オープニング
◆依頼はシンプル
──知り合いに子供が産まれた。
うんうん、いい話だ。
──誕生祝いにクマの敷物をプレゼントしたい。
強そうだね、きっと将来のはげみになるよ。
──近辺の森まで行って、語り草になる茶色いクマを狩って欲しい。
クマですか‥‥。
そこで、ハウンドたちの頭にひらめいたのは『魔の森』というフレーズだった。あそこから狩ってきたクマならば箔がつくに違いない。
◆魔の森概論
ハウンドギルドを介しての依頼だった。
依頼主は没落貴族。ハンターを雇う金もない。しかし、ハウンドギルドなら、と依頼したらしい。報酬は家財を売って捻出し、新品のクマの敷物を送りたいのか‥‥要は見栄を張りたいのだ。
ともあれ、だ。
魔の森と言えば、ローレックの街より北に位置する、このあたりでも屈指の危険地帯、魔の山を大きく囲む、鬱蒼とした森、という事である。
森の外周周辺はともかく、その深部はハウンドでさえ容易には踏み込めない。
まあ、森の奥まで踏み入る必要はないだろう。
◆魔の森実践
こうして、魔の森に踏み入ったあなたたちは、踏み入って一時間ほどで、クマらしいと思われる痕跡を見つける。
縄張りを主張する樹木に刻まれた爪跡、食い散らかされた蜂の巣、蜂蜜にまみれた茶色い毛等々、加えて足跡とフンだ。
──まだ、若いクマじゃないか?
中には物知り顔でそんな一般論を唱える者もいる。
──身長は2メートルを超すな。
しかし、足回りは下生えで覆われ、森は次第に霧が立ち込め始めた。今すぐ狩りに支障がある訳ではない。しかし、長丁場となれば、どうなるか分からない。最悪帰り道すらわからない可能性もあるのだ。
狩りは迅速に行う必要が出てきた。3時間か? と、判断する者もいる。
痕跡を追い、発見したら即、攻撃をかける必要があるだろう。
そして、気づいた。
「クマ2体以上いるんじゃないか?」
‥‥どう戦うべきか?
ハウンドたちの戦いが始まる。
選択肢
a.前衛 | b.後衛 |
c.戦いの補佐 | z.その他・未選択 |
マスターより
成瀬です。今回はみなさんにクマを狩っていただきます。
まあ、シンプルですが、それだけの話です。
敷物はクマの頭部の骨と、皮全体があればいいので。武器とかで攻撃しても大丈夫です。
あと、持って帰る手段とかも考えてあると、話が膨らむでしょう。
魔の森を含むローレックの街近辺のMAP(概論ですが)は、図書館で閲覧することもできます。
どの選択肢を選んでも、クマと対峙することになります。
戦いの補佐を選んでも戦闘に参加できます。
見せ場は戦いの後で、撃破後の遺体の後始末などがメインです。
心臓とかを焼いて食べて、勇気を受け継ぐというのもいいかも?
時間との勝負。意外と必要になるかもしれません。
特に、クマの死体を丸ごと担いで持ち帰るのは単純な重量、何かを引き寄せる血の匂いといった困難さが予想されます。
では、良き戦いを。
登場キャラ
◆虹色の明日
ハウンドたちは魔の森から生還した。
クマを2体狩った。時間が許せば、もう1体くらい狩ってもいいのでは、というくらいの勢いだ。
「勝ったぜ。だが、欲張りすぎると、ロクな事にゃならねぇし、ほどほどにしようぜ」
傭兵兼ハウンドの
ヴィゾン・ザガートの言葉。とはいえ、彼の割り切り方が誰しも出来るとは限らない。
3時間あれば調理、食事までは充分余裕であった。
「まあ、美味かったけどな──クマ」
ヴィゾンはそう締める。
魔の森を脱出した、彼らの奮闘を、
エルマー・メスロンの記録をもとに、振り返ってみる。
◆乳白色の今日
(種火、食材、調味料の準備いいね‥‥ネットも問題ない‥‥)
背中の重みを感じながら、
レナ・アルバスティは、ボルゾイのレキと獣臭を探る。
そこに──。
「あまり、浮かれるなよ? 魔の森だぜ」
レナにとって隊長ともいうべき、
ヴォルフ・ファングが、彼女に声をかける。
その言葉にレナは、食欲を内に秘めた表情を浮かべる。
「とりあえずバルも連れて、クマを仕留めるぜ。その後はクマの肉を喰うとしよう」
バルとは、ヴォルフの相棒の、セントバーナードだ。
体重差はあれどレキと同様、かなりの大型犬だ。
「楽しみが増えたよ──隊長」
「レナ‥‥予定通りのことだ」
親しい二人の言葉を遮るように、空中で風を切る音が響く。
音源は上空のハヤブサの翼だ。
このハヤブサは
ヴェスパー・ベントの相棒。しかし、魔の森という、鬱蒼とした森では、上空から獲物を探すのは無理があった。
「ここの上空からじゃ、うまく探れないようだねえ」
