朝飯前

担当成瀬丈二
出発2019/05/20
種類イベント 日常
結果成功
MVPクローネ・コーチャン(da0001)
準MVPアメリア・トラウト(da0819)
エルノ・ライネ(da1581)

オープニング

◆猫たちの夜明け
 ローレックの街の朝は早い。
 ハウンドギルドの野外訓練場も、明日の勇者を目指すハウンドたちでごった返していた。
 そこに響く声。
「猫だー! 猫だらけだ!!」
「なんだ猫か」

登場キャラ

リプレイ

◆第1章:彼と彼女の戦場
「わーん、ねこじゃらし生えてないよー! じゃあ、体当たりでとっくんだ!」
 言いながら、シフールのジンジャーは猫たちの群れに体当たり。
 なお、ネコジャラシ(正確にはエノコログサ)は、オーディア島で見かけるものだ。
 とはいえ、実際に実をつけるのは夏以降となるだろう。
「あそんでいるんじゃなくて、たんれんだよ。こみゅにけーしょんって、だいじだよね」
 そう、ジンジャーは主張する。
「しょうぶや、じんじゃーはん」
 先ほどから変わらず、飼い猫らしい猫にまたがった、ガーベラ。彼女はジンジャーに突撃をかます。
「あたらなければ、へいきだよ」
 ジンジャーは、ひらりとかわし、満面の笑みを浮かべるのだった。一方、ガーベラの相棒にされた猫、そのオス猫に向かいガーベラは今一度、シフール専用スキルの動物語で指示を出す。
「つっこむんや!」
 簡単な指示を了承したのか、またもや突っ込む猫。どこか楽しそうな表情を浮かべている‥‥そう、ジンジャーには見える。
「ひゃっはーや!」
 意味不明な単語も、猫は──楽しむことに決めたようだ。

◆第2章:それはもっとも危険なワナ
「ちょいまち、とまるんやー!」
 ガーベラの絶叫だが、1テンポ遅かったようだ。
 目の前に何かがある。
 猫の向かう先には3つの壺があった。
 その壺に猫たちが群がる。ある個体は猫パンチをし、別の個体は壺の縁に前足をかけて、横倒しにする。
 そして、中に入ろうとするのだ!
「あれー、やめてよー! くらいよー、せまいよー、こわいよー!」
 猫に襟首をくわえられ、引きずられていくジンジャー。彼は半泣きだ。
「ひゃっはー! とつげきや」
 一方、ガーベラのテンションは、今朝は妙に高いのだ──いや、いつもの事だ。
 この壺を仕掛けたのは誰だ? それは彼だ!
──クローネ・コーチャン、その人である。
「くくく、楽しいでしょうねえ。さあ、遊びましょう」
 口元こそ笑っているが、朝日の逆光でDGSの奥は見えない。
「さあ‥‥これを」
 腰の革袋から、『白い何か』を取り出す。
 それはゆでた鶏肉だ。
「さあネコチャンたち、ゴハンです。どうぞ、召しあがれ」
 壺と肉とで、猫を釣るのだ。餌づけッ! やらずにはいられないッ!

◆第3章:ヒューマンと猫
「猫がこんなに‥‥ヘヘ。最高だよ!」
 もふもふの猫たちを見つめる、エルノ・ライネ
「‥‥ふふ」
 その隣側には、笑みを浮かべるアメリア・トラウトの姿もあり。
「でも、こんなに猫がいたら掃除とか大変だよね。でも、いいよ! 実にいいッ!」
 エルノのテンションもうなぎ上りだ。
 一方、猫と彼を交互に見て、ほほえみ続けるアメリア──。
「可愛いですね。なついてくれると、嬉しいのですが‥‥エルノさんは本当に可愛いのが好きですよね」
 そういう彼女の言葉に対し、返ってきたのは。
「うん大好き。アメリアも好きだよね」
 エルノの完全肯定の言葉だった。それには、アメリアも賛同する──もちろん、心の底から、だ。
 猫サイコー!

◆第4章:集いしものたち
「干し肉なら、ありますが‥‥猫にあげるのはクローネさんの様に鶏肉とかがいいでしょうね‥‥」
 アメリアの懸念に対して、大丈夫とエルノは返す。
「多分、刻んで、下ゆでして──で、塩気を抜いて柔らかくすれば‥‥」
 エルノの言葉は正論。しかし──。
「それって、あまり大丈夫じゃないのでは?」
 苦笑いを浮かべたアメリアが思うのも納得な、エルノのアイディアだった。
「燻製の豚肉あるけど──これも猫には良くないから、アメリアの干し肉と一緒に塩抜きするとして──こっちの山羊乳は手を加えなくても、きっと大丈夫だよ」
 エルノの言葉にアメリアは破顔一笑。
「そうです──それなら」
 猫は集まっていく。
「楽しみましょう。この壺は‥‥いい壺ですから」
 とはクローネの発言だ。
「では、始めましょうか‥‥我らの宴を」

◆第5章:ネコネコカワイイ
 そう言って、ふたりの会話に加わるクローネ。
 そう、壺の正体はクローネが成就した魔法の産物。その魔法の名はオクトパストラップ!
 狭いところが好きな者は引っかかるという。
「カワイイネコチャンを前にすれば、同好の士は歓迎です」
 言っているクローネの足に猫が体をすりつけている。一瞬目を細めるが、向き直って発言。
「私は以前学習した通り、餌づけを楽しみましょう。これは──魔法の訓練です」
 魔法の訓練ならば仕方がないだろう。
 クローネいわく。この訓練場は街のそばで、危険も少ない‥‥はず。
 なら魔力を限度まで使う──限界を知るのも訓練になるはず、そう主張した。
 アメリアは、何となくだまされたような気持ちになる。しかし、ここはあえて乗る。
‥‥かかったワナは吹っ飛ばすのが、ハウンドの流儀‥‥という人もいるかも。
 それに──猫はかわいいのだ。ありとあらゆる論理、百の議論をも上回る。

