クマを狩れ!

担当成瀬丈二
出発2019/05/11
種類ショート 冒険(討伐)
結果成功
MVPマリカ・ピエリーニ(da1228)
準MVPヴェスパー・ベント(da1605)
ソーニャ・シュヴァルツ(da0210)

オープニング

◆依頼はシンプル
──知り合いに子供が産まれた。
 うんうん、いい話だ。
──誕生祝いにクマの敷物をプレゼントしたい。
 強そうだね、きっと将来のはげみになるよ。
──近辺の森まで行って、語り草になる茶色いクマを狩って欲しい。

登場キャラ

リプレイ

◆虹色の明日
 ハウンドたちは魔の森から生還した。
 クマを2体狩った。時間が許せば、もう1体くらい狩ってもいいのでは、というくらいの勢いだ。
「勝ったぜ。だが、欲張りすぎると、ロクな事にゃならねぇし、ほどほどにしようぜ」
 傭兵兼ハウンドのヴィゾン・ザガートの言葉。とはいえ、彼の割り切り方が誰しも出来るとは限らない。
 3時間あれば調理、食事までは充分余裕であった。
「まあ、美味かったけどな──クマ」
 ヴィゾンはそう締める。
 魔の森を脱出した、彼らの奮闘を、エルマー・メスロンの記録をもとに、振り返ってみる。

◆乳白色の今日
(種火、食材、調味料の準備いいね‥‥ネットも問題ない‥‥)
 背中の重みを感じながら、レナ・アルバスティは、ボルゾイのレキと獣臭を探る。
 そこに──。
「あまり、浮かれるなよ? 魔の森だぜ」
 レナにとって隊長ともいうべき、ヴォルフ・ファングが、彼女に声をかける。
 その言葉にレナは、食欲を内に秘めた表情を浮かべる。
「とりあえずバルも連れて、クマを仕留めるぜ。その後はクマの肉を喰うとしよう」
 バルとは、ヴォルフの相棒の、セントバーナードだ。
 体重差はあれどレキと同様、かなりの大型犬だ。
「楽しみが増えたよ──隊長」
「レナ‥‥予定通りのことだ」
 親しい二人の言葉を遮るように、空中で風を切る音が響く。
 音源は上空のハヤブサの翼だ。
 このハヤブサはヴェスパー・ベントの相棒。しかし、魔の森という、鬱蒼とした森では、上空から獲物を探すのは無理があった。
「ここの上空からじゃ、うまく探れないようだねえ」
 そんなことを呟きつつ、手を動かしていた。ロープと保存食とで簡単なしかけを準備しているのだ。
 ヴェスパーは狩人としての経験から、一般的なクマは、口にしたものを離さないと考えた。そこで、クマの注意を逸らすための計を案じる。
 その記録を取っているエルマー。能動的に使える魔法がないため、荷物運びと、冒険行の記録を取るという。
 周囲の気配を感じたのか、レキとバルは低く唸る。クマが近づいているらしい。
 危険を感じたレキは、レナの直衛に回る。戦闘準備は出来ている。
 ヴォルフの前でバルは、命令を待つべく待機している。
「魔の森のクマ、ですか。普通は人が立ち入らない場所の生き物ですから、大層な箔はつきそうですね」
 言いながら、アメリア・トラウトは戦いの風を感じる。
 手にするのは銀のハルバードだ。
「何頭、クマは狩ったらいいのでしょうか? あまり森を荒らしたくはないので、必要数だけにしたいですね」
 アメリアの言葉だ。
「そうねぇ‥‥わからないわ。昔は訓練代わりに師匠からけしかけられたものだっけ。ハウンドとしての訓練がわりに贈呈品にしてやるわ」
 どこまで本気かわからない発言で返すマリカ・ピエリーニであった。
 彼女の戦闘馬も気配を感じたのか、前脚の蹄で地面をしきりと蹴っている。
「目的は狩猟。でも、香辛料も香草もあるから、簡単なものならば──できる」
 皆と同じように、真摯に依頼に向き合おうとするソーニャ・シュヴァルツの発言。
 なお彼女も、調味料などの支度は万全だ。
「まぁ‥‥めんどくさいのは後にして、とりあえず熊殺しといくぜ!」
 威勢のいい、ブレイズ・ヘルファイア。ひときわ強い、獣臭が近づいてきたのを感じて、ダークネスパワーを成就。
 ダークエルフならではの魔法だ。
「その『めんどくさい』ことを地道にこなしていくことが、大きな事につながります。細かいことをおろそかにしていると‥‥」
 そこまで言って、エウロ・シェーアがとっさにグリーヴァオニキリを構える。
 現れたのは、2メートルを軽く超す茶色い影。ブラウンベアだ。
 レナが一呼吸で、ネットを放つ。
 かわし切れないクマ。しかし、重すぎるのか、動きを封じることはできない。
「クマ退治か、骨が折れそうだぜ‥‥まぁマジで折れたら困るがよ」
 ヴィゾンが飛び込もうと決意を決める僅か前に、ヴェスパーがロープで結わえた保存食を放り投げる。
 これでクマを誘導しようという手だ。
 急ごしらえの品だが、確かな技術で作られたので、うまく飛ぶ──そして、クマを捉えた! そう思った次の瞬間、前脚で叩き落され、保存食の中身をまき散らす。
 クマの視線が泳いだ。
 これは好機!
 隙ありと見た、ヴィゾンが『感謝だぜ』と言い置き、懐に飛び込む。
「まぁ、良いよねぇ」
 ヴェスパーの言葉に、ヴィゾンは笑みを浮かべる。
「頼むぜ! 何しろクマはタフだからなぁ、俺の骨がマジで折れる前に、ぶち殺してくれりゃいいがよ!」
 ヴィゾンは守りをしっかりと固める。殴られるのは上等、かわさず装備を信用──否、信頼し。手数で圧倒して、ぶちのめす。
 同じくエウロも前線の維持に入る。ヴィゾンにしてみても、的は分散した方がありがたいことだ。
 エウロは、グリーヴァオニキリで、末端部分を狙い嫌がらせに──もとい布石とする心づもりだった。
 しかし、手間がかかる割に、狙ったほどの効果は得られそうにない。
 そういうことととっさに判断。策を弄さず、斬り捨てる!