そんなことを呟きつつ、手を動かしていた。ロープと保存食とで簡単なしかけを準備しているのだ。
ヴェスパーは狩人としての経験から、一般的なクマは、口にしたものを離さないと考えた。そこで、クマの注意を逸らすための計を案じる。
その記録を取っているエルマー。能動的に使える魔法がないため、荷物運びと、冒険行の記録を取るという。
周囲の気配を感じたのか、レキとバルは低く唸る。クマが近づいているらしい。
危険を感じたレキは、レナの直衛に回る。戦闘準備は出来ている。
ヴォルフの前でバルは、命令を待つべく待機している。
「魔の森のクマ、ですか。普通は人が立ち入らない場所の生き物ですから、大層な箔はつきそうですね」
言いながら、
アメリア・トラウトは戦いの風を感じる。
手にするのは銀のハルバードだ。
「何頭、クマは狩ったらいいのでしょうか? あまり森を荒らしたくはないので、必要数だけにしたいですね」
アメリアの言葉だ。
「そうねぇ‥‥わからないわ。昔は訓練代わりに師匠からけしかけられたものだっけ。ハウンドとしての訓練がわりに贈呈品にしてやるわ」
どこまで本気かわからない発言で返す
マリカ・ピエリーニであった。
彼女の戦闘馬も気配を感じたのか、前脚の蹄で地面をしきりと蹴っている。
「目的は狩猟。でも、香辛料も香草もあるから、簡単なものならば──できる」
皆と同じように、真摯に依頼に向き合おうとする
ソーニャ・シュヴァルツの発言。
なお彼女も、調味料などの支度は万全だ。
「まぁ‥‥めんどくさいのは後にして、とりあえず熊殺しといくぜ!」
威勢のいい、
ブレイズ・ヘルファイア。ひときわ強い、獣臭が近づいてきたのを感じて、ダークネスパワーを成就。
ダークエルフならではの魔法だ。
「その『めんどくさい』ことを地道にこなしていくことが、大きな事につながります。細かいことをおろそかにしていると‥‥」
そこまで言って、
エウロ・シェーアがとっさにグリーヴァオニキリを構える。
現れたのは、2メートルを軽く超す茶色い影。ブラウンベアだ。
レナが一呼吸で、ネットを放つ。
かわし切れないクマ。しかし、重すぎるのか、動きを封じることはできない。
「クマ退治か、骨が折れそうだぜ‥‥まぁマジで折れたら困るがよ」
ヴィゾンが飛び込もうと決意を決める僅か前に、ヴェスパーがロープで結わえた保存食を放り投げる。
これでクマを誘導しようという手だ。
急ごしらえの品だが、確かな技術で作られたので、うまく飛ぶ──そして、クマを捉えた! そう思った次の瞬間、前脚で叩き落され、保存食の中身をまき散らす。
クマの視線が泳いだ。
これは好機!
隙ありと見た、ヴィゾンが『感謝だぜ』と言い置き、懐に飛び込む。
「まぁ、良いよねぇ」
ヴェスパーの言葉に、ヴィゾンは笑みを浮かべる。
「頼むぜ! 何しろクマはタフだからなぁ、俺の骨がマジで折れる前に、ぶち殺してくれりゃいいがよ!」
ヴィゾンは守りをしっかりと固める。殴られるのは上等、かわさず装備を信用──否、信頼し。手数で圧倒して、ぶちのめす。
同じくエウロも前線の維持に入る。ヴィゾンにしてみても、的は分散した方がありがたいことだ。
エウロは、グリーヴァオニキリで、末端部分を狙い嫌がらせに──もとい布石とする心づもりだった。
しかし、手間がかかる割に、狙ったほどの効果は得られそうにない。
そういうことととっさに判断。策を弄さず、斬り捨てる!
◆鮮紅の今日
「私の出番だな」
ソーニャが槍を構えながら、クマの後ろへと回り込んでいく。
「熊退治‥‥1体目!」
一方、ブレイズはヴィゾンとエウロよりもさらに間合い深く飛び込み、至近からの一撃に全てを賭ける! あまりいい手ごたえとは言えなかった。全てを賭けても、必中とはいかず、有効打にはならない。
シンプルな理由としては経験と体格に起因する。
「それで終わりか?」
奮い立たせようという、ソーニャの言葉に対し、ブレイズは向上心と勇気で戦うことを決意する。
「援護します!」
アメリアはブレイズのフォローに入る。
アウトレンジから突きかかり、注意を分散させていく。
一方、マリカは得物を頼りに攻め立てる。クマの注意が散漫になっていれば、回避はしづらいはずだ。
狙うは下半身。薙ぐような一撃。
賭けは当たり、脂肪層に刃が食い込む感触。さらに筋肉を裂き、骨に達する。
一瞬、クマの動きが止まる。
見逃さないレナ。槍で突きかかった。クマは手で払おうとするが、払いきれない。
しかし、それはフェイント!
