［次なるディスミゼルはケットシーか］
特定のダークサイドをディスミゼル(全解呪)する方法が記されているという『呪いの書』。複数あると目され、高位のデュルガーが管理するなどしている、ハウンドにとっては大変重要な品だ。
そのうち1つを、ウーディアのカイル村にて入手することができた(詳しい経緯はこちらのリプレイ参照)。そしてその、古代変形ルーン語と暗号を組み合わせたような文章の、一応の解析が終わり、ギルドにて発表された。内容は下記の通りだ。
『(ダーク)ケットシーは、ライバル(ないしは、宿敵や因縁の相手等)から、その使命を譲り受けることで、その呪いは失われる』
――ニュアンスはほぼこれで間違いないという。しかし、それが意味する、具体的なところはどうにも判然とせず、解釈も分かれたりしそうである。ダークケットシーのディスミゼルだとして、結局、なにをどうすれば、それを為せるのだろうか？
［天才ケットシーの意見は］
この件に関し、ハウンドギルドが真っ先にアドバイスを求めたのは、ウーディア南西部の大都市ニュートパを治めるケットシーの魔術師、ニャンダビ王2世である。
一国の主であり、政治的センスだけでなく魔法才能にも長けるとされる、いわば天才ケットシー。彼ならば、適任中の適任というわけだ。
さいわいニャンダビ2世は、快く話を聞いてくれた。デブ猫、もとい、とってもふくよかなお姿のケットシー王は、笑みを絶やさぬまま、こう言った。
「我輩とて、それを正確に解釈はできぬダビ。けど、ざっくりは思いつくダビ」
ニャンダビ2世によると、ライバルというのはおそらく、カーシーだろうという。確かに、この両者はどういうわけか、相性というか仲が悪いことが多い。忠義にあつく真面目な者が多いカーシーと、自由奔放で気分屋なケットシー。生活シーンでぶつかる事も多く、いつしか「カーシーとケットシーは仲が悪い」という固定観念が出来上がっており、それを率先して解消しようという者もいなかった、というのがミドルヘイムの現状だ。
では、仮にカーシーだとして、譲るべき使命とはなんだろうか？ これはニャンダビ2世にも、当のカーシーらにも、いまいちピンとこない問題だ。ハウンドとなった最初期の種族の一員だから、ハウンドの任務のことだろうか、という意見もあったが、ちょっと弱い気もする。
「ま、この件については思うところもあるし、今からいろいろ調べてみるダビ。そこで、ちょっと提案なんダビが‥‥」
ニャンダビ2世は、照れくさそうに、こんな提案を始めた。
「同胞の呪いを解いてくれることは、もちろん願ったり叶ったりダビ。基本的には全面的に協力するダビ‥‥ただ、我輩の調査が終わるまで、この街で愛をお届けしてほしいんダビ。カーシーのハウンドにもそれをしてもらえば、そこから何か見えてくることもあるはずダビ」
［ハウンドへの宿題］
ニャンダビ2世の要求を解説する前に、このニュートパの街について少し触れておこう。
この街は、市民の幸福感を高めることで、魔物に対し結界を展開している、という噂があった。この点について、ニャンダビ2世は「口外無用」を条件に、初めて明確に「そうダビ」と認めた。どうやら詳細非公開なのは、魔物対策のためではなく、コモンの侵略にも念頭に置いているようだ。なかなか抜け目のない統治者である。
「我輩はシンプルに『幸せの壁』と名付けたダビ。けど、これが最近、調子がよくないダビ‥‥」
もちろんニャンダビ2世は、市民の幸福を高めるための『いい政治』を行なってきた。治安や娯楽、経済状況等、どれも素晴らしい水準に達しており、それは年々、上昇傾向にあった。
にも関わらず‥‥集められる幸福感は減少傾向にあった。つまり人々は年々、幸せを忘れつつあるというのだ。
「これは我輩の失策でもあるダビが‥‥物質的に恵まれることが、幸せに繋がるとは限らない、ということダビ。むしろ、金品を過剰に求めてあくせく働くのは、幸福感的には本質を外れていると言えるダビ」
幸せを維持するための発展が、幸せから遠ざかる結果になっているとは皮肉であった。
「これはもちろん、徐々にあらためていくダビが‥‥ひとまず市民の幸福に必要なのは、多忙で見失いつつある、愛ダビ！ ちょうど折よく、ハウンドが広めてる愛の日と白の日が来てるダビ。それをハウンド自身で広めて、この街の皆の愛を取り戻してほしいダビ！」
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「ダークケットシーのディスミゼル方法が解読された、っていうけど‥‥ずいぶん漠然としているのなのー。