オープニング
◆海賊の根城
2度に渡る海賊の襲撃を受けたハウンドたち。
捕縛した海賊たちに尋問を行ない、得た断片的な情報から、海賊たちは浜から2キロほど先にある島を根城としており、島には砦を築いていると判明。
砦は堅固そのもので、近くに船が接岸できるのは、断崖に面した入り組んだ形状の湾のみらしい。しかも仲間以外の船が迂闊に近づけば火矢を射掛け、岩を落としてくるという話だった。
そんな難所に、残りの戦力も不明なため、ハウンドギルドは力押しによる正面突破の攻略は、リスクが大きいと判断した。
◆ピンチはチャンス
唯一の突破口は海賊に資金を提供するスポンサーらしき者の存在だ。
その正体は不明。しかし、月に数度ほど、毎回違う連絡役がウラートにて海賊と接触し、資金や物資を携えて海賊島に訪れるという。
ハウンドギルドは情報網をフル活用。連絡役たちの特定に成功。海賊との接触より先に、これを捕縛した。
こうして得られた、連絡役の証である割符(わりふ)と、金や物資を手に海賊島へ潜入。
ともあれ、ハウンドギルドから全員に、注意喚起がされていた。
『今回の潜入のキモは、海賊の戦力を調査して、何事もなく無事に帰還することにある。海賊たちには何も変わったことはなく、補給は普段通りに終わった──そう、思わせることだ』
その言葉を胸に、ハウンドたちは、補給を受け喜ぶ海賊から、歓待を受けることとなった。
チャンス到来!
「ということでこんかいのぶつはこれや!」
ガーベラが小さな体に似合わぬ、大きな声を出す。
「よく来てくれた! 今回はシフールつきか、あいにくボスは留守にしているが、今晩は飲んで食って楽しんでくれ──うん? これは‥‥?」
物資の中にあった封のされた密書を開き、目を通した海賊幹部の顔色が急変。
どうやら、あの密書の中には謎のスポンサーに関する情報が書かれているらしい?
海賊幹部は一呼吸して落着くと、笑みを浮かべ。
「‥‥なんでもない、さあ楽しんでくれ! さあ、みんな新鮮な肉と美味いビールだ。腐る前に食っちまおうぜ!」
海賊の幹部は密書を懐に仕舞いこみ、荒々しい宴が始まる。
塩を振りかけただけの豪快な焼いた骨つきの肉、それを流し込むビール。いい香りのする焼き魚が出される。
海賊は男所帯の手料理を作るその端から食らっていく。
「誰かぬげよー、酌でもいいぜ? ここに男の価値が分かる、いい女がいればなぁ?」
そんな下卑た声も上がる。
◆深く静かに潜入せよ
ある者は、海賊たちの戦力確認を優先する。こういった場所では寝床の数などから概算を出せるかもしれない。
また、砦の内部構造を調べている者もいるが、広く歩き回れば、見張りなどで、宴に加わらない海賊に出くわすかもしれない。
いかにして切り抜ける、あるいは身をひそめるかはハウンドたち、それぞれの裁量に任される。
そして、それらから気を逸らすため、宴を盛り上げて、海賊たちの気を引き時間をかせぐ者まで、様々な方向でのアプローチが始まる。
ガーベラはあの『密書』が気になる様子だ。
それぞれの決意を胸に──ハウンドの潜入が始まる。
選択肢
a.砦と海賊の把握 | b.宴を盛り上げる |
c.密書が気になる | z.その他・未選択 |
マスターより
※【SubEpisode01】愛しの夏よ永遠に 関連シナリオ
みなさん、いい夏ですか? 今回は成瀬もオーディアの夏に参戦します。
さて、今回は破壊工作、海賊を減らすとかはナシです。あくまで敵の情報優先で。
今回の調査が、うまく行けば、皆さんの情報で圧倒的優位で戦えます。
──みんなで幸せになろうよ?
