オープニング
◆テーヌ川を右に見つつ
ハウンドギルドに商人のガーブ氏から依頼が来ていた。
彼の商隊を護衛する依頼だ。
ウラートまで行く3台の荷馬車(二頭立ての二輪車だ)を行きの間、守って欲しい。
そう、ローレックの街から、ウラートに続くウラート街道。そこは周辺に比べればマシだが、安全とは限らない。
山賊や強盗が出るのは珍しくない。
ゆえに人を集めるのだ。
◆愚かな彼女(She-Fool)
「ついに、ウチの、はつしごとや!」
訛りのあるシフール、ガーベラは両手を握りしめ、感涙にむせび泣いていた。
CROSSをぶら下げているからには、カムイなのだろう。
「うちが、しんのかたりべになって、おもいでを、いっぱいあつめたるで!」
体は小さく、意気は大きいようだ。
そんな彼女を含んだハウンドたちが出発する。緊張とリラックスを交互に感じつつ、街道を下る。
茂みの多い辺りに差し掛かる。いかにも待ち伏せに適した場所だ。
「そういえば、このあたりにイナズマ山賊団とかいうのが出るそうですな。最近売り出し中とか」
中央の馬車に乗る、ガーブ氏が手近なハウンドに話しかける。
「ははは! イナズマ山賊団見参!」
女性の声が響く。次の瞬間、先頭の馬車の前方、後尾の馬車の後方で、ロープがピンと張られる。
馬車は動きを止める。
「な、なんや!」
ガーベラはパニックになった。
◆赤と黒のエクスタシー
山賊だろう。不意を打たれたのはやむを得ない。
とはいえ、前後合わせて10名程の一団が、短剣をチラつかせて現れる。
ひょっとしたら、茂みの中にまだ伏兵がいるかもしれない。
頭(かしら)らしい、赤毛の女が剣を持って、馬車の前に立つ。
後ろには黒髪の女だ。やはり、剣を構えている。
「さあ、荷物を置いてきな! 私はイザベラ。イナズマ団のリーダーだ」
赤毛の女が主張する。
「副リーダー、ヴィクターだ。全ていただく、抵抗は無駄だ」
その間にハウンドたちは、迎撃の準備を整えていた。
ハウンドの戦いが始まる。
選択肢
マスターより
成瀬です。
イナズマ団は皆人間です。人数は不確定ですが、大体前後共に同じようです。
選択肢の先頭はイザベラを中心としたグループへの対応。後尾はヴィクターを中心としたグループ。
中央は伏兵への対処や、遠距離攻撃を目指す選択肢です。
なお、ガーベラは中央の馬車にいます。
フルパワーでどうぞ帰りのことや、別の山賊の出現などは考えなくても大丈夫です。
では、よき戦いを。
登場キャラ
◆血風渦巻く
真っ先に飛び出す影!
「いくよ!」
それはグリーヴァタチ、そしてシノビブレードを構えた、
レナ・アルバスティが、愛犬とともに、後方の山賊たちに斬り込む。
「全ていただく、か。つまり、お前もすべてを失う覚悟なんだな? ヴィクター」
淡々としているのは──
ベル・キシニアの言葉。
それに対し、山賊の副リーダーであるヴィクターは、一種投げ槍とも言える笑みを浮かべる。
「失う──だ? それは何かを持っているヤツの言葉だな。これ以上失うものなどない」
「いい覚悟だ。満足させてくれ」
グリーヴァオオダチを構えて、ベルは前進。あえて、互いの間合いを踏み越え、ヴィクターに打ち込む。
ヴィクターはその一撃を弾き、その上で肉薄する。
「ふぅ」
間合いを取りにくくなったが、相手も逃げる気はない。ベルにはそう思えた。
(楽しみだ)
ヴィクターは脚技のけん制から、剣により、わき腹を薙ぐ一撃に移る。
しかし、ケレン味が多い言動のわりに、動きにムダはあまりない。我流だが剣のスジはいいだろう。
ベルは無意識に判断する。
しかし、ベルはとっさに体をひねり、躱そうとする。
躱しきれない! しかも、向こうに相当『運』があったのか、魔法で強化されたレザーアーマーの守りを斬り裂く一撃を受けた。
わずかに血がにじみ、痛みが走る。もっともベルは意に介さない。
ヴィクターは勢いに乗ったが、ベルはそうはさせず、ヴィクターの腕をつかむ。
「!」
相手の表情は変わる。ベルの表情はヘルムに隠れて見えない。
そのまま、ベルは一瞬のためらいもなく、投げ技の体勢に入った。
「ヴィクターの姉御!」
山賊たちの間から声が上がる。
一方レナは後方かく乱に回っていた。
彼女の全力を尽くす。
「秘技‥‥二刀連撃破!!」
上下から打ち寄せる一撃だ。しかし、山賊は何とか片方は得物で受け止める。
戦技ダブルアタックをしのぐ──山賊が強いわけではない。
レナが両方連続で有効打を与えるには、刃が山賊に届かなかったのだ。
あとは若干の運‥‥戦場に出れば出るほど、これは実感できるかも──しれない。
若干の運は、あくまで『若干』だ。
なので、レナの愛犬『レキ』が自発的に、足元を襲うことまでは避けられない。
山賊は一瞬虚を突かれる。
「さて、もう終わりかな?」
レナの緑の瞳が、射貫く如き眼光を発した。
答えは、ない。
「受けて散りなよ、秘技‥‥二刀連撃破」
今度こそは、レナの連携攻撃をかわし切れず、ひとりが倒れ伏した。
切っ先から血のしずくが一滴、落ちる。
「やるじゃあ、ねえか! 俺も黒髪の女と戦わせてもらうぜ」
ヴォルフ・ファングもヴィクターとの戦いに参加。
彼は相手の戦闘力を奪うことに専念する。
戦技抜きで、女を斬らずに気絶させるというのは難しい。
しかし、ヴィクターが放り投げられた今は、ヴォルフにとって、絶好のチャンス!