◆鮮紅の今日
「私の出番だな」
 ソーニャが槍を構えながら、クマの後ろへと回り込んでいく。
「熊退治‥‥1体目!」
 一方、ブレイズはヴィゾンとエウロよりもさらに間合い深く飛び込み、至近からの一撃に全てを賭ける! あまりいい手ごたえとは言えなかった。全てを賭けても、必中とはいかず、有効打にはならない。
 シンプルな理由としては経験と体格に起因する。
「それで終わりか?」
 奮い立たせようという、ソーニャの言葉に対し、ブレイズは向上心と勇気で戦うことを決意する。
「援護します!」
 アメリアはブレイズのフォローに入る。
 アウトレンジから突きかかり、注意を分散させていく。
 一方、マリカは得物を頼りに攻め立てる。クマの注意が散漫になっていれば、回避はしづらいはずだ。
 狙うは下半身。薙ぐような一撃。
 賭けは当たり、脂肪層に刃が食い込む感触。さらに筋肉を裂き、骨に達する。
 一瞬、クマの動きが止まる。
 見逃さないレナ。槍で突きかかった。クマは手で払おうとするが、払いきれない。
 しかし、それはフェイント!
「隊長!」
「応!!」
 本命の攻撃。それはヴォルフが放つ一撃だ。
 赤い花が咲いた。
「今夜は美味い酒が飲めそうだぜ!」
 ヴォルフは獰猛な笑みを浮かべた。
 クマの必死の反撃はヴィゾンとエウロが耐え忍ぶ。ガードをしていなければ、ふたりの上半身はザクロの実の如き惨状だったろう。
 しかし、数で押し切った。
 血まみれになったクマは大きな音を立てて崩れ落ちた。
 ヴィゾンとエウロは、皆の持ち込んだ回復薬で、傷をいやす。骨折こそ無いものの、打ち身などはある。
 ガードの上からでも、これだけの傷を負う。
「名誉の負傷だぜ。だから、もう1体は──」
 ヴィゾンの言葉にエウロはうなずく。
 こんなことで1体目を倒した一同。
 しかし、茂みをかき分ける音がするのに、ソーニャは気づく。
「まだ居る!」
 先ほどの討ち取ったクマほど大きくはないが、2メートルは超している。
「おらっ!」
 周囲にぶちまけられた様々なものに注意を取られているクマ。
 そこにヴォルフが斬撃を浴びせる。
 続けて殺到する一同。
 クマの一瞬のスキが命取りだった。
「当たれ!」
 ブレイズの一撃が決まったとき、クマは命が尽きる。
 ともあれ、だ──。
「さて、クマ肉パーティー第2弾じゃん」
 ブレイズは宣言した。
 ナイフとミスリル製ナイフが手早く振るわれた。
 毛皮をはいだクマの遺体のうち、余分な肉、臓物、骨は置いていくことにした。
 ブレイズは遺体を埋めていこうか、と提案する。
 非常にもっともな提案だ。
 ともあれ、料理する手間を考えると、一口だけ食べるのが手一杯。
 ヴォルフの提案で、矢に刺した肉をあぶっていく。
 これにソーニャが持ち込んだ、ブラックペッパーが非常にマッチしたのだ。
 バジルの香りも、クマ肉の渋みを和らげていた。
 エウロはおすすめできない、と言っていたが、匂いには抗せない。
 ヴォルフは豪快に笑う。
「いやあ、美味かったぜ」

