目指すは地のダークヒュージドラゴン。

　ハウンドが決意したとき、ドラゴポータルが起動して、周囲の光景が変わった。
　ハウンドたちはあっけなく、嵐の壁を越えた。

◆荒涼たる
　中には、嵐の壁を突破する冒険を覚悟したものもいるだろう。
　そのための備えを準備したものもいる。
　しかし、周囲の光景は荒涼とした世界だ。
　ひび割れた大地は乾ききり、恵みと言った言葉からは無縁に見える。
　更に周囲は枯れて久しい大樹が居並ぶ。
　突撃にそなえて槍を構え直す騎士団、それを思わせる荒れた光景だ。
　精霊力が正常に働いていれば、木々は緑であり、大地は肥沃なのだろう。それだけに痛々しい。

◆天と地の戦い
　ガーベラやシフール、それに箒を持ち込んだものが、上空から偵察をする。
　地平線は見えない。嵐の壁らしきものがさえぎっているのだ。
「あの影は！」
　地形とも錯覚した五十メートルを越す巨体を見たハウンドは、瞬時にさとった。
　あれは『ドラゴン』だ。

◆それは死を意味する
　地属性の最高峰の──そして、呪われたドラゴン。
　まるで宝石の塊から削りだしたような美しい竜鱗──鱗、エラ、突起──それも判然としない。
　所々に黒い何かが鱗の『中』にある。
　今までのドラゴンとは違うフォルム。そのダークヒュージドラゴンが威容を現した。
　その圧倒的なプレッシャーは、ハウンドたちに覚悟をさせる。

　慎重に近寄ったハウンドたちは、畏怖に胸を打たれつつも、闘志に燃える。

　ガーベラが近寄る。
「ちょっとでぃすみぜるするかんなー！　うごかんといて」
　無視。
　他のシフールも声をかけるが、無視。
「呪いを解いて差し上げます」
　カムイのひとり（ガーベラもカムイだが）が声をかけると、圧倒的なプレッシャーが周囲を支配する。
　ハウンドはドラゴンを感じる言葉を知っている‥‥それは恐怖。
「面倒だがつぶす」
　口から洩れたドラゴン語はそう言っている。
　ハウンド相手にして、『面倒』レベルの評価だ。
　ドラゴンは激怒する。
　古い言葉に曰く。
『怒れるドラゴンとの遭遇──それは死を意味する』
　勝て、そして帰還せよ！