません。
『だから』復讐は何も生まない、とは、道徳的な言葉です。
『しかし』それで救われる人もいるかも。
それを決めるのは当事者であり、力を持つハウンドの皆さんです。
──答えは出せたらお願いします。
可能であれば、戦術や戦法よりも、この惨劇への無念さをアピールしてみてください。
※RealTimeEvent【HoundHistory01】収穫せよディスミゼル 連動シナリオ
本シナリオは、世界の歴史を動かす可能性を秘めた企画「リアルタイムイベント」に連動した特別シナリオです。
参加することで【HH01】を冠したグランドシナリオに参加する権利を得ることができます。
登場キャラ
◆ゴブ?
「──ルナ! ガーベラ、行けそうなら救助の方ヨロシク」
アレッタ・レヴナントが高速詠唱でルナを成就。
手近なダークゴブリンめがけて放ち、苦悶の声をあげさせる。
顔面が狙えればよかったのだが、ルナはそこまで融通のきく魔法ではない。
「よろしくされたで!」
アレッタの言葉を受けて、飛んでいく、
ガーベラ。
シフールの彼女は非力だが、人を救う事は出来るだろう。
「じゃあ、まずこっちから。この村の復讐のため‥‥いや、次に襲われるかもしれない誰かのため、今ここで殲滅しよう」
オーガ語は分からないが、巨大な剣を構えて、
レナ・ゴールドマンが宣言。
ルミナパワーの魔法を付与された、この剣。なまなかな守りでは防げない。
義憤に震える彼女の視線がダークゴブリンを見据える。
相手は今そこで、人を殺害したにも関わらず、今にも踊り出しそうな勢いだ。
「──ごぶ?」
「──!」
それをレナは斬りはらう! 下からの振り上げる一撃が入る。
胸に当たり、ろっ骨を何本か叩き折る。血塊を吐くダークゴブリンに、
サレナ・フランセットの魔法の稲妻、ゼウスが決まった!
ダークゴブリンは瀕死。『しかし』──否、『だから』──レナは構わずトドメを刺す。
その光景を見たサレナは、細い眼を一層細める。
「もう、お互いに引き返せないところまで来てしまったのでしょうか」
「でも、サレナさんは魔法を使ってくれましたよね?」
レナの言葉に対し、うなずくサレナ。
「もしーわたしたちがもう少し早ければ、あなたたちがーもう少し遅ければ、違う未来はあったかも」
しかしながら、もはや血は流れているので問うまでもなく。
(最後に伺いたかった。止まるつもりはないのですねー)
言っている間にダークゴブリンたちのウォークライは完成する。
今のふたりの見せたコンビプレーからの恐怖を払しょくするため。そして、殺戮行を続けるため。
「4匹か──少し少ない?」
包囲網を狭めるダークゴブリンたちの動きを見てレナが分析する。
「3人の方に行ったのですよー」
サレナの言葉に対して首肯を返すレナ。
「では、これ以上行かせないですね」
「──ゼウス! ですー」
稲妻が奔った。
◆彼と彼女の戦場
ガーベラが傷ついた村人に、回復薬を渡す。
「ゆっくりのんでんかー」
「ありがとうシフールさん」
年長の村人が落ち着いた口調で返す。その目は深淵の如く昏い。
ここは村長の家、ちょうど小高い位置にある。
ちょうど、とは
アザリー・アリアンロッドと、
ディオン・ガヴラスにとってだ。
アザリーは魔法の銀のメイスで、傷ついたものを癒し、ディオンはライトニングトラップで包囲網を敷く。
「やるだけやった、魔力はもうカラッポだな」
ディオンはDGMのブリッジをいじりながら、報告をする。
村人も動けるものは手斧やクワを構えている。
「やっぱり、何匹かは、レナとサレナのところを抜けたみたいね」
「ん? 2匹だけみたいだな」
ディオンが鎧戸を軽く開け、下を見る。
ダークゴブリンらしい影がふたつだ。後ろには、なきがらがふたつ。
後ろからアレッタが追い詰めたのだろう。
「殴るやつはダークゴブリンが来るまで待ってろ。出来るだけ矢で数を減らすからな」
ディオンは言ってグリーヴァボウに銀の矢を準備する。まだ、引き絞らない。
ダークゴブリンの悲鳴が聞こえたのはしばらく後だった。
ライトニングトラップのワナに不用心に踏み込んだ、ダークゴブリンたちが悲鳴をあげる。2匹とも動きが鈍い。
そこでようやく、ディオンは鎧窓を開けて、弓を引き絞る。
12本の矢を次々と射こむ、いずれも感電しており、かなり当たる。
1匹が矢ぶすまになり、残る1匹も半死半生だ。
「アザリー。俺の出番はここまでだ」
ディオンの言葉に、アザリーはうなずく。
「任されたわ」
村人を連れて丘を下る。
ディオンはアザリーが声に出さず、妖艶な唇の動きだけで、こう語ったのを見逃さなかった。
ワタシザンコクデスワ‥‥と。
ダークゴブリン、壊滅!