◆未来への贈り物
 マリカの戦闘馬が、クマ2体分の戦利品を持ち出す上で、大きな労働力となる。
「見栄っ張りの貧乏貴族に振り回されるのもなんだが、めんどくさいことは後回しにして、また、クマ殺しとでも行こうか!」
 とはブレイズの弁だ。
 依頼は完遂された。
 後に熊の毛皮と頭蓋骨は、見事な敷物になる見込みだ。
 贈られた赤子は、命がけで戦ったハウンドを多分知らない。
「‥‥しかし、勇気をくれる品となるのである」
 エルマーはこの狩りの記録をそう記した。
 そしてハウンドの戦いは──続く。



 12

参加者

a.まずは狩猟だな。
ソーニャ・シュヴァルツ(da0210)
♀ 24歳 カーシー(中型) ヴォルセルク 火
a.まぁめんどくさいのは後にして、とりあえず熊殺しといくぜ!
ブレイズ・ヘルファイア(da0219)
♀ 20歳 ダークエルフ ヴォルセルク 火
a.よろしくお願いします。
アメリア・トラウト(da0819)
♀ 25歳 人間 ヴォルセルク 地
a.熊狩ね。ふふ、腕がなるわ。あ、後荷物運搬用に馬連れて行くわね。
マリカ・ピエリーニ(da1228)
♀ 29歳 人間 ヴォルセルク 火
a.クマ退治か、骨が折れそうだぜ。
ヴィゾン・ザガート(da1240)
♂ 34歳 人間 ヴォルセルク 地
a.クマと正面切って張り合えるでしょうか・・・?
エウロ・シェーア(da1568)
♀ 38歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 火
z.クマ狩りは初体験であるので是非記録に残さなければ。
エルマー・メスロン(da1576)
♂ 51歳 ダークエルフ パドマ 陽
b.懐かしいねえ、昔を思い出すよ。
ヴェスパー・ベント(da1605)
♂ 36歳 カーシー(小型) カムイ 風
a.種火、食材、調味料持って行きます
レナ・アルバスティ(da1615)
♀ 20歳 人間 ヴォルセルク 風
a.とりあえずクマを仕留めるぜ。その後はクマの肉を喰うとしよう。
ヴォルフ・ファング(da1648)
♂ 35歳 カーシー(大型) ヴォルセルク 火


クマを狩れ、と?

見栄っ張りの没落貴族が、知り合いに、クマの敷物を送りたいそうだ──誰だ? 魔の森で狩ろうって言ったのは‥‥。