オープニング
◆終わらない夜、始まらない朝
ここはローレックの街、その北方にある『魔の森』だ。
ハウンドたちが数名で、今後に備えて生態系の調査に出かけ、そして予定より時間を取ってしまっていた。
「あかんな、すぐに『まのもり』をでるのは──むずかしそうやで」
シフールのガーベラは暗い中、そんなハウンドたちの共通認識を、口にする。
うかつに夜動いて、迷ったり、疲れたりするのは得策ではない。
そう考えたハウンドたちは、朝を待って帰ることにした。
焚火を起こし、光源とする。
「ほな、おやすみや‥‥げえっ、はながまがるわっ」
早速、ガーベラが寝ようとする──しかし、次の瞬間に飛び起きた。他のハウンドたちは戦闘準備を始めている。
イタズラな風が運んできたもの──それは腐臭だ。
その源──数体の人らしき影は、周囲の樹々の枝に当たったり、落ちた石につまづき転んでも、意に介しないらしい。
それどころか、そのまま這いずってくる個体もいる──露骨に怪しい。
痛みを感じない──あるいは‥‥。
いくつかの影(おそらく5体以上いるだろう)、剣を持った影も2体はいるようだ。
まっすぐにハウンドたちを目指す。
「うわぁ、きしょくわるいわ」
ガーベラが言いながら、CROSSを抱える。
相手が異常な存在であることはガーベラにも分かる。しかし、何かということまでは、ハウンドたちにはわからなかった。
素手の先頭の1体が20メートルまで近寄ってきた。
──ハウンドたちの戦いが始まる。
選択肢
マスターより
成瀬です。夜のお話です。現在の光源は、焚火だけです。
そろそろ、普通でない武器が本領発揮か? そうアレです。試行錯誤もヨシ。
人らしき影は腐臭がしたり、転倒してもケガをしないように見えるアレです。
では、皆さんの無事を女神とか精霊に祈ります。
──必ず生きて帰れ!
登場キャラ
◆今ッ! 殺しの時だッ!
魔の森で動く死人──ゾンビと出会ったハウンド達。
「うわぁ、きしょくわるいわ」
と、
ガーベラが言った続き、そこから物語を開こう。
(この夜に相応しい不気味なお客さんじゃない‥‥歓迎してあげなきゃね?)
呪文を詠唱しながら、不敵な笑みを浮かべるのは、
アルマリア・アリアンロッドだ。
(アレが何であれ、私は敵を何の躊躇いもなく‥‥ブっ飛ばすだけよ)
有象無象の区別なく彼女の魔法は爆殺する。
「──ファイアボム」
続けて爆音が響く。
「いつだってヤる事はひとつ‥‥シンプルイズベスト」
爆発の中心点にゾンビを巻き込めない。射程よりも仲間を巻き込まないためだが、ファイアボムの爆発は、かなりの数のゾンビを巻き込む。
今までのそれを上回る破壊力──それはアルマリアの鍛錬を示すものだが、それを見た
ロビン・トラマリウスは恐怖に打ち克ち前に出る。
「それにしても、ふひぃ、肥溜めの匂いとも違うんですね‥‥こう‥‥甘いのと‥‥ヅンってくるのと‥‥! ‥‥やっぱりくさい!」
ロビンは言いながら、攻めに移る。無謀か? いや、若さだ。
最初はミドルシールドと、異国の短剣とされるグリーヴァダガーで攻め立てる。
短剣で、ではなく、あくまで『盾と短剣』だ。
盾で敵の身体を抑え、短剣で伸びた手や足などを落として機動力や攻撃力を削ごうとする。
しかし、打ち据えた感触はあっても、ゾンビの肉体は傷ついた様子がない。
異国の短剣で斬り裂き、突こうとしても、肉体を一切破壊できない。
「うう、やっぱり僕なんかじゃ歯がたたない‥‥! こういうときにズバン! と倒せる英雄になりたいのに‥‥!」
なら工夫する──やはり、火に弱いのか?
身の危険を承知で、持ち替えたトーチに炎を灯すロビン。身を焼くことで‥‥固く、なるのでは!