◆第6章:餌づけ、という本能
「さあ、お食べ──でも、ゆっくりとね」
 エルノは訓練場にある水場にて、燻製肉と干し肉を刻み、塩気を抜いてきたものを出す。
 一部の猫たちは、肉より差し出した手の方に興味があるらしく、そちらをなめだした。
「くすぐったいなぁ」
 何匹かのチャレンジャーな猫が肉をかじる。どうやら、こちらの反応はあまり良くない。
 おそらく、噛み切れなかったのが原因のようだ──塩抜きしたが、まだ硬かったのだろう。
「ほらほら、こっち」
 一方で、アメリアは指先に山羊乳をつけて、猫たちの上で軽く回す。
 伸び上がる猫たち。やはり、動くものには反応する。
「もう、限界ですね」
 可愛さにアメリアはノックアウト寸前。なので猫たちの口の届くところに手をおろす。
 ざらざら。
「あらあら、おっきい子より、ちっちゃい子にあげますから。がっつかないのですよ」
 母性本能全開だ。

「さあ──ゆで汁を飲むのです。ゆっくりと冷ましたのですから‥‥そう、猫舌のみなさんのために」
 クローネは言いながら、鶏肉のゆで汁を猫たちに馳走する。
 仔猫にも老猫にも優しい。
 まさに一番人気だ。
 猫たちはクローネの足元で転がり、腹を見せ出す。
「おやおや、撫でてしまいますよ」
 ぐりぐりとお腹を刺激するクローネ。その顔には満足そうな笑みが浮かんでいた。
「ここですか‥‥ここがいいのですか──だらしない子ですね、ならば考えがありますから」
 クローネの探求は続く。

◆第7章:いつかどこかの朝練で
 その頃、シフールたちは──。
 壺にはまった相棒の猫を引っ張り出そうとする、ガーベラとジンジャー。
「でてこんかー! まだまだウチらとあそぶんやでー!」
 言って、ガーベラが引っ張る。
「ひっぱるよ、えーい!」
 その後ろから、ジンジャーがフォローに入るが、オクトパストラップの持続時間が切れ、壺はなくなる。
「「あいたー!?」」
 2人はそろって尻餅をついてしまう。
 そのころには猫たちも満足したのか、集まりは終わっていった。
「ばいばーい、またね♪」
 お尻をさすりながら、ジンジャーは猫たちに向けて片手を振る。
「何て気持ちのいい猫たちだったのでしょう‥‥」
 アメリアは満足げに猫たちを見送る。
「本当にね──でも、ここで朝練してたら、また会える‥‥そんな気がするよ」
 悟り、いや確信とともに呟くエルノに対して、クローネは一言。
「待っています」
 そう告げるのみだった。
 次の集会はいつかはわからない。ハウンドたちは待つことしかできそうにない。
 ならば待つしかない。ヒューマンの命は一世紀弱。シフールの寿命はわからない。
 しかし、ダークエルフの寿命ならかなりの間、待てるだろう。
 とまぁ、寿命うんぬんはさておき──いつの日か会えるであろう、猫たちとの再会を皆は願う。

◆最終章:そして‥‥朝食へ
 猫の騒動が終わったのち、何となくではあるが、消化不良な感が一同にはあった。
 無論、食事前なので、胃袋ではない、時間の方だ。
「あー、すかっとしたわ、またこんかな」
 脳みそ空っぽな発言をするガーベラ。
「こわかったけど、どきどきしたよー」
 ジンジャーが嬉しそうに応じる。
「くくく‥‥計画通り」
 意味もなく含み笑いをするのはクローネ。加えてDGSのブリッジを指で押し上げ怪しさは自乗だ。
「猫さんたち帰っちゃいましたね」
 少し寂しそうなアメリアだが‥‥。
「でも、楽しかったです。また、会えると良いですね‥‥猫の集会はまた、きっとあるでしょうから」
 そう続ける、再開への言葉。
「せやな」
 ガーベラも同意する。
 もちろん、この場にいるものは皆、同意しているのだ。
 そして──。

『朝メシどうしようか?』

 そう、まだ朝食には微妙な時間だ。
 5人の胃袋はそう主張している。
 とはいえ、ハウンドの朝練は終わる──しかし、ハウンドの戦いはつづく!



 8

参加者

b.聞きましたよ…カワイイネコチャン…フフッ…(壺を撫でる)
クローネ・コーチャン(da0001)
♂ 27歳 ダークエルフ マイスター 月
a.わーい!ねこさーん!きたえるぞー!(猫じゃらしブンブン)
ジンジャー(da0573)
♂ ?歳 シフール パドマ 陽
b.可愛いですね。なついてくれると嬉しいんですが…
アメリア・トラウト(da0819)
♀ 25歳 人間 ヴォルセルク 地
b.猫がこんなに・・・へへ、最高!アメリア、よろしくね!
エルノ・ライネ(da1581)
♂ 22歳 人間 マイスター 月
 ウチはろーれっくのまちの、すぴーどすたーやで!
ガーベラ(dz0030)
♀ ?歳 シフール カムイ 月


『猫』

ねこ!ねこ! ねこ! ウチ、しっているんやで。これはぜったい、たのしいで、もふもふしてんか! みんなねこに、きをつけるんやで!(ガーベラ談)