馬乗りになり、逆手でナイフをのど元に突きつける。
「さあ、本物のリーダーさんよ。負けたからには素直になってもらうぜ」
「何のことだ?」
相手にごまかしや、欺瞞の色はない。
「‥‥天然じゃねぇか」
そう見てとったヴォルフ。盛大に自分の読みが外れ、落胆せざるを得なかった。
ベルは、ヴィクターの剣を、少々強引にもぎ取る。
「ふぅ‥‥満足した」
「じゃあ、このロープでふん縛ってくれや。俺は赤毛の方に向かうぜ」
そう言い置いて、ヴォルフは後尾を後にした。
ベルはロープをきつめに縛り、ヴィクターを無力化する。
「さて、山賊たち──あれ?」
レナを半包囲した山賊たち。そこに今まで数に押され気味だったレナが、威圧し返す。しかし、山賊たちは後方に逃げていく。
ヴィクターがそれだけ頼りだったのだろう。
──後尾での戦いの趨勢は決まった。
◆魔女たちと、射手たちと、その他
一方、中央の馬車では──。
「やれやれ、おいらのポカミスだねぇ。まあ、大勢に影響はないみたいだしぃ」
ヴェスパー・ベントは、グリーヴァヒゴユミを構えている。
先ほど気づいたのだが、ヴェスパーはCROSSを身に着けてはいなかった。
一方、
アレッタ・レヴナントと
アルマリア・アリアンロッドのふたりは呪文の詠唱中。
魔法の杖を握るが、アレッタは自分のルナに関する条件づけで、『一番遠い、隠れている敵』というのでは、難しいと考え『一番近い敵』と、条件を変えて成就する。
果たしてルナは的中し、茂みの中に飛び込む。苦悶の声があがった。
アレッタは、少し笑みを浮かべる。
「丸見え!」
山賊は深手ではないが、自棄になったらしい。
「やったで!」
ガーベラは今までのパニックが嘘の様に、右こぶしを突き上げる。
「山賊は嫌いだから」
言い置くアレッタ。次の魔法の成就に入る。
「前の方は少し危ないねぇ。でも──!‥‥そこっ!」
ヴェスパーは前方に射るはずだった、ヒゴユミをとっさ街道脇の茂みに射る。
悲鳴が上がる。
「足音くらい隠したほうがいいよぉ。あと、体も洗ったほうがねぇ」
(どうやら、この伏兵たちを前に行かせない方がフォローになりそうだなぁ)
茂みから3人の山賊が現れる。
そこに向かって、アルマリアはファイアボムを成就して炎の弾をぶつけた。
爆発が巻き起こる。
「バカを爆破する‥‥楽しいわね。私の好きな事は2つ。肉欲を満たすことと‥‥魔法を撃つことよ。山賊相手なら気兼ねなく楽しめて素晴らしいわ。さあ、まだ生きているんでしょ? 早く立ちなさいな」
山賊たちは明らかに浮足立ったようだ。
「あら、元気なのね?」
そこでアルマリアは見下すような視線で。
「──でも、それだけ」
そう言って成就を始める。
その間に山賊がひとり倒れた。ヴェスパーの弓の手腕だ。
アレッタがルナを成就し、更にひとりに追い打ち。
「じゃあ、おやすみなさい」
アルマリアは最後の山賊に向かってファイアボムを成就。
もったいない、そう感じる。しかし、アルマリアは手札は、ファイアボム以外ない。
受け太刀になると負けだ。
「矢はもう少しあるから、大丈夫だよぉ」
ヴェスパーは言って、爆風の中から飛び出した山賊に正面から矢を射込む。
悲鳴の後、山賊は倒れ伏した。
「ほら、どうにかなったぁ」
言ってウィンクをする。
その脇をヴォルフが駆け抜けていった。
◆悲劇の場
「そんなナマクラ程度、それで相手になると思うのなら、かかってらっしゃい。かえりうちですわ」
エウロ・シェーアはグリーヴァオニキリを構えながら挑発の言葉を並べる。
しかし、両手にシールドソードを装備した、
ハヤト・アステールも含めて、守りが固そうなのを見て、イザベラはまず手下たちをぶつけることにしたようだ。
「構わん──やれ」
押し殺した声で指示を出すイザベラ。
「あんたを相手にしたいのはヤマヤマだが、まずはザコの相手をする必要があるようだな。報酬分はきっちり働くぜ」
言ってオフシフトを成就する。
ハヤトは山賊たちの繰り出される短剣を華麗な足さばきと、両手の盾でさばいていく、その様、戦場を疾る紅き雷嵐であった。
「ちょっと、お仕置きしてやるぜ‥‥男相手ではつまらんが」
エウロはハヤトの後始末に回る。ハヤトは手数を重視した傾向。
しかし、エウロは逆に確実に当て、確実に傷を与えていく傾向だ。
そこにヴォルフが駆け込んでくる。
「どうやら、間に合ったみてぇだな」
とのヴォルフの言葉。
「わたくしはまず、イザベラをつぶしますわ。後はご自由に」