ゾンビの攻撃を、盾でいなしながら、辛うじて押し当てる。とはいうものの、向こうの肉体にはススが付着するだけで、何ら変質した様子はない。
「こ、この火じゃだめ‥‥なの」
腐肉の塊が一斉におそいかかる。足を止めたところに殺到するゾンビに押しつぶされかける。
傷らしい傷にはならない。しかし、疲れたことで、ロビンが意図した反撃の精度は弱まった。
一方、
ユナ・プリセツカヤ。
「森で、襲われちゃうなんて‥‥怖すぎるぅ!」
言いながら、歯の根も合わないほど震えている少女。
「で、でも、震えてるだけで良くなるなんてないし──みんなを守らなくっちゃ!」
強くロングロッドを握りしめる。
一番前でみんなの盾になる!
その決意を形にすれば、ライトシールドを物理的に構えつつ。
「こ、ここは通さないんだからー! きゃっ!?」
ゾンビを正面から打ち据える。
「こわくって棒で殴っちゃった‥‥ごめんね? 痛かった?」
ロングロッドは頭を捉えている。それでも、傷ひとつついてない。
「いやぁー! お母さーん」
そこに救いの手が伸びた!
「どおりゃあー!」
身の丈より大きなヒュージクレイモアを振り回す、
レナ・ゴールドマンの勇姿だ。
周囲の小枝を吹き飛ばしながら、ゾンビを打ち据える。
通常なら剣が触れただけで、その箇所の骨は折れそうな印象を与える。
しかし、ゾンビは転倒するものの、有効打にはならない!
「この連中、短剣が通じません!」
ロビンの声にうなずくレナ。
「分かってるよ。そして、数秒間稼いでくれて、感謝するね」
レナはルミナパワーの魔法効果を信じて、ゾンビに殴りかかる。
腐肉に自分自身の肉が沈み込んでいく感触。おぞましい柔らかさだ。
しかし、有効打だ。
「あとは殴りまくるのみ」
一撃必殺とはいかない。
そこにあでやかな声。
◆涙を捨てて悪を討て!
「出すぎよ。ロビン、ユナ──でも覚悟は認めてあげる」
アルマリアの義妹である、
アザリー・アリアンロッドは、援軍到着を告げるように叫ぶ。
「死体が動いているの? そうまでして私達を帰したくないだなんて、欲張りもいいところだわ」
言ってレナに近寄り、続けざまの宣言。
「じゃあ、私からも熱いお返しをしてあげる‥‥キッスという訳には行かないけどね!」
唇を赤い舌で湿すアザリー。
「斬る、突く、打つ──どれがお好みかしら」
手にした真銀のショートソード、そして銀のモーニングスターを握りしめる。
しかし、後ろからの援助は続かない。仲間を巻き込まないように──そう考えると、アザリーも辛うじて、戦線を維持するのにとどまる。
(癒す手段がないのに、巻き込み上等というワケにいかないねぇ‥‥まあ、銀の矢が効けばいいけどなぁ)
後方で魔法のランタンを点灯させる、
ヴェスパー・ベント。
一方で魔力を使い果たし、後方に下がったアルマリア、彼女の果敢さと冷静さを評価しながら、ヴェスパーはグリーヴァヒゴユミに銀の矢をつがえる。
幸か不幸か、昼間で通常の矢は使い果たしていたのだ。
突き刺さる一矢! それにより、ゾンビから腐汁が飛び散って、異臭が満ちた。
それを切り裂くように先頭のゾンビに水の刃が伸びる。
源は
リザ・アレクサンデルの手にした水の剣。
──ブレードofローレライであった。
◆残された選択肢は、退路なき道!
美しい弧を描く刃──しかし、それが腐肉を斬り裂くことはなかった。
「なるほど、ローレライは通じない‥‥! ならば、これで行くよ!」
リザの覚悟完了、手にするは真銀のレイピアだ。
リザの直衛に入っていた、
ベドウィール・ブランウェンも臭いに辟易する。
彼も掌で口元を覆っていた。
「‥‥確かにこれは、真銀や銀の武器なんて物が必要になる訳ですね。アザリーや皆の奮闘で、真銀や銀の武器が効くのが分かったみたいですから」
言って真銀のダガーを取り出す。
斬った相手の魔力を削れるミタマギリの魔法。この魔法は、通常の生物には見えないゾンビには相性が悪いと予想する。
しかし、手にした真銀の重みは裏切らないだろう。
リザとべドウィールは遊撃に入る。仲間の攻撃に巻き込まれないように、そして最大効率を目指して。
一方、発見もあった。
魔法のランタンの近くには寄らない!?