◆Kill Them All
「村の狩人っていうか、盗賊だな」
ダークホブゴブリンの退路を、
ウル・ギーフはワナという形で出迎えようとしていた。
しかし、ロープひとつなく、ワナを短時間で構築するのは難しい。
「まあ、ツルとかで代用──それよりロープを拝借するか‥‥」
「ほんっと! かずのボウリョクでよわいものイジメするやつってサイテーよね! リリィたちがおしおきしてやるわ!」
言って、
リリィは、彼女の『勇者様』である、
ノワール・トゥーナインの後ろに下がる。
まるで哄笑のように、ダークホブゴブリン8匹が叫び、舞い己たちを鼓舞する。
「リリィ怖いか?」
ノワールがリリィに問う。
「こ、こわくはないわよ。もちろん」
ならばいい、とノワールは盾と湖心剣マリアーネを構える。
「遠慮はしない。使えるものは何であろうと使い、キサマらを葬らせてもらうのである」
──やはり平穏と闘争は紙一重、と言う事か。
復讐は何も生まない、否定はせんが、死んだ者達に生きている自分が言って良い言葉とも思えぬのである。
斬りこんでいくノワールの脳裏でそんな思考がこだまする。
せめて全てを終わらせる‥‥これ以上悲劇が起こらぬ事を願って、な。
いずれ呪いは消えよう──否、消して終わらせて見せる。だが、今のお主等に出来るのは其の世の礎となる事のみ、悲しい事であるがな。
思考とは裏腹に体は土があれば、それで目つぶしをし、容赦なく手足を狙い、行動力をそぐ。
ノワールの頭に去来するのは、妻子を守ろうとして散った、若い農夫の顔。
あの子の残した赤子に凄惨な未来を押しつけない。
「あの御仁は愛する者の為に命をなげうった勇者だ。仇を葬る事しか出来なかった事が悔しくもあるな」
そこまで考えると、ノワールはリリィが泣きそうな顔をしているのが見えた。
「ゆ、ゆうしゃさま‥‥こわい」
「小さきシフールよ、語り継いでくれ。戦を終わらせるために戦った、男の事を。彼が望んだのは戦なき世界。されど、その場所に男の居場所はないのでござる」
そんなノワールの後ろから死んだふりをしていた、ダークホブゴブリンが立ち上がり、こん棒を振り下ろす。
渾身の一撃。
肩甲骨にひびが入り、ノワールも動きが止まった。
とす。
軽い音が響き、そのダークホブゴブリンの頭に矢が刺さった。
「出遅れてしまった。ともあれ、エルフィンの道を外れたものに容赦はしない。討つのみだ」
ウルはあえて、狩るという単語を封じた。
それは、彼は食べるために狩るからだ。ダークホブゴブリンを狩れど、食すわけには行かない。
広義で見れば、今の一撃を狩りとすれば、ハウンドギルドから得た金で、食事などをとるかもしれないが、それはミニマリスト足ろうとする努力の放棄だろう。
「泣け、キミたちのために祈る言葉はない」
数分後、村人たちはハウンドたちからダークサイドは全滅したとの報を受け取った。
アザリーが助け出した、小さな娘は村ぐるみで育てることになるだろう。その一方で、アザリーの手配した墓守たちが、主だった村人のために墓所を造るという。
「間に合わなかったから‥‥ごめんなさい」
アザリーは自分も含めて、すべての者に謝罪した。
◆そして、季節は移ろう
ウルの黙とうが続く。彼は冠婚葬祭には疎く、これしか死者に敬意を払うすべを知らない。
一方で、アザリーは胸の中で雄弁に語る。
(綺麗事だけではこの惨状を語れないわ──無念を晴らすには復讐しかない)
思いが高じて口をつく。
「復讐心を引きずったまま、生きろなんて言えない。仇は取ったわ。それが命を救い、つないだ者の責任」
黙とうする村人、墓守とともに、墓標の前でたたずむアザリーとハウンド仲間たち。
そんな彼女の頬に冷たいものが流れる‥‥季節は移ろった。
しかし、アザリーにとって、この季節は終わらない。
(いやな雨‥‥一体、いつになったら、この季節は過ぎてくれるのかしら)
雨は降り始めたばかり。
──しかし、ハウンドの復讐は終わった!
9
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参加者
| | c.了解、任せておいて。>ディオン
| | アザリー・アリアンロッド(da0594) ♀ 29歳 人間 ヴォルセルク 月 | | |
| | b.基本、逃げる相手か一番弱ってる奴狙ってルナぶっ放すつもりだね。
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| | c.ありがとう、アザリー。助かるよ。
| | ディオン・ガヴラス(da0724) ♂ 25歳 ダークエルフ マイスター 風 | | |
| | a.ホブゴブリンの方が強敵だろうから弓で射抜いて援護させてもらう。
| | ウル・ギーフ(da1051) ♂ 27歳 ライトエルフ カムイ 火 | | |
| | b.じゃあ、まずはこっちで。先に殲滅できたらホブの方も援護できるかな
| | レナ・ゴールドマン(da1337) ♀ 23歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 陽 | | |
| | a.かずのボウリョクでよわいものイジメってサイテーよね!
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| | a.遠慮はしない。使える物は何でも使い葬らせてもらうのである
| | ノワール・トゥーナイン(da1749) ♂ 29歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 風 | | |
| | b.もう、お互いに引き返せない所まで来てしまったのでしょうかー
| | サレナ・フランセット(da1754) ♀ 21歳 ライトエルフ パドマ 風 | | |
ダークサイド来襲!
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とある開拓村が危機に、ハウンド、急げ!
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