「隊長!」
「応!!」
本命の攻撃。それはヴォルフが放つ一撃だ。
赤い花が咲いた。
「今夜は美味い酒が飲めそうだぜ!」
ヴォルフは獰猛な笑みを浮かべた。
クマの必死の反撃はヴィゾンとエウロが耐え忍ぶ。ガードをしていなければ、ふたりの上半身はザクロの実の如き惨状だったろう。
しかし、数で押し切った。
血まみれになったクマは大きな音を立てて崩れ落ちた。
ヴィゾンとエウロは、皆の持ち込んだ回復薬で、傷をいやす。骨折こそ無いものの、打ち身などはある。
ガードの上からでも、これだけの傷を負う。
「名誉の負傷だぜ。だから、もう1体は──」
ヴィゾンの言葉にエウロはうなずく。
こんなことで1体目を倒した一同。
しかし、茂みをかき分ける音がするのに、ソーニャは気づく。
「まだ居る!」
先ほどの討ち取ったクマほど大きくはないが、2メートルは超している。
「おらっ!」
周囲にぶちまけられた様々なものに注意を取られているクマ。
そこにヴォルフが斬撃を浴びせる。
続けて殺到する一同。
クマの一瞬のスキが命取りだった。
「当たれ!」
ブレイズの一撃が決まったとき、クマは命が尽きる。
ともあれ、だ──。
「さて、クマ肉パーティー第2弾じゃん」
ブレイズは宣言した。
ナイフとミスリル製ナイフが手早く振るわれた。
毛皮をはいだクマの遺体のうち、余分な肉、臓物、骨は置いていくことにした。
ブレイズは遺体を埋めていこうか、と提案する。
非常にもっともな提案だ。
ともあれ、料理する手間を考えると、一口だけ食べるのが手一杯。
ヴォルフの提案で、矢に刺した肉をあぶっていく。
これにソーニャが持ち込んだ、ブラックペッパーが非常にマッチしたのだ。
バジルの香りも、クマ肉の渋みを和らげていた。
エウロはおすすめできない、と言っていたが、匂いには抗せない。
ヴォルフは豪快に笑う。
「いやあ、美味かったぜ」
◆未来への贈り物
マリカの戦闘馬が、クマ2体分の戦利品を持ち出す上で、大きな労働力となる。
「見栄っ張りの貧乏貴族に振り回されるのもなんだが、めんどくさいことは後回しにして、また、クマ殺しとでも行こうか!」
とはブレイズの弁だ。
依頼は完遂された。
後に熊の毛皮と頭蓋骨は、見事な敷物になる見込みだ。
贈られた赤子は、命がけで戦ったハウンドを多分知らない。
「‥‥しかし、勇気をくれる品となるのである」
エルマーはこの狩りの記録をそう記した。
そしてハウンドの戦いは──続く。
12
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参加者
| | a.まずは狩猟だな。
| | ソーニャ・シュヴァルツ(da0210) ♀ 24歳 カーシー(中型) ヴォルセルク 火 | | |
| | a.まぁめんどくさいのは後にして、とりあえず熊殺しといくぜ!
| | ブレイズ・ヘルファイア(da0219) ♀ 20歳 ダークエルフ ヴォルセルク 火 | | |
| | a.よろしくお願いします。
| | アメリア・トラウト(da0819) ♀ 25歳 人間 ヴォルセルク 地 | | |
| | a.熊狩ね。ふふ、腕がなるわ。あ、後荷物運搬用に馬連れて行くわね。
| | マリカ・ピエリーニ(da1228) ♀ 29歳 人間 ヴォルセルク 火 | | |
| | a.クマ退治か、骨が折れそうだぜ。
| | ヴィゾン・ザガート(da1240) ♂ 34歳 人間 ヴォルセルク 地 | | |
| | a.クマと正面切って張り合えるでしょうか・・・?
| | エウロ・シェーア(da1568) ♀ 38歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 火 | | |
| | z.クマ狩りは初体験であるので是非記録に残さなければ。
| | エルマー・メスロン(da1576) ♂ 51歳 ダークエルフ パドマ 陽 | | |
| | b.懐かしいねえ、昔を思い出すよ。
| | ヴェスパー・ベント(da1605) ♂ 36歳 カーシー(小型) カムイ 風 | | |
| | a.種火、食材、調味料持って行きます
| | レナ・アルバスティ(da1615) ♀ 20歳 人間 ヴォルセルク 風 | | |
| | a.とりあえずクマを仕留めるぜ。その後はクマの肉を喰うとしよう。
| | ヴォルフ・ファング(da1648) ♂ 35歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 火 | | |
クマを狩れ、と?
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見栄っ張りの没落貴族が、知り合いに、クマの敷物を送りたいそうだ──誰だ? 魔の森で狩ろうって言ったのは‥‥。
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