ヴェスパーは地面に置いた魔法のランタンの光、その中には、ゾンビは入りたくても入れないらしく、それに気づくアルマリアとヴェスパーは、皆に光に近づくよう呼びかける。
「みんな、この明かりの中なら大丈夫だよ!」
その声を聞いて、ハウンド達はゾンビ達からの決死の逃避行に移る。
「みんな、気をつけて、近寄ったら吹き飛ばすわ」
アルマリアがファイアボムを魔力の限り撃ち出す、その決意をした。
「まあ、フォローはするよ」
ヴェスパーも銀の矢をさらにつがえる。
◆遠い夜明けに誓おう!
アルマリア、彼女の魔力も尽きている。
(使い時だねぇ)
ヴェスパーのサクリファイスのCROSS、それが効力を発揮する。
アルマリアは、ヴェスパーの体力と引き換えに、魔力を受け取る。
「この借りはいずれ精神的に──」
減らず口を叩く余裕もない。
「いやぁ、生きてるだけで十分だよ」
ヴェスパーの消耗も大きかった。
残された、剣を持ったゾンビもファイアボムの爆風で大きく損壊する。
「イって良いわよ──さあ」
アルマリアが全力を尽くし、破壊しつくす。
次々にヴェスパーの銀の矢が突き立つ。
「少しは楽になったかな」
精度は荒いものの、シューティングブレスの魔法で補いはつく。
「も、もう終わりやな?」
ガーベラが問う。
うなずくハウンドはいなかった。
しかし、立っているのはハウンド──つまり、自分達だけだ。もっともユナは安堵したのか、ロビンにすがり付いている状態だが。
「あのシッポ引っ張らないで」
ロビンがユナにリクエスト。願いが叶うには、わずかな時間を要した。ともあれ、ひとつの戦いは終わった。
「これ焼いた方がいいんじゃ‥‥」
リザがまっとうな意見を出す。
しかし、14体のゾンビだったもの達。これを焼くだけの木々を集める時間でどれだけ、魔の森から離れられるか‥‥。
それはリザ自身が良く分かっていた。
とはいえ、魔の森という魔境で戦闘をすれば、引きつけられる輩もいるというものだ。
次なる戦いは間もなくであった。
後にこの件で、ハウンドギルドに調査の報告が出たが、それはここで語るべきことではない。
しかし、全員生き残った──それで十分だろう。
だから──ハウンド達の戦いは続く!
11
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参加者
| | a.ここでは夜を愉しめそうにもないわね。
| | アザリー・アリアンロッド(da0594) ♀ 29歳 人間 ヴォルセルク 月 | | |
| | a.うわぁ!…ヤだけど……ユナ、ガンバりますっ!!
| | ユナ・プリセツカヤ(da0671) ♀ 20歳 人間 ヴォルセルク 陽 | | |
| | b.何だってブッ飛ばすだけよ。
| | アルマリア・アリアンロッド(da0672) ♀ 35歳 人間 パドマ 火 | | |
| | a.僕は前にいきますね!!! 普通に戦ってたらいつか倒せるはず!!!!!
| | ロビン・トラマリウス(da0734) ♂ 20歳 カーシー(中型) ヴォルセルク 陽 | | |
| | b.何コレ。何これ…! っと、最初はこっちになるかな。あとで前に出るよ
| | リザ・アレクサンデル(da0911) ♂ 23歳 人間 ヴォルセルク 水 | | |
| | a.私にはなんとも、相性の悪い相手のような気がしますね…?
| | ベドウィール・ブランウェン(da1124) ♂ 27歳 人間 ヴォルセルク 月 | | |
| | a.剣で叩いて転ばせて、駄目なら、ルミナパワーを拳に付けて殴るつもりだよ
| | レナ・ゴールドマン(da1337) ♀ 23歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 陽 | | |
| | b.出来れば来てもらいたくないもんだねえ。矢足りるかなぁ・・・?
| | ヴェスパー・ベント(da1605) ♂ 36歳 カーシー(小型) カムイ 風 | | |
きもっ!
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くっさー! あれ、はなまがるわ!?(『魔の森』調査で大ピンチな羽根妖精in夜)
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