さて、そろそろ8月です、皆さんが常夏の魔力を楽しめますように。
登場キャラ
◆宴の続き──女子力高い男子アンド女子力低い女子
「海がおれのせんじょー。海がおれのはかばー!」
海賊のはやし唄を周囲の海賊はがなりたてる。
音程も何もない、大声をみなで上げているだけだ。
「よし、飲もう! おにーさんいい飲みっぷり! イイヨイイヨー、どんどんいこ?」
リザ・アレクサンデルは人づきあいの巧さを活かし、次々とビールを海賊たちに呷らせる。
「いやーいーな。なけりゃあ、コイビトにでもしてやるのによ。まったくヨケーなものがついているぜ」
「やだなー、今のままの僕は‥‥うんやっぱりダメだよね」
わい談を笑って受け流すリザ。堂に入っている。
今の会話を、
ベドウィール・ブランウェンが聞いていたら、リザを保護する幼馴染のため、若干過激な行動に出ただろう。
知らぬが仏なり、いや女神なり、か。
「それにしても、こっちのねーちゃんはなー」
海賊たちの視線の先には、『にへにへ』と不気味な笑みを浮かべる、
メイベル・ミストールがいた。
彼女はガーゴイルのフィッシュヘッド君の情報待ちだ。
水中から船の数を特定しようとしているが、フィッシュヘッド君は特別夜目が聞くタイプではない。
なので、真夜中の港では水中から水上の船舶の確認は限定されるだろう。だがギリギリの判断がフィッシュヘッド君にできるかは、かなり怪しくなる。
それもあって、港中を歩き回らせるのは危ういと判断したらしい。
ちなみにメイベルの膝の上でビールを飲み干しているのが、シフールの
ガーベラだ。
おそらく、メイベルはガーベラが、海賊幹部が受け取った書状を気にして、イロイロと考えずに動く、と、いう事をしでかすのではないか、と心配しているのだろう。
「ちょっと、おトイレ行ってきますから」
メイベルは時間を見計らって、フィッシュヘッド君と情報のやり取り、そしてディレクトガガの魔法を成就しなおすため、立ち上がる。
フィッシュヘッド君に、一通り調査したら安全に合流できる場所に来るように、と指示はしてあるのだ。
「あ、僕も、お花摘みに──あ、ごめんね‥‥」
リザが立ち上がったふりをして、海賊幹部のズボンに、殆ど飲んでいない、コップの中身をぶちまける。
(さすがに宴の最中に懐から手紙を出すのは目立つ──だから、着替えさせるために‥‥)
「ごめんね。着替えるの手伝うから許して」
さすがリザ、可愛らしい外見とは裏腹に、意外と計算高い。
「なあに、リザだったか? 男に手伝われても嬉しくねーな」
「ですよね~」
リザにしてみれば、海賊幹部に、名前を憶えられていたのは予想外だった。その一方で、この展開は想定していたが、考えたくないパターンだった。
その間に室外に出た、メイベルはフィッシュヘッド君を魔法で再び具現化。更なる情報収集に挑む。
「わたしが酔っぱらったら、皆に迷惑かかりますからね」
メイベル自身の考えでは、本当に最悪の事態として、自分が酔いつぶれれば、ひとり減るのではなく、減ったひとりをフォローして脱出なり突破するのに、余計に手間がかかるのだ。
「ハウンドは『仲間を置き去りにする』という選択肢はないと思いますから」
ひとりごちたメイベルは何事もなかったかのように、『にへにへ』笑うのだった。
◆闇を斬り裂く魔法の光、未来を照らす精霊力
「人の日記読んで面白いか?」
記憶した砦の構造を、頭の中で整理しながら書き出していた、
ディオン・ガヴラスが、見張りの海賊に呼び止められたのは致し方ない。
さすがに夜という時間帯に、黒っぽい半透明のドラゴングラスをしていれば、怪しまれる。更に手には何やら筆記用具を持っている。
ディオンはバトルコートという服装のチョイス、それ自体も考えるべきかもしれないと思った。常夏の領域では悪目立ちしすぎるのだ。
とはいえ、ディオンも対策は打ってある、砦の書きつけとは別に、適当な文章を書き散らした、ダミーの日記を海賊に渡している。
「そうか、日記か」
海賊はそう言って、ディオンに帳面を返す。
「俺、字が読めないから、内容なんてわからねえよ」
どうやらこの世界の多くに漏れず、教育を受けていないらしい。
「まあ、いいじゃないか、差し入れのビール最高だぜ」
見張りの海賊の相棒が、文字の読めない方の海賊の肩を軽くたたいて、ビールを促す。
ディオンはごまかすために持ち込んだビールが功を奏したのだ。
「日記を書くのが習慣でな。返せよ。恥ずかしいからな」
ディオンがそう言うと、帳面を投げて放る海賊。怪しまれてはいないようだ。
(さすがに、奥に侵入して調査するのは無理か。こういうのは隠密が得意なヤツの仕事だからな)
自分が所属しているクラン『遺跡好きの盗賊達』の仲間の事をディオンは思い返す。