エウロはかかってくる山賊の短剣を、ハヤトとは対照的に、覆った防具で防いでいく。中にはラッキーヒットで抜いてくるものもいたが、とりあえず無視する。
ザコ山賊を振り切りイザベラと向き合うハヤト。その均衡を破り、エウロがイザベラの戦いに参戦。
それまで、ハヤトは両手のシールドソードで食い下がっていた。
しかし、ハヤトの変則的な打撃手段と、疾風のごとき立ち回りをもってしても、ハヤトもイザベラも、互いに決定打が出ていなかった。
そんな膠着状態が破られた。
エウロはボーラを投げる。
「ハヤトしゃがんで!」
風を切るボーラの音と注意喚起に、ハヤトの身体が無意識に動いた。
イザベラにボーラが絡みつき、動きが鈍る。
ハヤトは体当たりをかけ、動きが鈍ったイザベラを押し倒す。
「さて、お仕置きの時間だぜ──それとも、降伏するか? あっちのデカイねーちゃんは、それを望んでいるみたいだからな」
こうして、イナズマ団最後の戦いは終わった。
なお、捕まえた山賊は7人。逃亡したのは6人だ。
それはさておき、デカイねーちゃんとはエウロの事だろう。彼女は手傷を回復用の飲み薬で癒す。
こうして、ウラートの街まで、ガーブ氏を連れたハウンドたち。
依頼を終えたのちに、捕まったイナズマ団がどうなったかは伝聞で聞くことになった。
ローレックの街への帰り道の途中で、ガーベラはアレッタとレナと仲良くなる。
「ガーベラ、カムイなんだから、もう少し落ち着こうね」
アレッタは、ガーベラの頭をポンポンとたたいて、注意する。
「せやな、もうすこし‥‥おちつかんと、あかんな」
一方で、レナはやっぱり、ガーベラの頭をなでつつ。
「ガーベラちゃんっていうんだよね? 可愛い!」
「れなはん、ウチ、かわいいっていわれるより、かっこええ、っておもわれたいんやけどなぁ」
ガーベラがぼやく。
「うん‥‥そういうとこ可愛いね」
レナは笑う。
アレッタは思った。複雑だな、と。
「まあ、これもええおもいでや、がーべらと8にんのはうんど、いなずまだんをたいじするちゅうな」
エウロはそろそろご飯だ、と3人を呼ぶ。
「これを食べて少し踏ん張れば、ローレックの街ですわ。お疲れさまでした」
そう、間もなくローレックの街。
──しかし、ハウンドの戦いは続く。
11
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参加者
| | a.女…山賊…だと…?!これは合法お仕置きのチャンス!?←×俺は頭狙いだ!
| | ハヤト・アステール(da0375) ♂ 23歳 カーシー(中型) ヴォルセルク 風 | | |
| | c.射程はある方だし、遠距離かね?伏兵いないかルナで一発調べようか。
| | アレッタ・レヴナント(da0637) ♀ 25歳 人間 パドマ 月 | | |
| | c.さ、バカを爆破する楽しいお仕事をしましょ?
| | アルマリア・アリアンロッド(da0672) ♀ 35歳 人間 パドマ 火 | | |
| | b.頭……は、すでに相手がいるな。では、副リーダーを頂こう。楽しみだ……!
| | ベル・キシニア(da1364) ♀ 28歳 人間 ヴォルセルク 風 | | |
| | a.そんなナマクラが私に通じると思うのならかかってらっしゃい。
| | エウロ・シェーア(da1568) ♀ 38歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 火 | | |
| | c.得物が得物だからねえ、端っこにはいけないよねえ。
| | ヴェスパー・ベント(da1605) ♂ 36歳 カーシー(小型) カムイ 風 | | |
| | b.ヴィクターーって言う人は強いのかな?
| | レナ・アルバスティ(da1615) ♀ 20歳 人間 ヴォルセルク 風 | | |
| | a.可愛い姉ちゃんのお相手でもさせて貰うとするぜ
| | ヴォルフ・ファング(da1648) ♂ 35歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 火 | | |
イナズマ団参上!
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荷物を全部よこしな! 40秒で支度するんだよ!(ウラート街道沿いのありがちな風景)。
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