「まったく、うまく行かないぜ」
一方、その頃、ベドウィールの方は、マジメに海賊の寝床の数を勘定していた。
(リザは大丈夫でしょうか‥‥)
その一方で、べドウィールには、そんなことを考えてしまう余裕もある。
もちろん、『大丈夫』の方は、リザではない。
リザが誰かに、『何もやらかしてませんよね』という祈りにも似た思いである。
(後は脱出、緊急時の際に用いる通路、ですか)
べドウィールは、この調査行が、最初の一歩か、それとも最後の一歩かを確認しなかったことを悔やんだ。
最後の一回なら、相手の足を封じるべく、通路を把握するのは必須だ。最初なら次に任せられる。
ともあれ、べドウィールは、海賊たちが備蓄した真水から、大まかな継戦能力を把握することはできた。
(主夫の知恵ですね)
リザがどう思うかは知らない。しかし、べドウィールにとって、彼はまだ保護が必要なように思えた。
いや、れっきとした成人男性にそれは侮辱かもしれない。だが、べドウィールのとっての20年近い日々は、そう考えさせるのだ。
朝になって、夜の番をしていた海賊たちが寝床に戻ってくるため、べドウィールは音もなく退く。
途中でディオンと合流。互いの情報を手身近に交換する。
道中でどちらかが倒れても、情報は持ち帰るために。
その為にここに来た。その為にここから生きて帰るのだ。
「夜明けだな」
ディオンが呟く。
「そうですね。迅速にリズと女性陣を回収して撤退しましょう」
べドウィールの言葉は自信に満ちていた。
海賊たちが宴を終えて、持ち場に着くのを確認しつつ、この宴から日常への切り替えの早さ、それ自体も立派な情報だ。
ディオンもべドウィールもそれを脳裏に焼きつけるのだった。
新しい朝だ。
◆宴の終り──ハウンドかく戦えり
「けっきょく、あのてがみなんだったんやろうな?」
海岸に着き、帰り際に一同に囁くガーベラ。
「興味はあったけど、それ以外が大体うまく行ったんだし、結果オーライだよ‥‥海賊たちの前で話せなかったけど、この前の灼熱の砂丘の時はごめんね」
最後はリザはそうガーベラにあやまる。灼熱の砂丘で、リザが出した案でガーベラが石化したという事件があったのだ。
「すぎたことやし、もうええで」
ガーベラがリザの頭をなでる。
「ありがとうね」
リザもガーベラの頭をなで返す。
「それはさておき、もっと調べられたかと思うと‥‥だがこれは完璧主義、いや、悪しき完璧主義かもしれないな」
ディオン自身も、どうやら納得が行っていないらしく、それは自分をガーベラに投影したからかもしれない。
「とりあえず、みんな無事だったし、良いと思います‥‥ということにしませんか?」
微妙な感情の振幅が周囲にあふれていることを感じ取り、べドウィールは気分を切り替える。
「とりあえず、情報は得られたので、良しとしましょう」
そこでメイベルは一呼吸置く。
「まあ、フィッシュヘッド君の視覚と、知性を過大評価した、自分の言うことではないのですよ。ええ、分かってます」
メイベル自身の自虐的な、自分ボケプラス自分ツッコミ、それに一同はどうリアクションを返していいか分からない。
無事、報告し、今日という新しい日と向き合うハウンドたち。
やるべきことはやった。
この5人の情報により、海賊への反撃の準備は整うだろう。
だから──ハウンドの戦いは続く!
11
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参加者
| | a.砦の内部を把握するよう動いてみる。一応ムーンカムを持って行くよ。
| | ディオン・ガヴラス(da0724) ♂ 25歳 ダークエルフ マイスター 風 | | |
| | b.よし、飲もう!
| | リザ・アレクサンデル(da0911) ♂ 23歳 人間 ヴォルセルク 水 | | |
| | a.ガガ・フィッシュヘッド君を使って水中から偵察します。船や海賊の数を。
| | メイベル・ミストール(da1050) ♀ 20歳 人間 マイスター 水 | | |
| | a.メインはこちらになるでしょうか。
| | ベドウィール・ブランウェン(da1124) ♂ 27歳 人間 ヴォルセルク 月 | | |
| (あのてがみ、なにがかいてあったんやろか? きになるでー!) | | |
海賊島に潜入せよ
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海賊島に潜入するハウンド急募。あくまで潜入調査なので、海賊の殺害や相手の施設、船舶の破壊が目的ではない。繰り返す──。
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